花より男子の二次小説。CPはつかつくonlyです。

With a Happy Ending

4月3日 月曜日。
東京メープルの入社式の日。

『社会人としての第一歩を踏み出した皆さんを、我々は心より歓迎します。』

檀上に立ち祝辞を述べるのは、司さん。
どこから見ても、完璧な容姿。
艶のあるバリトンボイスに、会場内からの溜息が聞こえる。

それをメープルの大ホールから見つめるあたし。
何故、あたし達の入社式で、司さんが祝辞を述べているのか・・
ううん、ちがう。どうして、道明寺ホールディングスの入社式に、あたし達、東京メープルの新入社員まで混ざっているのか・・・




時をさかのぼること、30分前。
小ホールに集まったあたし達新入社員は、すでに着席して、式の開始を待っていた。

その時に、バタバタバタっと凄まじい足音。
走り込んできたのは、総務部長。
「皆さん、すみませんが、すぐに移動します。」
はぁ、はぁ、と息を切らしている。
なにごとっ??

「急遽、道明寺ホールディングスとの合同入社式になりましたので、大ホールへ移動してください。」

「ええ~!?」
「何で、何で?」
「そりゃ、親会社だし?」
「そんなの、前からじゃない?」
とざわつく、あたし達。

「やだぁ、ちょっと、お化粧室で、メイク直させて!」
というのは、ブライダル部門配属の山崎さん。
元々美人なんだから、これ以上のメイクは必要ないと思うけど。
と思ったら、隣の涼ちゃんも、
「道明寺ホールディングスと合同なんて、一生の思い出になるよぉ。良かったね、マキちゃん!」
何て言う。

急なことに、あたしの頭もプチパニック。
騒めきながらも、小ホールから、大ホールへ誘導されていく。

____道明寺ホールディングス。
あたし達、東京メープルの経営母体で親会社。
そして、司さんが率いる会社。
いくら、東京メープルが100%子会社だからって、入社式まで一緒にするものなのかしら?

そんなことを考えていたら、後ろを歩く男性陣の言葉が耳に入って来た。
「ってことは、あの道明寺司に会えるってことか?」
「俺、あの人、すげぇ尊敬してる。ニューヨークでの仕事っぷりも半端なかったらしいし。俺と1つしか違わないのに、一体どんだけ才能あるんだろうな。」
「帰国してからメディアには殆んど出てないよな。」
「それでも、経済誌ではバンバン名前出てるし、間違いなく、今後の日本を牽引する男だろ。」
「すげーよなぁ。」


うっわぁ。司さん、やっぱり凄いんだぁ。
自分のことを言われたわけでもないのに、何故だか顔が熱くなるあたし。
あたし、彼の凄さを分かってなかった・・かも。
仕事もできるし、優しいし、ちょっと強引で困るけど、何気に完璧な彼氏じゃないの。
なんて・・やだやだ、あたしったら、何考えてんのよ。
だけど、あたしの恋人である「司さん」は、周囲からみれば、「道明寺司」という凄い男な訳で、そんな人があたしの恋人だなんて、今でも信じられない。
夢でしたって言われても、納得できちゃうぐらいに現実味がないのはホント。



メープルの大ホールに案内されると、会場には、すでに道明寺側の新入社員が着席していた。
日本支社のみで、この人数?恐らく500名は超えている。関連会社は別にたくさんあるはずだから、司さんはいったい、どれだけの企業を束ねているんだろう。
会場には、日本支社やメープル側の重役たちの席も設けられていて、なんだか緊張感が漂っている。
あたし達メープルの新入社員は、総合職は10名だけど、各部署専門のスタッフ入社が他に20名いるから、合計で30名。圧倒的な差。
向かって左側には、役員席。右側には、マスコミ席が設けられている。
うっわぁ。すごい。流石は、道明寺ホールディングス。


本当なら、あたしは、今日、新入社員代表の挨拶をする予定だった。
けれど、合同になったということは、あたしの出番は無いな。
ちょっと残念だけど、けど、こんなマスコミまでいる中で、スピーチなんて絶対無理だし。
あたしは、スピーチのことなんて、すっかり頭から消し去ってしまった。




司さんの祝辞が続いている。
うーん。やっぱり、司さん・・カッコいいかも。
あの目は冷たくて怖そうにみえるけど、ちょっと笑うと、目じりが下がるんだよね。
ちょっと、優越感?えへ。

『今年度より、我が道明寺ホールディングスは、東京メープルの企画経営に共同で乗り出します。それは将来のメープルを今まで以上に発展させるという目標のためです。今まで通り、メープル単独での経営であっても十分な利益は得られています。しかし、これからの東京に求められるものは何なのか、数年先、数十年先まで見据えた経営を考える上で、我が社と東京メープルが力を合わせることは有益なことと考えます。』

ん?んん?えっ?今、何て言った?
メープルと、共同企画経営?
司さん・・そんなこと、一言も言ってなかったのに。
ってことは、だから、合同入社式って訳??


