花男の二次小説になります。つかつくonlyです。

With a Happy Ending

俺が女を誘って、海に来ているなんて、あいつらに知られたら仰天もんだな。
女と旅行なんて考えたこともなかったが、こいつとなら悪くねぇ。

あいつに、一緒にパーティをフケようと言われて、
どうせなら、すっげぇ楽しい思い出を作ってやりたくなった。
俺は、二人きりがよかったから、デカいクルーザーはごめんだった。
かといって、小さなクルーザーだと夜は危険だ。
ならば、ヘリで近場のリゾートに行こうと考え、急遽ヴィラを空けさせた。
そりゃ、二部屋取ろうと思えばとれたかも知れねぇけど、俺はそうする気はなかった。
かといって、あいつに何かしようとか、そう思ったわけじゃねぇ。
少しでも、あいつと一緒にいて、あいつの目に留っていたかった。

あいつは、口が悪りぃところがあるが、素直で、表裏がない。
それが俺には心地よかった。
喜怒哀楽がはっきりしているのも、表面上の付き合い方しか知らない俺にとっては、新鮮だった。

あいつ、部屋に案内したら、テンパってたな。
なんか、勘違いしてんのか。
けっこう、ボケたとこあるからな。

しかし、あの弁当には驚愕した。
食ったことがあるものは、1つもなかった。
正直、口に合うかと言われれば微妙な味だったが、あの卵焼きはうまかったな。
タマから、あいつが自室のキッチンで、昼食を作って食べているとは聞いていたが、本当に料理が趣味だったんだな。
あいつが言うには、
「これが、本来の日本食なのよ。」
ということだが、本当かよ。
でも、なんだかんだいって、俺はあいつの弁当を完食して、あいつを喜ばせていた。



俺の家族には、キッチンに立つやつなんていねぇけどな。
そんなことを思いながら、水着に着替え、おれはあいつの部屋へ向かった。

ノックだけして、返事も待たずに中へ入ろうとしたとたん、
「まだ、入っちゃだめ!!!」
と、怒鳴り声。

この俺に命令してくる女はこいつぐらいなんだけどな、と一人ほくそ笑む。

「ねぇ、道明寺・・・。ラッシュガードがない。」
「ラッシュガード?」
「上着がない。」
「上着?」
「こんな水着、恥ずかしくって着れない!!!」

ぶっ、そういうことかよ。
「プライベートラグーンだから、気にすんな。」

「気にするよ!」
「入るぞ。」
「だめっ!」

そんなやりとりも面白すぎて、気にせずに突入。
すると、「キャーッ」とベッドに入ろうとするバカ女。

赤いホルタ―ネックのトップスにフリルスカートのビキニ姿のあいつを捕まえて、海に連れ出した。
服を着ていても、華奢な体つきだと思っていたが、水着姿はもっと細い。
抱きしめたら折れそうだ。
あいつのむき出しの肩や背中、細いけれど引き締まった足にドキドキするが、それは顔には出さず、冷静を装うのに必死だった。


嫌とか、怖いとか言っていたくせに、結局二人で海にはいると、あいつは大はしゃぎだ。

あいつを浮き輪にいれて、俺が泳ぐ。
「すっごく楽しい!」
「ねぇ、お魚がたくさんいる!」
とはしゃぐ嬉しそうな顔に、俺の顔も自然に綻んだ。


*****


その日は、夕方まで、海で遊び、夜は、二人でバーベキューディナー。
専属シェフが、海辺で調理する。

「ねぇ、二人で写真撮ろうか?」
と携帯をボーイに渡している。
「あ?写真は嫌いだ。」
「ね?この夏の思い出に1枚だけ。」
仕方ねぇな。お前じゃなきゃ、写真なんかとらせねぇんだぞ、俺は。
カシャっとシャッター音が鳴る。

「俺にも送っとけよ。」
「だめ!あたしだけ。」
「おい!」
そんなことを言うのも、二人でじゃれ合っているみたいだ。


「お前はアルコールやめとけ。」
という俺に、
「・・・少しだけならいい?」
と返すこいつ。
ギロッとこいつを睨んでやったが、俺はこいつの上目使いに弱いらしい。
はぁっとため息をついて、
「こいつはトロピカルカクテル、酒は半分にして。
俺はシャトー・ラトゥール、ボトルで持って来てくれ。」
と言い、結局あいつの願いを聞いてやった。

「かんぱーい。」
と言ってからは、ひたすら食っているこいつに呆れながらも、こいつを見ているのは飽きない。
腹が満たされたところで、大学の講義のことや、好きな映画や本の話が始まった。
大抵はこいつが話ているのを俺が聞いているんだが、これが結構心地いい。

酒は少ししか飲んでいないはずなのに、少し口調がとろくなってきている。
酔いがまわってきたのか?

