花より男子の二次小説。CPはつかつくonlyです。

With a Happy Ending

翌朝の新聞の一面記事は・・・

____道明寺司氏 結婚!!



デカデカと書かれたその見出しに、目が飛び出しそうになった。
どこから漏れた情報よ?と考えてみたけれど、考える間も無く思い至る。
だって、昨日は病院前で散々大騒ぎしていたんだもん。
昨晩、道明寺が私を連れて系列病院の産婦人科を受診した。
病院側が極秘にしてくれたところで、病院の外であれだけ騒いでいればそりゃすぐに話題にもなるわ。
夜中だとは言え、他の患者さんが見ていたかもしれないし。

もちろん、今更こんなことでぎゃあぎゃあ言っても始まらない。
道明寺と一緒に生きていくって決めたんだもん。
結婚だって覚悟はできてる。

まぁ・・デキ婚ってことになるのかな?

ソファーで隣に座る道明寺は終始ニヤついてるけど。
あんた、専務って立場でデキ婚って、体裁悪くないの?

なんて思いつつ、道明寺が広げる新聞を横から覗き込んだ。

・・ん?
・・・・んん?

・・・・・・っ!!

『お相手は、高校時代の初恋の女性。』
『密かに育んできた5年間の遠距離恋愛。』
『総帥も公認のお付き合いから5年を経て、本日入籍へ!』

って、なにこれーっ!!
私の妊娠のことなんて書かれていない。
そこに書かれていたのは、初恋の女性との長年の遠恋を実らせたという、道明寺司の恋愛秘話。

「あっ・・あっ・・あんっ・・・」
「何だよ。あんあん言って。やりてぇの?俺的には、昨日相当我慢したんだぜ?やっぱ、今はマズイだろ?」
「バカッ!そんな訳あるかっ・・って、そうじゃなくて。これっ!これって、もしかしてあんたが?」
「当然だろ?つーか、ほぼ事実だろ?」
「全然事実じゃないでしょっ。」
「嘘も方便って奴だ。」
「急に、賢そうなこと言うなっ。」

なんか・・なんか、道明寺にエンジンがかかってる。
そうよ、そうなのよ。
こいつは、こういう奴なのよ!
こうと決めたら一直線。
誰にも止められないのよっ。

再会してからのこいつは、まともな精神状態じゃなかった。
耳の事を隠していたから、余計にややこしいことになってしまったんだけど。
道明寺は、相当我慢してたんだと思う。
私には他に付き合っている男性がいると思っていただろうし。

それが違うと分かった今、猛然と突っ込んでくる道明寺を止めようがない。
いや、止めなくていいんだけど・・ね。


道明寺が私の髪にキスを落とす。
焦って見上げれば、甘い表情の道明寺。
凄く・・嬉しそう・・。
再会してから、ずっと苦しそうだったもんね。
だけど、これからはこんな笑顔をいっぱいさせてあげたいな。

もう、どこにも行かないよ・・。

「ねぇ、道明寺。私があんたを幸せにしてあげる。」

そう言った私を、道明寺が力一杯抱きしめた。


「やってもらおうじゃん。けど、俺がその倍はお前を幸せにしてやるから覚悟しとけよ。」

うん。
だけどね。私もこの5年で分かったんだ。
昔、あんたの気持ちの1/10しか好きじゃないなんて言ったけど、私は絶対間違ってた。
離れていた5年で思い知ったもん。
5年間ずっと忘れることが出来ないぐらい、あんたのことが好きだったって。

私ね、あんたと同じぐらいに、あんたのことが好きなんだよ。
信じてね。


5年前には手に入らなかった幸せが、目の前にある。
あの頃は眩し過ぎて掴めないと思っていた幸せを、私は今、掴もうとしている。


永遠に無くならないもの。
それは、簡単に手に入れることはできないもの。
心の奥底で大切にしまっていたもの。
だからこそ永遠なのだと思っていた。

だけど、目の前に掴めそうな幸せなが見えた今、
それでも、これだけは言える。

私の愛は永遠。


彼を愛することを止めるなんて、絶対にできない。
彼の愛を掴んだ今も、それだけは確信できる。
たとえ彼の愛を一生掴めなかったとしても、
私の愛は決して風化しないけれど・・。


だけど、今、もう一度誓うよ。

____私は、あなたのことを永遠に愛します。







***



「しっかし、あの時の司は笑えたな。」
「あれはヤバかったな。道明寺の株価下がっただろ?」
「バカ言え、俺の微笑みには数百億の価値があんだよ。」
「自分で言うなよ、恥ずいな。」

俺んちのリビングで、総二郎とあきらが俺を茶化す。
こいつらが言うのは、昨年末のつくしとの結婚式のこと。
式・披露宴ともに、東京メープルで行った。
身重のつくしのことを考えればそれがベストと判断した。
少し腹の目立ったつくしに合わせた、エンパイアラインの純白のドレス。
マジ可愛くて、その場で押し倒しそうになった。

俺の両親もつくしの両親も揃って出席し、仕事関係の出席者は1000人を超え、盛大な披露宴になった。
自分では気づかなかったが、その披露宴の席で俺のニヤケ顔が半端なかったらしい。

仕方ねぇだろ。
超惚れてる女との結婚式だぜ?
あんな幸せってねぇんだよ。
何よりも、つくしが幸せそうに笑ってくれたのが嬉しかった。
世界中に見せびらかしてぇと思った。
俺とつくしの幸せを。

「おい、ビデオねぇの?もう一回見てぇよ。」

あるけど、お前らに見せる必要はねぇよ。
結婚式と披露宴のビデオは、悠(はるか)が大きくなった時に・・。


はっと気付く。
いつの間にか、類の奴がここにいねぇ。
あいつ、またつくしのとこに行ってんなっ。

ガバッとソファーから立ち上がり、俺とつくしの私室へ急ぐ。
そこには、どうやら授乳が終わったらしいつくしと類の姿が。

「ねぇ、牧野。悠、抱っこしてもいい?」
「うん。いいよ。首、気を付けてね。」
「もう何回も抱っこしてるから大丈夫。」
「凄いね、類。パパみたい。」

だーっ。こいつらーっ。
ガターン!!

