花より男子の二次小説。CPはつかつくonlyです。

With a Happy Ending

今日は、美作さんのお誕生日ですね~。
どうしようかなと迷って、一度書いてみたかったお話にしてみました。
美作さんのお誕生日に、美作さん目線の『つかつく』です。
ちょっと切ないお話です。
でも、Happy Birthday, Akira!の気持ちを込めて。

*****




「美作さん、お誕生日おめでとう。」

今日は俺の28回目の誕生日。
目の前の牧野は、昔より、ずっと大人になった。
はねっかえりだったあの頃のガキっぽさは鳴りを潜め、少し愁いを秘めた大人の女性。

彼女がこんな表情をするようになったのは、5年前からだ。
司との別れを決めた5年前。
嫌いで別れた訳じゃない。
それが分かっていても、あの頃周りにいた俺たちでさえも、何をすることも、どうすることもできなかった。

牧野の大学卒業が決まった頃、司の家の状況が一変した。
司の父親が倒れた。
すでに、ビジネスの最前線に出ていた司の肩に、多くのものが圧し掛かった。
それは、『道明寺』という大きな組織。
そこで働く人々、彼らが生み出す利益も不利益も、全て司が背負うことになった。
当然のことながら、4年で迎えに来ると言う約束は果たされなかった。
あの頃の状況では、司が牧野の人生に責任を負うことなんてとても出来なかったんだ。
それは、愛している女への、男としての責任。
司には現実が、痛いほどに分かっていたんだろう。

牧野はすぐに状況を理解した。
想像以上に賢くて、誰よりも優しい奴だ。
司が想う以上に、司のことを想っていた。
そして、牧野は司を解放した。
自分が司の足かせになることなんか、望まなかった。

当然、司は牧野の決断を受け入れなかった。
「5年だ。5年だけ、待ってくれ。必ず、お前を迎えに行く。」
そう言った司に、牧野は頷かなかった。
司の負担にならないように、返事はしなかったんだ。

皮肉にも、牧野が別れを決めたのは、5年前の2月28日。
俺の誕生日だった。




あれから5年。
牧野の心の中は、今でも司の言葉が生きている。
頷くことはなかったのに、ずっと司を待っている。
口には出さなくても、みんな分かっているさ。
だって、あれからも、誰一人として、彼女の心の中に入ることは許されなかったんだから。


俺は今、牧野の頼れる兄貴というポジションだ。
この5年の間、ずっと彼女を見守って来た。
それは思いがけず幸せな日々で、
牧野と一緒にメシを食ったり、
映画を見たり、
仕事の愚痴を聞いてやったり、
ただそれだけのことが、暖かな記憶になっていく。

春は桜を見た。
その桜を見ながら、司を想う彼女。
その横顔が綺麗で見惚れた。

夏は海だ。
あいつらみんなで行った海。
牧野だけは、水着にならなかったな。
司のいない海では、水着になんてなりたくなかったんだろ?
見せたい男がいないんだもんな。
だから、俺は牧野に言ってやったんだ。
「かき氷食いに行くか?」
その言葉にうれしそうに頷いた彼女は、本当に可愛かった。

晩秋の紅葉。
牧野が、落ち葉の中をサクッサクッと歩く。
一歩一歩、寂しさを埋めるように歩いていく。
俺は、牧野の後ろを付いていく。
その寂しそうな後姿を抱きしめそうになっても、それはしない。
それは、彼女が求めていることではないからだ。

冬は大変だった。
クリスマスに誕生日にバレンタイン。
恋人たちのイベントが盛りだくさんだ。
牧野が心から楽しむことができる日はまだ来ない。
だから、俺は何気なく誘うんだ。
「飯でも行くか?」


牧野にとって、俺は家族のようなもんだ。
類のように、あいつのソウルメイトって柄じゃない。
総二郎のように、ひたすらからかうこともしない。
牧野の傍にいるものの、何も尋ねることはしない。
家族に本心を語る奴なんて、この年ではいないだろう。
だから、牧野も俺には本当の心は語らない。
だけど、感じるんだ。
牧野の、司への強い、強い、想いを。


俺は、牧野が好きなんだろうか?
もしそうならば、奪えばいいじゃないか、司から。
そんなことを考えなかった訳じゃない。
だが、そういう考えが浮かぶ度に、彼女の愁いを含んだ表情が思い出された。

今でも司を想ってる。
きっと、あの頃よりも想っているんだろう。
他のどんな男も目に入っていない。
その横顔に惹かれるんだ。
司を想う横顔に。

俺は、牧野に惹かれている。
強く司を想う、牧野に惹かれている。
いつか、俺もそんな風に愛されたいと願うほどに、今は別れた二人が羨ましく思える。
でも、それは、きっと二人がもう一度、共に歩き出すと分かっているからなんだろうな。




「もう、5年だな。」
シャンパンを空けながら、牧野の顔を覗き込む。
泣きそうなのに、笑っている。
お前は何を考えている?

今日は、司との約束の5年目だ。
牧野がずっと待ち続けた5年の月日。

「あいつに返事をしなかったのはあたしなのに、ずっと忘れられなかった。どこかで諦めようと思っても、ずっと踏ん切りがつかなかったの。そろそろだって、思ってる。だから、今日が終わったら、もう止めようと思う。」

この5年間で、初めて聞いた牧野の想い。
今日が過ぎたら、司を想うことを止めるのだという。


もうすぐ、司が一時帰国する。
それは、凱旋帰国前の、地ならしのため。
マスコミ報道によれば、今回の帰国で、司はどこかの令嬢と婚約を発表すると言われている。
そんなこと、ある訳ねぇんだけど。
だって司は、今でも、牧野のことしか想っていない。
司が捕まえにくるとしたら、目の前の牧野しかありえない。
お前はそれを知らないのか?

「もうじき司が戻って来る。」

「5年って言ってた。今日で、5年。あたしは、もう十分待ったでしょ?」

何を考えている?
この5年、ずっと想い続けていた司のことを、あと少しだけでも待ってやれないというのか?