「9月になったらね。アメリカに留学するの。1年間ね。すっごく楽しみなの。」
あいつは、ふふふっ、と笑っている。
俺は、留学という言葉に動揺した。
こいつが、俺から離れていく、そう思ったら、たまらなくなった。

「留学しなくても、語学ぐらいはできるだろ?」
「うーん。まぁね。でも、もっとネイティブと話してみたいし。
それに将来弁護士になりたいと思っているから、海外経験も悪くないでしょ?」
「弁護士・・?」
「うん、そう。昔からの夢。」
「大河原はどうする?継ぐ気はないのか?」
「えっ・・・。いや・・その。」
あいつがはっとして、しどろもどろになった。


俺は、急激な焦りを感じて、
「お前さぁ、俺と真面目に付きあわねぇ?」
そう聞いた。





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ふぅ、やっと動きだしました。
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  1. 初恋
  2. / comment:3
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翌日の朝、あたしは、いつもよりまぶしい光で目が覚めた。
あれぇ?どうしたんだっけ?

昨日、ヘリでここに来たんだ。
それで、道明寺とお弁当食べて、ワインを飲んで。
くだらない話をたくさんして。
で、どうしたんだっけ?

はっっと、自分を確認。
昨日着ていたワンピースが皺だらけになってる。
あたし、あれから寝ちゃったんだぁ。
あちゃ~。


ワンピースのしわをできるだけ伸ばして、髪の毛に手櫛を入れて、
恐る恐る、リビングに入ったあたし。

「起きたのか?」
と新聞を読んでいた道明寺が振り返った。
恥ずかしくって、道明寺をまともに見られない。

「気分大丈夫か?」
「大丈夫です。」
「はぁ、お前、もう酒飲むな。」
「何か、しでかした?」
「・・・」
しーん。

はぁ、とため息をついて、
「お前、重たいんだよ。勝手に寝んな。これで、2回目だろ!」
「2回目っ?」
「初日もお前、シャンパンで酔ってダイニングで寝こけただろうがっ。」
「ええっっ?」
「覚えてねぇのかよ!何もすんなじゃねぇよ。何されても文句いえねぇぞ。」
「ぐっ。・・・・・すみませんでした。」

「まっ、俺は紳士だから、寝てる女に手をだすことはしねぇけどな。」
なんだかドヤ顔をしている道明寺。
「女嫌いのくせに・・」
と思わずつぶやいてしまった。
「ああっ!?」
「なんでもありません!」
「いいから、シャワーして着替えてこい。朝メシ行くぞ。」


シャワーを浴びながら、昨日のことを思いだした。

あいつと、案外友好的な関係が築けるようになってから、ちょっと警戒心が薄れてしまっているみたいだ。
それに、あたしは昨日から、道明寺のことを意識しまくっている。
あいつが口が悪いのは相変わらずなんだけど、ほら、やっぱりお坊ちゃまだからか、レディーファーストが身についていて、さりげなくエスコートしてくれちゃったりするのも、慣れないあたしにはドキドキもので・・。
口げんかは良くするけれど、なんとなく、それも楽しくって。
案外、こいつといることが心地よくって、もっと一緒にいたいななんて思っちゃってる自分がいる。

昨日の夜だって、話しているだけで、楽しくて。
だんだん眠くなってきたのは分かってたのに、まだ部屋に戻りたくなくて。
それで、そのままソファで寝ちゃったんだ・・・。

あいつは、あたしのこと女友達だと思っているんだろうな。
そうじゃなきゃ、同じ部屋に泊まるとか、普通ないよね。
それでいいはずなのに、なんとなく気分が沈むあたし。
その理由はなんなのか?
はっきりと答えを出すのが怖くて、あたしは頭を切り替ようと努力した。

あたしは、滋さんの代役で、滋さんと鷹野さんがご両親を説得するまでの時間稼ぎのためにここにいるんだ。
だから、いつかは道明寺の前から消える存在。
道明寺にとっては、女友達のような関係。
それ以上にはなり得ない。

でも、でも、今だけは、道明寺のそばにいて、楽しんでもいいよね?
それぐらいは許されるよね?