「あ、司が来ちゃった。」
「もう、司ったら、大きな音立てないで。」

「類、悠を俺に返せ。」
「ちぇっ。うるさいパパだね。」
「もうっ、悠のことになるといつもこうなんだから。」

悠のことじゃねーよっ。
お前のことだよ、お前のっ。
本当に、相変わらずの鈍感女だ。
ま、そー言うところにも惚れてんだけど・・。


類は、週に一度はここへ来て、つくしと悠に会っている。
総二郎やあきらも、結構な頻度でやって来る。
滋や三条も頻繁らしい。
大概俺が出張なんかで不在の時っていうのがまたムカつくところで、目障りなことこの上ねぇが、いきなり結婚してこの道明寺邸に入ったつくしのことを気遣って、皆が来てくれているのは分かってる。しかも、俺が不在の5年間、ましてやあの事故後のつくしを支えたのは類だと知れば無碍にも扱えない。ま、何よりも、類は俺のダチだしな。

「俺、悠と結婚しようかな。」
「はあ〜?お前、いい加減にしろよっ。」
「冗談に決まってるでしょ。司、熱くならないで!」

「司には牧野がいるじゃん。」
「悠も俺のもんだ。」
「悠はいつかはお嫁に行くんだからね。」
「つくしっ、お前まで、何てこと言いやがる。少しは俺の味方しろよっ。」

「「あはははっ!!」」


こうして、俺たちの関係は続いている。
総二郎、あきら、類。
こいつらに支えて、今の俺たちはある。
つくしの愛を手に入れ、俺らが夫婦になると同時に、こいつらとの新しい関係も始まった。

それは、きっと、これからもずっと続いて行く。


とりあえず機嫌が悪い振りをする俺の耳元に、つくしが囁いた。

「悠がお嫁に行っちゃっても、私がずーっと一緒にいるからね。」


あー、俺、マジ幸せ。
そんなこと、本気で心配してる訳ねぇんだけど。
こうしてつくしが俺を気にかけてくれる。
そんな小さなことにもつくしの愛を感じる。


俺の隣につくしがいる。
1年前には想像していなかった幸せを、俺は手に入れた。


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いつもたくさんの応援をありがとうございます。
今日でラストのつもりが、長くなってしまい2話に分けました。
明日で完結します。
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「だから、違うって!」
「いや、間違いないな。」
「やだって、離してっ!」
「離すか、ボケ。」

私たちは、今、道明寺系列の病院前。
もう、夜の11時近い。
それなのに、道明寺に無理やり連れられて、ここまで来てしまった。
当然彼が、事前に連絡を入れてのことだけど。

妊娠検査薬の結果は陽性。
だけど、本当に妊娠しているかどうかはまだ分からない。

一人で産むつもりだったのに。
どうしてこんなことになってるんだろう?
道明寺に妊娠したことを知られたら困る・・と思っていたけれど、さっきの話だったら、もうそんな心配は要らないのかも。
そう思うんだけど、やっぱり素直に飛び込んでいけない。
だって・・急に、こんな展開になるんだもん。

もう、あのお母さんが反対してないなんて、信じられる?
私が妊娠していることを道明寺は疑いもしない。
むしろ、今すぐ確かめると言って聞かなかった。

「今や俺のレーダーに狂いはねぇ。」
「はぁ?」
「だいたい、お前の妊娠を望んでたのは俺だからな。」
「ええっ?!あんたっ!」
「当たり前だろ?あんだけ生でガンガンやってたんだぜ。その覚悟は初めからしてた。」
「かっ・・覚悟って・・。」

「俺ら、結構いい親になると思うんだよな。」
道明寺がとても嬉しそうに私の顔を覗き込む。

「親・・。」
「そうだろ?」

そうだよ、そう、そうだった。
こいつは、こういう奴だった。
いつでも自分の思う通りに行動して、それは羨ましいほどにブレてない。
俺様で自分勝手だって思うんだけど、案外こいつのいうことは、いつも真実だったりするんだよね。


「行くぞ!」
道明寺が強引に私の腰を抱き、病院の中へ入って行く。

私・・これからどうなっちゃうんだろう?




***


「おめでとうございます。妊娠ですね。」

お願いだから、絶対に逃げないから、だから診察室には入ってこないで。
そう懇願して、何とか道明寺同席の診察だけは免れた。
そして、エコー検査の結果、私の妊娠が確定した。

予想通りではあるけれど、お腹の中に道明寺の赤ちゃんがいる。
この子を産んで、幸せにしてあげたい。
心の底から、そう思った。


そして、今、道明寺と並んで先生の説明を聞いている。
そんな私たちは、夫婦のようにみえる・・と思う。

「もう、お母さんなんですよ。区役所で母子手帳をもらって下さいね。」
優しく説明して下さる先生とは対照的に、道明寺が焦った声を上げる。
「区役所・・?って、おい。まだ入籍してねぇだろ。まずは、直ぐに籍入れるぞっ!」
「ちょっと、道明寺っ、うるさいっ!」

