花より男子の二次小説。CPはつかつくonlyです。

With a Happy Ending

あたし、牧野つくし。24歳。
先日、今まで勤めていた会社を退職してしまって、現在は無職。
現在再就職先を検討中なの。


あたしは、国立大学の経済学部を卒業後、生島産業という織物会社に入社した。
洋服生地から、カーテンなどの生活用品まで、さまざまな商品の企画から販売をする会社の営業職で、他社と共同での仕事も多く、遣り甲斐はあった。
2年程がむしゃらに働いて、営業成績は良かったし、お給料の面からしても、やめてしまうのはもったいないかなと思ったんだけど・・
自分が思っていたよりも、男性優位な会社の体質にほとほと疲れてしまって、いったんリセットしようかと思ったんだ。
丁度、そんな風に悩んでいたところに、会社の上司からのセクハラを受けたり、軽くストーカー被害なんかもあって・・
迷ったけれど、結局退職することしたの。
後悔はしてないけどね。
でも、弟もまだ大学生だし、もともとうちは貧乏だから、継続して働かないと生活が大変なんだ。


会社を辞めて1週間。
あたしは、自分が本当にやりたいことって何なのか、今更ながらに考えてる。

あたしは昔から、結構お世話好き。
家が貧乏で、パパの仕事だけでは生活が成り立たなかったから、ママもパートに出ていたこともあって、ご飯の支度から、掃除、洗濯なんかも小さな頃から率先してやっていた。
社会人になってからは、お料理を作ることがあたしの趣味で、いろんな料理を作っては、親友の優紀にごちそうするのが楽しみだった。

大学で経済の勉強をしたのは、そういう学部で学んで、いろんな知識を身に付けた方が、良いところに就職ができて、お給料も安定すると思ったからだったんだけれど、やっぱりあたしには向いてなかったのかも知れない・・。

栄養士の資格をとって、料理関係の仕事に就くのもいいかな、なんて思うんだけれど、今から数年学校に通うとなると、やはり収入面がきついから、現実的には無理だよなぁ。
はぁ、どうしようかなぁ。



今日も、優紀があたしのアパートに遊びに来てくれて、あたしの作った、ハンバーグドリアを一緒に食べていた。

「うーん。つくしはさ、営業っていうより、サービス業とかの方が向いてそう。」
「サービス業?」
「接客業っていうのかなぁ。」
「接客・・」
「ほら、高校の時、一緒に団子屋でバイトしてたじゃん。あれとか、つくし目当てにお団子買いにくるおばあちゃんとか、いっぱいいたよね。」
「そうだった?」
「つくし、優しいしさぁ。なんか、そういうつくしの良いところが活かせる職業がいいんじゃないかなぁ。」

という、優紀は会社の事務職。
事務の仕事は可もなく不可もないらしい。
その分、自分磨きといって、茶道教室やヨガなんかに通っている。

「接客業かぁ。」
といいながら、一緒にノートパソコンを覗き込んだ。

「ホテルのフロア係とか?」
「う~ん。いいかも?」

「ホテルと言えば・・、ホテル・ザ・メープル 東京!
来週から新しいケーキバイキングが始まるみたいだよ!」
「「行きたいよね~」」

さっそく、メープルホテルをチェック。

「あれっ、つくし、メープルで臨時職募集あるみたいだよ。内容は分からないけれど、要相談って書いてある。
これから、GWから夏休みで人手がいるもんね。これ、どう?」
「う~ん。臨時でも、とりあえずは仕事したいし、明日にでも電話してみようかな。」

