花より男子の二次小説。CPはつかつくonlyです。

With a Happy Ending

専務が立ちあがった反動で、私が座っていた座面がボワンッと跳ねた。
それで、コーヒーを取ろうとした私が前につんのめりそうになったのを専務が片手でキャッチしてくれたんだ。
びっくりして、ぱっと専務を見たら、もう目の前に専務の顔があった。

驚くのも当然でしょう?
片手で抱きとめられた姿勢だったし。
その相手は専務だし。

だから、思わず突き飛ばしちゃった。
本当にビックリして、反射的な行動だった。
そうしたら、専務が床に尻もちをついた瞬間に、専務の手がコーヒーカップに当たって倒れちゃって、

「あちっ!」
「ごっ・・ごめんなさいっ!!」

専務の左腕にコーヒーがかかった。
グレーのスーツがコーヒーで染まっていく。
慌てて立ち上がり、タオルを絞って、コーヒーがかかった専務の手に当てた。
それからスーツも軽く拭いてみたけど、シミが取れる筈もない。
それに、専務の手はちょっと赤くなっていて。

「どっ・・どうしよう。火傷かな?痛い?」

おろおろと専務の顔を覗き込むと、
私の左肩を、専務が掴んだ。

「大丈夫だから落ち着け。」
「だめっ。こっちに来て。水で冷やさなきゃ!」

専務は汚れた左腕を上げて、右手を床についていたんだけど、私はこともあろうか、専務が体を支えていた右腕を引っ張り上げようとしたものだから、

「うおっ!」

突然支えを奪われた専務は後ろにひっくり返ってしまって、
同時に立ち上がろうとしていた私も引っ張られるように専務の上に倒れ込んでしまった。


ドスンッ。
____ガチッ。


・・・・え・・?
なに・・・?


目の前にはさっきよりももっと近い専務の顔。
私は専務の上に乗り上げてるし。
それで、ガチッって・・・

ガチッ・・・?


専務は、半ば放心状態の私を抱えて起き上がった。

それから、私の唇に手を触れて、
「ちょっと切れてるな。」
と言う。

ビックリして専務の唇を見ると、下唇が腫れていて・・。
そのまま目元まで視線を上げると、専務は赤くなって不自然に視線を泳がせている。

「やっ!」
ぱっと、専務から飛びのいた。
両手で口を押えて黙り込む。

どうしよう!
どうしよう!
私っ・・専務と・・・・!!?

目の前の専務はますます真っ赤になって、何も言わないし。
凄く不自然。
たぶん、間違ってなんかない。
やっぱり・・・しちゃったんだっ。


「すみません・・・。」
やっとのことで、それだけ言うのが精一杯。

お願い、何か言って!
軽く流して!

心臓が痛くて死んじゃうかと思った時に、専務が私の頭をポンと叩いた。


「まぁ、俺の唇奪ったんだから、責任とって、プレゼントは全部受け取っとけ。」


・・・えっ、責任?
その言葉に冷静さを取り戻した。

「責任って・・今のは・・事故でしょ?」
「あ?」
「だから、それとこれとは別問題で。」
「お前、俺とキスしといて、スルーしようってのか?」
「きっ・・キス!」

キスだなんて! 
大きな声で言わないでよ。

「とにかく、俺は返品なんか受け付けねぇ。このキスの責任は取ってもらう。じゃあ、俺は戻るわ。お前も、メイド呼ぶから、ここ片付けてもらえ。」


そう言って、何事も無かったように去っていく専務を見送った。




ニューヨークに来て、こんなに眠れなかった夜なんて一度もなかった。

初めて男の人を部屋に入れたこと。
自分の部屋で、一緒にコーヒーを飲んだこと。
その人のスーツをコーヒーで汚しちゃって、
しかも軽い火傷になってて、
その人が、会社の専務で・・・

それから、その人と初めてキスしちゃったこと。

そんなことがグルグル頭を巡って・・


24にもなってキスもまだだなんて、みんな驚くだろうけど、
大事にしてたって訳じゃないんだけど、
それに、こんなのキスじゃないって分かってるんだけど、

それでも、ドキドキして眠れなかった。




***



俺は今日は一日中、会社で仕事が詰まっている。
次々と湧いて出てくる書類全てに目を通し、納得いかない部分については差し戻す。
そうこうしているうちに、昼時になった。
俺は普段、昼飯は食わねぇ。
会食があれば別だが、特に食いたいとも思わねぇから、いつもコーヒーオンリーだ。


____あいつは、メシ食ったのか?

このところ、ふとした時に思い出すのはあいつ、牧野のことばかりだ。
女の部屋に入り、コーヒーまみれになったのに怒る気にもならず、その後はアクシデントでキスをした。
あんなのキスのうちには入らねぇけど、

・・・正直、ヤバかった。

ガチッと歯が当たる感触があって、それと同時にふっくらとした柔らかいものが当たった。
さすがの俺もびっくりして目を見開くと、もう牧野の顔が目の前数センチのところにある。
明らかに放心状態で動こうとしない牧野を支えて、抱え起こした。

その後、事態をのみ込んだのか、茹蛸のように真っ赤になって口を両手で塞いだ牧野。
すみませんと言って俯いた、その姿が可愛すぎた。

ドクンッ。
って、脈を打ったのは俺の心臓だけじゃなくて、下半身も。

うっ・・ヤバイ・・・。
まさか、こんな状況で、ナニだろ?

