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With a Happy Ending

大切なモノ ①

3
自分はいつからこんなに臆病者になったのか。ビジネスでは怯むことなどないこの俺が。ニューヨークでは冷静かつ攻めの姿勢を崩さなかったと言うのに。7年ぶりに土を踏んだ日本で、これほどまでに戸惑っているなんて・・・どうして予想できただろう。「本日の業務はこれで終了です。」「何だよ、ずいぶん早ぇな。」腕時計を確認すれば、まだ20時を回ったところだ。「帰国して1か月です。そろそろ、旧交を温められては?」「旧交・・...

大切なモノ ②

5
連絡をくれと言われても、どうしてもあきらに電話する気になれなかった。逃げてることは分かってる。けど・・無理だ。祝福なんて出来る訳ねぇ。あいつらの婚約パーティーの招待状がいつ来るかとビビっている俺。毎朝西田が持ってくるスケジュールの中に、その話が出ないことにホッとしていた。仕事をしている時だけは何とかそんな思いを忘れられると言うのに、今日に限ってもう帰れって、俺の秘書は残酷なことをしやがる。仕事以外...

大切なモノ ③

6
店を飛び出した俺は、とりあえず走った。ジムでトレーニングする時以外、走るような生活なんてしていない。どこに走ればいいのかも分からないのに、何かに突き動かされるように、俺は走った。左手には俺のマンション、右手には東京メープルが見える。どこへ行く?どうすればいい?『牧野もメープルがいいっつったらしくて・・』1か月前に総二郎との電話から聞こえた言葉。あいつら、メープルで披露宴をするのか?それなら、まずは...

大切なモノ ④

4
仕事が終わって、ロッカールームで着替えた後、施錠が心配になったあたしはサロンに戻った。夜でもフロアの明かりは点いているけれど、当然ながらこの時間に人の気配はしない。誰もいないものと思ってブライダルサロンへ近づいたとたん、あたしははっと息を飲んだ。サロンのドアを背もたれにして立っている人がいたから。背が高い男の人・・・見間違えるはずなんて無い。あのクルクル頭。何度も雑誌やニュースで見たスーツ姿。この...

大切なモノ ⑤

3
牧野が俺の腕の中にすっぽりと納まっている。つい1時間前までは絶望の中にいたってのに、どうやら俺は天国に招かれた様だ。夢にまで見たナマ牧野。フニフニ柔らかくて、ホカホカ温かくて、甘くていい匂いがする。そうだ、こいつはいつも甘い香りがする。これって何の匂いなんだろうな。近くにいなければ感じられない幸せを、7年ぶりに噛みしめた。俺は牧野を愛してる。牧野も俺が好きだと言った。その気持ちが全て。それ以上に大切...