憧れのメープルホテルで仕事だなんて、なんだかテンション上がっちゃう。
まぁ、ダメ元だし、面接ぐらい受けてもいいよね。
なぁんて、あたしの夢は膨らんだ。



*****



さっそく、翌日、メープルホテルに連絡をとり、
履歴書を持って、指定された時間に伺うことになった。

久しぶりにビジネススーツに着替え、いざ!メープルへ。

正面玄関から入ると、そこは煌びやかな世界が広がっていた。
メープルに宿泊するような人は、かなりなお金持ちだと思う。
ランチにしたって、安くて5000円はするし、一般ピープルのあたしには、雲の上の世界だ。
天井から下がる豪華なシャンデリアからの照明光が、磨き抜かれた床に反射して、すっごくまぶしい。


担当の方に履歴書を渡すと、
あたしは、5階にある小さな会議室に案内された。
会議室とはいえ・・なんて豪華。
家具が高級なんだと思う。


テーブルの一番端にある椅子に腰を掛けて、待つこと10分。
人事担当の女性が入ってきた。
あわてて立ち上がり、
名刺をいただくと、「チーフマネージャー 山崎真理子」との文字。

「牧野つくしさんですね。どうぞおかけください。」

それから、山崎チーフからいくつかの質問を受けた。
「TOEIC 800点を超えているのね。海外の経験は?」
「海外経験ありません。」
「ドイツ語、フランス語も会話は可能なのね。」
「日常会話は大丈夫です。」
「以前の会社を退職した理由を聞いてもいいかしら?」
「はい。繊維関係の営業をしておりましたが、今後もずっと続けていくことに疑問を感じることがありまして。一度リセットしようかと思いました。」
「うちのホテルへはホームページからでしたか。」
「はい、そうです。もともと、接客が好きで、学生時代からバイトもしていました。たまたまこちらのHPを見て。ホテル業務を経験したいと思いました。」

「メープルでは、あなたのように、語学が堪能な方は是非ほしいのですが・・」
なんとなく、山崎チーフの表情が硬い。
「実は、短期の臨時職員は昨日で募集が終わっていたの。」
なんだぁ、そうなんだぁ。残念。
「ごめんなさいね。ここまで来ていただいたのに。」
「いえいえ。そんな。」
仕方ないよ。うん。

「ただね。あなたの学歴と経歴なら、臨時職というよりは、正規職員での採用も検討できると思うわ。ただし、いま現在はメープルには籍の空きががないの。それでね、あなたが希望すれば・・・なんだけれど。」

あたしは、身を乗り出して、
「なんでしょうか?」
と尋ねた。


「あなた、社長のお宅でメイドとして働いてみない?」



 

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「このホテル・ザ・メープルは、道明寺ホールディングスの関連ホテルであることは知っていますか?」
「はい、もちろんです。」
「ここのフロアスタッフは、社長のお邸のメイドスタッフを兼任しているの。もちろん、全員ではなくて、ごく限られた優秀な人ばかり。道明寺家では、ご自宅でパーティーをすることもあるし、こちらのスタッフが応援にいくこともあれば、お邸のスタッフがホテルへ応援にくることもあるの。雇用主は同じでメープルなのよ。」
「はぁ。」
んん?今ひとつよく分からないけれど・・

「今ね、お邸の方のスタッフが足りない状態なの。こちらからスタッフをまわす予定なんだけれど、こちらも手が足りなくてね。お邸にはバイトや臨時のスタッフは入れないから。」
「それでね。牧野さん。あなたの学歴であれば、お邸でのメイド業務は可能だわ。雇用条件はメープルの正規職員と同等。メープルから、お邸への出向という形になるの。お邸では、かなり厳しいメイド教育があるけれど、このホテルで正規でやっていくのであれば、いずれ一度はお邸を経験しておかなければならないわ。どうかしら、牧野さん、やってみない?」


・・・。
お邸のメイド。
正直言って、まったく予想がつかない。
でも、でも、『メープルホテルの正規職員』という単語があたしを突き動かした。

「メープルの正規職員になれるのであれば、頑張りたいです。」

「そう。良かった。」
明らかにほっとした様子の山崎チーフ。
なんか・・変?