「今晩の便でハワイに行くんだ。それで、ぱーっと遊んで忘れてくるから。」
ふざけた口調の牧野の目は、虚ろだ。

何を馬鹿なことを言ってるんだ。
俺はちょっと呆れちまう。
それでも分かるんだ。
これは、こいつの強がりだ。
司が迎えに来てくれないことが耐えられなくて、こんなこと言っているんだろう。
こいつの精神状態も、もうギリギリなんだ。

俺は黙って、想いをめぐらせた。
ハワイという言葉には記憶がある。
昔、司が嬉しそうに言ってたっけな。
牧野から、新婚旅行はハワイに行きたいって強請られたとか。
たぶん、半分司の勘違いなんだろうけど。
司と一緒に行きたかったハワイに一人で行くと言う、バカ女。
そんなことしたって、お前は司を吹っ切ることなんて出来ないだろう?
無駄な抵抗は止めた方がいい。


「じゃあね。美作さん、そろそろ行くね。」
そう言って、牧野が席を立つ。
「羽田まで送る。」
俺は溜息をついて、席を立った。

どうする?
どうすればいい?

司、牧野が行っちまうぞ?


その時、俺の携帯のバイブが鳴った。
そっと画面を眺める。
俺は思わず笑っちまった。
野生の勘は健在だ。
_____あいつが到着したみたいだ。



夜の羽田も人が多かった。
人込みの中を、牧野の後ろから歩く。
出国手続きをするカウンターには人だかり。
何故ならそこには、あの男が立っていたから。

牧野の足が止まった。


走り寄ってきた大男に抱き込まれる牧野。
この5年間、一度も涙を流したことのない、牧野のすすり泣きが聞こえた。
俺は、その姿を確認して、踵を返した。






Zizzzzz…
俺の携帯のバイブが鳴る。

「お誕生日、おめでとうござます、美作さん。
寂しくされているのかと思いましたので、
一緒にお祝いをして差し上げましょうか?」

俺と同様に、彼女を見守って来た女から連絡が入った。
どうやら、司があちこちに電話を掛けまくったようだ。

俺の肩の荷が下りた日。
それは、俺の誕生日。
やっと、本気の乾杯ができる。

「おう、一杯付き合って。」
俺と一緒に彼女を見守り続けた女と、今日は飲み明かすか。
それも悪くないな。


____俺たちの時間が、再び動き始めた。



 

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ありがとうございました。
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  1. 短編
  2. / comment:7
  3. [ edit ]

先日のお知らせに、たくさんの拍手やコメントを頂きありがとうございます。
今週まで仕事が忙しいですが、来週からは通常業務に戻れそうです。

さて!今日は類君のお誕生日ですね~!
お祭りコンビの時には、なんちゃってお話を書いたのに、類君だけ無視と言う訳にもいかず、けれど、私にとって類君は結構難しくて、かなり考えました・・。
こちらは先週書いたお話になります。
いつも通り、類君目線の『つかつく』です。
私が考える類君像がこんな感じ・・ということで・・
では、いってみましょう!
***





「るーい!お誕生日おめでとう!」
「牧野、飲みすぎ。それ、さっきから何回も聞いてるし。」

今日の牧野はご機嫌だ。
いや、ご機嫌すぎる。
こういう時は必ず裏があるんだよね。

「はい。水。」
「いらん。」
「牧野~。」
無理矢理、牧野に水を飲ませた。

プファーとか、オヤジみたいな飲み方をして、牧野がテーブルに肘をつき、手のひらの上に顎を乗せた。

「ねぇ、類。あたしの仕事って、やっぱり、あいつにとっちゃ、大したことない、アリンコみたいな仕事なのかな・・。」
「何それ。司が言ったの?」
「そこまではっきりは言われてないけど。」
「じゃあ、何て言われた訳?」
「ぐぅぅ。。。」

牧野が、ばればれの寝たふりをしようとする。
誰が騙されるかよ。

つい数日前には、『ごめんね。30日がだめになっちゃったから、誕生日会は延期』だって言ってたくせに、当日の今日になって急に俺を呼び出して、散々飲み食いした牧野。
俺だって用事があるかも知れないとか思わないわけ?
でも結局、牧野に呼び出されたら断れないのが俺の性。
牧野が電話してくる時って、絶対司となんかあった時なんだよね。
俺は、愚痴聞き役。
時に、惚気を聞く役のこともあるけどさ。
でも、このポジションは誰にも譲りたくないんだよね。
だって、この二人って、面白すぎるから。
それで、一体何があったわけ?

「牧野?」
「だって、あいつ、《お前の仕事には代わりがいるだろっ》なんて言うんだもん。」

ふーん。ははーん、なるほどね。
ピンと来た。

「代わりがいるからどうしろって?」
「結婚。」
「へぇ。プロポーズされたんだ、司に。」

手のひらに乗せた頭を動かし、コクリと頷く牧野。
普段なら、絶対にこんなこと言わないのに、相当酔いが回っているらしい。

けどさ・・
普通、好きな男にプロポーズされたら、泣いて喜ぶもんじゃないの?
なのに、この牧野の態度は何なのさ。

「で、何が不満な訳?」
「だって、あいつ、あたしの仕事なんて大したこと無いって、そりゃ、あいつは、大企業の副社長なんてやってる訳だから、あたしの仕事なんて大したことないって思われても仕方ないんだけどさ・・」

そう言って、牧野が両方の瞳を閉じた。
何も考えたくないとでも言っているかの様。


ふぅ。
司が約束の4年で日本に帰国してから、もう4年が経つ。
帰国してからの二人の交際は順調だと思う。
今更、司の両親が反対しているわけでもないのに、二人が結婚しない理由。
それは、この牧野の態度に他ならない。

聞く限りでも、司が牧野にプロポーズしたのは、一度や二度じゃないはずだ。
その度に、牧野はのらりくらりとかわしていた。

まだ学生だから、
社会人になったばかりだから、
進がまだ学生だから、
パパとママへの仕送りもしなくちゃいけないから、
いつもそんな理由で。

牧野も社会人として3年が経ち、仕事にやりがいを見出しているのは分かる。
けど、道明寺司という男の恋人である以上、今の仕事を永久に続けることが不可能であることは、本人が一番よく分かっているんじゃないの?