「まだ妊娠初期ですから、無理はしないように。」
と先生から注意を受ければ、道明寺もうんうんと頷いている。
「分かったか、牧野。直ぐに、俺んちに引っ越せよ。」
「だから、うるさいよ。」

「かと言って、妊娠は病気ではありませんから、過度に制限をする必要はありませんが、安定期までは気をつけて。」
「安定期っていつだ?」
「そうですね、今が3ヶ月目ですから、あと2ヶ月ぐらいでしょうか。」
その先生の答えに、道明寺は満足気な顔をした。

「じゃあ、その頃に結婚式だな。準備もあるから丁度いいな。俺が全部手配するから、お前は無理すんな。」
「だから、ちょっと待ってよ。まだ、結婚するなんて言ってないでしょっ!」

「はぁ〜??」「え?」

思わず叫んでしまった私に、道明寺ばかりか、女医先生も驚いている。
聞き様によっては、天下の道明寺司からのプロポーズに待ったをかけた形だ。
あちゃ。
そりゃ、私だって結婚したくないって訳じゃないんだよ。
妊娠が分かって、はっきり思う。
ここにこうして道明寺がいてくれるのに、一人で育てるなんて傲慢だ。
それに、この子を幸せにしてあげるのは私の役割でもあるけど、隣にいる彼の役目でもある。だって、この子は二人の子供なんだから。

「あ・・いや、その・・だって・・。」
「お前、俺に不満でもあんのか?」

不満なんて・・ある訳ない。
だって、相手はこの5年間ずっと想ってきた男だよ。
こんな幸せな話ってない。
だけど、展開が急すぎてついていけないのよ。

ちらっと道明寺を見れば、ぎろっと睨み返される。
その気迫に押されちゃう。

「いえ・・無いです。」
「じゃあ、グダグダ言うな。」
「はい。」

「ぷっ・・」
先生に笑われてしまった。

「ご両親が仲良くしていることが、安定した妊娠につながります。喧嘩もほどほどにね。」
「だってよ、つくし。」
「・・っ!!」


ああ。
これは現実なんだ。
私たちは本当に一緒に親になれるんだ。

道明寺はいつも大切なものを見失わない。
だから彼と一緒にいれば、私はもう、大切なものを手放すことは無い。

私にとって大切なもの。
それは、道明寺とこのお腹の中の赤ちゃん。
私は二人を幸せにすることができるのかな・・?

「できるに決まってんだろ。」

気がつけば、リムジンの中。
私の右側に座っている道明寺が自信たっぷりに言う。
あれ?私また、独り言言ってた?


「なぁ、牧野。あの指輪、どうして、持って帰らなかった?」
「え?」
「ずっと大切にしてくれてた指輪だろ?何で持って行かなかったんだよ。」
「それは・・。」
「指輪以上に大切なものができたから・・か?」
「・・・。」
「そうだろ?」
「うん・・・ごめんね。」
「ったく・・マジ、勝手なのはお前なんだよ。」
「本当にごめん。」

本当に、私は勝手だった。
左耳から聞こえる声を聞こうとしなかった。
嫌なことを言われてると思い込んで。
聞きたく無いことに蓋をした。
それは、私が道明寺を信じていなかったということになる。
そして、お腹の赤ちゃんも、パパがここにいるのに、彼から引き離そうとしていたんだ。
一緒になる努力をしなかった。
勝手に、逃げようとしていた。
自分だけが苦労すればいいと思っていたなんて、とんだ思い上がりだ。

私は結局、5年前からあまり成長していないのかも・・

「本当に反省してんのかよ。」
「してるよ。」
「じゃあ、今から、この荷物持って俺んちに移動な。」
「ええ〜っ。待って、それはまた今度。」
「抜かせ。もう、離さないって言ってんだろ。」
「でも、あんたの家って、もう長いこと行ってないし・・。」
「丁度荷物纏めてて良かったな。だいたい、どこ行くつもりだったんだか。」

道明寺は私の言葉なんて全く聞いてくれなくて、むしろ呆れ顔で私を見てる。
その瞳は少し寂しそう。
それは私のせいだ。
私がいつまでもグズグズしてるから。

このままじゃ、5年前と本当に何も変わらない。
いい加減に、私も前に進まなきゃ。
道明寺と一緒なら、絶対に幸せになれるんだから。
これは、夢じゃないんだから。


すーっと息を吸い込む。

「道明寺・・大好きっ!」

自分から、道明寺の胸の中に飛び込んだ。
道明寺に抱きしめられて、彼の胸に左耳を寄せた。
左耳は聞こえ難いけど、彼が呼吸する度に振動を感じる。
彼の傍にいれば、彼の温もりを感じることができる。
それ以外には何もいらない・・。

自然と涙が溢れ出した。
一人で育てていこうと決心した時の涙じゃ無い。
二人で親になれる。
その幸せの涙。


安心したら、自然に頬が緩んだ。
見上げれば、道明寺も笑ってる。
寂しそうな表情は消えていて、私を優しく見つめてる。
あぁ、良かった。
一緒にいると決めたんだから、これからはずっと道明寺を笑顔にしてあげたい。

私の唇に道明寺の唇が合わさった。
何て優しいキス。
触れるだけのキス。
それがこれほどまでに胸を震わせる。
激しく抱き合うだけが全てじゃない。
こうして二人で寄り添うだけでも幸せになれる。


道明寺が私の左手をとった。
彼の反対の手の平には、あのダイヤの指輪が乗っていた。
もしかして、拾って来てくれたの?

