花より男子の二次小説。CPはつかつくonlyです。

With a Happy Ending

昨日までの『花街に護られて』コラボ、いかがでしたか?
さて、今日からは、『花街に護られてー桜・恋・歌ー』からヒントを得て、『花街~』とは全く違う、つかつくのお話がスタートです。
ちょっと切ない、つかつく。全7話。
そして、それが終了してから、『続・俺の女』の再開になります。
是非、こちらのお話も楽しんで頂ければと思います。

原作の、『鍋の日』から分岐したお話です。
鍋の日に離れ離れになる二人・・のその後になります。

では~スタート。
***





『道明寺・・桜、咲いてるよ。元気にしてる?』


国立大学の入学式。
正門前の桜を見上げて、あたしは、いつもの感慨に浸った。
この春から、あたしは難関国立大学の経済学部に入学した。
正門から入学式の行われる講堂に向かう一本道に咲き誇るソメイヨシノ。
枝からこぼれんばかりに咲き誇る桜をみて、隣にいない彼を想う。

英徳の校舎は豪華で立派だったけど、何故か桜は無かった。
桜を見ると、思い出すんだ。

道明寺・・・頑張ってるかな?



____あたしが、高校2年のクリスマス。

道明寺とあたしはクリスマスデートをした。
その時のあたし達は付き合っていた訳じゃなくて、あいつがあたしのクリスマスを70万で買うなんて言い出した、そんな俺様デート。

だけど、本当は分かってたと思う。
俺様な態度は、本当は優しさの裏返しで、素直じゃないあたしを誘うための手段だったんだって。
70万なんて、本当は全く関係なくて、ただ単にあたしをデートに誘ってくれたんだって。
そしてあたしも、道明寺に誘われて、嬉しかったんだって。

だけど、ちょっとしたトラブルで、リュウも一緒になってしまった動物園デート。
あいつ・・動物苦手だったんだよね。
それでも、あたし達について回って、リュウに肩車をしてあげていたっけ。
分かりにくいけど、本当に優しい奴なんだよね。

あの時の道明寺を思い出しては、笑みがこぼれるのを抑えられない。
今でも、あたしの中には道明寺がいるから。
忘れられない、忘れたくない人だから。


眠っちゃったリュウを横抱きにしたあいつと歩いた上野公園。
真冬なのに、池のほとりとか歩いちゃってさ。
寒いったら無かったけど、でも、道明寺とつないだ右手が、すっごく温かくてさ。
どうしてあの時に、気が付かなかったのかな。
あたしは道明寺が好きなんだって。
あの時気が付いていたら、あたし達にはもっとたくさんの楽しい思い出があったかも知れないのにね。

あの時、不忍池の周りの桜の木はまだ葉も付いていなくて、灰色の木肌がなんだか寂しい感じだった。
その時突然、タランと垂れた桜の枝が視界に入って・・


「ねぇ、みて、真冬なのに、もう蕾が出来てる。」
「バーカ。蕾の訳ねぇだろ?」
「だって、ほら、見てよ。」
「あぁ??」
「ほら・・ね?」
「ホントだな。」


立ち止まってしげしげと枝を見るあたし達。
その時、公園を散歩していたおじいさんが言ったんだ。

「それは、花芽(はなめ)だよ。まだ蕾とは言えないね。この時期は休眠しているんだよ。春になって温かくなると、蕾になって花が咲くよ。」


あぁ、そうだ。花芽。
花芽はいつか、蕾になって花が咲く。


ねぇ、道明寺。
あたし達は今、この花芽なのかな。
そしていつか、蕾になって、
春の桜のように、満開の花を咲かせることができるのかな。



***



俺が17歳の時。
生まれて初めて、クリスマスに女を誘った。
クリスマスデートっていや、恋人たちの定番だろ?
それに誘うってことは、俺の気持ちをあいつだって分かってたはずだ。

それなのに、あいつは、わけわかんねぇガキを連れて来た。
それに、動物園って何だよ。
動物と言えばサバンナだろ?
俺は、動物は嫌いだ。
デケェし、クセェし。
なのに、上野にある動物園を延々と歩かされた。

思いがけない動物園デート。
もっとお洒落なデートをするはずだったのに。
だけど、結局、あいつにはこういうデートが合ってるんだよな。
あいつは、すげぇ楽しそうだった。
あいつらに聞いたデートプランって奴は、いつも役に立たねぇ。