「まずは、お邸のメイド頭の方に連絡をします。最終判断はその方がされるわ。恐らく、2週間程度の研修期間があって、その間にあなたが適当と判断されれば、職員として雇うことになります。」
まぁ、それはそうよね。うんうん。
「はい、分かりました。」
「それでは、さっそくお邸に連絡を入れてみるから、少しこちらでお待ちいただけるかしら?」



それからすぐに、あたしにはタクシーが用意され、道明寺社長宅へ向かうことになった。
日本の最大手企業、道明寺ホールディングスの社長宅。
想像もつかないけれど、ちょっとわくわく。
不安もあるけれど、期待も大きい。
メイドって言われても、正直よく分からないけど、
あたしって、家事は好きだし、問題ないかなぁ、なんて・・へへ。
しばらくお邸で頑張ったら、メープルホテル勤務になれるなら、なんでもやっちゃうよ~。

そんなことを考えながら、タクシーから窓の外を眺めていると、徐々に変わってくる風景。
あれっ、ここって東京だよね。
なに、この森? 
ここ、どこ?

あれよあれよという間に、遥か彼方に小さく見えていたお邸が、ドデカい宮殿然として、目の前に現れた。

なっ、なにこれ~!!
ここっ、どこよ~!日本なの?!




「あんたが牧野さんかい?」
タクシーを降りると、すでに連絡がはいっていたのか、玄関前に老人が立っていた。

「はい、牧野つくしです。メープルホテルから参りました。」
「聞いてるよ。こっちへおいで。」
お婆さんについて歩きながら、正面玄関ではなく、かなり回り道をして裏口から入る。
へぇ~。すっごい。
正面玄関の扉って、高さ3メートルはあるんじゃないの?
こっちの裏口だって、一般のおうちより格段に大きい。

案内された応接室で、お婆さんと向かい合う。
あたしは、再度履歴書をお婆さんに手渡した。

「話は大体聞いているのかね。」
「はい、こちらのお邸でメイドとして研修を受けたいと思っています。いつかはメープルホテルで働きたいです。」
「そうかい。」

そういって、履歴書をチェックするお婆さん。
「英語、フランス語、ドイツ語ね。語学は合格だね。あれまぁ、ワインアドバイザーやカラーコーディネーターの資格もあるのかい。」
「はい。私、大学時代、資格マニアになっていまして・・。」
あたしは、就職に有利と思って、秘書検定や簿記検定1級の資格も持っている。
まあ、それはメイド業務にはあまり関係ないかもね。
「へぇ、そりゃ変わった人だね。前の仕事はなんでやめたんだい?」
「営業だったんですけれど、自分には向いていないと思って。」

それだけでよかったんだけれど、ついついお婆さんには軽口をたたいてしまった。
「上司からセクハラを受けたり、ストーカー被害にあったりして、それも嫌でしたね。以前の会社は、男性にかなり気を使わなければいけなくって、それで疲れちゃったのもあるかな。お邸の仕事は大変だとは思いますが、男性からのセクハラとかもう嫌だし、あまり男性に接触しないお仕事の方が、今は気が楽です。正直、こちらで雇っていただけるとすごくうれしいです。」
「あれ、まぁ。あんた、男嫌いかい。」
「男嫌い・・っていうほどじゃないですけれど、男性と仕事するよりは、女性の方がいいですね。」
「へぇ。珍しい。」
「そうですか?」
「まぁね。」

「あたしゃ、あんたが気に入ったよ。とりあえずは、2週間、試験採用期間を経て、使えそうなら正式に契約しようじゃないか。」
「はい、頑張ります、よろしくお願いします、お婆さん!」
と元気よく立ち上がり、頭を下げたその瞬間、
ビシッ!!