「まぁ、俺の唇奪ったんだから、責任とって、プレゼントは全部受け取っとけ。」

そういうことで、何とかプレゼントを受け取らせて、
俺の異変を悟られないように、冷静を装って部屋を出た。

はぁ・・あれは、マジ焦った・・・。

あれから2日。
あいつから連絡もねぇし、俺たちは顔を合わせていない。





「専務、お時間があるようでしたら、お食事をお持ちしますが。」
という西田の声で我に返った。

「要らねえけど。なぁ、秘書って、昼飯どこで食ってんだ?」
「各自それぞれでしょう。」
「それぞれ・・。」

西田が怪訝そうにしているのなんて気にしてらんねぇ。
だが、牧野がどこでメシ食ってんのか気になるなんて、俺も終わってる。
俺がこれだけ気にしてんだから、あいつも連絡ぐらい入れればいいのに、メールなんてくる気配もない。


「で、何だよ、西田。話あるのか?」
「はい。再来週のワインパーティの件です。メープルの担当がすでに出席予定ですが、実は、その場にアスハル氏のご長男様が出席されるとのことです。」

アスハルってのは、中東の利権に強いパイプを持っている一族だ。
今は本拠地をイギリスに構えていたはず。
その長男には一度だけドイツで会ったことがあるが、確か同年代だった。
今すぐに協力を依頼できるとは思わねぇが、少しでも顔つなぎをしておきたい人物だ。

「仕方ねぇ。参加するか。」
「はい。では、パートナーはどう致しましょうか?」
「パートナーは要らない。前からそう言ってるだろ。」
「ですが、今回は、パートナー同伴が必須です。」

ヨーロッパ程ではないが、アメリカでもパートナー同伴のパーティーはそれなりにあるが、
俺は基本的に西田を連れて行くし、その方が話もまとまりやすい。
パーティーとはいえ、俺にとっては完璧にビジネスの場だ。

「女は要らない。お前が付いて来いよ。俺、少し休憩してくるわ。」

そう言って、西田を残して執務室を後にした。


俺の執務室は50階にある。
秘書室は確か、ひとつ下だ。
あいつ、この下にいるのか・・と考えていると、偶然にも、目の前のエレベーターホールに牧野つくしの姿が見えた。

ここは役員フロアだ。何してんだ?

そーっと近づいてみると、男の声が聞こえる。

「牧野さん、パーティーは初めて?」
「はい。もう、右も左も分かりません。」
「今回は、ワインパーティーだから、心配しなくても堅苦しくはないと思うよ。」
「そうでしょうか。」
「僕はワイン詳しいし、フォローするから。」
「はい。よろしくお願いします。」
「堅くなるなって!」

牧野の隣の男が、牧野の肩をパンと叩いた。

その瞬間を目の当たりにして、
俺の中に沸き上がったこの感情。


____俺の女に、手ぇ出してんじゃねーよ!!


俺はつかつかと二人に歩み寄り、
牧野の肩を抱き寄せた。


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  1. 恋のスパイス
  2. / comment:3
  3. [ edit ]

専務にメールを入れて、その返事を待ちながら、来週のA社との会合の資料を確認していた。
私にとっては今までで一番大きな商談になる。
楓社長には絶対に迷惑をかけたくないから、準備に手落ちは許されない。

でも、笹山部長が言うように、身なりも大切だって事が、今日よく分かった気がする。
グループの社長である道明寺楓の秘書としての自覚の問題。
以前は内勤だったから無頓着すぎたのかも知れないけど、この会社の社長秘書として、それなりの恰好をすべきなんだ。
高級であればいいって訳じゃないけれど、仕事の知識同様に、自分の身なりについても意識を高めていく必要がある。
今日選んでもらったスーツに袖を通した時、背筋がピンと伸びる感じがした。
そのスーツに見合う女性でありたいと思った。
スーツひとつ変わるだけで、意識も変わった。
そう言う気持ちになれたということが、今日一番の収穫。
社長秘書に見合うように、見た目も業務も、頑張らなきゃ。


でもなぁ・・・頂いたものが多すぎるのよねぇ。
いきなり新しいスーツばかりを着ていたら、強盗でもしてきたんじゃないかと勘繰られそうだ。
それに、値段は外されていたけど、きっと私の1か月のお給料でも買えそうにない服ばかりだもん。

そう考えながら、もう一度携帯を確認したけど、まだ返事はなかった。


コーヒーでも淹れようかな、と思い立ち、ミニキッチンにあるコーヒーメーカーをセットした。

そこへ、

____コンコンコン。


部屋に響くノック音。
私の部屋にノックなんて、極稀に、仲の良いメイドさんが差し入れしてくれたり、クリーニングの受け取りをするぐらい。
もう、21時を回ってるよ? 誰?