「これは、やっぱりお前に持っていて欲しい。」

そう言って、私の左手の薬指に指輪を落とし込んだ。
私の指に戻ってきたその指輪。
引き抜かれた時には、軽くなってしまった自分の指を寂しく思った。
だけど、また戻された。
当たり前だけど、しっくりと馴染んでいる。
一年前から今日まで、一日も外したことはなかった私の宝物。

「ありがとう。」

両手は道明寺に握られている。
私はそのまま少し伸びあがって、道明寺にキスをした。

私を忘れないでくれてありがとう。
私を追いかけてくれてありがとう。
ずっと好きでいてくれてありがとう。


「牧野、愛してる。」

道明寺から、キスが返ってくる。
長い口づけの後に、
チュッ、チュッ、チュッと、顔中にキスが落とされた。
啄むだけの優しいキス。
それは私を許してくれる、幸せなキス。



その優しい唇が離れて行くと、道明寺がちょっと笑った。

「言っとくけど、マリッジは揃いのモノを俺が作るから。これはそれまでしておけよ。」
「え?あんたも指輪するの?」
「しちゃわりぃのかよ。」
「いや、何と無く、意外で・・。」
「お前は俺のモノ、俺はお前のモノっていう印だろ?」
「違うよ、マリッジリングは愛の証。」
「尚更、必要だろうがよ。」
「・・そうだね。」

こいつは案外ロマンチックな男だってことを忘れてた。
ふふっと笑っちゃう。

ありがとう。
過去にもらったこのダイヤも、これから貰うことになるマリッジリングも、その両方をずっと大切にしたい。


「忙しくなるな。早く婚姻届出さねぇと。お前の両親に挨拶に行かなきゃ始まんねぇな。」
「あっ、あんたの両親にもお会いしなきゃ。」
「それはいいだろ?今、お前を飛行機に乗せる訳にもいかねぇし。」
「嫌だよ、そういうのはきちんとしたい。」

「じゃあ、電話すっか、ババァに。」
「・・・そっちの方が怖い。」
「だよな・・。」

しーん。

ぷっ。ぷぷっ。
真剣に話しをしていたのに、急に可笑しくなった。
お互いに顔を見合わせて笑い合う。

あー。本当に久しぶり
道明寺と、こうやって笑い合うこと。
これが、最高に幸せ。


そんな幸せに浸っていたら、いつの間にか懐かしい道明寺邸に着いていた。

この日は、明け方まで、たくさん道明寺と話をした。
こんなにゆったりと道明寺と話をしたのは、実は初めてだったかも知れない。
道明寺と離れていた5年間のこと。
そして、彼の5年間の話を聞いた。
話は尽きることはなくて、もっと道明寺の話を聞きたかったのに、私はいつの間にか眠ってしまったみたいだ。


そして、幸せな夜から一夜明けると、
世間はとても騒がしくなっていた。


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「俺は、お前が好きだ。今まで、一度も忘れたことなんてない。」

俺の告白に、牧野は目を大きく見開いた。
その瞳に映っているのは、間違いなく俺だ。
そして、牧野が口を開いた。

「私も、道明寺が好きだよ。ずっと好きだった。ごめんね、あの日、言えなくて。あんたを傷つけてごめん。」

牧野からの告白に胸が踊る。
牧野の瞳に溢れた涙を、俺の親指で拭った。

「そんなことはもういいんだ。俺は、お前と生きていきたくて、お前との未来を掴みたくて、この5年間ずっと努力してきた。だから、お前が俺のもんになってくれねぇと困るんだ。いいだろ?俺のもんになるよな?」

「ちょっと・・待って。そういうことは、じっくり考えないと・・ね?」

この後に及んで、まだグダグダ言っている牧野に腹が立つ。

「じゃあ、お前はなんでこの数か月俺に抱かれてたんだよっ!」
「ぎゃっ、そんなこと大きな声で言わないで。」
「言われたくなきゃ、とりあえず、中に入れろ。」
「うわっ。やだっ。」

玄関先で大きな声がを出していた俺たち。
牧野が慌てて俺の腕を引く。
ホントバカな女。
だけど、初めて牧野が俺の手を取ってくれた。
それが強烈に嬉しかった。


あの指輪は、俺が贈った土星のネックレスに事故後残されていたダイヤを移植したものだ。
つまり、こいつは俺と同じように、この5年間ずっと俺のことを想っていたんだ。

だが、牧野の左耳が聞こえなくなったのは俺のせいだ。
俺はどうすればいい?
この償いは、どうすれば出来る?

この答えはただ一つだ。
俺がこいつの面倒を一生みてやる。
俺がずっと側で支えてやる。
嫌だって言われても構わねぇ。
俺はもう、お前から一生離れねぇよ。


狭い廊下を通って、招き入れられたリビングスペース。
高校時代のこいつの部屋も大概狭かったが、ここも大差ねぇな。
風呂が付いてるってぐらいの広さの違いだ。
ワンルームって奴なのか。
目の前にはベッドまである。

「えっと・・何か飲む?」
「要らねぇよ。それよか、話、しようぜ。」
「話?」
「これからのことに決まってんだろっ!」

思わず大きな声が出ちまった。

お前はさっきの話を聞いてたのか?
俺はお前が好きだ。
お前も俺が好き。
つまりその先にあるのは、結婚とかそう言うことだろ?
一体何の問題があるってんだ。
じっくり考えることなんて何もねぇよ。


「とっ、とりあえず、じゃあ、道明寺はここに座って。狭くてごめんね。」

あたふたとしつつも、俺を落ち着かせようとする牧野。
俺は、差し出された座布団に腰を下ろした。
ふっと目をやると、小さなテーブルの上には貯金通帳や印鑑、そしてテーブルの脇には大きめの鞄が置いてある。
俺がじっとそれらを見つめて、何やら考えていると、牧野が「あっ」と小さく叫び、それらを隠そうとした。