「あたしゃ、婆さんじゃないよっ!」
気が付けばお尻が痛い。
ええ~っ、杖で叩かれた?!
「ひぇ!すみません。なんとお呼びすれば・・。」
「先輩。」
「センパイ・・・」
「先輩とおよび。」
「・・・はい、先輩。」



*****



かくして、あたしは、道明寺家のメイドとなった。
まずは2週間。
初めは通いでするつもりだったんだけれど、お邸の敷地が広すぎてバス停まで遠いし、ほとんどの独身のメイドさんたちは、住み込みで働いていると聞いて、あたしも、2週間、住み込みで働くことにした。


先輩の名前はタマさんというらしい。
「まず、あんたのことをしっかり見極めないといけないね。ここの仕事は甘くはないよ。大丈夫かい?」
「昔から苦労しているんで、大抵のことは大丈夫です。」
「そうかい、じゃあ始めるとするかね。」


まずは、メイドの基本の掃除。
大理石の玄関は、モップをきっちり絞ってふきあげる。
続く廊下のカーペットは掃除機を念入りにかけて、汚れは絶対に残さない。
そんなこと言ったって、うちと違って、靴を履いたまま歩く廊下なんて、汚れて当たり前だと思ったんだけれど、汚れたカーペットは新しく敷きなおすこともあるんだそう。
はぁ、お金持ちって無駄遣いだよね。まったく。

と思っていたら、ビシッ!
「掃除の基本は腰だよ。手をうごかすだけじゃないよ!腰を入れるんだよ。」
おっ、お尻、痛っ!

部屋数もいったいいくつあるのよってぐらいに多い。
絨毯のお部屋もあれば、大理石の床のお部屋もあったり。
どのお部屋も、うっとりするような素敵なお部屋ばかり。
壁にかかる絵画のほこりを払ったり、飾られている調度品をふいたり、掃除といっても、普段の掃除よりもよっぽど緊張する。
だって、これ、明らかに高価なものでしょう?

ビシッ!
「馬鹿。そんな手つきじゃ、壺が割れるよ。これは中国明の時代の骨董品だよ。あんた、割ったら1億円弁償だからね。」
いっ、一億円?
冗談でしょう?
いったい、このお邸ってどうなってるのよ~。

ビシッ!
「この風呂は大理石だよ。たわしでこする馬鹿があるかい!」
ビシッ!!
ビシッ!!!



メイド仕事って、めちゃくちゃハード・・
これって、普通なのぉ??
メープルホテルで、山崎チーフが見せたほっとした表情が思い出される。


もしかしてあたし・・・前途、多難?



 

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始まりました!メイド生活(笑)。まだまだこれからです。
  1. 理想の恋人
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その後も毎日、掃除、ベッドメイキング、食事のサーブの仕方、お茶の出し方など、いろいろと教わりながら過ごした。

結構大変なのが、ベッドメイキング。
各部屋に設えてあるのは、全てキングサイズのベッドだから、一人で作業するのは大変で、大抵は二人一組でやっている。

最近あたしは、先輩メイドの美樹さんと組むことが多い。
美樹さんもメープルからの出向組。
29歳で、独身。
美樹さんは、基本業務はメープルで覚えてきたんだけれど、お邸の業務の方がはるかに厳しくて大変だって言っていた。
確かに、調度品とか多すぎて、扱い大変だよね。
メープルとお邸のスタッフはだいたい、1年ぐらいで交代になることが多いそうだ。

「やっぱり、お邸は厳しいから、長くいる子は少ないわね。」
という美樹さんはお邸2年目らしい。

今現在お邸にいるメープルからの出向組は10人。
古参スタッフは、メープル対応ではなく、直接契約で入っている人もいるから、実際のお邸スタッフはそれ以上いて、あたしにはよく分からない。
それでも以前に比べると半分以下の人数なんだって。
早出・遅出もあるし、夜間も対応があるから、夜間業務の時には、宿直室に泊まることになる。
あたしはまだ試験雇用期間だから、宿直はないけどね。
一応週休2日制で、シフトが組まれていけど、忙しいと休みが取れないことも多いそう。
メープルのフロアスタッフも兼務するので、メープルが忙しければそちらへ行くから、はっきり言って週1ぐらいしか休みはないんだって。
へぇ~。