そーっとドアに近づいた。
マンションじゃないから、覗き穴なんて無い。

「はい。どなたですか?」

「俺だ。」

オレ・・・?
男の人。日本人だ。

「・・・・・。」
「おい、開けろ。」
「ですから、どちら様ですか?」
「俺だっつってんだろ!」

ひえっ!怒ってる。
でも、待って?この言い方・・・?
この俺様口調・・・・・

私はあわてて、ドアのロックを外した。
ガチャッとドアを開けると、
そこには、

「専務っ!」
「おせぇーんだよっ!早く開けろよっ。」

ちょっと怒っている専務が、勝手に私の部屋に入ってくる。

「ちょっ・・ちょっと待って下さい。」
「あっ?」
「かっ・・勝手に入らないでっ!」
「あぁっ!?」

部屋に入ろうとする専務の胸を両手で押してブロックすると、専務が怪訝そうな顔をしている。
でも、そんなこと気にしてられないしっ。

「だいたい、どうしたんですか?いきなり来るなんて。驚くじゃないですか。」
「てめぇ。俺はトモダチだろ。なんだ、その畏まったしゃべり方は!」

だから、どうして来たのって言ってるのよ!
この人、ちょっと変だよ!

「じゃあ、どうしたの?」
「どうしたのじゃねーよ。」
「分からないから聞いてるの。」
「何だよ、あのメール。」

声のトーンが落ちて、ちょっと拗ねたような専務の表情。
突然の専務の訪問に、あまりに驚いて一瞬忘れてしまっていたけれど、そうだ、私がメールをしたんだ。

「あっ。あのね。あのスーツとかいろいろね。本当に嬉しいんだけど、多すぎるし。あんなにたくさんもらえないよ。だから・・・。」
「返品ってなんだ?」
「え?返品は、品物を返すことでしょ?」
「気に入って買ったものを、どうして返せる?」
「だって、多すぎるから・・こんなにたくさん貰えないし、必要ないし。」
「多い分にはいいだろ。それに俺がいいっつってんだから、何の問題がある?」
「良くないよ。どこの世界に、友達にこんなにいっぱいプレゼントしてくれる人がいるのよ。」
「ここにいるだろーが。」
「それって普通じゃないよ?」
「じゃあ何か?友達じゃなければいいのか?」
「もうっ!そういうことじゃないでしょ!」

気が付けば、結構大きな声で言い合っている私達。
そこへ、見覚えのあるメイドさんが通りかかり、目を丸くして、コソコソっと専務の後ろを通り過ぎた。

ぎゃっ。
こんなところで、専務と言い合いなんて!

「ちょっと・・ここはなんだから・・こっちに入って。早くっ!」

専務の腕をグイッと引いて部屋の中に引き込み、ドアを閉めた。
ふぅ・・。

「何だよ。さっきは入るなとか言ってたくせに。」

へ?

「お前、風呂上りなの?髪、濡れてるじゃん。」

ほぇ?

そう言われて、自分の姿を確認する。
私の今の恰好。
ピンクのパジャマにカーディガン。
濡れた髪はまだ乾かしてなくて、アップにまとめてる。


がーんっ!!
なっ・・・なんでーっ!!
なんで、こんな格好で・・・しかも、専務を部屋に入てんのよ!


「コーヒー淹れてんの?俺にも淹れろよ。」

アワアワしている私をそっちのけで、コーヒーの匂いにつられる様に専務が私の部屋に入って行った。



***



「だからね。こんなに頂く訳にはいかないの。さっきから言ってるでしょう?」
「さっきから同じことを言わせんな。もらっとけ。」

牧野が淹れたコーヒーに口を付けた。
なんか、微妙な味だ。

そしてこの状況。
牧野の部屋は、客が来ることは予想されていないのか、ソファーが一台しかない。
その二人掛けソファーに並んで座る、俺と牧野。

よく見れば牧野はパジャマ姿だし、裸足にスリッパだし、項全開だし・・・
なんつーか、普段とイメージが違う。
完全にスッピンなんだろうが、いつもと変わり映えがしねぇのはまんまなんだが、なんというか、いつもよりかなり幼く見える。
普段は、秘書という職業柄、しっかりしているように見えるが、パジャマ姿になるとまるでガキ。


「もうね、クローゼットもパンパンなの。だから、引き取って。」

牧野はなんだか顔を赤くしながら俺に訴えてくる。
俺は、そんな牧野に釘付けで、こいつが何をそんなにギャーギャー言ってんのかよく分かんねぇ。

あ?クローゼット?

「クローゼットってどこだよ。」
「あっちの部屋にあるの。もう一杯だし、あんなにいらないのっ!」

「へぇ。」

あっちの部屋にあるというクローゼットを覗きに行こうと、立ち上がった俺。
腰を浮かした瞬間にソファの均衡が崩れた。

「きゃっ。」
という牧野の小さな叫び声で、振り返る。

コーヒーに手を伸ばした牧野が、そのまま浮き上がった反動で、前のめりでコーヒーに突っ込みそうだった。

あぶねっ!

俺は体をひねって、牧野を寸前でキャッチ。
だから、俺は牧野を左腕で抱え込むような体勢になって、
牧野の顔が超至近距離。

ぱっと顔を上げた牧野の瞳は、俺の眼前20cm。



「ぎゃーっ!!!」


次の瞬間には、両手で牧野に突き飛ばされた俺。
その勢いで自分のコーヒーカップをぶちまけた。


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  1. 恋のスパイス
  2. / comment:5
  3. [ edit ]

私のクローゼットの中いっぱいに収まった洋服たち。
スーツが10着もある・・。
インナーは色違いも含めて20着。
靴が3足と鞄が3つ。
アクセサリーが・・・やだ、これダイヤだよ。
それに、ドレスやワンピースは必要ないよね?