「今度はどんな理由で断るの?」
「類・・」
「あんたが司のプロポーズを受け入れない理由、そこじゃないだろ?」
「・・・。」


牧野が司との結婚に踏み切らない理由。
それは、司が牧野の仕事を軽視しているとか、そう言うことじゃないと思う。
実際、司は牧野の仕事に理解があるし、恐らく結婚しても、牧野が続けたいと言えば、何らかの形で仕事を続けさせてあげるんだろう。
司は、牧野にだけは甘いから・・。
それに、なんだかんだ言っても、司は今まで、牧野の下手な弁解を聞き入れて、結婚は無理強いして来なかった。


牧野が目を閉じたまま呟く。
「だって・・自信ないんだもん。」
「何の自信?」
「道明寺の・・・奥さん?」
「疑問形?」
「だって、あたし、やっていけると思う?」
「まぁ、大変だとは思う。」
「やっぱり・・。」

しゅんとする牧野。
でも、そんなことは、ずっと、ずーっと前から分かっていたことだよね?

「じゃあさ、その自信っていうのは、いつになったら付くわけ?」

俺たちは知っている。
牧野が、司の隣に並ぶために、語学や教養、マナーなんかを必死で勉強してきたことを。
高校時代から今まで、牧野の人生は、相当司に振り回されているにも関わらず、泣き言なんか言ったことは無いんだ。
それは、牧野自身が、将来は司と一緒に歩んでいこうと思っているからだろ?

「そんなの・・分からないよ。」
「そうやって、うだうだしてたらさ、年ばっかりくって、ウエディングドレスが似合わなくなると思うけど?」
「それならそれで、いいもん。」
「まーきの!」

俺がチョンと牧野のオデコをつつくと、肘をついていた牧野がバタンと崩れて、テーブルに突っ伏した。

「もう、やだ。」
「何で?」
「もう、逃げられそうにない。」
「ぷっ。今まで逃げてた訳。」
「そうじゃないけど。」

何が言いたいのか。
酔った牧野の堂々巡りは終着駅が見つからない。

「じゃあさ、別れなよ。司と。」
がばっと、牧野が飛び起きた。
目を大きく見開いて、俺のことを見つめてくる。

「類・・意地悪・・。」

それは、牧野が煮え切らないからでしょ?

「だって、不安なんだもん。不安で不安で、夜もおちおち眠れない。」
「あんたが眠れないことってあるんだ。」
「あるよっ!」
「それ、司に言いなよ。」
「言えないよ。」
「どうして?」
「だって、あいつ忙しいし。今日だって、急にどっかに出張になったって。あたしの話なんて聞いてる暇ないよ。それに・・それに、ウジウジしてるあたしなんて、あいつきっと好きじゃないし・・。」

はぁぁ・・
牧野は本当に分かってないよね。
男は、好きな女に弱音を吐かれたら、逆に燃えるもんなんだ。
どんなことをしてでも守ってやろうと思うもんなんだ。
司なんて、尚更だ。
いつもは強気な牧野がウジウジしたからって、可愛いと思うだけで、嫌いになんてなる訳ない。
牧野が一言司に泣きつきでもすれば、司はどんなに疲れていたって、夜中にだって駆けつけるはずだ。
それで、そんな不安は強引に拭い去るに決まってるんだ。


「牧野、司はさ・・」
「分かってる。分かってるの。あいつはさ、きっとあたしを守ってくれようとすると思うんだ。けどさ、あたしはあいつを守ってあげられるかな?守られるだけの女は嫌なの。あたしもあいつを守ってあげたいのに・・。あたしは、あいつの負担にしかならないんじゃないのかな・・。」

ふーん。そっか。司のことは分かってるんだ。
でもさ、牧野は自分の価値を分かってない。
いったい何年司と付き合ってんの?

守るということは、見た目だけじゃない。
金や権力で守れる力を司は持っているけれど、司の心を守る力を持っているのは、牧野だけなんだ。
牧野はずっと、司の心を守ってんだよ。
もっと自信もちなよ、牧野。


「司がさ、もしまたニューヨーク行くって言ったらどうする?また遠距離恋愛するの?」
「えっ?」
牧野は一瞬言葉を失ったが、すぐにはっきりした口調で答えた。

「今度そうなったら、絶対に付いて行くよ。」
「そっか、じゃあ、なんで結婚はダメなの?」
「・・・。」
「牧野?」
「ダメじゃないもん。」
「ぷっ。さっきまで嫌がってたじゃん。」
「ダメじゃないもん。自信がないだけ。」


「牧野はさぁ。安心しちゃってるんじゃない?今は司がニューヨークから戻って来て、結婚しなくても、二人でいられるんだもんね。」
「う”~。」

図星でしょ?

「でもさ、司の立場なら、いつまた海外転勤になるかも分からないよね?」
「そうなの・・かな?」
「あとは、牧野がその時どうしたいか、でしょ?」
「付いて行くよ、当たり前じゃん。」
「結婚して?」
「もちろんだよ。」

やれやれ。
結論なんて、始めっから出てるんだ。


「普通ならさ、女が結婚を匂わすもんだと思ってたけど、あんたたち不思議だよね。どう考えても、司が結婚したがってる。」
「失礼ねっ。あたしだって、結婚したいもん!でもさ、ちょっと不安なんだもん。だから、迷っちゃっただけっ。道明寺と、結婚したいよ。ずーっと一緒にいたいもん。」
「じゃあ、迷う必要ないでしょ。」
「うん。そうだった。」


牧野がまたパタンとテーブルに突っ伏して、頬をテーブルに乗せた。
「冷たくて、気持ちいい・・」

テーブルに片頬を付けたまま、牧野が俺を睨んだ。
「類、見てなさいよ。あたしのウエディングドレス姿とか見たら、感動して、涙流すかもしれないよっ!」
やっと、牧野らしさが戻ってきた。
まぁ、感動の涙を流すかどうかは別だけどさ。