あたしは住み込みで働いているから、一緒に暮らしているメイドさんたちと食事をとることが増えた。
お部屋は小さいながらも、綺麗な個室を与えられている。
部屋付きのミニキッチンもあるけれど、広い共用のキッチンスペースもある。
勤務時間中は、まかない食が振舞われるから、それを食べるんだけど、道明寺邸のシェフのお料理はとっても美味しくて、ほっぺたが落ちそう。

あたしは料理好きだから、勤務時間外にはみんなに料理を作って出したりしている。
シェフとも仲良くなったから、レシピを教えてもらえることもあって、とってもラッキー。


今日も、夕食はその場にいたみんなと食べていると・・
「今週は、司様、出張でこちらへは戻られないわね。」
と美樹さんが言う。

「司様って?」
「あなた、何言ってるの?」
「私、まだ、奥様や旦那様にお会いしたことが無くって・・ハハ。」
「あら、いやだ、奥様や旦那様はニューヨークにお住まいなのよ。こちらにはほとんどいらっしゃらないわ。」
「ええ~っ。そうなんですか?」
「椿様だって、年に数回来られるだけだし。あ、椿様は道明寺家のご長女様で、今はご結婚されて、アメリカで暮らされているわ。だから、今のお邸の主は司様ね。」

「司様・・・ですか。」
「本当に知らないの?」
「・・・?」
「珍しいわね。このお邸に来る子は司様目当ての子も多いのに。
『道明寺司』よ。わかるでしょ。経済界のプリンスって言えば有名よ。」


そうか・・・道明寺司。
あたしも知ってはいる。
でもあまりにも遠い世界の人だから、すぐには分からなかっただけ。
道明寺ホールディングス 日本支社の支社長だ。
確か、あたしの一つ上だから、25歳。
そっか、その人が、このお邸の主なんだ。

「とはいっても、平日はほとんどマンション暮らしをされているし、このお邸に戻られるのは週末ぐらいなのよね。それも、出張やなんだかんだで戻られないことも多いし。」
そういって、美紀さんが溜息をついた。
「でも司様って素敵よ。この世の人じゃないってぐらいに格好いいし。あなたも本物を見たら、驚くわよっ。」
美樹さんはあたしにウインクした。
「でもまぁ、私達はせいぜい玄関でお出迎えするぐらいで、身の回りのお世話はほとんど全てタマ先輩がされるから、私達がお近づきになるチャンスはないわね。」



道明寺司か・・。
まあ、あたしには、あんまり関係ないかな。
その時あたしはそう思ってた。

だから、その後みんなで道明寺司の噂になっても、あたしはほとんど聞いていなくて、食後の片付けなんかをしていたから、そんなあたしをタマ先輩が面白そうに見ていたなんて気が付かなかった。




2週間目にタマさんから、
「合格だよ。」
と言われた時にはすごくうれしかった。

「あんた、なかなか気に入ったよ。今時珍しく料理もできるしね。」
タマ先輩もあたしが作った煮物、美味しいって言ってくれてたもんね。よかった~。

「ちょうどあんたにやってほしい仕事があるんだよ。」

あたしは、うれしくて、うれしくて、
「はい、何なりと!」
と返事を返した。



 

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明日は、ついに坊ちゃん登場です(笑)。
  1. 理想の恋人
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翌日あたしは、正式に契約を交わした。
『Hotel the Maple Tokyo』の正規職員。
実はお給料も、前職より上がった。へへ。
メープルの職員ではあるけれど、道明寺邸へ出向という形。
お邸仕えをするにあたり、守秘義務についてもきっちりサインさせられた。
仕事内容は、タマ先輩に一任されるとのこと。
メープルでの仕事は新人のあたしにはとりあえずは与らなれていないけれど、パーティーが重なるような場合に、フロアの手伝いが入ることがあるのだとか。

