俺の女 1

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ここはメープル東京36階にある、夜景が自慢のBar。『The Classic』。さすがはメープル。ここは会員制になっていて、誰もが出入りできるところじゃない。財界人、芸能人などの著名人も訪れるBar。一般のお客様には本館2階にナイトバーが設けられていて、そちらも人気が高い。だけど、この「The Classic」は上流階級の人間しか受け入れないという点で、皆の憧れのBarなんだ。セキュリティーも徹底されているし、個室も多く設計されて...

俺の女 2

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「司さん」はいつも金曜日は22時頃に来店する。そして、いつも同じ個室に入って、ウイスキーを飲む。あたしはマスターの指示通りに、ウイスキーボトルとグラスを運んで、彼の前でグラスにウイスキーをダブルで注ぐ。それから、チェイサー(ストレートでウイスキーを飲む時に一緒に出す口直しの水)を用意する。時々、マスターが「持って行って」というチーズやハムなんかを持っていくけれど、司さんが自分で注文することはない。だ...

俺の女 3

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1月31日。今日は火曜日で、仕事は21時に終わった。別に早く終わる必要なんてなかったが、今日は会食も急ぎの決済もなかった。秘書の西田が俺に向かって、「お疲れ様です。今日はゆっくりなさって下さい。」と頭を下げた。ゆっくりと言われたところで、俺にすることは仕事ぐらいしかない。酒や女に夢中になることもなければ、いわゆる趣味ってやつもない。だったら、その仕事が一段落しているのであれば、あとは部屋に帰ってゆっく...

俺の女 4

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司が、誕生日に、つくしからマフィンを手渡されたところからです。***突然マフィンという食い物を手渡され、しばし呆然とした俺。どのぐらい呆けていたのか、けれどすぐにジャケットを持ってカウンターに向かった。が・・・あの女がいねぇ。「臼井。あの女、どこ行った?」少し驚いた臼井の顔。「牧野さんですか?」「あぁ、そいつか。」あいつの胸についたネームプレートには『牧野』とあった。「もう、帰りました。彼女はもと...

俺の女 5

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「今日の業務はこれで終了です。」西田にそう言われたのは、金曜日の22時15分前。「今日は、この後、ご予定でも?」プライベートについてこいつが口を挟んで来るのは珍しい。俺は思わず、西田をじっと見ちまった。「いえ、出過ぎたことを。失礼致しました。」「いや、メープルに飲みに行くだけだ。」俺が幼なじみの奴らに会う時は、その日の予定を組む都合上、当然俺のプライベートも西田が把握している。今日は、自分の知らない予...