大嫌いな動物を見て回るだけなのに、あいつと一緒に歩けるだけで、俺はすげぇ幸せだった。
「若いパパとママ」だと間違われたっけな。
俺は、ジロジロ見られるのが嫌いだが、あの時ばかりは、いくらでも見てくれよと思ったな。
そんで、将来、絶対こいつと夫婦になってやる、そう思ったんだ。


金があることが全てじゃない。
それを教えてくれた女。
俺にとってかけがえのない女。


眠りこけたガキを片手に持って、さりげなくあいつの手を握った。
それだけのことなのに、ドキドキして参った。
あんなに態度がデケェ女なのに、握った手は小さくて、温かくて、女って本当に小せぇんだなと思った。
俺がどんなことをしてでも守ってやりてぇと思った。
もし、俺がその気になれば、あんな女、すぐにやっちまうことだって簡単だった。
だけど、そんなことはできるはずもなかった。
あいつのことがすげぇ好きだ。
俺のことを好きになって欲しかった。
つないだ手に、ただそれだけを願った。


「ねぇ、この桜、蕾がある。」
「そんな訳、ねぇだろ?」


だけど、それはある意味本当で、真冬の桜の木には花芽が出来ていた。
これから、休眠から目を覚まし、春になって気温が上がれば花が咲くのだと言う。
だから、その時思った。
次は桜を見に来よう。
こいつと二人きりで。


「なぁ、桜が咲いたら、また見に来るか?」
俺の真剣な誘いを、あいつはあまり本気にしていなかった。
「ええ~。道明寺、花見って知ってるの?すっごい人込みだよ?あんたなんて絶対無理。」

そうなのかよ?
俺は桜なんて、敢えて見たいと思ったことも無かったし、花見なんてしたことが無かった。
ただ、牧野と一緒に見てみたいと思っただけだ。

「じゃあ、二人きりで花見ができるとこ探しとく。だから、行こーぜ?」
「二人きり?」
あいつが驚いた顔をしていた。
当たり前だろ?
他に誰を誘うんだっつーの。
まじまじと俺を見るあいつの視線が痛かった。

「道明寺、顔、赤いよ?」
「うっせ。」
「ふふ。分かった。今日はさ、リュウ連れてきちゃったから、桜は二人で見に行こうか?」
「ぜってーだぞ。」
「うん。」
ニコッとわらった牧野は強烈に可愛かった。


花見には、桜餅かな?
桜餅ってね、道明寺桜餅ってあるんだよ?
知ってた?
あんたんちと関係ある?
あはは・・・


あいつの声が今でも耳に響いてくる。
忘れられない、あいつの楽しげな声。

あの時、俺はあいつが未来のデートを約束してくれたのが嬉しくて、早速俺の部屋の前の庭にソメイヨシノを植えた。
後になって気付いたが、桜は植林してから、花を咲かせるために5-6年かかるらしい。
あの時そんなことを知っていたら、俺は植えていなかったかも知れねぇ。
だってそうだろ?
あいつと二人きりで見るために植えた桜が花を咲くのが5-6年後だなんて、そんなの待ってられる訳がない。


だけど結局、それは現実になっちまった。
俺たちは、結局二人で桜を見ることは出来なくて、俺はNYへ旅立つことになった。


あの時、俺がもっと大人だったら。
俺がちゃんと、彼女を守ってやれる男だったら、
俺たちは今も一緒にいられたのか・・

それは分からない。
けど、過去を振り返ってもどうしようもない。

だから、俺は先に進んでいくしかない。
これからのあいつとの未来をつかみ取るために。



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  1. Sakura
  2. / comment:5
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大学に入学したあたしは、相変わらずのバイト生活。
講義以外は、バイトに明け暮れた。
有名大学に通うあたしは、時給の良い家庭教師先を見つけることが出来て、それを貯金に回した。
何の貯金かって?

あたしの今の夢はね。
公認会計士になること。
在学中にその試験に受かる可能性は数%しかない。
しかも、あたしの頭じゃ、独学は無理。
やっぱりダブルスクールが必須だと分かった。
そのスクールに通うための費用を貯めることにしたんだ。

夏休みは短期のバイトをたくさん入れた。
奨学金ももらっていたから、うちの生活は英徳時代よりは各段に楽になっていて、今では進もバイトしているし、パパも定職についていることもあって、以前に比べると普通の暮らしが出来るようになっていた。


今となっては、懐かしい英徳学園。
数少ない思い出には、全て道明寺がいる。
だって、赤札を貼られた思い出だって、結局は道明寺の仕業で。
校庭を引きずり回された痛い思い出は、助けてくれた道明寺の優しさで塗り替えられている。
あたしみたいな庶民の女がTOJで準優勝しちゃったのは、椿お姉さんと道明寺のおかげであることも間違いない。
当時あんなに辛いと思った高校生活は、今ではあたしの心の拠り所になっている。
だって、どの記憶を思い出しても、あいつのあたしに対する愛情を確認することができるから。


