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With a Happy Ending

そんな夫婦の物語 1

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「これは何ですか?」「良いご縁だと言ったでしょう。」「・・・・・。」道明寺ホールディングス日本支社。副社長の地位にある俺の執務室にアポもなく入って来たのは俺のお袋だ。だが俺は、ビジネスにおいて鉄の女と呼ばれるこの女を、母親だと思ったことなど一度も無い。その女がテーブルの上に置いたのは、中身を確認せずとも分かる、いわゆる釣書というものだ。ここ最近では直接話などしていなかったというのに、急に姿を見せた...

そんな夫婦の物語 2

4
メルセデスAMG GTの限定モデル。特注品のエアロパーツは世界で唯一のもの。攻めの走りに対応するコーナリングの安定性に口角が上がった。趣味など持たない俺の数少ない楽しみがドライブだった。1週間の休みと言われても、特にすることなんてない。結論なんてすでに決まっている。望まない結婚と子孫を残すという義務。そんな足枷が増える日まで、唯々時間が過ぎるのを待つしかない俺が選んだのは、宛もないドライブの旅だった。つ...

そんな夫婦の物語 3

6
ザーッと、温かいシャワーを浴びた。背中の傷に湯がしみて、その痛みに思わず顔を歪めた。鏡を見ると背中に20センチ程度の傷跡が見えたが、大方の出血は止まっていた。この程度なら、別に縫う必要もねぇ・・か。さっきまでは気付かなかったが、体のあちこちに小さな傷もあるらしい。身体中に小さな痛みを感じた。だが、これは俺が生きてる証だ。こんな痛みすら、ここ何年も感じていなかった。荒れていた高校時代、意味もなく殴り合...

そんな夫婦の物語 4

4
「いやいや、災難だったねぇ、司君。」「本当にねぇ。」「だから、ごめんなさいって、何回も謝ったのよ!」「つくしちゃんはおっちょこちょいだから~。」大柄なゲストが一人加わって、思ったより和やかな誠先生の引退パーティーになっていた。私の勘違いで助けたつもりが海に突き落としてしまったこの人は、『道明寺司』さんと言うらしい。びしょ濡れで戻って来た私たちは、それぞれにシャワーを浴びた。私は離れで。道明寺さんは...

そんな夫婦の物語 5

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医療の表現があります。ツッコミどころ満載かと思いますが、広い心でお読みいただけると嬉しいです。***突如変化したこの状況に戸惑うなって方が無理だ。けれど、いきなり呼ばれた自分の名前にすぐに我に返った。「道明寺さんっ!お願い!あなた、奥さんを運んでくれる?奥のベッド、急いでっ!!」この俺に指示するなんていい度胸だ・・何て言ってる場合じゃねぇ。緊急事態だ。この牧野つくしという女もテンパってるんだろう。...