「あ~、なんだか気が抜けた。ホッとしたら、ふぅ・・眠くなってきた・・かも・・・。」
速効で、クカァー、クカァーと寝始めた。
無防備な奴・・。








「司。」
俺は、壁にもたれつつ腕を組んで立っている、長身の男に手を挙げた。

奴が近づいてきて、牧野の隣に座った。


___『道明寺司』
俺の幼なじみ。
そして、牧野の婚約者。
それは、何年も前から変わらない関係。


「悪かったな。牧野が迷惑かけて。」
司が牧野の髪を撫でる。
「別に。いつものことだし。司こそ、出張だったんじゃないの?」

額に青筋を立てた司が、
「こいつの反応がおかしかったからな。早めに切り上げて来た。」
おいおい、今回の香港出張は、日本で指揮をとる最後のデカいプロジェクトのためなんだろ?

「なんだよ、その目。ちゃんと仕事はして来てんだよ。」
そんなことを言ったって、これだけ早く帰ってくるには、相当仕事を詰め込んだに違いない。それ位は俺にも分かる。


「わかってんでしょ、牧野の不安。」
「あぁ。けど、もう、待てねぇ。」
「うん。」
「この春には、入籍する。」
「そっか。」
「夏には、ヨーロッパに移る。」

道明寺財閥の社長に昇格するための最後の試練という訳だ。

「それ、牧野知らないんじゃないの?」
はぁ・・と溜息をつく、俺の幼なじみ。

「まぁな。あれだよ。お情けで付いてきてもらっても、仕方ねぇだろ?こいつが、本気で付いてきたいと思ってくれなきゃよ。こいつに後悔はさせたくねぇんだよ。」
「司、牧野に後悔させるつもりなの?」
「んな訳あるかっ。」
「牧野、結婚したいって言ってたよ。」
「聞いた。」

司が、俺たちの前では見せたことも無いような甘い表情で牧野を見つめている。
まさに、目に入れても痛くないという、そんな表情。

牧野の気持ちなんて、きっと、司が一番お見通しなんだろうな。
いつも牧野の気持ちを第一優先にする司。
ただし、今回ばかりは牧野を逃がすつもりは無いってことか。
牧野が自分から飛び込んでくることを待ってたんだな。
俺は、うまい具合にアシストしたってところかな。


今日の俺の役割は、これで終わりみたいだ。

「じゃ、俺、帰るね。」
「類。」

呼び止められ、俺は司を振り返った。

「必ず牧野を幸せにするから。」
司の瞳に迷いはなく、自信だけが覗いている。

「あぁ、分かってる。」
ずっと前から分かってるよ。
牧野を幸せにできるのは、司しかいないって。

「お前には、礼を言っておきたいと思ってた。」
「へぇ。レアだね。一応、受け取っておく。」
「おう。」

「お前が涙流すぐらいに、すげぇ綺麗な花嫁見せてやるから。」
司が愛おしそうに、牧野の頬を撫でる。

その姿に背を向けて、
「楽しみにしてる。」
そう告げた。



「そういや、類。」
3歩進んだところで、再び声がかかったが、俺は振り向かなかった。

足を止めた時に、背中に聞こえた司の言葉。

「誕生日、おめでと。」


プッ。
司に誕生日を祝われた。
これって、激レア。
今まで20年以上一緒にいる親友なのに、言われたことあったっけ?

司は牧野に出会って変わった。
こんな言葉が言えるようになった。
そして、俺も牧野に出会って変わった。
親友の幸せを、心から祝えるようになった。
感情に乏しかった俺に、牧野は人間的な感情を目覚めさせた。

牧野という存在のおかげで、俺たちの関係も変わった。
なんか、人間臭くなったかな・・・照れくさいから言わないけど。


司は俺の親友。
牧野は親友の彼女。
俺にとって、大切なその二人。
彼らが幸せである限り、俺の人生も結構明るい。


俺は右手を挙げて、背中越しに司に伝えた。

サンキュ、司。
幸せになれよ。

 

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更新の頻度が少ないので、ランキングは一つ減らしました。
私の考える類君は、どこまでも司君の親友・・・
  1. 短編
  2. / comment:8
  3. [ edit ]

こんばんは〜。
何だか番外編に筆が進まず、短編を・・。
「俺の女」には、滋ちゃんが出てこなかったので、滋ちゃん目線のつかつくを書いてみました。
***




「いいなぁー。」

「つくし?」


今日は久しぶりのT4女子会。
幹事はもちろん、私、大河原滋。
社会人になってからも、T4は定期的に集まってる。


「先輩、酔ってます?」
「ん?そーでもないけど。」
「つくし、何がいいなぁ、なの?」
「んー。」


ガサゴソとつくしが鞄から取り出したのは、週刊誌。
それも、結構低俗なやつ。
こんなのつくしが持ってるなんて、ちょっと意外。


「何、これ。」
「あ、これって、道明寺さんの記事ですね。」
「どれどれ・・。あー、またかぁ。今度はアメリカの通信会社の社長令嬢ね。」
「なんですか?あっ、熱愛報道?」

週刊誌には、アメリカのどっかのパーティーで、司が金髪美女をエスコートしている写真。
タイトルは、『御曹司の熱愛発覚』・・ね。
その御曹司の意中の女性は、ここにいるんだから、アリエナイんだけどさ。


「つくし、大丈夫?」
優紀ちゃんが心配そうにつくしの顔を覗き込んでる。


大丈夫って言っても、今更じゃん?
司がNYに行ってた4年の間も、2年前に日本に帰ってきてからも、熱愛報道っていったい何回あった?って感じだし。
はっきり言って、誰も本気になんかしてないんじゃないかな。
つくしだって、全然気にしてなかったはず。

だけど、今回の報道はいつもと違った。
金髪美女が、司の腕にしなだれかかっている。
だいたい司は、つくし以外の女性をエスコートなんかしない。
だから、いつも噂になる写真だって、ただ会話してるだけとかそんな写真ばっかりなのに、今回の写真は二人が腕を組んでいる。

これは・・確かにキツイかも・・・


ん?でも、待って?
さっき、「いいなぁ」って言わなかった?
それって・・それって、どーいう意味!?