冬になって、お金がたまったあたしは、ダブルスクールを開始した。
アパート前の公園にある、桜の木を見上げるのは、もう習慣。

____花芽がある。


頑張れる・・
そう思う。
春になれば桜が咲くように、
例え何年かかっても、あたしの夢が叶ったらいい・・そう思う。




大学の講義、公認会計士になるための専門学校、そして残った時間はバイト三昧。
女子大生らしい大学生活を謳歌することなんて無かったけど、そんな必要もなかった。
コンパだって行きたいとは思わない。
だって、今更、あいつ以上の男に出会えると思う?


「牧野さんって、恋人とか絶対いないよね?っていうか、欲しくないの?」
「このままじゃ、化石になっちゃうんじゃない?」
大学の友人達から投げかけられる言葉はいつも同じ。

化石って言われてもね・・

多くの男性との経験が欲しいなんて思わない。
そんな経験は要らない。
あたしにとって、男はあいつだけだし、
あたしが受け入れたいと思える男はあいつだけ。
あいつを受け入れた経験だけで良かった。




***




コロンビア大学の北側に位置する公園には、桜が植林されている。
日本から来たソメイヨシノだ。
そこは『Sakura park』と呼ばれている。
俺は毎年春になると、この公園を歩いた。

牧野に出会う前の俺だったら、花を見ようなんて思わなかったに違いない。
けど今は、この桜をみて、未来に思いを馳せる。
春になれば桜が咲くように、いつか俺だって咲き誇って見せる。
そして、あいつと二人きりで、桜を眺めること・・それが、今の俺の目標。


米国の大学は課題に厳しい。
俺が金持ちだからって、容赦はされない。
大学の課題に、家業のジビネスという二足草鞋を履いた俺。
でも、そんなことは苦痛じゃない。
だって、俺には待っていてくれる女がいる。



あの日。
あの最後の鍋の夜。
きっと、すげぇ勇気を振り絞って、あいつは俺に抱かれた。

緊張で震えた体を、落ち着くまで抱きしめた。
「大丈夫だよ。」とあいつに言われ、たまらなくなってキスをした。

細くて白い手足。
柔らかい胸。
すべすべした尻の丸み。

ずっと触っていたい、ずっと俺の腕の中に閉じ込めておきたいと思った。

互いに初めて同士で、俺だって準備をしていた訳じゃなかったから、上手くできたのか、どうかなんて分かんねぇ。
でも俺は、あいつの熱い中に入って、あいつの細い体を抱きしめて、ものすげぇ快感に震えが来て、無我夢中で、そして、あいつの中で果てた。
その後も、あいつを離すことは出来なくて、意識が無くなったあいつに、何度も何度もキスをした。

あいつは痛みを我慢していたに違いない。
俺に揺さぶられて、俺に必死にしがみ付いてきた。
あんなにもあいつに求められたことなんて無かったから、俺はもう、天にも昇る気持ちで。
愛する女を抱く歓びが全身を駆け巡った。


落ちた意識から浮上した牧野がぼんやりとした目のまま囁いた言葉を、俺は絶対に忘れない。

「あたしの初めて、道明寺で良かった。絶対に、後悔なんてしない。」


俺だって同じ気持ちだった。
初めて好きになった女に、自分の初めてを捧げた。
絶対に後悔はしない。
そして、後悔をさせたくないと思った。

先のことは何も分からない俺達。
だけど、何年かかったとしても、俺がこいつを幸せにしてやるんだと決めた。



一晩が過ぎれば、約束の1日が終わりを告げた。
俺はニューヨークへ戻らなければならなかった。
それは、ババァとの約束でもあったし、あの時の俺には牧野を守ってやれる力は無かったから。
牧野を手に入れるために、力を付けなければならなかった。

ババァはあの時、牧野をニューヨークの邸から追い返せば、2年で俺を自由にすると言った。
あいつにも、あいつのダチにも手出しはしないと。

しかし、果たして自分が2年でモノになるのか。
牧野を守ってやれる男になれるのか。
数週間大学に通っただけでも明らかだった。
今の俺じゃ、何の使い物にもならないってことが。
そして、牧野を守れる男になるためには2年じゃ足りないってことが。
ババァだって、きっと分かっていたんだろう。
だからこそ2年と言ったんだ。
2年も経てば、俺が自分の無力さを自覚し、牧野を諦めると考えたに違いない。