『この度入社した諸君と共に、道明寺ホールディングスと東京メープルを発展させていきたい。そのためには、君たち自身が率先して活躍してくれる必要があります。私はその活躍の場を提供するつもりです。大いに頑張って下さい。』

大いに頑張って下さいって・・。
まぁ、あたしには関係ない・・よねぇ。
あたしみたいな新入社員が、道明寺ホールディングスと関わるような仕事を任されるとは到底思えないし。
まさか、仕事で、司さんとの接点なんて、ある訳ないよねぇ。
なんて、ぼんやりと考えていたあたしは、次に始まった道明寺側の新入社員代表挨拶は耳に入っていなかった。


司さんの言葉をもう一度考えていると、トントンと肩を叩かれた。
「次、牧野さんだからね。頑張って。」
そう言ってきたのは、メープルの経営部長。

えっ?うそっ!
あたしも、挨拶するの?
こんなに大勢の前で?
マスコミだって来てるのに?
きっ、聞いてないよぉ。
あっ、頭の中、空っぽになってる・・・。


どうしようっ!!



先に始まった挨拶が終わって、あたしの番になった。
頭の中に、スピーチの内容を思い出そうとするのに、何にも頭に浮かんでこない。
手が、震えて来た・・。
きっとあたしは、能面みたいに血の気のひいた顔をしていたと思う。

会場内に、あたしの名前がアナウンスされた。

行くしかないけど、足が震える。
思い切って立ち上がったその時に、左手に、チラッと司さんが見えた。
司さんがいたずらっ子のようにニヤリと笑った。

あの笑い・・何?
あたしがスピーチすること、知ってた?
だったら、どうして合同になったことを教えてくれないの?!
あたしのこと・・試してるの?


そんな、笑い方するんだったら・・・
あたしだって負けないんだからっ!
司さんの祝辞はしっかり聞いた。
見てなさいよ!
あたしの頭は一瞬にしてクリアになった。
追いつめられると強くなる。
あたしは、もう一度背筋を伸ばし、壇上に向かってしっかりと歩き出した。



『東京メープル、新入社員代表の牧野つくしと申します_____』
あたしは、しっかりと正面を見据えた。
頭がクリアになったあたしには、恐いモノなんてない。
広い会場に、飲まれたりなんてするもんかっ!
あたしには、自分のするべきことが、きっちりと見えていた。


『____最後になりますが、今日初めて、今後東京メープルが、道明寺ホールディングスと共同企画経営の方針をとると伺いました。そのお話を聞き、更に仕事が楽しみになっています。東京メープルに、道明寺ホールディングスの力が加わることで、今まで以上のサービスが提供できると確信します。今日、ここに集まった同期の皆さんと共に、未来のメープルを担う人材になれるよう、努力をしたいと思います。』


スピーチを終え、チラッと右側を見ると、やっぱり司さんと目が合った。
あたし、ちゃんとできたでしょう?
だけど、あたしが檀上去ろうとすると、司さんがこちらに向かって歩いてくるのが見えた。

なっ、なに??

あたしは足が止まって、じっと司さんの動きを見つめてしまった。

司さんがマイクを持った。

『我が道明寺ホールディングスと東京メープルを繋ぐ架け橋になって下さい。』
そう言って、あたしに右手を差し出した。

あたしは訳が分からず、とっさに自分の右手を前に出す。
がっちりと司さんに握られて、顔を上げると司さんが、甘い顔であたしを見つめていた。

「よろしくな。」
そう、司さんの口が動くのが分かった。

周りの拍手や、カメラのフラッシュ音なんて、全く耳に入らなかった。



 

にほんブログ村
第二部開始です。
どうぞよろしくお願いいたします!
スポンサーサイト

  1. 続・俺の女
  2. / comment:4
  3. [ edit ]

「おいっ、聞いたかよ。西田。」
「いつもながら、素晴らしいスピーチでした。」
「俺じゃねぇよっ!牧野だよ、牧野っ!」

興奮している俺に対し、あくまでも冷静な西田。
「牧野さんのスピーチは完璧でしたね。しかし、私はそれ以上に、あの土壇場で、実力を発揮できるという点が素晴らしいと思いましたが。」
「だろっ?流石は俺の女だろっ?」

浮かれている俺に、西田が釘をさす。
「いきなりの予定変更で、かなり戸惑われたと思いますよ。ここで失敗すれば、先は無かったのですよ。」
「そん時は、俺が救い上げるから心配いらねぇ。」
「はぁ。しかし、やりすぎです。マスコミの目もありますから。」
そう言って、俺を睨む西田。
恐くねぇっつーの。

「あれぐらい、大したことねぇよ。」

マスコミが来てることなんて、百も承知。
今後、道明寺HDが東京メープルを正式にバックアップするという宣伝のため、入社式で取材を許可したのは俺だ。
そして、そのメープルの新入社員と握手をしたのは偶然って奴だが、別に問題ねぇ。
新しい東京メープルのイメージ作りに、一役買って出てやったんだっつーの。
それが何でわりぃんだよ。
有難く思えよ。



出張先のシンガポールから、速攻で帰ってきた俺は、
牧野にパンプスを手渡した後、自社の入社式で祝辞を述べるためにメープルへやって来た。
牧野の入社式も見たかったが、それは無理だと諦めてはいたんだ。
自社の挨拶が済んでから、メープルの新入社員に顔を出す予定だった。
けれど、たまたま、見えちまったんだ。
東京メープルの入社式の式次第。
新入社員代表挨拶は、『牧野つくし』だと!?
何で俺に教えねぇんだよっ!
西田、お前知ってたな。
こいつが、知らねぇわけがねぇ。