「つくし?」
「ん?」
「もしかして・・羨ましい・・とか?」
「んー。ちょっとだけ・・。ま、現実には・・ねぇ。」


レアー!激レアっ!!
つくしがこんなこと言うなんてさ。
いっつも、ちょっと司が気の毒っていうぐらいに、私達の前では愛情表現に乏しいって言うか、冷めてるって言うか、そんな感じのくせにさ。

ちらっとみたら、優紀ちゃんも、桜子も、ちょっと驚いた顔をしてる。
だよねー。
驚くよねー、このつくし。
何か、あったのかな・・そう思って、つくしを問いただそうとしたのに、

パタン・・・。
すぅー。すぅー。

つくしはテーブルに突っ伏して寝ちゃった。



凍りつく、私達。

「ねぇ、桜子。さっきのってさぁ。」
「ええ、滋さん。先ほどのって、つまり。」
「つくしも、報道されたいってこと!?」

「「「意っ外〜〜!!!」」」


だってさ。あれよ。
司は、昔からつくし一筋で。
つくし以外、目に入っていなくて。
私とか、桜子とか、ナイスバディの美女とか、一切相手になんかしてない訳。

あれだけ愛されてたらさぁ。
もう、結婚してあげたらいいじゃんっとか思ってるんだよね、私達。
だけどさ。
社会人としての経験積みたいとかさ、訳わかんない理由で、司のプロポーズを断ったりとか、世の中の女子を敵に回してるつくしがだよ?まさか、熱愛報道に憧れてるなんて。


「これって、道明寺さんが聞いたら、泣いて喜びますわね。」
「そっ、そーですよね!まさか、つくしが・・。」
「だいたい、司って、時間があればつくしのアパート通ってるし、結構、その辺のスーパーとかで、つくしと買い物してたりするらしいのに、そう言えばどうして報道されないんだろうね。」
「そんなの決まってるじゃないですか。道明寺さんが、マスコミに圧力掛けているんですよ。絶対。」
「どうしてですか?」
「つくしの・・ためだよね。」
「そうでしょうね。今、噂になったりしたら、先輩の仕事に差し障りがありますもんね。」
「でも、結局、噂になりたいってことは・・つまり、つくしもついに覚悟を決めたってことだよね!」

しばし・・沈黙。


「道明寺さんって、今NYでしたっけ?」
「あ、多分そう。」
「もう、1ヶ月以上会ってないって、つくし言ってました。」
「だからかぁ。つくしも寂しいんだね。きっと。」
「なんだか、ちょっと切ないですね。」
「あっ、私、来週NY出張だわ。りょーかい!司に伝えとく。」
「滋さん、楽しそうですね。」
「でへへ。だって、つくしが喜ぶ顔、見たいじゃん?」

「「「ねーっ!!!」」」



RRRRRRRR……..

あれ?つくしの携帯が鳴ってる・・

他人の携帯は見てはダメ。
だけど・・
テーブルに置かれたつくしの携帯の着信画面。

そこに表示されたのは、『道明寺』の文字。

あたしたち、3人は顔を見合わせた。


出る?出る?出ちゃう??
出るっきゃないよねー!


3人の視線はGoを支持。

爆睡しているつくしを、ちらっとみて、
ちょっとだけ、罪悪感?
ちょっとだけ、高揚感?

酔いも手伝って、私はその携帯をタップした。




***




「しっかし、急だったよなぁ。」
「俺も驚いた。」
「あんだけ逃げ回ってた牧野が、プロポーズに応じるとはな。」
「なんでも、司のお袋さんが、すぐに結婚しろって凄んだらしいよ。」
「まじかよっ!」
「すげぇじゃん、牧野。認められてたんだな。鉄の女に。」


「「「とにかく、よかったよな〜〜!!!」」」


「これで俺たちは、猛獣の世話とは永遠にお別れだな。」
「感無量!!」
「ぷっ。とにかく、二人のとこ、早く行こうよ。」



ほらね、F3の面々も、二人の門出を祝福してる。
そう、今日は、司のとつくしの結婚式。
あの、つくしの爆弾発言から3ヶ月のスピード婚だった。



あの女子会から1週間程して、司のがNYから帰国した。
その直後から、新聞やテレビ、週刊誌も含めて、各種メディアで取り沙汰された、『道明寺司の本命』報道。

そこには・・
相変わらずの完璧な美貌と躯体に、オーダーメイドのビジネススーツを身につけて、つくしのオンボロアパートにせっせと通う司の姿。
そんな司が、薔薇の花束を持ってアパートに入る写真はため息モノ。

さらには、
二人が近くのスーパーで買い物をする姿。
それがなんと司はラフな私服で。
スーパーの袋を持って歩く司とか、激レア万歳!って感じで。
世の中の女子はキュン死寸前!