この2週間で、メイドとしての仕事は案外あたしに合っているのではないかと思っていたから、これからも楽しくやっていけそう。

いろいろ考えたけど、やっぱり住み込みの方が、なにかと都合がよく、あたしは、自分のアパートを引き上げ、道明寺邸の一室に住むことを決めた。
荷物は今日、届くようにしてある。
もともと持ち物が少ないから、こういう時は助かるのよねぇ。
今夜は荷物の整理で忙しくなりそうだ。



夕方になり、業務も一段落したころで、タマ先輩に呼び出された。
「あんたに頼みたい仕事があるんだよ。付いてきておくれ。」

荷物の整理が気になったけれど、受取はしてもらっていると聞いて、タマ先輩について行くと、どうやら外出をするらしく、黒塗りの車が玄関に待機している。
「これに乗るんですか?」
タマ先輩は無言で頷き、あたしはメイドの制服のまま、タマ先輩と一緒に黒塗りの車に乗り込んだ。
タマ先輩って、すごいんだ。こんな高級車に乗っちゃうなんて・・。

「先輩、どちらへ行くんですか?」
「まぁ、いいからついておいでよ。」
「はぁ。」

車はどんどん進んでいき、都会のど真ん中を走っている。
しばらくすると、どこかのマンションの地下駐車場に入った。
タマ先輩に促されながら、車を降り、エレベーターに乗り込む。
地下のエレベーターホールも、高級ホテルのよう。

エレベーターに乗るとタマ先輩がカードをかざした。
慌ててついていき、タマ先輩が閉まるボタンを押すとエレベーターはすぐに上昇した。
そして・・・
エレベーターが止まって、開いた世界は・・・まるで絵画のよう。

すっ、すごい!
これがペントハウスというお部屋かしら。
エレベーターからお部屋が直通。
真正面に夕空が広がっている。

靴は・・はいたままでよさそうだわ・・・。


「先輩・・ここはいったい・・?」
「まぁ、今に分かるから。さて、食事の準備でも始めようか?」
「は・・はい。」
と返事をして、慌ててお邸から持ってきた食材を取り出した。

「まあ、作っても食事をおとりになるかは分からないんだけどねぇ。」
なんて言いながら、おいしそうなサーロインを焼き、サラダを作る。
あたしは、お邸から持ってきたスープを温めたり、コーヒーをドリップしたりして、準備をすすめた。


そこへ、
『ポーン』
とエレベーターが止まる音。

すぐにタマ先輩が廊下へ出向き、あたしもそれに従う。
「坊ちゃん、お帰りなさいまし。」

歩いてくるのは、背の高い、モデルのような男。

この人・・・道明寺司だ・・・。



*****



道明寺司が、リビングに入り、ソファに腰を下ろした。
その後ろに、秘書?と思われる、ガタイのいい男性が立っている。
マフィアの人みたい・・。


「それで?タマが俺に合わせたいやつって、こいつか?」
と、不機嫌そうな声に、あたしは縮み上がりそうになった。

「そうですよ。今後、私の代わりに、このマンションの掃除や坊ちゃんの身の回りのお世話を担当する、牧野つくしですよ。」
とタマ先輩は平然と返事をしている。

なっ、何?あたし、そんなの聞いていませんって!!
焦るあたしよりも速く道明寺司が反応した。

「あぁ?聞いてねぇぞ。」
だよね。

「坊ちゃん、前々から言ってますでしょう。タマももういい歳です。いつまでも、毎日マンションに通っている体力もなくなっているんですよ。」
「年には勝てねぇってやつか?だからって、なんでこいつなんだよ。」
「なかなかいい子ですよ。掃除もしっかりできるし、料理上手。」

「俺は、女は苦手だ。他のやつにしろ。」
「心配いりませんよ、この子も男嫌いだそうですから、丁度いいでございましょ。」

・・・
思わず、道明寺司と目が合ってしまった。

うっ、コワッ。
とすぐさま視線を逸らす。

「男嫌いが、男の世話なんてできねぇだろうが。」

ひぇ。どうしよう。どうしよう。
いや、別にこの男の世話なんかしたくないけれど、このままじゃ、せっかくメープルに就職できたのに、辞めさせられちゃうんじゃないの?