そうなれば、恋人のスピーチを聞きたくもなるってもんだ。
「20分だけ待つ。合同入社式に変更しろ。」
俺の一声で、急遽、合同入社式が決まった。


しっかし、あいつ。
あんだけガチガチに緊張していて、どうなるかと思ったが、なかなかやるじゃねぇか。
スピーチは完璧だった。
話のスピード、活舌、内容、どれをとっても、新入社員としては満点だろう。
うちの新入社員代表もなかなか良かったが、当然のことながら、自分の眼中にないメープルにまでは話を広げることは無かった。
牧野はというと、堂々と挨拶をこなし、俺からの共同企画経営の話も踏まえて、今後のメープルを期待させるような結びで締めくくった。
さすがは、俺の女だ。
あの雰囲気の中、自分のすべきことは、メープルと道明寺との共同経営をマスコミへアピールすることだとすぐに分かったのだろう。


俺が立ち上がりたくなるのも当然だろ?
握手ぐらいなんてことねぇよ。
スタンディングオベーションで迎えてやりてぇぐらいだったぜ。


「先が思いやられます・・・。」
そういって、溜息をつく西田。

「言っとくけど、これからだぜ?西田。」
それから俺は、メープルの小会議室へ向かった。



*****



「牧野さんっ。すごーい。いいなぁ。あの道明寺支社長と握手できるなんて。」
「本当~。すっごいサプライズ。さすがは道明寺司!」
「すげぇよなぁ、牧野。道明寺支社長に目を掛けられて。」

入社式が無事に終了し、あたし達総合職10名は、別室へ移動した。
移動すると同時に、みんなから口々に感想が飛び出した。
さっきのサプライズ。
司さんは、道明寺側の新入社員代表とは、握手なんてしなかった。
今後、道明寺HDは東京メープルとの関係性を深めるというプランがあって、そのアピールのために、マスコミの前でメープルの新入社員代表であるあたしと握手をしただけなんだってことは分かっているけど・・・

あたしは、はっきり言って、心臓が飛び出しそうだったよ。
拍手と同時に、会場内からの拍手。
そして、マスコミからのカメラのフラッシュ。
その上、そのまま、司さんに軽くエスコートされる形で、檀上を後にした。

でもさ・・ちょっと、やりすぎじゃない?
もし、新入社員代表があたしじゃなかったとしても、司さんはここまでするんだろうか・・
公私混同じゃないのか、と思う反面、司さんに限ってそんなことは無いと信じているあたしがいたり、何となく複雑な気分。


「あ~、もう、道明寺HDのエリート社員を捕まえてやろうと思ったけど、やっぱり、支社長を見ちゃうと、他なんてカボチャにしか見えないわねぇ。」
そう言うのは、やっぱり山崎さん。

「高校時代のF4と言えば、もう、神のレベルだったよね。」
と隣で、涼ちゃんも頷いている。
「F・・4・・?」
「あれ、マキちゃん知らないの?芸能人を凌ぐ人気で、特別雑誌もバカ売れしてたじゃん。」

F4・・聞いたことはある。
高校時代に、友達が騒いでたもん。
超セレブ学校の英徳学園に通う、イケメン集団のこと。
地位も、名誉も、お金も、美貌までもが揃った四人組をFlower 4と呼ぶのだとか。
だけど、あたしはバイトや勉強やで忙しくって、そういうことには興味が無かった。
司さんって、F4の一人だったんだ・・・。
あたしってば、司さんのこと、ホントに何にも分かってないな、とちょっと落ち込む。


それから、支配人をはじめ、メープルの役員たちが入ってくると、あたし達のおしゃべりも終わった。

支配人から、具体的なメープルと道明寺HDとの共同企画の話が説明された。
私たちはこれから1か月、各配属部門での初期研修を受ける。
もう一度マナーの確認から入り、部署の仕事をマスターすべく先輩に付いて学んでいく。
通常は1年間かけて、ホテル内の部署を回ることになっている。

「今後は道明寺HDとの共同経営企画も、当ホテルの大きな看板になります。入社前に、皆さんから提出してもらった、未来のメープル像は、それぞれにとても素晴らしいものでした。私たちは、皆さんがホテルマンとして成長するとともに、将来的には、この東京メープルを支えていく人材になることを期待します。」


そこへ、カチャっと、後方の扉が開いた。
皆が一斉に振り返り、はっと息を飲んだ。
入って来たのは、司さん・・じゃなくて、道明寺支社長。

どうして?

司さんの後ろからは西田さんが入って来て、司さんを前方の席へ案内している。
ここへ道明寺HDの日本支社長が来るなんて、一体何があるっていうの?

「では、早速ですが、道明寺支社長より、お話があります。どうぞ、よろしくお願いいたします。」
と支配人が、司さんを紹介した。

あたし達は、唯々、成り行きを見守るばかり。


「今後の東京メープルを支えていく皆さんに、この場で挨拶ができることを嬉しく思います。担当直入に話を進めます。我々、道明寺HDが経営に乗り出すからには、これまでとは異なった人材育成を考えています。」

人材育成?