答えなんて初めから出ていた。
2年じゃ無理だ。
例え、ババァが許したとしても、きっと牧野を守り切れやしない。



ボロアパート前に、迎えのリムジンが来た。
俺たちは、最後にアパート前の公園に立った。

そして、二人で、公園に1本だけ植えられていた桜の木を見上げた。


「あ、蕾。」
「本当だな。」
「結局・・一緒に桜は見れなかったね・・」
「でも、必ず・・」


必ず、迎えに来る。
必ず、お前を迎えに来るから。
その日まで、待っていて欲しい。


口で言うことは容易くて、それを現実にすることは難しいと分かっていた。
だから、いつ迎えくるとは明言できなかった。

____必ずお前を、迎えに来る。

簡単には口に出来ない俺の想い。
でも俺の想いは、きっと牧野に伝わっていたはずだ。



『瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の・・・』
とっさに、牧野が口ずさんだ、百人一首の上の句。


俺はすぐに答えた。

_____『われても末に 逢はむとぞ思ふ』



急流は、岩に当たり、二手に分かれたとしても、必ず1つに合流する。
俺たちの人生は、周囲に翻弄されて、今日から二つに分かれるけど、必ずまた一つになれる。
そう、信じる。


俺たちは、互いの気持ちを確認し合って、最後の抱擁を交わしたんだ。



*「瀬を早み 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢わむとぞ思ふ」
  崇徳院作
  小倉百人一首 77番  出典 詞花集


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  1. Sakura
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あたしは大学1年生の冬からダブルスクールを開始して、
大学3年生で、公認会計士の短答試験と論文試験に合格した。
これは、快挙というみたい。
あたしとしては、これ以上ダブルスクールにお金を掛けられないっていうのもあって、背水の陣だったんけどね。
少しずつ、自分の夢が現実になっていく実感。
嬉しかった。


あたしが公認会計士を目指す理由。
それはやっぱり、将来、道明寺の役に立ちたいから。

公認会計士は、会計のスペシャリスト。
企業の監査や経理・財務、コンサルティングなんかを担当して、上場企業には必ず必要な人材。

あの日、一度は道が分かれたあたし達だけど、必ず流れは再び交わると信じてる。
だけど、何もせずに待ってるだけじゃ、やっぱり流れはつかめないと思う。
川が堰き止められたり、洪水で道が無くなったり、いろんなアクシデントがあり得る。
だから、あたしは必至に努力をした。
アクシデントに負けない力を付けるしかない。
その一心で。



高校時代のあたし達は幼過ぎて、きっと、どんなに騒いだとしても、ずっと共にある人生を勝ち取ることはできなかったんじゃないかな。
だから、次に道明寺との人生が交差するときには、彼の傍にずっと一緒にいられる自分になりたかった。


今は理解できるんだ。
道明寺はどうして、あの時、きちんと言葉にしてくれなかったのか。
「必ず迎えに来る」ってどうして言葉にしてくれなかったのか。

口にすることは簡単で、実現することは難しい。
きっと、道明寺はあたしたちの未来を真剣に考えているからこそ、簡単には言えなかったんだと思う。
真摯であればこそ、言葉に出来ない想いもある。
だけど、十分伝わってるよ。

『だけど、必ず・・』

道明寺が飲み込んだ、その先の言葉、ずっと信じて待ってるから。



あたしは大学4年の春を迎えた。
試験に合格したあたしは、監査法人への就職希望だ。
試験合格後、2年間は、現場での業務補助経験を積む必要があるから。
それが終われば、あたしは晴れて公認会計士と名乗れるようになる。


道明寺は、少しずつ経済誌に登場するようになった。
先日はアメリカで、大きなプロジェクトを成功させたらしい。
そして、今は、道明寺ホールディングス全体の改革に取り組んでいることもニュースになっていた。
この改革の行方が、株価に大きな影響を与えている。
きっと、すごいプレッシャーの中にいるんだと思う。

あたしは、公認会計士になったら、企業の海外進出やM&A(企業の買収や合併)を専門とするコンサルティング業務を担当したいんだ。
彼が現在手掛けている内部改革も、それ以前にカナダのIT関連企業の買収が成立しなければ、成功は難しいと言われている。


あいつも頑張っている。
だから、あたしも頑張らなきゃ。
リクルートスーツに身を包んだあたしは、今日から就職活動を開始した。


企業説明会を終えて、トボトボ歩くアパートへの帰り道。
あの公園の桜は、今年も満開だ。
公園に入り、桜を見上げたとたん、ざぁっと強い風が吹き、桜吹雪が舞い上がった。
風が止んだ後、ひらひらと舞い降りる花びらを見つめながら、あたしは崇徳院の歌を口ずさむ。


『瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の____』


あはは。
可笑しいよね。
だって、あの道明寺だよ。
日本語弱いあいつなのに、この和歌を知ってたなんて。

あたしは、道明寺の負担になんてなりたくなかった。
だけど、あいつをずっと待っているつもりだった。
いつか二人の人生が、必ず交差すると信じて。
だから、あの歌を口にした。

でも良かった。
本当に良かった。
あの日のあたしの気持ち、
あたしがずっと待ってるっていう気持ち、
あいつにちゃんと伝わったと思う。


どこからか、道明寺の声が聞えたような気がした。

『____われても末に 逢はむとぞ思ふ』


あたし達の覚悟の歌が、今日もあたしを導いてくれる。


だけどね。桜を見ると、どうしても尋ねたくなるんだ。
     ____ねぇ、道明寺、今、どうしてる?




***




スキップして3年で大学を卒業してから、1年後。
MBAを取得した俺に、大きなプロジェクトが持ち込まれた。
今まで外注していた社内のネットワークを道明寺資本で再構築する。
そのために目を付けたのはカナダのIT関連企業だ。
M&Aを持ち掛けて、その会社のノウハウを手中に収めたい。
対抗馬に比べれば、うちの提示する条件は良いはずだ。
しかし、今回のM&Aの弱点は、道明寺が日系企業だということだった。
カナダは親日家の多い国として有名だ。
それなのにどうして?

調査させた結果、どうやら、この会社の社長が問題だ言うことが分かった。
社長自身が日系を毛嫌いしていると言う。
自分が退く時期になって、そんなことを・・
そうは思うが、そんな感情的な問題というものは、どの世界にも存在する。
金や力だけでは動かせないものがあるということは、俺自身も高校時代に十分学んでいたから、力でどうにかしようとは思わなかった。

___まずは、話を聞くことだ。
俺が、バンクーバーに本社があるこの会社に出向いたのは、4月も半ばを過ぎた頃だった。


『Mr.道明寺、うちのIT技術は御社のプログラムを含めたネットワーク改善に役立つはずだよ。』
そう言いながらも、挑戦的なMr.カーター。
そんなことは分かってるんだ。
そして、この社長が道明寺ホールディングスに会社を売ろうとしない本当の理由は、俺たちが日系企業だからなんだろう。
きっと、どんなに良い条件を提示してもダメなのかもしれない。

『どうして、私共の会社ではダメなのでしょうか?』
俺は正直に疑問を投げかけた。

『日本人には少しやられてしまってね。それから、どうも信用できないんだよ。気に障ったのなら申し訳ないが、道明寺さんがそうだと言ってる訳ではないんだ。』
『しかし、ここカナダは、親日家が多く、日本人も働きやすい土地柄だと聞いています。日系企業である道明寺ホールディングスがこちらに受け入れていただくことは、難しくはないと考えているのですが。』
『そうだね。』

物腰は柔らかいが、何を言っても無駄だという受け答え。
Mr.カーターは俺の話を聞いているものの、会社を譲渡する気はないらしい。
どうすればいい?

その時、社長の背後にある窓から、クイーンエリザベスパークに咲き誇る桜が見えた。
俺は小さく深呼吸をした。

『桜が見えますね、Mr.カーター。あの桜は日本から来たそうですよ。このバンクーバーの地で元気にやっているみたいですね。』

すると、Mr.カーターが驚いた表情を呈した。
『道明寺ホールディングスの若きエースは冷たい男だと聞いていたが、聞き間違いだったかな。あの桜は見事だろう?今ではバンクーバーの誇りとも言える。』
そう言って、少しだけ、自然に表情を崩す。

『この会社も、我々に譲渡して頂ければ、必ず、この土地の誇りにして見せます。如何でしょう?』
『私に君を信頼しろと?』
『それしか申し上げられません。』


『この会社はね。私が一代で築き上げた会社なんだ。でも、後継者争いが激しくてね。結局売り渡すという選択肢に迫られた。後継者争いで問題を起こした一人は、日本人の信頼していた男でね。その男は、この会社をドイツに売り、この土地から、会社自体を無くすつもりだったんだ。だけど・・今考えると、その男とは桜の話をしたことなど無かったな。あいつはこの地に誇りをもって働いていたんだろうか・・。』