多すぎるよ・・・多すぎる。
友達だからなんて言うけど、そのレベルは遥かに超えてるし、例え恋人だったとしてもこんなプレゼントはないでしょ?

どうしよう・・・。

今日袖を通してしまったドレスはこのまま頂く約束をしちゃったけど、まだ袖を通していない服はやっぱり返した方がいいよね?
靴やバッグ、そうそうジュエリーなんてもらえる訳ないし。

はぁ。
ホント、常識はずれ・・・。
買っている時に釘をさすべきだったんだ。

うーん。どうしよう。
今って、専務は仕事中だよね。


散々悩んだ私は、その夜、勇気を出してメールをすることにした。
仕事中だったら迷惑だけど、メールなら。

折角買っていただいたけど、全部は頂けない。
でも、何て書いたらいいの?


結局・・・

『道明寺専務へ
今日は本当にありがとうございました。
夕方に受け取りましたが、予想以上に多くの品物で、
全てを頂くわけには参りません。
今なら返品可能だと思いますので、そうさせて頂けませんか?
              牧野つくし  』


ポチッ。

ふぅ・・送信しちゃったよ。

返品するのに、伝票とかいると思うんだよね。
そういうの、ちゃんととってあるのかなぁ?





***



すっげぇ楽しかった。

何がって・・牧野とのデートのことだ。
いや、あれはデートじゃねぇけど。
ビジネス以外で女をエスコートしたことなんて今まで一度もなかった。
エスコートつっても、女と手なんか繋がねぇし、かろうじて腕を貸すぐらいだ。
けど、あいつの手は抵抗なく掴んでた。
なんか、守ってやりたくなる。
そんな女なんだよな。

あのダセェ格好をどうにかしてやろうと本気で思った。
途中からは、あいつを着飾りたくて仕方なくなって、あれこれ試着させた。
フィッティングルームから出て来る度にワクワクした。
はっきり言って、フルオーダーしたほうが良かったとは思ったが、それは時間がかかるからあいつも困るだろうと思ってやめた。その代わりに細部にわたって注文を付けといた。

この俺様が跪いて、スカートの丈をチェックしたり、靴を履かせたり。
ウエストやら袖丈やらを入念にチェック。
つーか、ウエストなんかすげぇ細くて折れそうだった。
女ってあんなに細いのか?今まで意識したこともなかった。
足首なんて棒切れみたいで、俺の指がぐるりと回っちまう。
女の足を触ったのも初めてで、そんなことをしてる自分にビビった。
「ちょっと・・止めて下さい」とか小さな声で言われても止めらんなかった。
焦ってる牧野が面白いし、あいつに近づきたくて仕方なかった。

そういや、あいつ胸はねぇな。
俺に群がってくる女は胸の谷間を強調している奴らが多い。
見たくもねぇものを見せられてるようで、気分がわりぃんだ。
けど、あいつは・・・
あの服の中を覗いてみたくなるんだよな。
案外牧野ぐらいが丁度いいんじゃねーかと思うが、そう思う俺はどっかおかしいのか?

でもまぁ、今日は全身を採寸はさせといたから、今後はオーダーできる。
あいつに似合いそうなものはだいたい分かったし。
あいつは、俺の友人って立場になったわけだしな。
何でも買ってやれる。
すげぇ楽しみ。


それに、昨日のあいつのドレス姿はかなり良かった。
胸元がV字に開いたカシュクールドレス。
胸が強調され過ぎず、ほっそりとしたライン。
あいつは足の形が良くて、膝下なんてそこらのモデル以上に綺麗だ。
ヒップは上がってるし、それなりの格好をさせればかなり目を引く女になる。
実際デパートから出る俺たちを見て、周りの客は牧野に釘付けだった。
ま、俺が見立てたんだけど・・。

そんな牧野を見て、俺はすげぇ嬉しくなった。
自慢して歩きたいぐらいに。
自分が見立てた服で女が綺麗になるって事が、こんなにいいもんだとは知らなかった。
なのに、邸に帰ろうとかいうバカ女。
折角可愛くしたのに、なんで帰るんだっつーの。

でも・・あいつの良さはそこじゃねーな。
着ている服とかそんなもんじゃなくて、
クルクル変わるあの表情がいいんだよなぁ。

____また会いてぇ・・とか思っちまう。




携帯の画面を操作して、牧野つくしが登録されていることを確認する。
そして、何故かニヤける。
このプライベート携帯は、幼馴染の3人と姉ちゃんぐらいしか登録されていなかったのに、そこにあの牧野つくしを加えた訳。
それは・・やっぱ、あれだ。
結構、気に入ったっつーか。
なんか、助けれやりたくなるっつーか。
そんな理由だ。
あいつからなら、連絡が来てもいいと本能的に思った。
いや、連絡して欲しい。
頼ってもらいてぇ・・。

それに、聡二郎もあきらも牧野と繋がってんのに、俺だけがダチじゃねぇのもおかしいだろ?