「メープルのホテル業務と並行して、メープルの企画に直接携わり、1年目から経験を積んでいってほしい。また、長期的プランにもかかわることで、自分の責任を自覚してほしい。」

1年目から、メープルの企画に参加していくということ?

「先月までに提出されたプランを、上層部で検討した結果、数名を選抜しました。」

選抜??

すると、西田さんが、ガサガサとファイルを開き、司さんに渡した。
「レストランプロデュースの企画については、新入社員の黒田君の案が面白い。これを、メープル内で、更に詰めて報告してください。期限はこの夏まで。」
「さらに、ブライダルの新しいドレスの提案は、新入社員の山崎さん。あなたの案がなかなか良かった。しかし、デザイナーとの折衝などまだまだ企画として成立させるには時間がかかるでしょう。このプランを、あなたに任せます。ブライダルの専門スタッフと協力してプランを纏めてください。」

数名の新入社員それぞれに、目標が課せられていく。


「牧野さん。」
ついに、あたしの番が来た。
ごくっと唾をのむ。

「あなたの長期的プランにはとても興味を惹かれます。これは、道明寺HDのバックアップがあればこそ可能となります。相当、大きなプロジェクトになるでしょう。そのプロジェクトの一員としてあなたを指名したい。また、短期プランも面白いものがありました。メープル宿泊により〈非日常〉という付加価値を提案するということ。これをしっかり詰めていきましょう。あなたのプランについては、私が、直接指揮を執ります。一緒に頑張りましょう。」

今・・何て?
誰と、何を、一緒に頑張るって?


(道明寺HD:道明寺ホールディングス)

 

にほんブログ村
いつも応援ありがとうございます。
司、かっ飛ばしてまーす。
  1. 続・俺の女
  2. / comment:6
  3. [ edit ]

メープル、小会議室にて・・
集まっているのは、メープルの役員さんたちと、司さん、西田さん、あたし。

衝撃の発表の後、あたしは、頭がついていかないまま、会議室に残されることになった。
会議室では、あたしが提出した企画の書かれた資料が配られた。

司さんの声するけれど、なんだか遠くに感じる。
あたし、どうしてここにいるんだっけ・・?

「若年層を取り込もうとするプランが多い中、牧野さんの長期プランは、目を引きました。敢えて、ターゲットを富裕層から変更するのではなく、富裕層と若年層がともに楽しめる提案です。現在のメープルのメインターゲットは、富裕層、ビジネス関連、海外からの顧客です。メープルの高級路線を考えれば、今後もこのターゲットは外せません。しかし長期的には、もう少し幅い広い年齢層の顧客が必要になるでしょう。ただし、単に、安価な路線で若年層を引き入れるという選択肢は受け入れられません。そこで、牧野さんの案ですが・・牧野さん、簡単に説明してもらえますか?」
司さんの呼びかけに我に返った。

えっ。あたしっ。
なんで?今、資料をもらったばかりだよ。
そんな、急に言われたって・・

パチッと司さんと目が合った。
すごく真剣な目つき。
当たり前だけど、遊びなんかじゃない。
これが、ビジネスモードの司さんなんだ。
あたしも、落ち着け。しっかりしろ。
あたしは、一つ深呼吸をした。


「私が提案するプランは、既存の東京メープルの他に、若年層とファミリー層を受け入れる、新たなメープルを作りだすという案です。ターゲットは現在のメープルでは敷居が高いと考えてしまうような、若者、特にカップルと、富裕層のファミリーで、東京都心に、若いカップルや家族で楽しめる高級リゾートができるようなイメージです。本館とは建物自体を別にして、そこへ新たな次世代のメープルを作り出す構想です。現メープルと別棟にすることにより、現メープルのターゲットである富裕層、ビジネス層からのクレームは避けられると思います。」

「しかし、若いカップルと、ファミリー層では、ステイの目的が大きく異なるのでは?」

「若年といっても、メープルですから、学生をターゲットにするわけではありません。いずれは、現メープルにステイするような、20代のカップルです。本館ほどにドレスアップしなくても気軽に宿泊できるリゾート型のメープルから体験してもらいたいです。富裕層のファミリーも同様で、現メープルとは違って、気楽に子供達とステイすることが目的になります。ステイの中で、親子の絆を強めるようなプランも充実させたいです。どちらにとっても、〈非日常〉を提案できるのではないかと思います。」

「なるほど。」

「敷地や予算の面が厳しいと思われますが・・」
と役員から懸念する声が出る。
それを一蹴したのは、司さん。
「そのために、道明寺ホールディングスがバックアップします。うちのバックアップがあればこその企画です。」

「面白い。」
口々に賛成の意見が広がる。

「これから、半年から1年をかけて、プランを作り込んでいきます。牧野さん、お願いできますか?」
司さんから話を振られた。

この状況で、一体誰が断れる?
それに、あたしには、断る理由なんてない。

「はい。どうぞよろしくお願いいたします。」


「更に、短期目標についても、牧野さんの企画は面白いと思います。できれば、この夏には、企画として進めていきたい。」
各自が資料を捲りながら、考えている。

「海外セレブを呼び込む手段として、これまでの高級路線にプラスして、メープルならではの付加価値のあるアクティビティを用意するというものです。これについて、牧野さん、説明をお願いします。」