極め付けは、つくしのアパート前での二人の濃厚キスシーン。
ドラマ顔負けのそのシーンは、なんと動画で撮影されていた。
3分に渡る、二人の熱烈なキッス。
ありゃ、尋常じゃないね。
司の愛情ダダ漏れ。
恐らく、あれは、司の帰国日だね。


当然、連日のようにワイドショーは、司とつくしの話題で持ち切り。
しかも、それが『4年後必ず迎えに来ます』の女だと分かれば、もう世紀のカップルっだってもて囃されて。

つくしは仕事に行けなくなって、道明寺邸に逃げ込んだ。
そこに、現れた楓社長は、とっても冷静で。

「この期を逃せば、二人の結婚は認めません。」
って言ったんだって。

それもそうだ。
司の仕事上のカリスマ性と、本命に対する一途さが高く評価されて、この報道で、道明寺HDの株価は急上昇した。
これが、事実無根、もしくは、司の遊びだったとでもなれば、大変な損失を招く事態。

元々、認めてはいたんだろうけど、結婚を許可するには、ベストタイミングになったみたい。


つくしもさ。
さぞかし嬉しかったんじゃないのかな〜。
憧れの?熱愛報道されたんだしさ。
そして、なんだかんだ言っても、相思相愛の恋人と結婚だよ。

司なんてさ、初恋実らせちゃった訳だしさ。
そりゃ、かつて司のことを好きだった滋ちゃんとしては、辛い時もなかった訳じゃないんだけど。
だけど、今日の二人の幸せいっぱいの結婚式に参列したら、そんな気持ちなんて、吹っ飛んだ。

それになにより、最後に二人のをアシストしたのは、やっぱりT3だったってことが、すっごく嬉しくて。
私も、桜子も、優紀ちゃんも、すごい大役果たしたみたいに鼻が高いよ。
うん。。。涙・・でちゃう・・。



ウェディングドレスに身を包んだつくしを、これ以上ないってぐらいの蕩けた顔で見つめる司。
タキシード姿の司は、ゾクゾクするぐらいにカッコいい。
その司を見上げるつくしも幸せいっぱいの笑顔。

教会から出て来た二人は、
仲間みんなが見つめる中、
熱烈な口付けを交わした。




F3に絡まれている二人の元へ、私達も、レッツゴー。
この結婚式に至るまで、二人に会う機会がなかったもんだから、今日会えるのは、本当に久しぶりなの。

聞こえてくるみんなの話し声。

「しかし、あの報道には驚いたよなー。」
「報道規制解除すると、あんなに凄いもんなんだな。びびったわ。」

「規制解除〜??」
つくしが、素っ頓狂な声を上げている。

「司が、お前のことは表に出ないように、規制かけてただろ?でも、なんでこのタイミングで解除したのかって、疑問だった。」

「え?」
と司を見上げるつくし。
なんだ、つくし、知らなかったんだ。

ここは、T3の出番かな?

「だって、言ってたもんね。つくし、司の熱愛報道、羨ましいって。ねっ?」

「んん?何それ・・?そんな事、言ってないし。」
「言ってたよー。ほら、最後に女子会した時っ!」
「うん、言ってたよ。つくし。」
優紀ちゃんも賛同してる。
桜子も、頷いてるし。

「司がアメリカのパーティーで、金髪美女をエスコートしてた写真みてさ、羨ましいって、言ってたじゃん!!」
「バカ言うなっ。あれは、あの女が勝手にくっついてきただけだっ。俺が、こいつ以外の女をエスコートする訳ねぇだろーがっ!!」

「あー・・あれ?」
「つくし?」
「あれは、そー言う事じゃないよぉ。ほら、あのパーティーにトム・ク●ーズが出席してたって書いてあったじゃん。あれ、いいなぁって。一度でいいから、生で見てみたいなってさ。そーいう意味だったんだけど・・。」


・・・・。
・・・・・・。
「はぁ〜??」

それを聞いた、司の額には、青筋ニョキニョキ。
私達はちょっと尻込み・・。


「お前っ、このちょーカッコいい旦那を目の前にして、トム・ク●ーズだぁ?!」
「だって、ファンなんだもん。」
「俺は、お前が熱愛報道されたいって言うから・・」
あっ、と司が気まずそうな顔をした。

「えっ!ええ〜っ!?もしかして、今回の報道って、ヤラセなの!?」
「んな訳あるかっ。事実だろうーがっ!」

「だけど・・さぁ・・。」
上目遣いで、疑わしい目を司に向けるつくし。


つくし、こんなところで喧嘩とかしないでよね。
そりゃ、勘違いして、けしかけたのは私達だけどさ。
いいじゃん。いいじゃん。
結局は。相思相愛カップルなんだからさ・・。



「何?お前、今更、後悔してんの?」

ちょっと寂しそうな司の顔。
捨て犬みたい。
やだっ。見てらんないっ。
つくしーっ。
ハラハラ・ドキドキ・・・。


「何言ってんのよ?あんた。それこそ、今更、でしょ?」
「・・!」
「あたし以外に、誰があんたを幸せにするっていうのよ。あんただって、約束守りなよ。あたし、もう仕事も辞めちゃったし、今更、後戻りできないんだからねっ!」

司の顔が、パァッと明るくなったと思ったら、
つくしをギューッと抱きしめた。

「ぐぇっ。やだっ。痛いって!」
「黙れっ!」
「ぎぇー。死ぬーっ!」
「絶対、幸せににすっから、安心しろっ!」


カシャッ。





今、私のデスクには一枚の熱愛写真。
親友の結婚式の写真。
モテモテの新郎は、その後一切のゴシップ報道を許さず、今では、愛妻を秘書にして、パーティーやら出張やらへ引きずり回している。
至る所で見かける、二人の仲睦まじい姿。
それは、永遠に続く熱愛報道。


オフィスには、つくしから奪い取ったブーケの押し花を飾ってる。

ふふふ。
そろそろ・・
私の熱愛が囁かれる日も近いかもしれないなぁ。



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番外編・・展開を検討中でーす。
どうしようかなぁ。ちょっとぐらい、ハプニングとか書こうかなぁ。うーん。

追記)金髪美女の謎というご指摘を受け、一部加筆しております。(23:50)
司が、つくし以外をエスコートするのは、私の中でナシ!
単なるトラブルを撮られた設定です。へへ。
  1. 短編
  2. / comment:5
  3. [ edit ]

こんばんは~。Happyendingです。
すっかり忘れていましたが、今日って七夕でしたね。
他のマスターさん達が七夕のお話を書いているのを見て気付くと言う・・(汗)。

夕方に七夕と気付いて、何となく頭に浮かんだお話を書いてみました。
恐らく前後編・・かな?