それであたしは焦って答えた。
「あのっ、あたし、男性は苦手ですけれど、仕事ですから、ちゃんとやります。」

「ほぅらね。いい子だろう?ほらっ、つくし、挨拶して。」

『牧野つくしです。今日から、どうぞよろしくお願いします!』
と思い切って頭を下げた。

あぁ、もう、どうにでもなれっ。
仕事を続ければ、いずれはホテルメープルへの道も開けるかも知れないんだから、ここで踏ん張るしかあたしに残された道はない!


道明寺司が、前髪をクシュっとかきあげて、ふぅっとため息をついた。

「わかったよ。その代り、こいつが使えなかったら、速攻タマが戻って来いよ。」
「はいはい。わかりましたよ。ですが、そろそろ、私にも楽をさせて下さいよ。さぁ、食事ができていますよ。つくし、用意して。」
「はっ、はい。」

それからのあたしは、パニック状態のまま、なんとか仕事をこなした。
道明寺司に食事を出し、片付けをし、食後のコーヒーを出した。

途中、秘書の男性が、
「明日は、8時にお迎えに上がります。
これから、よろしくおねがいしますね、牧野さん。」
と、わずかに笑って出て行った。

あの人、笑うんだ。怖い人かと思った。よかったよ~。
あまりの緊張に、そんなことだけで肩の力が抜けちゃう。


道明寺司がシャワーを浴びているうちに、クローゼットの内容の説明を受け、着替えを用意し、バスルームへセットする。

今日着替えたスーツやシャツは明日、クリーニングが来るので出せばいいらしい。
新しいリネン類の場所も教えてもらった。

明日の朝の朝食は、今日、お邸から持ってきているパンと、サラダ、コーヒー、あとは、卵料理を出すように言われた。
坊ちゃんは、あまり食べないらしい。

なるほど、メモメモ・・っとしていると、道明寺司が着替えてリビングに戻ってきた。

するとタマ先輩が、
「それじゃあ、あとは任せたよ。私はこれで帰るからね。」

「えっ。」
と驚くあたし。
「じゃあ、あたしも帰ります。ちょっと、待って下さい。お皿洗ってしまいますから。」

「何言ってるんだい。あんたはここの住み込みだよ。玄関から左に行ったところがあんたの部屋だから。荷物はもう運んであるからね。」


『ええええぇぇぇぇ~~~』
あたしの絶叫が響いた。


 

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「ええええぇぇぇぇ~~~」
というあたしの絶叫に、道明寺司が言葉をかぶせた。

「お前うるせぇよ。」
耳を塞いで、しかめっ面をしている。

いや、だって、驚くでしょ。
いくら、メイドだからって、男の家に住み込みだよっ。
普通じゃないでしょっ。
ありえないっつーの!

「じゃあ、やめろよ。」
「えっ?」
「嫌なら辞めろ。俺も忙しい、グダグダぬかすやつはいらねぇ。」
そう言って、ソファにふんぞり返り、雑誌をとって読み始めた。

なにそれっ、なにそれっ、むかつく~。
そりゃ、驚くでしょうがっ。
あんた、何様よ~。

こうなったら、やってやるっ!
きっちりやって、はやくメープルに移動になってやる~!!