「はい。私が当初考えていた企画としましては、海外のお客様に、お茶や、お花、和菓子作りなど、〈和〉をテーマとしたアクティビティを提案したいと思っていました。日本から海外のリゾートに行くと、日よって様々なアクティビティが用意されていて、気軽に楽しむことができます。メープルでは、当ホテルならではのこだわったアクティビティを提供することによって、海外顧客、さらには現在も御贔屓にしてくださっている日本のお客様にも、ホテルステイを楽しんで頂けるようにと考えています。」

「実際に、どのようなアクティビティを提案するのですか?」
「それは・・まだ、これから検討してみなければ・・」
あたしもまだ、そこまでは詰めていない。
だいたい、セレブなんて周りにいないし・・。

「私、個人的には・・」
と司さんが話に入って来た。

「通常では出会えないような価値のあるアクティビティがいいと考えますが。私の知り合いに、伝統に詳しい者がいますので、協力を頼みましょう。この担当も、牧野さんにお願いしたい。できますか?」

司さんと目が合う。
「できません。」なんて言えると思う?
こうなったら、しっかり頑張ってやる!

「やらせていただきます。」
机の下で拳を握りしめるあたし。

「牧野さんの企画は、道明寺ホールディングスが全面的にバックアップします。」
と司さん。

支配人が、
「牧野さんは、メープルの研修と、共同企画でとて、非常に忙しくなると思いますよ。大丈夫ですか?誰か、ヘルプを付けましょうか?」
と聞いたとき、すかさず司さんが答えた。

「牧野さんは、東京メープルとの懸け橋として、道明寺が育てます。つまり、私が直接教育します。共同で生み出される新しいメープルにふさわしい、それだけの結果を出せる人材だと期待しています。」

司さんが・・あたしを育てる・・

真剣な顔の司さんに、あたしの顔も引きしまる。
「どうぞよろしくお願いいたします、道明寺支社長。」

周囲の役員たちから、拍手が上がった。
あたしが、未来の東京メープルの企画を担当する。
信じられない・・けど、あたしがやりたいと思っていた仕事だ。
不安はあるけど、司さんと一緒に頑張りたい。

不安と緊張を、振り払うように小さくガッツポーズをするあたし。
実は、前方の席では、司さんも別な意味でガッツポーズをしていたなんて、考えもしなかった。



*****



「牧野さん、お疲れ~!」
「お疲れ様、高木君。」

同じ宿泊部門から初期研修をスタートする高木君が、やたらと爽やかに見える。
一方のあたしはというと・・・はっきり言って、疲れ果てた。

朝から、合同入社式でのスピーチ。
それから、青天の霹靂で、道明寺HDとの共同経営企画を任されることになった。
直接指導してくれるのは・・・司さん。
こんなことって・・。


会議が終わると、あたしは初期研修に合流した。
共同経営企画があるからと言って、初期研修を疎かにはできない。
だけど、道明寺HDの会議や、呼び出しがあれば、そちらを優先するようにと、支配人から言い渡された。
道明寺HDの日本支社長が、直接新人の面倒を見るなんて、異例中の異例。
だけど、今回のメープルとの共同経営企画は、道明寺司が指揮を執ると言うことでも注目を集めるそうだから、合点はいく。


宿泊部門に戻ると、初期研修の指示を受けた。
あたしと高木君は、ベルパーソンから始める。
ベルパーソンっていうのは、ベルガール・ベルボーイのことね。
お客様の荷物を運んで、フロントへ誘導したり。
チャックイン・チェックアウト後のお客様をご案内したり。
レストランや宴会場との連携、バレットサービスとの連携なんかも仕事になる。

今日は、早速、メープルのベルガールの制服に身を包み、先輩ベルガールのすみれさんから、様々な指示を受け、メモを取って回った。

そして、先ほどやっと終了。
どっと疲れが沸いて出て来た。


「牧野さん、今から涼子と食事行くけど、一緒にどう?」
高木君は、あたしと仲良しの宮田涼子ちゃんと付き合っている。
「ううん。どうしようかなぁ・・」
晩御飯は行きたいけど、なんだか疲れたし、
司さんが帰ってくるかどうかは分からないけど、今日の話も聞きたいし。

迷いながらロッカールームまで来ると、向こうから涼ちゃんと、黒田君がやって来た。
レストラン部門も今日はもう終わったみたいだ。

「マキちゃん、夕食、一緒に行こう!黒田君も行くって。」
「えっと。どうしよう・・」

あたしは、チラッとスマホを確認したけど、司さんからの連絡はない。
迷っているうちに、4人で近くの洋食店に行くことになってしまった。

あたしは司さんにLINEを入れて、スマホをバッグにしまった。
その後に、司さんからのLINEが入っているのなんて、全く気付かなかった。



 

にほんブログ村
いつも応援ありがとうございます。
ビジネスは難しいです・・。
ホテルの業務や、ビジネスについては、完全なる妄想です。
軽ーくスルーしていただけると幸いです。
  1. 続・俺の女
  2. / comment:4
  3. [ edit ]