7日のうちに前編だけでもと、急いでアップします。
原作の流れのお話になります。
***





ニューヨークとの遠距離恋愛も4年以上が過ぎた。
この4年の間で道明寺に会えたのは数回。
ピサの斜塔で会ったのが最後。

『婚約だけはしておきてぇ。』
なんて勝手なことを言って、でっかいダイヤを押し付けてきたのはもう、3年以上前のこと。


そのダイヤは、結局道明寺の家で眠ってる。
だけど、あいつからもらった土星のネックレスはいつもあたしの胸にある。
これだけがあたしの支え。
あいつの想いが詰まったプレゼント。
だから、あたしはこれを外すことは絶対にない。


街で見かけたカップルが、お揃いのリングを通してた。
お揃いなんて、気持ち悪いとかいうのかな、あいつ。
だけど、身に着けられないダイヤより、あいつと同じものを身に着けたいと思うなんて。
あたしだって、女の子なんだからさ、そう言うことだって思うんだよ?知ってた?

だから、あたしはこっそり腕時計を買った。
その時計には、ニューヨーク時間が表示されている。
その時計を身に着けることで、あたしはあいつとの時間を共有したかったんだ。


だけど・・

ニューヨークとの時差 14時間。
その14時間は、あたしにとって、10000キロの距離以上に辛かった。

だって、どんなに時計が早回りをしたとしても、この14時間は縮まない。
あたし達は、ずっと14時間すれ違ったままなんだって知ったから。


「おはよう」って伝えても、それはあんたの移動中で、
「おやすみ」って伝えても、それはあんたにとっては一日の始まりで、
あたし達は電話で繋がっていても、同じ時間は過ごせないんだと気が付いた。


少しでも、あんたと同じ時間を過ごしたくて、
少しだけ、あたしの存在を感じて欲しくて、
少しずつ、あんたに想い伝えたくて、

あたしはいつも、腕時計を見つめてた。


言いたいことはたくさんあって、
だけど二人に与えられた時間は少なくて、

今日はこれだけ言おうとか、
明日はこれを伝えようとか、
絶対に喧嘩はしないぞとか、

そんなことばかりを考えた。


だから・・ねぇ、道明寺。

あたしの願いはただ一つ。


『あんたと同じ時間を過ごしたい』


七夕の今日。
あたしが願うのはそれだけだよ。



*****



時々送られてくる、幼なじみからのメール。
そこには、俺の愛しい女の写真が添付されている。

約束の4年を過ぎても迎えに行くことが出来ずにいる俺。
そんな俺に、あいつは文句を言わなかった。

本当は、こんな俺に愛想を尽かしてんじゃねーのか?
俺のことなんて忘れてんじゃねーのか?
そんな不安が頭をよぎる。

早くあいつを迎えに行きたい。
その想いをずっと胸に抱きながら、今日も俺はニューヨークで時を過ごす。

疲れた時には、あいつの写真に視線を落とす。
あいつの笑顔を見る事だけが俺の癒しだ。
だが、最近は送られてくる写真をみると焦っている。

ますます綺麗になっていく。
ガキっぽかったあいつが、蝶のようにしなやかな女になっていく。
しっとりと、伏し目がちな視線。
趣のある表情。
お前は誰を想ってる?

そしてじーっとその写真を見つめ、彼女の胸にあるネックレスを探す。
俺が贈った土星が彼女の胸に輝いていることを確認して、俺はほっと息を付くんだ。


東京との時差は14時間。
俺達が離れている時間は4年以上。

正直、焦る。焦ってる。
焦って、気が狂いそうになる。


俺達は、いつになったら、離れている時を取り戻すことができるんだ?


ピロン・・とメールが届いた。
また幼なじみからだ。

その写真を見て、息が止まった。
それは、一葉の短冊の写真。

彼女が書いた、七夕の願いだった。


___『あんたと同じ時間を過ごしたい』



畜生っ、なんで俺たちは会えねぇんだ!
なんで、一緒にいられねぇんだ!

会いたい。
会いたい。
会いたい。
俺だって、会いたい。

一体、どうすりゃ・・・


俺はとっさに携帯をタップした。
東京は、今、夜中の1時。
こんな時間に、俺はあいつに何を願うつもりだ?


『もしもし・・・道明寺・・?』
『牧野・・会いたい・・・今すぐ、会いたい・・』

一拍だけ間があって、すぐに牧野の返事が聞こえた。

『うん。あたしも、会いたいよ。』


____もう、限界だ。


『頼む、牧野。今すぐ、ジェットに乗ってくれ。』

今すぐ俺に会いに来てくれ。
それが、俺の切なる願い。


『うん。』

牧野の涙声が聞こえた。



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土日はゆっくりできなくて、このお話の続きか、Switchの不定期時間の更新になると思います。
また、お時間のある時に、ちらりと覗いてみてくださいね。
  1. 短編
  2. / comment:2
  3. [ edit ]

あたしはずっと待っていた。

それは道明寺が迎えに来てくれること。
そして、あたし達が同じ時間を刻めること。

そのためにあたしが唯一できることは、ずっと待っていることだった。
あたしは唯々ひたすらに待ち続けた。


だけど、今、気が付いた。
あたしは、道明寺の迎えを待っていただけじゃない。
そうじゃなくて本当は、
道明寺があたしを必要としてくれることを待っていたんだって。

3年以上も会わなければ、あいつがあたしのこと、どう思っているのかなんて分からなくなる。
あたしはあいつのことを忘れたことなんて無いけど、あいつが同じようにあたしのことを想ってくれているのか自信が無くなった。