とこぶしを握りしめたら、

あれっ。
きょろきょろするけれど、タマ先輩がいない。

「タマなら帰ったぞ。」
「ええぇぇ~!」
「だからうるせぇよ!」
「ごっ、ごめんなさい・・・」
タマ先輩ってば、ズルい・・。
なんでよ、もぅ〜。
あたしはどうしようもなくて、仕方なく謝り、食器を片づけるためにキッチンに向かった。


食器をカチャカチャ洗いながら、この状況を思い返した。
あたしの荷物はこのマンションに運ばれちゃっているみたい。
だからって、なんで、ここで住み込みしなきゃなんないの?
仕事なら、通いでだってできるじゃないの。
こんな、横柄な男と同居なんて、できるかっつーの。
いやだなぁ、毎日安らぐ時間もないよ。とほほ・・。


しばらくして、突然道明寺司が話しかけてきた。
すぐ近くの壁に寄りかかって、腕を組んでこっちを見ている。
いつの間にここにいたんだかっ。

「なぁ、お前。」
「牧野つくしです。」
「牧野?」
「はい。」
「そんな、緊張しなくても、残念ながら俺がお前を襲うことはねぇよ。俺に馴れ馴れしくすんじゃねーぞ。仕事だけきっちりこなせ。」

はぁ?なにそれ?
なにが?
残念ながら??
ほんと、自意識過剰のアンポンタン。
お金持ちってみんなこうなのかしら?
ばっかじゃないの?

「あたしも、残念ながら、あなたに全く興味ありませんから。それに言われなくても、仕事はしっかりやります。」
睨みながらそう答えたら、

「そうかよ、そりゃ良かった。」
と鼻で笑われた。

「俺たち、うまくやれそうだな。」
そう言って、自室に立ち去って行った。

なにあいつ~、自意識過剰な傲慢男!
ホント、むかつく~。
自惚れんな!!!

あたしはやけっぱちで道明寺司が寄りかかっていた壁を思い切り蹴った。
けど、イッターイ。
さすが一流の部屋は、ビクともしなかったわ。
ああ、最低・・・。



*****



くっ、くっ、くっ、はははは、くぅ~っ!
笑える。
マジおもしれ~、あの女。
声に出して笑いたいが、あいつに聞こえるな。
ああ、腹いてぇ。

さすが、タマが連れてきただけあるな。
色気もなければ、可愛げもない。
俺に興味がねぇとか言ってやがったが、それはどうか分からねぇけど、馴れ馴れしいやつより、よっぽどマシだ。
確かにあいつは、俺に必要以上に接触してきそうにはねぇな。


俺は女は嫌いだ。
仕事でもプライベートでも、基本、女はそばに置かない。
女たちが俺に媚び諂ったり、香水の匂いをぷんぷんさせていると気分が悪くなる。
俺の第一秘書の西田、第二秘書の斉藤ともに男だ。
秘書課は女が多いが、そいつらと絡むことはまずない。
秘書課の女たちには、俺の執務室に入ることは禁止しているしな。


昨年ニューヨークから帰国して、会社から近いこのマンションに住むようになったが、ここでの身の回りの世話はタマに任せていた。
しかし、さすがにタマも歳をとったのか、最近は毎日の邸からの通いはつらいと言い出した。
タマは邸の管理も任されているから、こっちに泊り込みすることもできないしな。
それでも俺は、他のメイドを付ける気はなかったんだが・・・。


ぷっ。
あの女、自分で思っていることが、独り言で出ちまってることに気付いてねぇな。
俺のことをアンポンタンとか言いやがったな。
そんなことを俺様にいう奴は初めてだ。
面白れぇ。

あの女、メープル所属らしいな。
メープル勤務を希望しているみてぇだが、そう思う通りにはならねぇぜ。
バカめ。
俺をコケにして、メープルなんて行けるわけねぇだろうがよっ。


男嫌いかどうかは知らねぇけど、まあ、しばらく、そばにおいて、様子みるか。
図々しいことをしてきやがったら、速攻叩き出してやる。
女と同居なんてまっぴらごめんだが、仕方ねぇな。


そうして、俺のメイドはタマから牧野つくしに変わった。


 

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