ニューヨークの社交界で、どんな令嬢もピンとこなかったのに、あいつには初めから目がいった。
どんなにダセェ格好していても気になった。



そんなことをあれこれと思い出しつつ、
仕事帰り、リムジンの中で携帯を眺めていたところで、

「専務。」

正面から、西田の声が掛かった。
やべっ。相当ニヤけてたかも知れねぇ。
ぐっと表情を引き締めた。

すると、西田から思いもしない言葉が・・・

「どうされましたか?どなたか、意中の女性でもいらっしゃいましたか?」

あぁっ!? 意中の・・・女?

「専務が携帯ばかり御覧になっているのは珍しいですね。どなたかからの連絡をお待ちなのでは?」

はっとする。
そうだ、さっきからずっとこの携帯を見て、あいつから連絡がこないか期待してる。
そして連絡がこないなら、こっちから連絡しようかと考えていた。

「意中ってなんだよ、意中って!」
「・・・好意を寄せている女性と言い換えましょうか。」

・・・・・好意。
マジか・・・。

「もしかして、俺に、好きな女がいるとでも思ってんのか?」
「違いましたか?」

自分で言って、その言葉に驚く。

_____好きな女。


まさか!
俺があいつを?
そんな訳ねぇだろ?
俺は今まで一度だって、女を欲しいと思ったことはねぇんだ。


俺が女を好きになるなんて、あり得ない・・。


だから、
「バーカ。そんなんじゃねぇよ!トモダチだっ。ダチッ。」
なんて答えた。

俺に、女のトモダチなんて今までいたことはない。
それを知っている西田は、

「それは、ようございました。」
「は?何でだよ?」
「そのままの意味でございます。」
「はぁ?」


しばし放心状態のまま、気が付けばリムジンが停車していた。

「明日は、8時にお迎えに上がります。」

と西田が言ったところはニューヨークの道明寺邸前。
マンションではなく、こっちに帰って来るのは予想外だったが、そのままリムジンを下りた。


玄関ロビーで、携帯のバイブ音が鳴る。

プライベート携帯にメールが来ている。
しかも・・・牧野だっ!

さっとスクロールして、

・・・・。
・・・・・・・なんだ?このメールは?


この時の自分の気持ちは今でも良くわからねぇ。
電話をするとか、メールを返すとか、いろんな方法があったと思うが、


「おい、嶋田。牧野つくしの部屋はどこだ?」


俺を出迎えた古参執事の嶋田が目を丸くした。


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  1. 恋のスパイス
  2. / comment:3
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「てめっ。散々買い物に付き合ってやった俺に向かって、何爆笑してんだよっ!!」

「だって・・・ぷっ・・。」

だって、うまこって何よ。
専務、日本語大丈夫なの?
ぷぷぷっ。


笑いが収まらない私に、ちょっとイラっとした専務が、私の手を取って歩き出した。

「行くぞっ。」
「行くぞっ・・て、どこにですか?」
「メシ。」

は?なんで、専務とメシ?

笑いを抑えて、私の手を引く専務を見たら、自然と目が合った。

「ランチ。」
「えっ?いえ、結構です。お邸で食べますから。もう、帰りましょう。」
「お前の買い物に付き合ってやったんだから、俺にも付き合え。」

いや、付き合ってくれって言った訳じゃないし・・とか思うんだけど、多忙な専務の貴重なオフタイムに買い物に連れ出してもらったのは事実。

「だったらお邸で食べましょう。」
わざわざ外食しなくたって、お邸でも十分美味しいものが食べられるでしょ?
だからそう言ったのに、
「バーカ!」
と一蹴されて、そのままリムジンへ引かれて行った。


11時にはデパートが開店していたから、すでに他のフロアにはお客様が入店していて、私達が手を繋いで歩いていくのを振り返りながら見てくる。

めっ・・目立つって!!
あんたはいいでしょうけど、私は恥ずかしいのっ!
なんて、そんな気持ちは、専務には通用しないみたいだ。

楓社長の手腕も強引なところがあるけれど、
息子のこの人はそれ以上かも・・・

だけど、私は自分がグダグダする性格だからか、楓社長や、司専務のような決断力をとても羨ましく思う部分もあったりする。






そんなこんなで、無理やり連れて来られたのは、ニューヨークにある料亭。
ニューヨークには和食の店って結構たくさんあるけれど、本当においしいなっていうところは少ない。
それにかなりお値段がするから、私が食べるのは、ラーメンぐらいなものかも。
回転寿司も高いしね。
あ、本社の社員食堂ではかなりおいしい日本食が食べられるけど。


でも、鹿威しの音が聞こえそうな、こんな風情のあるお部屋で、懐石料理を上司と向かい合って食べるって、日本でだって経験したことがない。
私が逃げ出すと思っているのか、入店する時も専務は私の手を離さなかったから、店員さんはちょっとびっくりしていた。

どうしたらいいのよ・・

「あの、何か飲まれますか?」
「お前は?」
「いえ、私は結構です。」
「だよな。弱いらしいしな。」
「あ、昨日は失礼致しました。今日も時間を作っていただいてありがとうございました。この服は・・どうしたらよろしいですか?仕事用じゃないですし、クリーニングをしてお部屋にお届けしましょうか?それから、スーツは結局どれに決まったんですか?本当に私、払えませんけど・・。申し訳ないですが・・。」
「おまえ、今更なに畏まってんだよ。気持ちわりぃな。それから、服は全部俺からのプレゼントだから気にすんな。」

全部・・・プレゼント・・・。
このワンピースも?
このダイヤのネックレスも?
バッグも靴も?