「おい、西田。牧野から連絡ねぇの?」
「ありませんね。」
「あいつ、今日は、もう終わってんじゃねぇのかよ。」
「さぁ、どうでしょう?」

ちっ、西田の奴。絶対に牧野の予定なんか把握してくるくせに、俺にはなかなか手の内を見せねぇ。
だったら、牧野から直接連絡が欲しいもんだが、あいつからの連絡もねぇ。

出張から帰ったら、一緒に寝ようとか言ってなかったか?あいつ。
早く帰れる日は、俺の部屋で待ってるんじゃなかったのか?
じゃあ、なんで、電話にも出ねぇんだよ。

イライラしながらも、仕方なく、書類を捲る。
その時、ブッブッというバイブ音。

『同期の子たちと、ご飯を食べてから帰ります。』

・・・。
マジか?
恋人よりも、同期かよ。
つっても、俺もすぐには仕事なんて終わらねぇんだけどよ。
はぁ。


「西田。」
「はい、支社長。」
「お前、牧野のスケジュール、しっかり把握しとけよ。」
「・・・。承知致しました。」
お前、めんどくせぇとか思ってんじゃねぇだろうな。

俺は、チマチマとLINEを打った。
『遅くなるんじゃねーぞ。終わったら連絡しろ。』

それから、書類に意識を集中させるが、15分もすると、またスマホを確認。
当然、返事はねぇ。
イライラ。
『早く帰れよ。』送信。

それから、また書類に目を通す。
15分して、スマホを確認。
返事はねぇ。
イライラ。
『もう、食い終わったのか?』送信。


「支社長、消音を解除されては?連絡があれば、分かるでしょう。」
西田が、呆れたように、俺に声を掛けた。


俺だって、そんなことは分かってんだよ。
けど、今だって、バイブの音にすら即座に反応できるぐらい、牧野からの連絡を待っている。
気になって仕方ねぇ。
俺はいったいどうしちまったんだ。
同じマンションに住んでいても、共通の仕事を持っても、彼女の体を知っていてさえも、それでも満足できない。
牧野の全てが欲しくて、俺以外の人間なんて見て欲しくねぇと思ってる。

同期って誰だよ。
男と二人じゃねぇだろうな?

牧野を好きになるまでは、自分がこれほど何かに執着するなんて考えもしなかった。
仕事にしても、俺にとっては、「道明寺司」の価値を世間に知らしめるだけのもんで、それ以上のものじゃなかった。
その俺が、一人の女にはまりまくって、仕事が手につかねぇなんて。
ありえねぇ。


出来る事なら、あいつは俺の女だと言って回りたい。
俺の女に近づくなと、堂々とけん制してやりたい。
本当は、俺は自分の女を外になんか出したくないんだ。
俺の部屋に閉じ込めて、俺のことを待ってろって伝えて、俺のことだけ見させて、俺のことだけ考えさせておきたい。

でも、残念なことに、俺が惚れた女は、俺の帰りをじっと待っているような女じゃなかった。
Barのバイトだって、一生懸命やっていた。
俺のグラスにウイスキーを注ぐ姿さえも真剣で、あいつが仕事を大切にする奴だって知っている。

もし、俺との交際が周囲に知れれば、おそらくあいつはメープルで仕事を続けていくことは難しいだろう。
本人が気にしないでくれと願っても、周りが気を使うにきまってる。
そんな中で、あいつが平気で仕事ができるとは思えない。
あいつがメープルを辞めたって、俺が道明寺で引き取ってやるんだが、あいつはそんなことを望む女じゃないだろう。

メープルの仕事は、あいつが自分でつかんだ、あいつの夢なんだ。
それを取り上げることなんてできやしない。


だから、俺ができることといえば、あいつが仕事をしやすいようにサポートしてやることだけだ。
俺がニューヨークで学んだビジネスマインドを、あいつのために使ってやる。
俺が仕事をすることで、あいつも働きやすくなるんなら、いくらでもやってやる。
そして、もちろん、二人で結果は残す。
それは、やるからには当然のこと。

俺はいつだって、牧野の笑顔が見たいんだ。
牧野ためだったら、何だってやれる。

願わくば、お前が隣にいてくれたら、もっともっと頑張れるんだぜ?

お前さぁ。
俺が、そんな風に思ってるなんて、全く知らないんだろ?



*****



皆で訪れた、洋食屋さん。
ここのデミグラスハンバーグは絶品。
同期4人で、今日の出来事を話し合う。
其々に課された企画とか、今日の研修内容とか、そんなこと。
だけど、一番は・・・

「ええ~!じゃあ、マキちゃん、道明寺支社長から直々に指導を受けるの??」
「うーん。具体的なことはあんまり聞いてなくて。でも、宿泊部門の研修はちゃんとするし、企画は時間外に頑張るしかないのかなぁ。」
「うっわー。初めから、めちゃハードだね。」
「うん。」

「でもさ、入社試験の時も、牧野の企画ってズバ抜けてたよな。やっぱ、上層部の目に留まったんだろうな。」
「そう言ってもらえると嬉しいけど・・。」

今回のこと、本当に素直に喜んでいいのかは、ちょっと引っかかっている。
だって、あたしは司さんの恋人な訳で。
でも、仕事の面で、あたしに甘い顔をする訳なんてないって思ってるけど。でも・・。