『なぁ、Mr. 道明寺。君に会社を任せたら、私は満足できると思うかい?』
『絶対に後悔はさせないとお約束します。』
『どうして、それを信じられる?』
『この契約がまとまり、会社のシステムの再構築が終了すれば、私は、ずっと待たせている女性を迎えに行けるんです。彼女とは、まだ桜の季節を一緒に過ごしたことが無い。ですから、このプロジェクトは絶対に失敗しません。そして、この会社の社員を必ず守ると、お約束します。』

俺は、Mr.カーターの瞳をじっと見つめ続けた。


翌5月に、俺はMr.カーターから会社を譲渡された。
『Mr.道明寺。私はあなたを信じようと思う。』


俺はこの異国の地で、誰かに信頼される人間になれたらしい。
でもそれは、決して会社の為ではなく、俺が唯一幸せにしてやりたいと願う、あいつを迎えに行く為だった。



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  1. Sakura
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明日はクリスマスだという日、姉ちゃんがニューヨークの邸に顔を出した。
先日まで、日本の邸にいたと言う姉ちゃん。
その姉ちゃんから、思いがけない話を聞いた。

「司、あんた、5年前、東の角部屋前の庭に桜を植えたらしいじゃない。」
「あ・・あぁ。」

5年前のクリスマスに、牧野との動物園デートから帰った俺が、あいつとの二人きりの花見を楽しみにして、後先考えずに植えたソメイヨシノのことだ。
・・・すっかり忘れていた。


「あれ、来春には、咲きそうだって。」
「あ?」
「だから、あれ、花芽?が出来ているんですって。ほら、剪定士のおじさん、松尾さんが言ってた。来年の春には、桜が見られそうだってよ。良かったわね。」

俺は息を飲んだ。
あの桜の木は、すぐには花を咲かせないと知り、当時はひどく落胆したものだ。
でも、来年は開花する。
それは、俺の成長を待っていたかのようだ。


Mr.カーターから譲渡されたシステムのノウハウで、道明寺ホールディングスのシステムを一新した。
今後更なる改革を行っていくにしても、まずは中央内部からだ。
未だに残っていた一部の古いアナログ方式は排除した。
クリアな企業体質を築く上でも重要なことだった。
この改革は、経済関連の雑誌で大きく取り上げられた。
システムを外注しなかったことも、高評価を得ていた。

ニューヨーク本社でのシステム改革を成功させた俺は、来春から日本へ帰国し、次は日本支社の改革を迫られている。
この春には、日本の邸の桜が見られる。
もちろん、牧野と二人でだ。
俺は込み上げる喜びで、その夜はなかなか寝付くことが出来なかった。




***




『道明寺司氏、4月より道明寺ホールディングス日本支社長に就任』

各経済誌にあいつの顔が載っている。

あいつ・・帰って来るんだ・・・


道明寺がニューヨークに発ってから5年が過ぎた。
あいつがあたしのことなんか忘れちゃっているとしても、文句も言えないような長い年月。
でも、あたしはずっと信じている。

あの時、あたし達は、二人の人生が再び交わることを望んだ。
あの時の、あたし達の気持ちに嘘はなかったって。


けれど、もし、道明寺があたしのことは過去として割り切っていたとしても、それでも良かった。
あたしにとって大切な人は、あいつしかいないという事実は変わらないのだから。
誰かに責任をとってもらうような人生なんて歩いていない。
あいつが、あたしのことを今どう思っていようと、あたしはあいつのことが今でも好き。
その気持ちがあたしにとっての全て。
そして、心の底では、あいつも同じ気持ちだって信じてる。



今年の東京は、3月21日に桜の開花宣言が出された。
歩いていると、3分咲きぐらいの桜をよく見かける。
これから、きっと満開になるのは、4月の始めぐらいかなと思う。

この4月から社会人になるあたし。
あと2年頑張れば、公認会計士と名乗れるようになる。
少しずつ夢に向かっていくあたしは、この季節の桜を見る度に、あいつへの想いを再確認していた。


『道明寺、いつか、二人で桜を見に行こうね。』






そして、今日は3月31日。
あたしは、4月3日に入社式を迎える。
それを期に、今まで住んでいたアパートから引っ越しをすることになった。

新しいマンションは、職場から3駅で、駅から5分の好立地。
近くに桜が咲いていないことだけが残念だけど、住みやすそうで気に入った。
今日は新しい部屋の鍵を貰ったところで、明日、引っ越しの予定だ。