しかし、どうやら、俺の嗅覚は完全に戻って来たらしい。
左耳の障害に気付くことができなかった。
指輪の謎も自分では分からなかった。
だが、それは、牧野が他の男のもんになっちまったという不安によるもので、その不安が完全に払拭された今となっては、俺の牧野レーダーは完全復活だ。


「お前・・また、どっか逃げるつもりだろ?」
「・・え?」

とぼけようとしても、目が泳いでるぜ。

「もう、逃さない。地獄の果てまで追いかけるって言っただろ?」
「道明寺・・。」


牧野との未来のために尽くして来た5年。
その間の牧野の生活を知ろうとしなかった。
ただ、こいつを取り戻すことだけで頭がいっぱいで、こいつが過ごして来た5年を無視していた。
その結果が今の俺だ。
取り戻したい。
そして、やり直したい。
一から、全てを。

そのためには、まずはこいつの話をじっくり聞いてやるつもりだ。
だが、結論は決まってる。
お前と結婚する。
道明寺つくしとして、俺の側に置く。


「なぁ、何が不安なんだ?」
「何がって、分かってるでしょ?」
「分かんねぇな。」
「バカッ。」
「はぁ?バカはお前だろ。お前は考えすぎなんだよ。言ってみろよ、何が不安だ?」

牧野の腕のを引き寄せて、俺の前に座らせた。
そしてその小さな体を後ろから抱え込む。
逃しはしない。

牧野がポツポツと話し出した。

「ねぇ、5年前。どうして私たちが別れたか覚えてる?」
「俺はお前に振られたな。あれは正直きつかったな。」
「それ・・さっき謝ったでしょ。」
「じゃあ、問題ねぇだろ。」
「そうじゃなくってっ。」
「ババァのことか?」

ウッと、牧野にが返事に詰まった。
あの当時、ババァが俺たちの付き合いに反対し、牧野の周囲に圧力をかけていた。
こいつは別れを切り出すしかなかったのだと分かっていた。
俺にはどうすることもできなかった。
あの当時の俺には力が無かったから。
結局はババァの力に屈した。

だが・・・

「もう、解決してる。」
「え?」
「1年前にアメリカで半導体メーカーを買収した。その見返りが、お前だ。」
「見返り?」
「あのメーカーの買収に成功すれば、お前を俺の妻として認めると言われてた。」
「つっ・・妻っ!」
「だから、俺らにはもう何の障害もねぇんだよ。」

牧野は唖然として、息が止まってる。
俺がもう一度柔らかく彼女のを抱きしめ直すと、ふぅーっと息を吐き出した。

「何で、言ってくれないのよ・・。」
牧野が下を向いた。

それは俺のセリフだっつーの。

「お前こそ、何で言わなかった?」
「なっ・・何を?」
「まずは・・そうだな。耳の事。」
「・・気づいてたの?」
「いや、秘書に教えられた。」
「そっか。隠してたんだけどな。」
「バカが。俺は、何度もお前を口説いてたのに。聞こえてないなんて・・。ごめんな。ごめん・・牧野・・。」

謝るつもりじゃ無かった。
お前はそんな事を望んでないと思うから。
だけど、結局謝っている。
気づかなくてごめん。
怪我をさせてごめん。
だけど、お前があのネックレスを守ろうとして怪我をしたんだと聞けば、それは俺にとっては途方もなく感動しちまう話でもあった。

「私も、ごめんね。あの土星のネックレス。壊れちゃったの。」
「類たちに、事故の事は聞いた。残ったダイヤをリングにした。そうだろ?」
「うん。」
「何で言わねぇんだよっ。」
「だって・・迷惑かなって思ったんだもん。重い・・でしょ?そういうの。」

あーもうっ。
なんでこいつはこうなんだ。
勝手に何でも悪い方に考えて。
もっと俺を信用してくれよ。
お前の想いに感動することはあっても、重いだなんて思う筈がない。
いつだって、俺の愛の方がでかいんだ。
そりゃ、聞き様によっては不本意な話かも知れねぇけど、俺はお前を愛してる自分が誇らしいから、それでいいんだ。
そんな事も忘れちまったのかよっ。

俺は、心に決めた女じゃなきゃ、抱かねぇよ。
ましてや避妊もしてないんだ。
こいつを俺から逃さないための、最終手段。
俺は、再会してから、俺の全てを牧野の中に注ぎ込んでいる。
もし俺の子供ができたら、嫌でもこいつを妻にするんだと決めていた。
子供ができれば、牧野は俺を選ぶしかなくなるだろう。
他の男のところになんて行かせるもんかと考えていた。
ま、実際、こいつに男はいなかったんだけどな。
それは、こいつも分かっているはずで・・。


・・・
ちょっと待て・・
テーブルの上の貯金通帳。
その脇に置かれたデカイ鞄。

こいつが逃げようとしている理由。


ちょっと待て・・

だが、恐らく間違いねぇ。
今や俺の牧野レーダーは冴えまくってる。
いや、例えレーダーが無くたって、これは分かるだろう。


「お前、妊娠してるだろ?」

牧野の肩がビクッと震えた。


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「お前が欲しい」

道明寺にそう言われて嬉しかった。
道明寺の本心。
過去に縛られている訳じゃない。
かつての復讐じゃない。
今の私が欲しいと言ってくれた。

あの指輪は、まだ誤解してるんだね。
私がずっと大切にしてきた指輪。
それを道明寺が引き抜いた。
この指輪はあんたがくれたんだよって言おうと思った。
そうすれば、誤解は解けるって分かってた。
だけど、言えなかった。
だって、言ってどうなるの?
言えば事故のことを話さなきゃいけなくなる。
そしてまた、優しいあんたを傷つけてしまう。
私たちには将来がない。
それなのに、私のことを負担に思って欲しくなかった。