「けどさぁ、道明寺支社長って、バリバリ仕事人間って思ってたのに、ああいう顔するんだね。マキちゃんと握手した支社長がメチャ甘い顔してて、隣の山崎さんとか溜息付いてたよ。あれで、支社長のファンは確実に増えたね。」
「俺も思った。支社長は女嫌いで、仕事では女と組まないって噂あるよな。」
「ってことは、支社長のブラックな噂って嘘だったのかな?」

「ブラックな噂?」
「気になる?」
「いや、だって、これから仕事を教えてもらうのに・・さ。」
「だよねぇ。」

「ほら、支社長は高校時代、めちゃくちゃモテてたじゃん。」
「そうなんだぁ。」
「当然、バレンタインデーとか誕生日とか、女性からのプレゼントが殺到する訳。でもさ、もちろんどれも受け取らなくって、終いにはホールケーキを持ってきた女の子の顔に、そのまま顔面ケーキくらわせたって話。」
「マジ?」
あたしは、マフィンやムースだったから、大丈夫だったのかな?

「それに、実はスゲェ喧嘩っ早いらしいぜ。気に入らない奴は、半殺しにしてたとか。」
ひぇっ。
でも、あのデカイ体からすれば、強いのも頷ける。
あたしの前では、優しい姿しか見せてないのに。
実は、豹変したりして・・。

「ニューヨーク時代は、ゲイの噂もあったらしいしね。これは、絶対言っちゃだめだよ、マキちゃん。支社長に殺されるかも知れないよ。」
ゲイか。
それは・・ないはず・・。
やっぱり、噂は噂ってわけか・・ふう・・。


でもさ、こうして司さんの噂を聞いてみると、あたしって本当に何も知らないみたい。
だけど・・
あたしの知っている司さんは、Barで出会った司さんで、
あたしが好きな司さんも、Barで出会った司さん。
道明寺HDの支社長だとか、F4の一員だったとか、そんなことをいまさら知ったところで、あたしはどうしようもない。
あたしが信じられるもの。
それは、あたしが今知っている司さんしかいない。


「牧野。もしかして、残念とか思ってる?実は、支社長のファンだとか?」
今まで黙って聞いていた黒田君が話しかけてきた。
「そうじゃないよ。ファンだなんて。」
「そっか。」
なんか、ほっとした感じの黒田君。
周りで、涼ちゃんも高木君もニヤニヤしてる。
何なのよ。

「何かあったら、相談しろよ。支社長と仕事なんて、キツイに決まってるし。メシぐらいはいくらでも付き合うから。」
そう言ってくれる黒田君。
有難いのか、有難くないのか、よく分かんない。
付き合っている恋人が自分の上司で、その上司がキツイからって、恋人以外の男性と息抜きでご飯に行くって言うのもね・・・あたしには無理な話。

「ありがと。自分でなんとか頑張るよ。」
あたしがそう言ったら、黒田君はすごく残念そうだった。


コーヒーが運ばれてきて、最後のまったりタイム。
「でもさぁ、忙しくなると、実家から通うのは結構大変じゃない?」
と涼ちゃんに聞かれて、あたしは思わず言ってしまった。
「あ、ううん。近くに引っ越したから、それは大丈夫。」

「えっ?牧野、寮に入れたの?」
「聞いてないよ~、マキちゃん。」

しまったっ!あれは、寮なんかじゃないしっ。
でも、もし、彼の家に同棲なんて言ったら、相手は誰って絶対聞かれるし。
色々詮索されるのも困る。
もし、司さんとの関係がバレるようなことがあったら、仕事を続けていく自信なんかない。

「あっ、あたし、親戚のお姉ちゃんのところに居候することになったの。メープルの近くに住んでて・・。」
「へぇ、あのあたりに住んでるなんて、凄い人?そのお姉さん。」
「あっ、うん。そう・・かな。」
「でも、それはラッキーだね。」

この嘘は仕方ないよね。
司さんだって分かってくれるよね。
うん。


そう思いながら、そっとスマホを確認する。
あれ、LINE来てる。
ううん。LINEだけじゃなくて、着信も。

『遅くなるんじゃねーぞ。終わったら連絡しろ。』
『早く帰れよ。』
『もう、食い終わったのか?』
『まだ終わんねぇの?』
『いい加減に帰れよ。』
『今日の門限21時だからな。破るな。』
『俺より遅く帰るなよ。』

ぎょえっっ!!
何これ。
門限21時!
今は・・20時半。
でも、今日の門限って?
もしかして、司さん怒ってる?
司さんって、実は恐い人なの?