今日でこのアパート暮らしは最後になる。
感慨にふけりながら、駅からの道を歩いて行った。

だんだんと空が夕焼け色に染まっていく。
アパートに近づいていくと、目の前の公園の桜が目に入った。

満開だ・・・。
いつの間に、満開になっていたんだろう・・。

満開の桜が、夕暮れ時のオレンジ色に染まっていた。
薄ピンクのソメイヨシノが、オレンジ色に輝いて見える。

なんて・・綺麗・・・


夕焼けに染まった桜に見とれ、大木を見上げながら公園に入って行った。
毎年見ていた桜なのに、この時刻に見たのは初めてかも知れない。
オレンジ色の桜は幻想的で、なんだか凄いパワーを秘めている様に感じる。


桜から目が離せずに、斜め上ばかり見て歩いていたあたしは、公園に入ってすぐ、何かにぶつかってしまった。


ドンッ!

「きゃっ、すみませんっ!ごめんなさいっ!」


急に視界が遮られると同時に、懐かしい香りがする。
初めはちょとスパイシーで、だんだんと甘い感じになる・・そんな香り。

この香り・・忘れるはずなんてない。
閉じてしまった目をそーっと開いてみると、そこには、ストライプのネクタイ。


息が止まりそう。
恐くて、顔が上げられない・・
あいつなの?
でも、違うかもしれない。
けど、あいつだったら・・・・
そんな風に、グルグルと考えが巡っていた時、


「相変わらずだな。こんなにいい男が立ってんのに、無視してんじゃねーよ。」


響いてくるのは、懐かしい声色。
そして、どこまでも俺様な物言い。
これって・・
この人って・・

あたしは恐る恐る顔を上げた。



「道明寺・・・」

あたしがこの5年間、ずっと会いたかった人が、その場に立っていた。



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  1. Sakura
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3月末、俺は日本へ帰国した。
NYでの社内改革が認められ、今後は日本支社の改革に踏み込むと同時に、アジアでの事業を展開する予定だ。
でも、俺にとって、この帰国はビジネスの為なんかじゃない。
ビジネスは手段に過ぎない。
俺が、あいつともう一度共に歩き出すための手段に過ぎないんだ。


俺はニューヨークにいる間、牧野の情報は一切入れなかった。
報告してくる奴らもいなかった。
ババァにしても然り。
約束の2年を過ぎても、俺にあいつのことを問いただすことも無かった。
俺がそのままニューヨークで学業とジビネスに染まっていくのを見て、あいつとは終わっていると思ったのかもしれねぇな。

でも俺は、あの歌を詠んだあいつの覚悟を信じていたから、余計な詮索に時間を割くことなく、早く迎えに行くことだけを考えていられたんだ。


今回の帰国に際し、俺は牧野の近況を調査しようと思えば、簡単に出来た。
だが、敢えてそれはしなかった。
どうしてか?
俺は、何事も無かったかのように、ふらりとあいつのアパートを訪れたかった。
この5年の空白なんて飛び越えて、あの日の延長として、何てことは無かったかのように会いたかった。


だけどなんて言ったらいい?
『ただいま』っつーのもなんだかな。
あいつ、どんな顔をするだろう。
あいつが俺のことを忘れてるなんて思わない。
絶対に俺を待っているという確信があった。

ただ、会いたい・・
会って、彼女を抱きしめたい。



極秘で帰国した俺は、一目散に牧野のアパートを目指した。
未だにそこに住んでいる確証などなかったが、そこへ向かうしかなかった。
アパートの階段を上がり、アパートにまだ『牧野』の表札が出ていることを確認した。
はやる鼓動を抑えつつ、部屋のチャイムを押したが、俺の願いも空しく、牧野は不在だった。

少しだけ気落ちしながら、アパートのボロ階段を降り始めた時、俺の目の前に飛び込んできたのは、満開の桜。
最後の日の朝、牧野と一緒に蕾を見た、ソメイヨシノだった。


ゆっくりと公園に近づいた。
牧野と一緒に見たかった・・
だけど、別に今日一緒に見れなかったからといって、焦る必要なんてない。
俺はこれから日本にいるんだから、絶対にあいつを捕まえてやる。

そう決意して、一歩一歩、桜の大木に歩み寄った。
一部オレンジ色に染まった桜は幻想的で、現実感が全くない。
一瞬、別な世界に入り込んだかのような錯覚に陥った。

そして、辺りを見回すと、通りの向こうから、この桜を見上げつつ近づいてくる人影が見える。


まさか、この桜が見せる幻か?