気を使った電話。
限られた時間。
例え、本当に迎えに来てくれたとしても、あたしたちはもう一度同じ時間を過ごせるようになるのか・・・。
ずっと不安だった。


七夕の今日、あいつに初めて言われた。
あいつがあたしを求めてくれた。

『頼む、牧野。今すぐ、ジェットに乗ってくれ。』


迎えに来て欲しかったんじゃない。
あたしを必要として欲しかった。
あたしが欲しいって言って欲しかった。
今すぐ会いたいって、今すぐ来いって言われたかった。

そして、そのあたしの願いが叶った。

そんな道明寺からのお願いを、あたしが断わる訳なんて無い。



嬉しくて、何も考えられない。

あたしは、すぐに迎えに来たリムジンへ飛び乗った。
お財布と携帯とパスポート。
それだけあればなんとかなる。


会いたい。
会いたい。
会いたい。
会って、あいつを感じたい。

あんたも、そう思ってくれてるんだよね。
それが分かって嬉しい。

不安なんて無い。
だって、あいつもあたしに会いたいって言ってくれたもの。


ジェットの中で、あたしはじーっと自分の腕時計を見つめていた。

あたしはもうすぐ、ニューヨークに着く。
あいつが住んでいる街に着く。
あいつと同じ時間の流れに入る。

もうすぐ・・この時計の時間が重なるんだ・・





あたしはニューヨーク時間の七夕の午後にJFK空港に降り立った。
そこにはあいつは見当たらなくて、あたしはそのままリムジンに誘導された。

なによっ。迎えにも来てくれないの?
って怒り出しながらも、頬が緩む。
あたしは今、ニューヨークにいる。
あいつが住んでいる街にいる。
あいつと同じ時間の流れにいることが嬉しくて仕方がない。
もうすぐあいつに会えるんだ・・・



*****



人生にはいくつかある分岐点。

俺にとって確実に言える分岐点は、あの日、あの牧野が乗ったバスを追いかけたこと。
鍋の日の決断は、友人達によって軌道修正されたっけ。
だが、あの時だって、俺は牧野を諦めた訳じゃなかった。
あいつを手に入れるための決断だった。
そして最終的には、牧野を日本へ残して、このニューヨークへ来る選択をした。

それでも、俺が選択した道は、全て牧野に繋がっている。
全ては牧野を手に入れるために選択した道だった。


そして、また分岐点が来た。
それが今日だ。

いつ、日本に戻れるか分からない現状。
何年も待たせる不安。
俺だって、毎日辛かったが、待ち続ける牧野はもっと辛かったはずだ。

俺と同じ時間を過ごしたいという、あいつの願い。

文句も我儘も言わない、あいつの願い。
俺が愛する女の、密かな願い。

今、叶えなくてどうする?


仕事より、未だ不透明な未来よりも、今が大事だと感じた。
直感だ。

分岐点は、今だ。




目の前の大きな扉が、ギギギ・・と開く。

_____あいつが来てくれた。



スローモーションのように開く扉。

バージンロードの向こうに、
3年ぶりに会うあいつがいた。


なんだよ、お前。
そのカッコ。
3年ぶりに彼氏様に会うんだろ?
ちっとはオシャレでもしてこいよ。

あー、ちくしょう!
そんなカッコでも、なんで可愛いんだよ!

なんで動かねぇんだ?
早く来い。
ここまで来いよ。


バージンロードの真ん中で、俺はあいつが来るのを待った。
あいつが待ってくれた4年を埋め合わせできる訳じゃない。
だが、俺も、万感の思いを胸に牧野を待った。


このバージンロードは牧野の人生を表している。
そのバージンロードの真ん中まで、
ゆっくりと牧野が俺に向かって歩いてくる。


「なによ・・。あんたが迎えに来るって言ったんじゃないの!なんで、あたしが来てるのよ!」
「久しぶりに会った恋人にそれかよ。」
「だって・・。」
「迎えに来た。お前の人生の分岐点だ。間に合っただろ?俺。」
「道明寺・・。」


「これからは、一緒にいよう。ずっと。」


これが二人の分岐点。
愛する女の願いを叶える唯一の方法。

「あんた・・本気なの?」
「本気だぜ?」


牧野がふわっと笑顔になる。
その表情をみて、俺も温かい気持ちになる。
二人だけの世界が広がっていく。

差し出した腕に、牧野の手が掛かった。
バージンロードを二人で進んだ。

二人きりで誓った愛は、限りなく深く、俺の胸に響いた。

そして、この日の為にずっと以前から用意していたマリッジリングを互いに通す。

俺は、牧野に。
牧野は、俺に。


誓いのキスは永遠の証だ。
永遠に彼女を愛し、今日この日を永遠に忘れない。


この七夕の日に願いを込めて。

_____これからの時は、ずっとお前と一緒に。











『ねぇ、パパ、おり姫とひこ星は一年に一度しか会えないのよ。かわいそうね。』
『ん?』
『パパはママに一年に一度しか会えなかったら、どうする?』

可愛い娘の話に耳を傾ける俺。
7年前を思い出す。
もう、限界だと思った、あの日。
俺達の人生の分岐点。

『大丈夫だ、ナナ。パパは、ジェットを飛ばしてママを迎えに行くからな。』
『そっかぁ。さすが、パパ。ひこ星もジェット飛ばせばいいのに・・。』
『あいつは、無理だな。そもそも、真面目に働かねぇからそんなことになったんだろ?』
『そうだよねぇ。』

ふんふんと納得した、妻にそっくりな娘に目を細める。


7年前の7月7日に、俺はつくしと結婚した。
あの日から、俺の人生は大きく変わった。
あいつが傍にいてくれることで得られるパワーに後押しされていった。

あの時、あの決断をしていなかったら、今この幸せはないかも知れない。
結局のところ、今になっても、俺は日本には帰れていないのだから。


ずっと、待っていた。
俺があいつを迎えに行ける日を。

だけど、気が付いた。
待っているだけじゃ、手に入れられない瞬間があるのだということを。


『お待たせーっ。』

向こうから、俺の待ち人がやって来た。

『ママっ、どうだった??』
『ん。男の子だって。』
『やったぁ。パパ、男の子だって!』

腹をさするつくしと目があって、自然と微笑み合う。


離れていた時が、互いを優しくした。
俺も、あいつも、素直になったもんだ。

娘を挟んで、歩き出した。


離れていた時間が無駄だった訳じゃない。
二人にとって必要な時間だった。

それでも、あの七夕の日に感謝せずにはいられない。
この幸せを手に入れた日、新しい命を授かった日なのだから。



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