でも、それって・・おかしいよね?

「あの、スーツは、その経費でということなので、あれですけど・・この服はどうみても仕事用ではないですし・・。いただく訳にはいきません。」
「お前・・・なんか、可愛くないな。」
「可愛い必要があるんですか?」
「女って、普通こういうの喜ぶんじゃねーのか?」

はい?って首をひねりたくなる。
スーツだって、本来は自分で買うべきものだ。
それを専務が買って下さった。
それは、道明寺ホールディングスの秘書として恥ずかしくないようにするためで、決して個人的なものではない。
だから、それ以外は貰う理由がない。
それに、プレゼントを喜ぶって、その前に、何に対するプレゼントなのよ。

普通は喜ぶ・・・かぁ。
専務の周りにいる女性たちは、こういうのが普通なんだ。
ポンって高価なものをプレゼントされて、可愛くお礼を言うんだ。
それが、当たり前・・かぁ。

だけど、私は、やっぱりそう言うのは好きじゃない。


「プレゼントをされる理由がないって言ってるんです。私は専務秘書ではありませんし。スーツ選びに付き合っていただいたのは本当にうれしいですが、ここまで色々として頂く訳には・・」

そう言った私に専務がため息をついた。

「お前さ、総二郎の友達なんだろ?あきらのことも知ってるんだよな?」
「はい。友達・・というか、大学時代にお世話になって、仲良くして頂いたというか・・。」
「俺も、そんな感じだ。」
「はい?」
「会社の秘書課に、ダセェスーツの女がいたから、世話してやろうと思ったってことだ。だからありがたく受け取っとけ。」

はぁ~?
全く意味不明。
全然理由になってないし。
このドレスを頂く理由も、ネックレスを頂く理由も、やっぱりないし。

黙り込んだ私に、また専務が言った。

「まぁ、あれだな。お前はうちの会社の秘書で、俺は専務だ。会社では俺の方が立場は上だな。けど、まぁ、お前は悪い奴じゃなさそうだし、仲良くしてやってもいいかと思ってよ。」

・・・・・え?
???何それ??
仲良くしてやってもいいって?
それがこのプレゼントの理由だっていうの?

何・・・その俺様発言??


なんか、もしかして、私、寂しい女みたいに思われてるのかな?
買い物に一緒に行ってくれる友達もいなくて、センスは悪くて、どうしようもないから面倒見てやろうってこと?
二言目には、ダセェ、ダセェって、私をどんな女だと思ってるのよ。


「それ、どういう意味ですか?なんだか、私が惨めで可哀そうな女みたいに聞こえます。」
「そんなんじゃねーよ。」
「じゃあ、どういう意味です?だいたい専務と仲良くってどうしてそうなるんですか?」
「ま、俺もニューヨークに友達もいねぇし?」
「それで?」
「お前と友達になってやってもいいかと思ってよ。」


とっ・・ともだちっ!??
目の前の専務が、バツが悪そうにしている。
社交界で注目を集める専務が、友達がいないなんて・・意外だけど。
でも、こういう言い方をする専務は、案外可愛い感じがするんだ。
俺様な言い方の裏側には、専務の優しさがあったりする。
きっとスーツのことも、気にするなと言いたいのかも知れない。

確かに、このニューヨークに私はそれほど仲の良い友達はいない。
買い物に付き合ってくれる女友達もいないし、仲良しなのはメイドさんぐらいで・・。
だから、友達になってくれようとしてるのかな?


「専務も友達がいないんですか?」
「まぁな。俺は気に入った奴としか付き合わねぇから。」

それって・・その。
私のことは、気に入ったってこと?
そりゃ、深い意味なんてないだろうけど・・
だけど、ちょっと嬉しい・・かも。


「じゃあ、私と友達になりますか?」

恐る恐る言った私に、専務が嬉しそうに目を細めた。

「おう、まずその敬語やめろ。昨日みたいなしゃべり方の方が、可愛げ気がある。」
「ええー。なーに、それ。専務って、さすが西門さんのお友達!なんか、女慣れした感じです。」
「慣れてねぇよ。」
「嘘ばっかり。」
「慣れてねぇんだって。」
「はいはい。いいです。あ、お料理きたかもっ!ワクワクする~!」


私は専務の友人になったらしい。
西門さんや美作さんと同じように接したらいいって言う、うちの専務。
女慣れしてないとか、嘘っぽいけど、だけどこの人の言うことは信用できると思ってしまう。
私をからかったり、そういうことじゃないんだって、どうしてだか信じられた。

だって、尊敬する楓社長の息子さんだもの。
ちょっと俺様で、傲慢で、自分勝手で、口が悪いけど・・。
でも、実はとっても優しい人。

あぁ、お料理はおいしいし、何だかんだ言って、ニューヨークに友達が出来ちゃった。


「これ、俺のプライベートの番号。何かあったら電話しろよ。」
「何かって?」
「何かって、何かだよ。」
「ぷっ。訳わかんない。」

専務も笑っているから、私も思わずタメ口で笑ってしまう。

「じゃあ、そうだ。これが私の番号です。困ったことがあったら電話してね。これでも大学時代は友達から頼りにされてたのよ。」

私もバッグから名刺を取り出した。
お互いのその名刺には、見慣れた会社のロゴマークが入っていて嬉しくなる。
私も専務と同じように、プライベートの番号を書き込んだ。
仕事でしか名刺交換なんてしないと思っていたのに、こういう使い方もあるのね。


「どっちかっつーと、俺が頼りにされるんじゃねーの?」
「え?私でしょ。専務がお友達になりたいって言ったんだから。」
「ふーん。やっぱお前面白ぇな。」




その後は、結構仲良く食事を楽しんで、午後から仕事だという専務とお邸前で別れた。

「じゃあな。」
「はい、今日はありがとうございました。」
「畏まんなよ。」
「あは。行ってらっしゃい。」


そんな私達を楓社長が見ていたなんて気づかずに、
私は手を振って専務を見送った。


一人で帰れるのに、わざわざ送ってくれたんだ・・。
やっぱり・・・優しいよね。
社交界で騒がれる理由がよくわかる。
カッコイイだけじゃなくて、優しいなんてさ。
反則じゃん。





夕方になって、部屋がノックされた。
ドアを開けると、スーツをはじめ、大量の洋服がハンガーにかけられた状態で運び込まれてきた。

うっそぉ。
これ、試着した服、ほとんど全部じゃないの?

その他の紙袋には、靴やアクセサリーまで入っていて、私の部屋のクローゼットはあっという間にいっぱいになってしまった。


分かってはいたけれど・・・
私が友達になった人は、とんでもない金銭感覚の持ち主みたいだ。


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少しお待ちください~。
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専務に手を引かれて、一つ目に入ったショップはCHA●EL。
そりゃ、当然名前は知っているブランドだけど、入ったことなんてあるわけない。

ずらっと並んだ店員さんの美しいこと・・
それに比べて、ノーブランドの服を着た自分の惨めなことと言ったら・・言葉にならない。

「いらっしゃいませ、お待ちしておりました。」
「こいつに合うスーツをいくつか出してくれ。」
「畏まりました。」

店員さんが、私の頭からつま先までを観察している。
もう、穴があったら入りたいよっ。
無意識だったと思うけど、ぎゅーっと専務の手を握ってた。
そうしたら、

「何緊張してんだよ。」
なんて、専務が軽口を言う。
「だって・・。」
私に似合う服が、ここにあるはずないじゃん。
恥をかかせるなっとか言ってたくせに、絶対恥かかせちゃうからねっ。

でも、専務には私のこんな気持ちなんて分からないんだろうな。
朝から、お店を貸し切りにしちゃうような人だもん。


それから、店員さんがいくつかのスーツを選んで来た。
それらをぱっと一瞥した専務が、
「この色は合わない。こいつは色白だから。」
とか言って、いくつかのスーツを却下。

そして、一着のスーツに目を留めて、
「これ、来てみろよ。」
と言う。

それは、ベージュ系ツイードのセットアップ。
ジャケットとお揃いのワンピースで、女性らしいスタイルだ。
織り糸に派手な色は使われていなくて、シンプルなのに品がある。

専務が私の手を放して、そっと背中を押し、フィッティングルームへ促した。
今更どこに逃げる訳にもいかないけど、恨みがましい視線を投げてしまう。
そんな私を専務はニヤリと笑って、近くのソファに腰掛けた。


着替えを手伝おうとする店員さんをなんとか断って、渋々着替えた。
これっていくら位するんだろ・・と疑問に思って、ジャケットを眺めてみたけれど、タグなんてついてなかった。
そのジャケットに袖を通すと、美しいラインなのに、意外と動きやすい。
見た目は・・まぁあれよ。
服に着られちゃってる感じはあるけど、でも思ったほど悪くない・・かな。

もう、やけくそっ!って感じでフィッテイングを出ると、扉を開けたところに専務が立っていた。
もう、びっくりしすぎて、心臓止まるかと思ったよ。
いるならいるって言いなさいよねっ。

「ぎゃっ!!」
「遅せーんだよっ。」

それから、専務は腕を組みながら私の姿を確認して、勝手にうんうんと頷いている。

「やっぱ、この色が似合うな。」
「ほっ・・本当ですか?」

嬉しいとかいうよりも、かなりほっとする私。
が、次の瞬間には専務が私の足元に跪いて、ワンピースの裾を軽く持った。

うぎゃーっ!何する気っ!
パンツでも覗く気なのっ!??

でも、当然そんな訳はなくて・・・
「裾はあと1cm短くして。」

それから、もう一度立ち上がって、
「ジャケットの袖も1cm短く。」

その次に、
「胸はねぇから、ウエスト絞るか・・。」

もう、目が・・・点。
そんな細かいこと・・・じゃなくて、
そもそも、オーダーじゃないんだよ・・・じゃなくて、

むっ、胸がないって・・・

「ぎゃーっ!!!」

もう、完全パニックで、ずっと抑えてた大声が出ちゃった。
でも、仕方ないでしょ、この場合。

「むっ・・むねって・・・」
思わず、ぎゅっと自分の体を抱きしめる。

「あ?気にすんなよ。デザインでカバーできるだろ。」

ちっ・・・違うからっ。
そうじゃなくて、専務がそーいうとこに目がいってるってことよっ。
プルプル震えている私の頭を、ポンポンと叩いている専務。
周りの店員さんもにこやかで、これ以上どうすることできない。


その後はもう、ただふらふらと専務に連れられていくのみだった。



***



「専務・・・もう、勘弁してください・・。」
「何だよお前、体力ねぇな。」
「本当に、もう・・限界・・・」


って・・・一体何の会話よ・・これ。
体力ねぇって、私は体力自慢の女なのよ?
ってことは、あんたがおかしいのよっ。

目の前の椅子に座り、優雅に足を組んでいる、我が社の道明寺司専務。

一着目ですでに気力を使い果たした私は、その後は、ただただ専務の細かいチェックを受けながら次々とショップを回らされていた。

着せ替え人形のように、次から次へと試着。
私の好みとか聞かれないし。
ま、聞かれても、もうよく分からないし。

でも、一つ言えるのは、専務は奇抜な服は選ぼうとはしなかった。
全てシンプルなもの。
袖を通してみれば、それなりに似合ってる?と勘違いしちゃいそうなものばかり。


でも、だんだんと目的がずれていくような気がするのは気のせい?

「ウエスト細すぎだな、もうワンサイズ下出して。つーか、もうオーダーした方が早ぇな。」
とか、恐ろしいこと言うし。

靴を持ってこさせては、
「足、細せぇな。靴は、俺と同じとこでオーダーするか。」
とか、訳分かんないし。

店員さんが持ってきたアクセサリーを見ては、
「宝石は、邸で選ぶか・・。時間ねぇし。」
とか、全く持って意味不明。

それに、スーツを選びに来たのに、なぜかドレスやワンピースまで試着させたり。
スーツに合わせたインナーも選んでて。
とりあえずの靴やアクセサリーも勝手にセレクトされてるし。
スリーサイズどころか、裄丈や股下、様々な寸法を測定されて、まるで丸裸状態の私。

まさか・・こんなことになるなんて・・・。


専務は椅子に座って、次々と着替る私をちらっと見ては、店員さんに指示を出したり、時々近づいてきては、私の姿をチェックして、その姿は真剣そのもの。

買い物って・・・こんなに細かく、真剣にするものだった?

専務って、妥協は許さないのね。
でも、いいのよ、私に関しては・・って言ってあげたいけど、あまりに真剣に選んでくれている専務をみて、そんなこと言えるはずもない。
それに、これは、専務に買っていただく訳だし・・文句なんて言えない。


___疲れる・・・。


それに・・・まあね。
別に期待してた訳じゃないけどさ・・・。
「似合う」とか、「いいじゃん」とか、そんな言葉は皆無。
いや、かろうじて一着目のベージュのスーツは、「色が似合ってる」って言ってくれたけど、それ以外は淡々と試着を繰り返し、OKが出るのを待った。
まぁ、専務にとってはビジネスみたいなもんなんだろうな。
だから余計に疲れる・・・。

一体今日は何着試着したの?
もうへとへとなんですけど・・。
結局、何着決まったんだろう・・・スーツ・・・。



「専務・・・もうだめです。お腹空いた・・・帰りましょう。」

そんな私に、なんだよっと言いつつも、専務が腕時計を確認すると、もう11時を回っていて、
次の瞬間専務が恐ろしいことを言った。

「この服、着て行くから。」
「ええーっ?」
「髪とメイク、直して。」

その時私が着ていたのは、ハイブランドのシルクのカシュクールドレス。
体のラインに沿っていて、広がるドレスのフレアも絶妙で、どこをどう見ても高級だってわかる。
青い色なんだけど、深い青。
ロイヤルブルーっていうのかな。
自分では選ばない色。
もちろん着たことだってない。
胸元には控えめなダイヤのネックレス。
細いヒールのパンプスはエナメルの黒。
バッグも小さくてかわいいコロンとした黒いバッグをセレクトされた。

周りにいたショップの店員さんに促され、奥のブースで髪とメイクを直される。
髪はハーフアップにされ、頬にはは淡くチークがのせられた。

これで一体どこへ行くというの!?
ここにいるだけで恥ずかしいんだよっ?
人前に連れて行くのは、本当に、勘弁してっ!


ズルズルと専務の前に戻されたけど、
恥ずかしすぎて顔が上げられない。


「いいじゃん。可愛い。」

その言葉にはじかれたように顔を上げたら、
そこには凄く満足気な専務の顔。

わぁ。
こんな顔するんだ。
今日の疲れが、一気に吹っ飛んだ気がする。

専務に一言『可愛い』って言われただけなのに、飛び上がるぐらい嬉しい。
今日、買い物に来て良かったって、心底思えた。
専務もそう思ってくれたのなら、もっと嬉しい。


それから、

「まぁ、あれだ。うまこにも衣装だな。」

と言った専務に、もう、笑いが止まらなくなった。


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