いや、そんなわけねぇ!
忘れもしない女、忘れることなどできない女。
____牧野だ。


まだ肌寒いというのに、ニット一枚で歩いている。
すっきりとした顎のライン。
少し・・痩せたか?
俺は足を動かすことが出来なかった。


桜を見上げたままの牧野がどんどん俺に近づいてくる。
避けることも、近づくこともできずに、そのまま、彼女が俺の胸に飛び込んでくるのを見つめていた。


ドンッ!
「きゃっ、すみませんっ!ごめんなさいっ!」

相変わらずのドジっぷり。
相変わらずのシャンプーの香り。
相変わらず・・小せぇ。


早くその顔が見たいのに、
喜んでくれる顔が見たいのに、
彼女はなかなか顔を上げようとしない。


「相変わらずだな。こんなにいい男が立ってんのに、無視してんじゃねーよ。」

ゆっくりと俺を見上げた彼女と、5年ぶりに視線を合わせた。

彼女は、驚きに目を見開いて・・
「道明寺・・・」
そう呟いた。


彼女の目に自分が映る。
ついさっきまでは、何事も無かったかのように再会したいと望んでいたくせに、俺はもう、別の感情に囚われていた。

この日をどれだけ待っていたか。
この日のために、自分がどれほど努力したか。
そんなこと、こいつに言ったって仕方ないことだと分かっていても、
こいつには、俺のことを認めて欲しくて、
『頑張ったね』って言って欲しくてたまらない。

自分がこんなにも女々しい、ガキだなんて笑えるが、こいつに認めてもらうことだけが俺の望みなんだ。


牧野はじーっと俺を見上げて、それから言った。
『道明寺、お帰り。ずっと、待ってた。』


その言葉を聞いて、
掻き抱くように、こいつにしがみつく。
小さなこいつの体は俺の中にすっぽり入り込む。

夢じゃない。
幻じゃない。
本物の牧野が腕の中にいる。


_____やっと、こいつを捕まえた。







「ねぇ。」
「黙ってろ。」
「ねぇ、苦しいって。」
だからって、どうしたって離せない。

5年間夢にまで見た牧野が腕の中にいるんだ。
こんな感動、味わったことねーよ。

「ねぇ。道明寺。顔見せてよ。」
その言葉に、仕方なく、こいつの胸の中から解放した。

じーっと俺を見上げる牧野。
黒目がちな大きな瞳はあの頃のまま。

「道明寺・・変わってないね。あ、ちょっと大人になった?」

顔つきだって変わっただろ?
駆け引きだってできるようになった。
ビジネスをモノにするためには、真っ向勝負だけでは挑めない。
それでも、こいつは、俺は変わってないって言うんだな。

「あの頃よりも、数段いい男になっただろ?」
「ぷっ、自意識過剰。」
と笑い出した牧野。

クスクス笑う牧野はメチャクチャ可愛くて、17歳の牧野のままだ。
だけど、あの頃より・・

「お前は、変わったな。」
そう言ってやれば、怪訝そうな顔をする。
「すげぇ、綺麗になった。」

そんな俺の言葉に、牧野は真っ赤になって俯いた。
オレンジ色の光の中でも分かるぐらいの赤面だ。
それから、小さな声が聞こえた。

「ありがと・・」


はにかむ牧野は強烈に可愛くて、もう我慢なんて出来なくなった。
両手で思いっきりこいつの顔を上向かせ、食らいつくようにキスをする。
何度も何度も吸い付いて、頭がおかしくなりそうだ。
柔らかい唇の感触は、昔と変わっていない。

俺のジャケットを掴むこいつ重みを感じれば、俺の幸せが増していく。


5年間の空白がある俺たち。
この関係は何て言ったらいいのか。
俺の彼女。
俺の恋人。
俺にとって、運命の女。
それが、牧野つくしなんだ。


ゆっくりと唇を外すと、コトンと牧野が俺の胸に落ちて来た。
そのまま、じっくりと抱きしめる。
温かい、愛する彼女の温もりに酔いしれた。


「牧野・・俺、頑張ったんだぜ?」
「うん。知ってるよ。凄いね。道明寺。頑張ったんだね。」

誰に褒められたって嬉しいなんて思ったことが無いのに、こいつに褒められた・・それだけで、自分がすげぇ価値のある人間になれたような気がする。
けど、当たり前か。
俺の世界は、常にこいつを中心に回っているんだから・・。


再び顔を上げた牧野が言った。
「道明寺・・うち、帰ろっか・・。」



『うちに帰る・・・』
それはどんな意味で言ったのか。
こいつのことだから、深い意味なんてきっとない。
だけど、なんだか、すげぇくすぐったくて、心が温かくなって、俺はもう、こいつ無しでは生きていけないと思った。



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