真っ青になるあたし。
「マキちゃん、どうしたの?」
って、涼ちゃんが心配そうに聞いてくれた。


「ごめんっ!親戚のお姉ちゃんから連絡来てた。先に帰るねっ。」
あたしは、ガタンと席を立ち、ダッシュで店を後にした。



 

にほんブログ村
いつも応援ありがとうございます!
この二人って、正式に付き合いだしてから、まだ3日目なんですよ。
お子ちゃまカップル。
  1. 続・俺の女
  2. / comment:6
  3. [ edit ]

今日の門限が21時って・・司さん、何考えてんだろ?
あたし、高校生じゃないんだけど・・。
でも、まだ20時半だもん。
司さんより、先に帰れるはず。
あたしは、何事も無かったかのように、LINEを入れた。
『終わったので、今から帰ります。』

で・・
急げ、急げっ!
そう言えば、司さん、ご飯食べて帰るよね?
今から作るっていっても、チャーハンぐらいしかできないけど。
冷ご飯でも、いいかな?

はぁ、はぁ。
何とか、マンションの正面玄関にまでたどり着いた。
指紋承認をして、息を整えながら、エレベータに乗る。

緊張しながら開けたドアの中は・・暗闇。
良かったぁ・・先に帰って来れたみたい・・。

はぁ。もぅ。汗だくだよぉ。
お米だけセットして、先にシャワーだけでも浴びておこう。

ふぅぅ。
スーツを脱ぎながら、あたしはちょっと首を捻る。
別にあたし、悪いことをした訳でもないのに、なんでこんなにビクビクしてるんだろ?

でも、思い当たる節はある。
早く帰れる日は待ってるって約束してたし、出張から帰ったら一緒に寝ようとか言っちゃってたし。
それなのに、初日から、彼氏ホッチッチはまずかったかなって、反省はしてる。

でもさ。司さんだって忙しい人な訳だし、あたしのことなんて気にかけてないと思ったんだもん。
だけど、思い返せば、「お試し」していた時だって、いつもバイトの後は迎えに来てくれていたし、案外心配性なのかもしれない。
そもそもこのマンションだって、寮での一人暮らし何て心配だとか言って、司さんがあたしの為に用意したものだ。まぁ、自分の都合も大いにあったのだとは思うけど。

あたしだって、もう社会人なんだから、そんなに子供みたいに心配してもらわなくっても大丈夫なのになぁ。
あたしは、なかなか常識はずれな両親に育てられたせいか、過度に心配されたり、大切にされたりすることに慣れてない。
今までだって、自分のことは自分で決めて、やって来たしね。
あたしって、周囲からは割としっかりしてるって思われてるんだけどな。
司さんから見たら、そうは見えないのかな?

そんなことを考えながら、あたしは、シャッシャッとお米をといで、シャワールームへ急いだ。



*****



「おい、西田。」
「今度は何でしょう?」
「今何時だ?」
「20時30分ですが・・。」

だよな。分かってる。
けど、あいつ、まだ飯食ってんのかよ!
ったく。社会人になったからって、色気づいてんのか?
まさか、酒とか飲んでねぇよな。
変な男に言い寄られてねぇだろうなっ!

今日は、きっちり今後のことを教え込んでやらなきゃなんねぇ。
と思ったところに牧野からのLINE。
帰ってきやがったな。

ガタンと俺は椅子から立ち上がった。
「もう、いいよな。」
「はい、後の確認はこちらでしますので。」
「じゃあ、先に帰るわ。」
「お疲れ様でした。明日は8時半にお迎えに上がります。」


会社で西田と別れて、俺は速攻マンションへ。
あいつ、ちゃんと帰れたのか?
部屋に入ったら、連絡入れるようにさせるか?
いや、ドアにセンサー付けとくかな。
カメラが確実か。

俺は、チャイムも慣らさずに、牧野の部屋のドアを開けた。
部屋の電気は付いている。
けど、出迎えはねぇ。


靴を脱いで、一歩中へ入ると、カチャッと左側の扉が開いた。
そこから出てきたのは牧野。
髪は緩くトップで纏め、体にはバスタオル一枚を巻いただけの姿。
「ふぅ。」
と息を吐いた牧野のが、ベッドルームに入ろうとしていて、その白い肩と太腿から下全開の細い足に、俺は生唾を飲んだ。

ガタッ。
あ、やべっ。思わずよろけちまった。
ぱっとこちらを振り返った牧野。
その瞳が驚きに見開かれて・・・


『うっぎゃー!!!』


こいつのこの叫びには、ある程度慣れた俺。
つーか。別に俺が悪いんじゃねぇっつの。
お前こそ、もう風呂入ってるなんて、やる気マンマンじゃねぇかよ。

固まるこいつに近づいて、頭をポンポンと叩いてやった。
「風邪ひくぞ。早く着替えて来いよ。襲うぞ。」
できるだけ冷静に言ったつもりだったが、顔はニヤケたままだったらしい。
「・・っ!!」
牧野が俺を睨んだ。



 

にほんブログ村
いつもたくさんの応援、ありがとうございます!
最後のつくしの叫び。初め、「スケベっ」を考えたけど、古いなって思ってやめて、次は「エッチ」が浮かんだけど、なんか違うなと思い、最後は「エロ」って思ったのですが、やっぱりなんか違うんですよね。
むずかしいです。
  1. 続・俺の女
  2. / comment:6
  3. [ edit ]

NEW ENTRY  | BLOG TOP |  OLD ENTRY>>

 

プロフィール

Author:Happyending
ときどき浮かぶ妄想を書き留めたくて始めました。

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR

« 2017 11  »
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -