花男の二次小説になります。つかつくonlyです。

With a Happy Ending

____ホテルメープル東京 11時00分。


正面ロビーより反対の北側に広がる日本庭園。
広大な敷地を誇るその庭園には、鯉の泳ぐ池や、この夏のうだる暑さをしのぐ東屋もある。

俺は、普段は絶対に歩くことなどないその庭園を、東屋に向かって歩いていた。

あと30分後に、行きたくもねぇ、見合いの席に着かなきゃならない。
面倒くせぇことこの上ねぇが、俺も会社の副社長という肩書がある以上、両親が持ち込んだその見合いを、会いもせずに断ることはできなかった。

まぁ、ビジネスだ。ビジネス。

相手は、白鳥物産の令嬢のなんとかって女だ。
写真も見てねぇけど、見る価値もないだろう。
俺は、この縁談を受ける気なんてサラサラねぇからな。

東屋に向かって歩きながら、胸ポケットを探る。
タバコを出して火を付けようとして、手を止めた。

東屋に先客がいた。
この東屋は知る人ぞ知る東屋。
手前には大きな木があるため、見つかりにくい。
そこは、高校時代に何度か来たことのある、俺にとっては思い出の場所でもあった。


近づいてみると、女が本を読んでいる。
薄い水色のワンピースを身に着けた、色白の女だ。
黒く長い髪を片方だけ耳にかけた、その横顔が見える。
真剣に本を読んでいる姿に、邪魔しちゃいけねぇなと思えた。

俺はたばこを胸ポケットにしまうと、しばらく女を観察した。
見合いまでの30分の暇つぶしだ。
コの字のベンチがある東屋に入り、俺も女の向かい側に座った。
女が一瞬だけ顔を上げ、俺を確認する。
その一瞬だけ、目が合った。
零れそうな、黒目がちの瞳。
すげぇ美人っつー訳じゃなかったが、その瞳に吸い込まれそうだ。

左腕のロレックスを確認しながら、俺も風景を観察している振りをしていた。
女は真剣に本を読んでいる様子で、それ以降、目が合うことは無かった。


俺は本来一人でいることが好きだ。
女と二人きりとか、絶対にあり得ない。
だが、この女が醸し出す雰囲気が何となく心地よくて、女をどっかに行かそうとか、俺が場所を移そうとか、そういう考えには至らない。

悪くねぇ・・・そう思った。


俺は日本トップの財閥系企業の御曹司って奴だ。
28歳にして、副社長の地位についた。
今後社長の座に就くためには、結婚は必須条件と言われている。

条件の良い女との結婚。
はぁ・・・・溜息が漏れる。
それに、何の意味があるんだ。

激務に加えて、家までが針の筵じゃやってられねぇじゃねーか!

と言う訳で、今のところ、俺は結婚なんてする気はない。
そもそも、俺は、女嫌いだからな。
無理する必要なんてないっつーのが、ここ数年で俺が出した結論だ。

でも、もし・・
もし、俺が家庭を持つのなら、こんな女がいいのかも知れねぇ・・
その場に一緒にいるだけで、満たされるような雰囲気・・
なんて向かいの女を見ながら思うのは、今日が、行きたくもねぇ見合いの日だからなのか。


東屋から少し右手の細い小道に沿って、川の様に作られた池が続いている。
日陰になっているその池から、少しだけ涼しい空気が流れて来た。

10分もした頃だろうか。
4-5歳のガキがこちらへ向かって走ってきた。
目の前の女も気づいたようだ。
どこかに両親もいるのだろうが、見当たらない。
きゃっきゃっとはしゃいで、池の鯉に手を伸ばそうとしている。

目の前の女と目が合った。
何気なく。
何となく。
ドキッとした。

女が本をベンチに置いたとたんに、

ドボンッ!!

ガキが池に落ちた。

とっさに立ち上がり、女が駆け寄っていく。
当然、俺も後を追う。

女は、躊躇せずに、池に入った。
幸い池は浅く、溺れるようなことは無かった。
だが、びっくりしたガキは自分で立ち上がれず、女が腰をかがめて引っ張り上げた。
綺麗な薄い水色のスカートが濡れていく。

「こっちに渡せ。」

全身水浸しのガキは重くなっている。
女が池から出すには、重すぎる。
俺は、手を差し伸べて、女からガキを引き上げた。

自力で池から出ようとする女にも、何故か、自然と手が伸びた。

女の右手を引いた時に、小さな声で「ありがとう」と聞こえた。

ガキの両親が駆け寄って来る
池を出た女はすぐに俺の手を離した。
両親はガキの無事を喜び、それから俺達に頭を下げた。

「ありがとうございました。」
「いえ、無事でよかったです。」
「そのお洋服、クリーニングに出させてください。」
「いえ、それより、息子さんの着替えをしてあげて下さい。」

結局、女はクリーニングを断り、家族はホテルの方向へ戻って行った。
父親に抱かれながら、こちら向きに手を振っているガキに、女も手を振り返していた。


それから、クルリと踵を返した女と再び目が合った。

「お前どうすんだ?それ。」

女のワンピースは膝上まで濡れていて、足にぴったりと張り付いていた。
慌てた女が、スカートの裾を掴んでぎゅーっと絞る。
すげぇ大胆な仕草だ。

「もうっ、だから嫌だって言ったのに。お見合いなんて勧めるからこういうことになるのよっ。全くもうーっ!」

その言葉はどうやら俺に対してではなく、独り言らしい。

そして、この女も見合いでここに来ていたのだと知る。

「時間、大丈夫か?」

もう一度声を掛けると、腕時計を確認した女が、
「やっ!大変っ!」
と言って、東屋に駆け戻っていく。

心配してやった俺のことは無視かよ。

荷物を持って、駆け戻って来て、
「それでは、ありがとうございました。」
と勢いよくお辞儀をして、立ち去ろうとするその腕を、思わず掴んだ。

女が驚いた顔で振り返る。
俺も・・自分の行動信じられない。

「あの・・」
「スカート、透けてんぞ。」
「えっ・・ぎゃっ!!」

小さく叫んだ女に、俺は自分のジャケットを掛けた。
女は目を丸くして俺を見て、それから、真っ赤になって俯いた。

「ありがとう。」

女がジャケットの合わせを握りしめながら言う。
「これ、クリーニングしてお返ししますので・・」

その言葉に被せるように、俺も言った。

「お前、今から見合いなのか?」

「え?」
顔の女が再び俺を見上げた。

「見合いなのかよ。」
「あ・・はい。でも、この恰好なので・・」

その恰好だからどうするんだ?
どっかで、着替えを調達すんのか?

「何時から?」
「11時半。」

「どこ?」
「メープルのプライベートラウンジです。」

「相手、誰?」

そんなこと聞いてどうすんだ・・俺。

「えっ・・えーと・・・」
「相手の名前覚えてねぇのかよ。」
「あ、そうだ・・塚狭(つかさ)さん・・という方です。」

つかさ・・?

俺は、じーっと女を見つめた。

こいつが、白鳥物産の令嬢?
いや‥どう見ても、違うだろう。
身に付けているものも、品物は悪く無さそうではあるが、一流品ではない。
時計も、国内有名ブランドものだ。

だが・・

こいつが、俺の見合い相手だったら?

そんな希望が湧いてきた。
ぜってぇ違うだろうと思うのに、0.01%の希望に懸けたい気持ち。


「そうだ、所長に連絡します。そこから、相手の方に連絡を入れてもらいますから・・」

「いや、その必要はねぇよ。」

「え?」

「お前の見合い相手、たぶん、俺だわ。司・・だろ?」

「へ?」

「メープルのプライベートラウンジ 11時半。」

「はい。」

「間違いない。俺だ。」

目ん玉飛び出んじゃね?ってぐらいのびっくり顔。
止めろっつーの。
その顔も、案外可愛いんだ。

ベンチに座っていた時の「静」の表情と、今、俺の前で見せる「動」の表情のギャップにぐっとくる。

俺は、こいつに興味がある。
どうせ見合いをするんなら、こいつがいい。
こいつを、他の男んとこになんて行かせたくねぇ。

女にこんな感情を持つこと自体が初めてだった。


「行こうぜ。」
「ええっ!でも・・」

俺は、女の肩を抱き、女を守るようにして歩き出した。



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昨日思いついたお話です。
長くはならない予定でいます。
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  1. Switch
  2. / comment:2
  3. [ edit ]

こんばんは。
バタバタしていて、ガチリレーのあとがきが書けずにいました。


さてさて、ガチリレー、いかがでしたか?
他のメンバーさんも呟いていたように、書いている私たちメンバーはとても楽しくやらせていただきました。
特に1周目は本当のガチ。お話はもちろんのこと、順番も。
私は、スターターだったので、スタートする日も私が勝手に決めると言うことに(笑)。
そして、事前告知も、私のサイトだけという、超手抜きコラボでした(笑)。
でも、こういうことって、勢いも大切だし、何より、普段あまり交流のないつ「つかつく」書き手さんと濃厚な2週間を過ごせたことは、とても楽しい思い出となりました。
最後まで付いてきてくださった皆さん、本当にありがとうございました!



さて・・・
ここから回想しつつ、感想を・・。

私がちらりと『ガチリレー』と呟いたことから、速攻で、ガチリレーが決定。
その間わずか1時間もない。
そして、すぐに、アミダくじでスターターと決定。
うひゃーっ!

焦って、約1日でお話を考えました。
この時点で、私的にはですね~。
結構分かりやすいゴール設定を目指したつもりでした(笑)。
ほら、デートして、Hして、ハワイでゴール!みたいな??

ですが、さすがはやこさん!
第二話はどうなるかと思ったら、まさかの連日、ヒリヒリ(笑)。
笑いました。

ローションが出て来たり、途中、「どうやってつくしをイカせるか!」という方向に流れ(笑)。
誰もデートなんて書きゃしない(笑)。
きぃさんが、なんとかおうちデートで、デートをクリア。


そして、後半に入ると、さすがに順番決めよっか・・・とアミダが再登場。

やこさん、Asuさんと続いた濃厚Rの後の自分の順番。
ひぇーっ。どうしようっ。
しかも、契約書って何??
と戸惑いました。

で、自分の第10話を投稿した時点での私の予想は・・・

きっと後半メンバーが、司のカッコいいシーンを演出して、R解禁へ持ち込むに違いない!そうすれば、ハワイで終了!
と目論んでいたのですが・・・

やはり、このメンバー。
一筋縄ではいきません。
次の蘭丸さんは、司のモンモンかよ!っと、笑っちゃいました。


因みに、単純な私の考えたその後とは?(注:完全な私的妄想です。)
① 豪華客船「Be Happy!」で、優雅な時間を過ごす中、超カッコイイ司と一緒にいるだけで、妬みの対象になるつくし。
② そんな中、つくしがわざとプールに落とされる。
③ 慣れないヒールのせいで、足がつってしまうつくし。
④ そこへ、上着を脱いだ司が、上半身裸でカッコよくプールへ飛び込む。(このあたりは、きぃさんと類似。)
⑤ 超絶カッコよく、つくしを救出!そして、脱いだ上着をつくしに掛ける。
⑥ 上半身裸の司に、つくしドキドキ。
⑦ 「道明寺・・ありがとう。」「何度だって助けてやる。俺はお前に、めちゃくちゃ惚れてっから。」
⑧ つくしから誘う濃厚R。
⑨ 契約書は破棄。
⑩ ハワイでお決まり、ウエディング!

と言う感じでしょうか・・・(笑)。
(この場合、司をいかにカッコよく書くかがポイント!)
やっぱり、ワンパターンだな、こりゃ。
副編集長とか、自分一人じゃ、絶対に出てきませんね!
ローションもだけど(笑)。


で、リレーの方は、lemmmonさん、キックバックの蘭丸さん、きぃさんとナイスアシスト!
ラストは、komagic!で素敵な終了となりました。
パチパチ・・・!!



このリレー。
みんなで、何する?と始まって、私は初めは別な企画を提案していたんですね。
私的には、そちらにも乗り気で(笑)。
その途中で、またもや私がポロリと「ガチリレー」と呟いたら、本当にそうなっちゃったんです。
なので、なんとなく、責任を感じてもいた(笑)。
で、無事に終了できて良かった!です。


それから、初めは途中経過を更新していたのに、途中から、アワアワで忘れてしまっていて、終了後に更新しています。ごめんなさい。


また、いつか、『つかつく』の企画ができたらいいなぁと思いながらの終了でした。
楽しいひと時、メンバーのみんな、そして、読者の皆さん、ありがとうございました。


INDEXはこちらへ。
ガチリレー INDEX
  1. つかつく♥コラボ『ガチリレー』
  2. / comment:3
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オープニングセレモニーから続くパーティーは、プールサイドで夜中まで続く。
プールサイドは、まだ今日の招待客で賑わいを見せていた。
つくしは、支配人として、様々なところに目を光らせている。
今晩は寝ずに、このホテルに泊まり込むつもりなんだろう。

開はパーティーの途中、オヤジに抱かれて登場した。
このパーティー自体、VIP会員のみを招待しているが、それはつまり、政財界の重要人物ばかりが集まったということだ。
その中にオヤジとお袋が開を連れてきたということは、開が道明寺家の嫡男として正式に披露されたことになる。
つくしはどう思ったかは分からないが・・。

いつかは、開を公の場に出すことになる。
どの場でお披露目したとしても、それは結局はビジネスの場だ。
今日のPrivate Resortのオープニングさえ、ビジネスの場としての役割を果たしていた。
だが俺は、開を公に出すのなら、このつくしの提案したホテルでと決めていた。
このホテルには、つくしの夢が詰め込まれている。
そして、できる限り、そのつくしの夢を守ってやれるように・・・俺はオヤジの力を借りた。
ビジネスに囚われることなく、このResortが、俺たち家族の原点となりうるように。


開を連れて一通りの挨拶を済ませると、まだ幼い開は、オヤジと先にメープル本館に戻った。
その後、20時を回っても、まだ身動きがとれないつくしに代わり、俺が開を引き取りに本館に向かった。


また寝ちまった開を抱いて、Private Resortに戻ると、西田が待っていた。
「つくし様はプールサイドに。」
「分かった。」
「西田、もしトラブルがあれば、つくしに連絡が入るだろうが、必ず俺にも連絡が来るように徹底してくれ。」

このResortはつくしが支配人として管轄する。
俺がむやみに手を出すつもりはないが、それでも、影から見守っておきたい。

「承知してございます。」
「そうか・・。」
「以前、総帥からも同じことを言われましたので。」

はっとする。
西田はかつてはお袋の右腕だった男だ。
つまり、オヤジが・・・ホテル事業はお袋に丸投げしているように見えたオヤジが、お袋をフォローしてたってことなのか・・。

「意外でございましたか?」
「まぁな。」
「総帥と支社長は、本当によく似てございます。」
「そうかよ。」

なんだか面白くねぇ。
けど、血は争えねぇってことかも知れねぇな。
いずれは、開も・・まぁ、それはずいぶん先の話か・・。

「西田。今、オヤジがThe Classicで臼井と飲んでるぜ。行って来いよ。」

西田が一瞬だけ目を大きくして、それから恭しく頭を下げた。




先ほどよりは少し落ち着いたプールサイドに、つくしが立っていた。

俺たちに気づいたつくしが、驚いた顔をする。
「司さん、どうしたの?今日は、本館に泊まるんでしょ?」

なんでだよ。
何で今日、お前と離れられるんだ。

「ここに泊まるに決まってんだろ。」
「だけど・・部屋・・。」
「リザーブしてるに決まってんだろが。」
「えっ・・?」
「行こうぜ。」

俺は、つくしの肩を抱き寄せて、一緒にPrivate Sweetへ向かった。

「だけど・・まだ・・。」
「何かあれば、連絡が来るだろ。始めからキツキツしてたら、体もたねぇぞ。」

つくしはまだ迷っているようだったが・・

「このResortはお前の希望が詰め込んであるんだろ?それに俺たちは入ってねぇの?」

そう言った俺に向かって、つくしは思いっきり頬を膨らませた。

「そんな訳ないでしょう?」

そんな表情も、すげぇ可愛い。
年齢よりも幼く見える、俺が愛するつくしの顔。

アップにされた髪型で強調された綺麗なうなじ。
体型に沿ったブラックシルクの上品なスーツ。
首元には道明寺家伝統のパールネックレス。
左手には俺が贈った世界に一つだけのマリッジリング。
それらを身に着けて、ここの支配人として、完璧な立ち居振る舞いを見せていたつくし。

だが、俺は、俺にだけ見せる素のこいつが好きだ。

理由なんてないんだ。
どんなに完璧であることよりも、ありのままの、素のつくしが一番好きだ。
妻になっても、母になっても、俺はお前が大好きだ。
世界で一番、愛してる・・・。

つくしが俺に身を預けてきた。
両手に俺の宝物たち。
俺が、どんなことをしてでも守ってやる、俺の全てだ。




つくしが自分の夢と希望を詰め込んだ、Private Resort。
そこに、今夜俺たちが泊まらなくて、いったいどうするつもりだったんだ?
だが、支配人という立場上、自分の都合は後回しにするということはつくしらしい。
反対に、そこを強引に押し通すのは、俺らしいが。

すでに入浴は済ませている開を、ベッドに降ろした。
かなり深い眠りに入った開を、ベッドの端に腰かけて、二人で見つめる。
開け放たれた窓からは、夜になり適度に冷えた風が入って来た。

「ねぇ。開は、きっと司さんの後を追って、道明寺財閥を継ぐと思うな。」
「それはどうかな。」
「絶対そうなる。」
「何でだよ。」

「開は司さんのこと、大好きだもん。」
「だから?」
「だから、大好きな人に認められたいと思うはずだよ。」
「・・・。」
「司さんは、そうじゃなかった?」

俺がニューヨークへ行ったのは、確かに財閥を継ぐためではあったが、そこに、オヤジやお袋に認められたいという思いがあったかどうかはわからねぇ。
つくしに出会えた今だからこそ、この立場を本当の意味で受け入れて、道明寺に生まれたことに感謝する気持ちにもなった。
道明寺を守ることが、こいつらを守ることに繋がるから。

「ふふ・・あたしはねぇ。」
「ん?」
つくしが上目遣いに俺を見た。

「ずっと、司さんに認めてもらいたくて、頑張ってる。」
「はぁ?」

「本当だよ?司さんの傍にいたくて、司さんにふさわしいと思われたくて、そのために頑張ってる。」
「何言ってんだよ、お前。」

つくしが俺の胸にコトンと頭を落とした。
俺はそっと、彼女を抱きしめた。
こんなにも細く、小さなつくし。
だけど、いつもエネルギッシュで、弱音を吐くことは少ない。

「このPrivate Resortだって、そう。あたしは、メープルが好き。だけど、それ以上に司さんが大好きで、あなたにふさわしい女になりたかった。」

初めてかも知れねぇ。
こんな・・・つくしの本音。

「そんなあたしを、軽蔑する?」

つくしが少し潤んだ大きな瞳で、俺を見上げる。
なんで、そんなことを思うんだ。
俺のことが好きで、俺に認めてもらいたくて仕事を頑張ったからって、どうしてそれを軽蔑するんだ。
仕事に私情を挟んだからか?
そんなことなら・・

「言っとくが、今、俺が真面目に仕事をしてんのは、全部お前らのためだ。お前と、開がいるから、だから、道明寺の後継者として頑張ってんだ。そうじゃなきゃ、いつ辞めたって構わねぇと思ってた。お前に出会うまでは。そんな俺を、お前は軽蔑するのか?」

つくしが、首を横に振る。
そんな俺の気持ちは前から伝えているだろう?
何がそんなに不安なんだ。

「あたしが頑張れるのは、いつも司さんがいるから。隣に司さんがいてくれるからなの。だから、どこにも行かないで。お願い。」

彼女が言っているのは、間違いなく本音。
だけど、普段こいつは、こういうことを簡単に口に出す女じゃない。
つくしに俺が必要だってことは、案外周知の事実で、俺はそれを甘んじて受け入れているわけで。
俺なしでは生きられない女であって欲しいのは、ずっと前からの俺の願望。


「どこにも行くわけがないだろ?」

つくしの唇にキスを落とす。
これ以上ないというぐらいに想いを込める。
角度を変えて何度も吸い付いた。

そっと唇を離し、そっと囁く。

「お前がいなきゃ、息もできない。」

互いの鼻が擦れ合う程の至近距離。

「あたしも。」

もう一度唇を合わせ、絡みつくようなキスの連続。
時々離れる唇から、甘い吐息が漏れる。

お前がいるからこそ生きていける。
だから、絶対に離しはしない。

どうすれば、この想いがお前に伝わる?

キスをしながら、互いの服を脱がせ合う。
この唇を離したら、俺らはきっと死んじまう・・それぐらいに求め合う。
裸になった俺たちは、隣のベッドルームへ消えた。



欲しくて、欲しくて、手に入れても、まだ欲しい。
彼女の汗までもが愛おしい。
彼女の腕も、脚も、胸も、背中も、全てが俺のものだというのに、まだ足りない。
彼女の全てを確認しながら、印を残していった。

ベッドの上で縺れ合う俺たちは、ただの男と女。
ふさわしいとか、ふさわしくないとか。
道明寺の名前がどうだとか。
そんなことは、一切関係ない。

深く、深くつながって、生きていることを実感する。
互いを求め、互いを愛する。
それ以上に大切なことは何もない。

揺れて、揺らされて、二人で高みに上っていく。
俺が彼女を揺らすたびに、彼女が俺を締め付けてくる。
彼女しかいらない。
いつか死を迎えるなら、こいつの中で・・
そんなことを思うぐらいに、俺はつくしの虜だ。
例えこの先、何年経ったとしても・・

俺の与える刺激で、感じている彼女の表情。
もっと、もっと与えたくなる。

喘ぐつくしの目が開いた。
恍惚とした表情。
その瞳は、俺だけを捕らえていて・・

ずっと・・このままで・・・

俺だけを見て、
俺だけを感じて、
他の何も映さなくていい。


同時に頂点に上り詰めた。
俺の背中に食い込む爪。
二人、視線を逸らさずに、互いの全てを受け入れた。


つくしの中で繋がったまま、つくしの髪を撫でる。

「あたししか、見ないで。」
「俺以外、見るな。」

同時に出た束縛の言葉に、二人、一緒に笑い出す。

俺たちにとって、当たり前のこと。
当然すぎる事実。

体を重ねることで、確認できる。

俺たちは、互いにとって、唯一無二の存在であること。
他の人間なんて、目に入らないということ。
絶対に、手放すことはできないということ。
共になければ、生きていけないということ。


俺は、この部屋に来るたびに思い出すだろう。
俺たちは、絶対に離れられない運命なんだということを。



***



翌日の朝。
目が覚めると、そこには、司さんと開。
二人がそっくりな顔つきで眠っている。

昨日は急に不安になった。
あたしがこのホテル経営に失敗したら、司さんと一緒にいられなくなるかも知れない・・何故か、そんな思いに駆られた。

だけど、司さんと抱き合うことで、その不安は消し飛んだ。

何を犠牲にしたとしても、大切なものは、ここにある。

どんなに時がたったとしても、
どんなに状況が変わったとしても、
永遠に変わらないもの。

それは、あたしの司さんへの愛。
彼の、あたしへの愛。
あたしたちの、家族への愛だ。


この部屋に来るたびに、あたしは思い出すだろう。
あたしにとって大切なものは、この愛以外にはないのだということを。
その愛がある限り、あたしたちが離れることはないのだということを。


だからきっと・・
あたしたちの未来は、愛に溢れている、
そう確信できる。

Fin.


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長くなった番外編にも、懲りずにお付き合いいただき嬉しかったです。
たくさんの応援、本当にありがとうございました!!
  1. その後の二人のエトセトラ
  2. / comment:16
  3. [ edit ]

The Classic 20時00分。


またしても突然現れた道明寺財閥総帥。
つい30分前に来店が予告され、僕たちはてんやわんやだった。
現れた総帥の腕の中には、小さな子供。
司君とつくしちゃんの長男、開君だ。

「臼井、久しぶり。」
さっとカウンター席に座り、開君を膝にのせる総帥。
周囲にはSP。
開君はどうやら半分夢の中のようだ。

「総帥、今日はまた・・」
「オープニングパーティーに行ってきたんだよ。開とね。」
「そうでしたか・・。」
「司がさ、初めて私に頼み事をするからさ。ははっ。」
「嬉しそうですね。総帥。」
「まぁね。」

「どんな頼み事だったんです?司君から。」
「聞きたい?」
総帥はかなり機嫌がいいのか、茶目っ気たっぷりだ。

「ええ。」
「そのままだよ。オープニングのパーティー来てほしいってね。」
「へぇ・・。」
「どうしてだと思う?」
「さぁ、どうしてでしょう。」
「つくしさんのためだよ。きっとね。」
「・・?」
「つくしさんは、まだ若い。楓というバックがあるからこそ、支配人として一応は認められているけどね。それだけでは、まだ足りないと考えたんだな、司は。」
「なるほど。」
「この道明寺財閥の総帥である私のお墨付きであるということを、スタッフを含め、全員に見せつけたかった訳だよ。」

確かに・・。
若いつくしちゃんがいかにスタッフを纏めていくかが、今後のホテル経営を左右するのは間違いない。そのつくしちゃんのため・・か。
司君らしいと言えばそうだが、今まで、総帥たちを頼ることなく、常に自分自身の努力で這い上がってきた男が、つくしちゃんのためなら、総帥に頭を下げることも厭わないとは、驚きでもあった。

「そうでしたか。大役、お疲れさまでした。」
そう言って、僕は、総帥の前にマッカランを置いた。
司君は知らないだろうが、若かりし頃の総帥のお気に入りもマッカランの30年モノだった。

「懐かしいな。」
「偶にはいいのでは?」
「そうだな。」

カラン・・という氷の音。

「なんだ、年寄扱いか?」
「開君を抱いているのでしょう?酔われては困ります。」
「そうか・・くくっ・・」
突然笑い出した、総帥に僕は驚いた。

「なぁ、覚えてるか?司が生まれた時のこと。」
「ああ!ニューヨークメープルのオープニングの直後でしたね。」
「そう。椿を出産してから、ホテル事業の立ち上げを任されたんだよ、楓は。それで、着工したころに、司の妊娠が分かった。大変だったな。」
「そうでしたね。」
「出産後もすぐに仕事に戻らざるを得なかった。仕方がなかったんだ。当時は。」

それは事実だと思う。
その後、先代がお亡くなりになり、お二人にかかった重圧は計り知れない。

「司はさ。私たちを恨んでいるんだろうね。」
「・・・。」

恨んでいるかどうかは分からないが、司君が以前は愛情に飢えていたことは確かだ。
そして、いつしか愛情を望むことも無くなった。
帰国した司君が、つくしちゃんに再会したことはやはり奇跡だと思う。

かつての司君が、両親に興味もなかったことは否めない。
だけど、今の司君はきっと・・・。

「私はね。つくしさんに感謝しているんだよ。だから、司に頼まれなくたって、このオープニングに出席するつもりだった。道明寺家の一員として応援するつもりだったんだよ。だけど、ま、司に借りを作っておくというのもいいだろう?」

ぷっ。
恐らく、総帥に出席を頼む時点で、司君のわだかまりなんて無くなっていると思う。
司君も親となって、初めて理解できたものもあるのだろう。

「司がさ、開を連れて来いって言ったんだよ。」
「開君を・・。」
「私は、幼いころの椿や司を抱いたことなんて無かった。」

「後悔をされているのですか?」
「いや。」

僕の失礼な質問を、総帥は穏やかな表情で否定した。
そして、健やかに眠る開君を見つめている。

「あの時は、そうするしかなかった。だけど、その結果、私はこうして孫を抱き、息子の嫁を応援できる立場にいる訳だ。後悔なんてあるはずがない。」
「そうですね。」

この男は、後悔なんてする人間じゃない。
だけど、子供のぬくもりを知った司君は、総帥にもその温かさを知って欲しかったのかも知れないな。
何をするにも、遅すぎるということはないのだから。


しばらくまったりとグラスを傾けていたところで、カツカツカツと革靴の音。
はっと入口を見ると、司君が入って来たところだった。
驚いたな。
司君まで現れるなんて。

司君はそのまま無言で、すっと総帥の隣に腰を下ろした。

そして・・

「親父、ありがとう。」

司君から総帥への感謝の言葉。
僕は、一瞬心臓が止まるかと思う程に驚いた。
このThe Classicで、多くの人間を見てきた、この僕が。

その感謝はいったい何に対するものなんだ。
今日、このセレモニーに出席し、つくしちゃんをバックアップしたことか。
それとも、開君を来賓の前で堂々と披露したことか。

それとも・・

「俺、今は、道明寺に生まれたことに感謝してっから。」

ぶっきらぼうなその言い草。
総帥も苦笑いだ。

つくしちゃんを守ってあげることが、司君の生き甲斐なんだろう。
今の司君は、つくしちゃんと開君のために働いているようなものなんだ。
つくしちゃんを守ってあげられるからこそ、道明寺財閥に感謝する気にもなったってことか。
本当に、司君らしいな。

「それは良かった。」

そう答えた総帥から、司君が開君を引き受けた。
そして、愛おしそうに我が子の頭を撫でている。

「開には、開の人生がある。」
「そうだな。」
「けど、俺とつくしの姿を見て育つこいつは、きっと道明寺を選ぶと思う。」

凄い自信だな、司君。
自分たちが、それだけ魅力のある財閥作りを目指すという意思表示だ。
だけど、分かっているのかな。
かつての総帥もまた、同じように考えていたんだ。
自分の背中をみて育つ司くんが、必ず道明寺を選ぶだろう・・とね。

「大きく出たな。まぁ、頑張りなさい。」
「ああ。」

司君が、開君の頭を撫でると、開くんが目を覚ましたようだ。
目を閉じていた開君は、司君そっくりだったが、目を開いた姿は、つくしちゃんを思わせる柔和な印象がある。
まさに、二人の愛の結晶だ。

「ぱぱ・・。」
「起きちまったか。」
「じじ・・。」

僕は今、非常に稀有なものを見ている。
目の前には、道明寺財閥直系が3代にわたって並んでいる。
そのそれぞれが、類まれなるオーラを放っている。
かつて先輩SPが命を賭してまで守ったもの。
それが、ここにあることが嬉しく、微笑ましく思える。

こんな光景を眺められるから・・僕はここを辞められないんだ。


「僕は、まだまだここを辞められそうにありません。」

「「辞めるなよ。」」

総帥と司君が、二人同時にそう口にして、僕を睨んだ。
光栄だ。

それから、司君は、開君を抱いて出て行った。
その後ろ姿には、圧倒的な自信に満ちていた。



「臼井、初めて司に感謝されちゃったよ。」
「驚きました。」
「今日は、飲むかな。」
「お付き合い致します。」

ニヤリと笑った総帥。

カチン・・・
僕は初めて、総帥とグラスを合わせた。


僕のマスター生活は、まだまだ終わりそうにない。
けれど、僕は、それもいいと思っている。



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明日でラストになります。
  1. その後の二人のエトセトラ
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メープル東京 Private Resort オープニングセレモニー当日。
午前中の最終確認を終えたあたしは、短時間のお昼休みに、メープル東京本館のスイートルームに向かった。

この夏で、開は2歳半になった。
ますます司さんそっくりになってきた開は、家族のみんなから愛されている。
2歳過ぎから面白い日本語を話す開を、椿お姉さんはいたく気に入っているし、仕事に開を連れて行くあたしを見て、お義母様も日本へ来る度に開を会食へ同行させようとする。
そして、開はそういった愛情というものを、疑問に思うことなく受け入れて、すくすくと育っているように思う。
来年幼稚園に上がるようになれば、こんな時間も少なくなるのかと思うと、少しでも一緒にいたいという気持ちは私も同じだ。

ピッ。

今頃は御飯中かな?
スイートに入ると、中では、タマさんが開の食事の準備をしてくれていた。

「タマさん!すみません。私がやります。」
「あれまぁ、本当に来たのかい?今日は、忙しくなるんだろう?」
「はい。夜まで開に会えそうにないですから。お昼だけでも。」
「じゃあ、一緒に食事にしたらいいよ。さぁ、開坊ちゃん、食べましょう。」

「はるき!ごはんにしようっ。」

子供用の椅子に座った開は、ご機嫌みたい。
「あーい。ったきましゅっ。」
この子供らしい話し方があたしのツボで、いつ聞いても笑っちゃう。
だって、司さんの子供時代を見ているみたいなんだもん。

幼い開と一緒に通勤しながら、作り上げてきたPrivate Resort。
その支配人になるあたしは、まだまだこれから忙しくなる。
それでも、開との時間はできるだけ多く持ちたい。
そして、家族の時間を大切にしたい。
忙しい生活の中で、開は司さんとあたしの癒しだ。

ありのままの自分で、自分らしい時間を過ごすことのできるリゾート。
時に恋人と、時に家族と。
時には一人で。
今日は、そんな願いも込めたResort空間のオープンでもある。

今日の宿泊客は、VIP会員のうちの、ごく一部のみ。
客室数が限られるこのResortは、予約も半年先まで埋まっている。
あたしも、開を連れて一緒にここでゆっくりしたいと思っているけれど、その願いがかなえられるのは、もう少し先になりそうだ。
まずは、このホテルの経営を軌道に乗せなくては・・。

昼食を食べ終えて、開と歯磨きをして、一緒にベッドに横になる。
背中をトントンと叩きながら、遠い未来に思いを馳せた。
この子は、どんな子に育つだろう。
司さんの後を追って、道明寺財閥の後継者の道をいくのかな?
それとも、まったく違う人生を選択するのかな?

開がどんな人生を歩むとしても、必ず応援してあげられる自分でいたい。
あたしがママで良かったって思ってもらいたい。
仕事を頑張っているママを、誇りに思ってもらえるように、努力したい。

開が寝たのを見届けて、あたしはそっとベッドを降りた。
これから、オープニングセレモニーが始まる。
あたしが、この3年以上をかけて企画してきたホテルが、やっとスタートラインにつく。
プレッシャーもある。
だけど、あたしには、司さんと開が付いてるから・・。
二人があたしのエネルギー源。

「行ってきます。」
あたしは、そっと寝室のドアを閉めて、Private Resortに戻った。



*****



オープニングセレモニーは、世界各国からVIP会員を招待している。
そのうちPrivate Resortに入りきらない客様には、メープル本館を準備していた。
だから、今日のメープルは大忙し。
多くの海外からのお客様で賑わっている。

セレモニーが始まる。
いつも通り、あたしは司さんと腕を組んだ。
パーティーに参加することには、だいぶ慣れた。
だけど、それは、いつも司さんが隣にいてくれるから。
彼が一緒にいてくれなきゃ、絶対にダメだ。

実は、あたしは、一人でパーティーに参加したことがない。
それは、彼も許可しないから、丁度いいんだけどね・・。

思わず、ふっと笑いが漏れる。

その時、チュッとあたしの髪にキスが落ちた。
「頑張れ。」

すっと、あたしの肩の力が抜ける。
このキスを受けると、緊張が解ける。
あたしの、精神安定剤。


オープニングセレモニーに先立って、マスコミ向けのプレゼンテーションがある。
まずは、司さんが、道明寺HDが期待する将来のメープル像を語った。
それを具体化したホテルが、Private Resortだ。
そのホテルの説明は、このホテルの支配人となるあたしの役目。

司さんと目が合った。
大丈夫。

『道明寺HDが満を持して送り出す、このリゾートの支配人、道明寺つくしより、ホテル概要の説明をさせていただきます。』

カメラのフラッシュがたかれる。
だけど、緊張はない。
すぐそばに司さんがいる。
それに、このホテルはあたしが自信をもって世の中に送り出すものだ。
何を聞かれても平気。
大丈夫。

『このプライベートが守られたリゾート空間の中で、お客様にゆったりとくつろいで頂きたいと思います。』

このホテルのサブテーマは『Just be yourself.』
(ただ、あなたらしく、ありのままで)
疲れた体を癒し、心を癒し、ありのままの自分に戻れる時間。
周囲の目を気にせずに、大切な人とくつろぐ空間。
日常の中の、非日常。
それはもしかすると、先へ先へと流されていく自分自身が一瞬だけでも立ち止まり、自分にとって大切な何かを振り返る時間かも知れない。
だって、当たり前で、大切なものって、日常の中では見失ってしまうこともあるから。
それを取り戻す時間も、大切だと思う。



16時からはオープニングセレモニーとそれに引き続くパーティー。
メープルホテルグループの総支配人であるお義母様と一緒に檀上に上がった。
隣には、もちろん司さん。

お義母様の乾杯の発声で、パーティーが始まった。
会場内にあふれる拍手。
今、こうして、Private Resortが正式にオープンした。

フロアでは、たくさんの招待客へ挨拶周り。
ここまでの労いと、これからへの期待。
お客様から、たくさんの声が掛かった。

道明寺司の妻として、道明寺財閥の嫁として、あたしはあたしらしくあるだろうか。
いつか同期に語ったように、あたしらしく頑張れているのかな。
あたしは、彼にふさわしい女性に映っているんだろうか。

26歳という年齢で支配人となることへの不安はある。
けれど、背伸びはしない。
ううん、できない。
道明寺つくしという名前に振り回されずに、あたしはあたしらしくあるしかない。


2時間ほどで、一通りの挨拶周りが終了した。
ほっと息をつくと、司さんが心配そうに覗き込む。
「大丈夫か?」
「うん。ちょっと緊張したから・・」
「be yourself・・なんだろ?」
と司さんが、笑った。

そう言われて、あたしも可笑しくなった。
そうだ、自分らしくあることが、このホテルの目標なんだ。

けれど、あたしがあたしらしくあるということは・・・

司さんが笑いながら、あたしの背中を押した。
振り返った先には・・・

道明寺財閥総帥であるお義父様に抱かれて、
きゃっきゃっと笑いながらこちらに手を振っている開。
その隣には、お義母様も笑いながら歩いている。

お義父様が来るなんて、聞いていなかった。
開がパーティーに来るなんて、知らなかった。

だけど・・
そうだよ。あたしがあたしらしくあるために。
そのためには、あたしの家族が必要なんだ。

いつか一緒に・・じゃなくて、今。

「開にも、お前の姿、見せておいた方がいいだろ?今日は、すげぇ、綺麗だ。」

司さんに耳元でそう囁かれる。
一瞬にして、かぁっと顔が火照った。

多忙を極める道明寺財閥の総帥がここに現れるというハプニングに、あたしたちは注目の的。
しかも、総帥が、孫である開を連れてきた。
開にとっては、正式なお披露目になる。

会場内が見守る中、あたしの前にやってきた開。
あたしに手を伸ばして、あたしの腕の中に入ってきた。

「まま、しゅき。」
あたしの右頬にチュッとキスをくれた。

「なんだよ。俺の方が、愛してんだぞ。」
そう言った司さんを振り仰ぐと、今度は、左頬にキス。

ああ、そうだ。
これが、あたしの幸せ。
ありのままのあたしの幸せだ。
あたし自身が、こんな風に幸せを感じたくて、目指したリゾートなんだ。
だから、何も恥ずかしいことなんてない。

あたしは、司さんに開を預けた。
それからゆっくりと腕を上げて、司の首に回し、背伸びをして、
大好きな司さんの唇にキスをした。


この日は、ホテルのスタートとともに、
あたしの原点を確認した日になった。



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