そして、私はまた、あんたの前から消えなきゃいけなくなった。
また、あんたのお荷物になってしまうから。
あんたが私を欲しいと思ってくれていても、どんなに私があんたを愛していても、私たちはずっと一緒にいることはできない。
それは5年前から変わらない事実。

だから、消えなくちゃ。

私は、指輪の代わりに大切なものを授かった。
だから、その指輪はあんたに返してあげるね。




私は昨日、妊娠検査薬を使った。
先月も、今月も生理が来なかった。
少し前から何となく体がだるかった。
理由は分かり切っていた。
だって、私たちは一度も避妊をしていなかったのだから。

___結果は陽性。

頭の中で、こうなることを十分予想できていた。
道明寺だって分かってたはずだよね。
毎晩のように抱き合っていれば、こうなることが。


道明寺は私が妊娠したらどうするつもりだったんだろう。
本当に愛人として一生側に置くつもりだった?
だけど、そんなこと許されるはずがない。
これから、誰か素敵な女性との結婚するんだよね。
そこに愛があろとなかろうと、道明寺の為になる人と。
その時に、愛人がいるだなんて、ましてや子供がいるだなんて、道明寺の両親に知られたら、どうするの?

こうなることは覚悟していた。
ううん。どこかで望んでた。
そして、こうなったら最後だと思っていた。
だからこそ、昨日まで検査をしていなかった。
私にはまだ、道明寺と離れる覚悟ができていなかったから。

今日もまだ悩んでいた。
どうするべきか、道明寺に相談するべきか。
でも、まずは病院で確かめなければいけないと思っていた。

だけど、道明寺に指輪を抜かれ、軽くなった左手をみて覚悟は決まった。

大切な指輪が無くなっても、私にはもっと大切なものが出来たんだ。
だから、これで道明寺との関係は終わりにしよう。
私は、この子と二人で生きていく。
愛する人の子供を産んで育てる。
こんな幸せなことってない。
悲しくなんてあるはずがない。

そう思うのに、自然と涙が溢れるのはどうしてなんだろう。
この選択が間違っているはずはないのに・・。


しばらくぼーっとしていた時に、携帯のバイブが鳴った。
液晶画面を確認すれば、そこには「道明寺」の文字。
はっとする。

道明寺に気づかれる前に消えなきゃ。
そうしなきゃ、迷惑がかかっちゃう。
道明寺のお荷物になっちゃうよ。

早く、ここを出よう。


私は、準備を始めた。
頭の中で色々と考えを巡らせて行く。
仕事は、辞めるしかない。
とりあえずの生活は、貯金で・・
そう思って、貯金通帳を確認したけれど、まだ社会人一年目で、これから奨学金の返済もあるのに、出産の費用まで工面できそうにない。

あーあぁ。
せっかく大手の広告代理店に就職したのに、結局また、バイト生活に戻っちゃうな。私の人生って、なんだかんだでいつもあいつに振り回されている。だけど、それが嫌じゃないなんて・・

私ってば、どれだけお人好しなの?
違うか・・
どれだけ、道明寺のことが好きなんだろう・・

貯金通帳や印鑑、それからバッグに衣類を詰める。
ひとまずは、どこかへ隠れなきゃ。
出社しなければ、道明寺が探しに来るかも知れない。
それ以前にSPが付いてるんだっけ。
どうしよう・・。

引っ越しは昔からの慣れている。
ただ、どこに引っ越せばいいのかが分からない。
ホント、あいつってややこしい男なんだから!

自分勝手な男なのに、どうしてこんなに好きなんだろう。
私はどうしてあいつじゃなきゃダメなんだろう。

少しだけ自分に呆れつつ、私は部屋を出る準備をしていた。



***



牧野の携帯に連絡を入れるが出ねぇ。
電源は入っているはずなのに応答しねぇ。
あいつにはSPをつけている。
そのSPに連絡をすれば、あいつはマンションにいると言う。

あいつのマンションに行ったことは一度もなかった。
だが、今は、明日まで待ってなんかいられない。
直ぐに牧野に会いたかった。

リムジンでマンション前に到着し、直ぐにドアから飛び出した。
牧野は、この古臭いマンションの5階にいるらしい。
セキュリティーもへったくれもないマンション。
誰でも乗れるエレベーターは8階で止まっていた。
待ってられねぇよっ!
俺は、近くに階段を見つけて、二段飛ばしで駆け上がった。

5階フロアに到着して、少し息を整える。

リムジンの中でも考えていたが、牧野に言うべき言葉はまだ見つからない。
謝りたい訳じゃなかった。
ただ、あいつに会いたくて、抱きしめたくて仕方がない。

ゆっくりと近づいていく、503号室。
一度深く深呼吸をして、そのドアの脇にあった、ブザーを押した。



「はーい。」
と聞こえてきたのは、愛しい女の声。
俺が訪ねて来たとは思ってもないんだろうが、特に警戒はない。
もっと、警戒しろよ。
悪い男だったらどうするんだ。
事故にまであったんだから、もっとセキュリティーを強化しろよ。

本来言うべき言葉が見つからないのに、あいつへの文句ばかりが浮かんでくる。

流石に、いきなりドアは開かない。
「どちら様ですか?」
と問いかけられた。

「俺だ。」
「・・・。」

当然のように返事はない。
今更居留守も使えねぇっつーのに、本当にバカな奴だ。
ここまで来た俺が、無視されたぐらいで帰る訳ねぇだろ。

「牧野・・俺だ。開けろ。」
「何か、急用なの?」

急用かどうかなんて、関係ねぇだろ。
俺が来たんだ。
早く開けろってんだっ。

「牧野、このドア壊すぞ。いいのか?」
「それは困るっ!」

俺はやるったらやる男だ。
それが分かっているであろう牧野が、慌ててガチャガチャと鍵を回す音が聞こえた。
すげぇレトロなドアらしい。

ガチャッと音がして、牧野がそーっと顔を出した瞬間に、俺はドアを引きあけた。
その勢いで、牧野が俺の胸に飛び込んで来る。
俺はしっかりと彼女を受け止めた。

俺の腕の中に牧野がいる。
ほっとして、今までの緊張が少し緩んだ。
だが、今は、和んでる場合じゃねぇ。

やっと真実を掴んだ俺。
こいつが今でも俺のことを愛してると知っている。

俺が、今、こいつに伝えなきゃいけない言葉。
それは、やっぱ、これしかねぇ。


「俺は、お前が好きだ。今まで、一度も忘れたことなんてない。」


俺は牧野の右耳に、
再会したあの夜と同じ告白を囁いた。


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牧野は左耳に障害がある。

牧野がよく触っている左耳。
あれは、聞こえが悪いから?
あいつは左耳が感じやすいと思っていた。
それは、聞こえないから・・だからなのか?

俺は・・何てっ!


思いがけず知ったその事実によろめきそうになるのを必死に耐え、執務室に戻った。
ソファーにドカッと沈み込み、頭を抱える。

再会してから、もう2か月近くになる。
今まで何度も抱き合って、あいつに俺の気持ちを伝えてきたと思っていた。
あの左耳に囁けば、俺の気持ちが伝わると勘違いをして、何度も何度も囁いた。
それが、ほとんど伝わっていなかったということか。
そうなのか?

あいつを快楽に導いているつもりで、そうじゃなかった。
いや、そんなことじゃない。
2か月も一緒にいて、この事実にも気づいてやれなかったなんて・・。
俺は、何て馬鹿なんだ!
畜生っ!!


焦る。
俺は、強烈に焦ってる。
きっと俺が伝えたかったことは半分も伝わっていない。

そうだ、あの指輪。
あれはいったい何なんだ?
それを考えていたはずなのに、牧野に会った瞬間にそんなことはどうでもよくなったんだ。あいつの指から指輪を抜き取って、捨てた。

あの指輪はどこに行った?
俺はすくっと立ち上がり、巨大な窓に走り寄った。
指輪を叩きつけた窓ガラスには、一筋のうっすらとした傷が残っていた。
その傷をたどって視線を下ろしていくと、そこにはあの指輪が落ちていた。

牧野が持ち帰った訳じゃなかった。
なのに、この虚脱感。
あいつは大切にしているものを捨てるような奴じゃないのに。
これを持ち帰らなかったということは、この指輪はもう用無しだということなのか?

それでいいじゃないかと思いながらも、やはりだめだと思い直す。
牧野が大切にしているものだから、俺も大切にしてやりたい。
あいつに男なんていないことは、この2か月で分かっていたんだ。
だから、じっくりあいつの話を聞いてやるべきだったのに。
そうしなかったのは、俺だ。

俺はその指輪を拾い、じっと眺めた。
やはり懐かしい気持ちになるのは何故なんだ。

答えはすぐそこにありそうなのに、辿り着けないもどかしさ。

まずは、あいつの耳だ。
どうして、左耳が聞こえないんだ?
どうしてそれを俺に言わなかった?

俺は指輪をパンツのポケットにしまい、携帯電話を取り出した。

牧野のことを知っているとすれば、こいつしかいない。



***



メープルのラウンジに幼馴染を呼び出した。
類を呼び出したはずが、ほかの二人もついて来た。
どうやら、類が連絡したらしい。

「司、ずいぶん前に帰国してたんだろ?連絡位しろよ。」
「忙しいんだよ、俺は。」

「へぇ・・。毎晩、スイートに出入りしてるらしいじゃん?」
嫌味たっぷりに言うのは、総二郎。

「・・・。」
「結構、話題になってるぜ?知ってんのか?」
少し心配そうなのは、あきら。

道明寺司が毎晩メープルのスイートで女と密会している・・そんな噂が立っていることは知っていた。
だが、俺のプライベートに関してはマスコミに規制をかけているし、牧野のこともSPを使ってカバーしていたつもりだ。
あいつの情報が出ることはないだろう。


「相手・・牧野だよね。」
珍しく、時間に遅れることなく到着した類が、『牧野』という言葉を口にした。

この5年、俺たち4人の中で、『牧野』の言葉を出した奴はいなかったと言うのに。
だが、俺はその問いには答えなかった。
俺の方が聞きたいことが山ほどあるんだ。

「牧野って、今付き合ってる男いるのか?」

そう尋ねた俺に、怪訝そうな表情をする3人。

「牧野の男?」
「いねぇだろ、あいつ。」
「いないね。」

俺だってこの2か月で、あいつに男がいるとは思えなくなっていた。
だが、こいつらは、どうしてそう断言できる?

「お前ら、牧野とどれぐらい会ってんだよ。絶対って言えんのか?」
「一番会ってるのは、類だろ?俺は、半年に一度ぐらいだよ。」
「俺も。」

あきらと総二郎は半年に一度ぐらいの付き合いらしい。

「俺は、牧野と連絡は取ってるけど、この3ヶ月は音信不通。でも、それって、司が絡んでたんじゃなかったの?まぁ、俺は、牧野が幸せならそれでいいんだけどさ・・。」

こいつらによれば、やはり牧野に男なんていない。
じゃあ、あの指輪は一体・・・
それに、左耳はどうしたんだ?


「なぁ、類・・あいつの左手のリングって・・。」

そう切り出した俺に、類が少しだけ笑って視線を投げてくる。

「なんだ、司。やっぱり、牧野に会ってたんだ。あの指輪。気が付いた?懐かしいでしょ?。」
「懐かしい?」
「あれ?分からなかった?」

面白そうに類が言う。
総二郎とあきらも表情を崩した。

「やっぱ、司は牧野かよ。5年もたってんだ。他に女なんてたくさんいるだろうが。」
「俺も、今更、司が牧野に会ってるだなんて、俄かには信じられないな・・」


「「でもよ、愛だよなー。愛!!」」

「牧野の愛が報われたかと思うと、なんか感慨深いよな。」
「あの事故の時は、マジびびったから。」

総二郎とあきらが二人揃って騒ぎだす。
だが俺は、奴らの言葉に、心臓が止まるかと思うほどの衝撃を受けていた。


牧野の・・愛?
事・・故?


ガシャッ!!
思わず、スコッチが入ったグラスをテーブルに落とした。
低い位置だったから溢れはしなかったが、その音でその場が静まり返る。


牧野が事故にあった?
何だそれは?
いつ?
聞いてねぇ・・何も聞いてねぇぞ!

自分の手が、僅かに震えている。


「おい、司、お前、もしかして本当に知らないのか?」
「知ら・・ねぇ。」
「何だよ、俺らはてっきり・・」
「お前なら、牧野のこと、とっくに調べてると思ってた。」

調べたさ。
牧野の現状を。
広告代理店に就職し、男関係は特に見当たらないってことぐらいは。

他に、一体何が?
俺は・・何を見落としてるんだ?



類がふぅーっと息を吐いてから話し出した。

「牧野はさ。高校の時から、ずっと司のことが好きだったんだよね。司んちのおばさんに圧力かけられて別れたけど、忘れられなかったみたい。」

俺はじっとその話に耳を傾けていた。

「大学生になって東京に戻って来たんだ、牧野。俺は、時々会ってた。何度か、告白もしたけどさ、やっぱ司じゃなきゃダメみたいでさ。」

俺は類をギロリと睨んだ。
そんな俺を軽く笑って、類が話し続ける。

「あの土星のネックレス、覚えてる?」
「忘れる訳ねぇだろ。」
「あれ、牧野の宝物。」
「今は、もう持ってねぇよ。」

怖くて聞けなかったネックレスの行方。
俺は帰国後、一度もあのネックレスを見たことがなかった。

「牧野、一年前に事故にあったんだよ。」
「どういうことだ?」
「あいつ、いつもバイトを夜遅くまでしててさ。その帰りに男に襲われた。」
「っ!」
「レイプ目的じゃなかった。物盗りだった。牧野がいつも身に着けてた、あのネックレス狙いだったんだ。あいつ、司と別れてからもずっとあれしてたし、冬は洋服で隠れてたけど、夏は隠せてなかったから。本人も隠そうとしてなかったと思うけど。あれ、司が選んだダイヤとルビーでしょ?誰が見ても高級品だよね。あの土星の形は珍しいけどさ、あれだけふんだんに石を埋め込んでたら、売りさばこうって奴らに狙われても仕方がなかった。」

ガンッ!
俺はテーブルを殴りつけた。
俺が牧野に渡したプレゼントのせいで牧野が襲われた。
その事実にやり場のない怒りが沸騰する。
犯人を絶対に許すことはできない。

「もみ合った挙句に、チェーンが切れて、その男にネックレスを奪われた。相手がナイフとか凶器を持ってなくて良かったんだ。それなのに、牧野は犯人を追いかけて。あいつ、足が速いんだよね。犯人に追いついて、また取っ組み合い。そのまま、大通りに飛び出して、車に引かれた。」

「フロントガラスに全身強打して、意識不明だったんだぜ。」
「でも、手にはしっかりネックレスのチェーンを握ってた。」
「実際には、トップの土星も事故の衝撃で壊れてたけどね。残ったのは、はめ込まれたダイヤが7つ。これ、意味分かる?司。」


聞いてねぇ。
いや、あいつがそんなことは言う訳がねぇのに。
俺が贈ったネックレスのせいで襲われた何て言える筈がない。
俺は一体何を調べてたんだ。
あいつの現在ばかりを知りたがり、俺と離れていた5年間を知ろうとしなかった。
だから、この事故が報告されなかったんだ。

両手の震えを止められない。


「あいつの・・耳・・。」
「あ、それは気づいたんだ。あいつ、結構隠してるみたいだけど、仕事では迷惑かかるからって職場には報告してるらしいね。」

いや、俺は、気づいてなんかいなかった。
あいつの指輪に気を取られて。
あいつの5年間を振り返ってやることもしないで。
過去よりもあいつとの未来を掴もうと必死になっていた。
俺の知らないあいつの5年を知りたくないと切り捨てたから・・だから、俺は気づけなかったんだ。

「事故で左側の耳小骨を損傷した。全く聞こえない訳じゃないけど、かなり聞こえにくいらしい。」


「ねぇ司、牧野のリングだけど・・」
「類・・もう分かった。」

俺は、立ち上がった。

「「「司・・」」」

3人が俺に話しかけようとしたが、それを制して店を飛び出す。


今すぐに会わなきゃならないんだ。
俺は・・・牧野つくしに。


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