朝食をとりながら、リビングから見える海を二人で眺めた。
透明度の高い海水が、エメラルドグリーンに輝いて見える。
空は快晴で、雲一つない。

日本じゃないみたい。

「すごい・・」
「驚きすぎだろ?」
「だって、やっぱりすごいよ。」
「気に入った?」
「うん。」
そう答えたあたしに、ちょっと自信ありげに微笑むあいつ。
その微笑みに、やっぱりドキンとしてしまうあたし。
ちがう、ちがう・・、それじゃダメ。
そう思うのに、気持ちが揺れそうで、怖いよ。


そんなあたしにお構いもせず、道明寺が淡々と切り出した。
「着替えたら、海入ろうぜ。」
「え?着替え?」
「水着じゃないと海は入れねぇだろ?」
「水着?」
「何言ってんだよ。ここに来たからには海だろうが。
水着はクローゼットに用意させてあるから、適当に選べよ。」

そっ、そう?海?
海。ウミ。うみ・・・ってことは、水着を着るってこと!
あたしは、今さっきまでの複雑な心境がふっとぶほどにびっくりした。


ひぇ~。
なんで、気が付かなかったの。
男の人と旅行なんて、海なんて。
あたしにとってはハードル高すぎでしょ!

「俺も着替えてくるから、準備しとけよ。」
「うっ。うん。」

淡々と言って、去っていくあいつに、ほっとするあたし。

考えすぎちゃだめだ。
いつも通りでいいんだから。
あたしは、ブンブンと頭を振って、
ともすれば、隙間に入り込んできそうな危険な気持ちを振り払った。





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  1. 初恋
  2. / comment:1
  3. [ edit ]

ここはどこ?
あいつに連れられるがままにヘリに乗り込み、やって来たのは、どこかの・・島?
もう、あたりは暗くなっていて、街路樹に並ぶ街灯の明かりしか見えない。
迎えにきていたリムジンに乗りかえて、
「ねぇ、ここ、どこ?」
と聞いてみる。
「俺んちがやってるリゾート。部屋は押さえてあるから。」
「・・・。」


なんだか大変なことになってしまった。
今日のパーティーを抜けだそうと思っただけだったのに。
あたし、もしかして、とんでもないことをしてしまった?

「こんなところに来ていて、本当に大丈夫かな?」
「構わねぇだろ?二人で抜け出したことなんざ、とっくにばれてる。」
「ええ~!?」
「当たり前だろ。お前んちにもばれてると思うぞ。」
「うっそぉ。」
「ま、怒られはしねぇよ。」
「・・・?」


ババァたちは、俺と滋の仲を心配しているんであって、実際にあのパーティーに本気で行かせようと思っていた訳じゃねぇだろ。
当の二人が、一緒に抜け出す分には、問題ねぇよ。
と思ったが、それは言わない。

俺たちを乗せたリムジンが、水上ヴィラの前に着いた。
辺りはすっかり暗い中、ヴィラにはのオレンジ色の明かりが柔らかく灯っている。
「ここに泊まるの?」
「あぁ。今日はもう暗くなっちまったけど、明日になったら、良い眺めが見られるぜ。」
「そうなんだぁ。でも、あたし、手ぶらなんだけど・・」
「部屋に用意させてある。」


・・・
セレブって本当にすごい。
あくせく旅の準備をしたりはしないのね。
でも、あいつ、ヘリの準備とか部屋の準備とか、指示してくれていたってことか。
やっぱり、優しい・・よね?
ちょっとうれしい・・。

「なんだよ、俺に見惚れてんなよ?」
「んな訳ないでしょ!自意識過剰!」
と口を尖らせながら、部屋に入った。


すっ、すっごーい!
水上ヴィラってこんなに広いものなの?
柔らかい色調の木材でできた内装。
チェアは籐で作られていてとってもかわいい。
ポリネシアンリゾートのようなお部屋。
真夏なのに、吹き込む風は気持ちいい。

あれ?そういえば・・
「あんたはどこに泊まるの。」
「あ、ここに決まってんだろ?」
「ここって、同じ部屋に泊まるってこと?」
「今だって、同じ邸にいるだろうが。」
「それとこれとは話が別!」
「同じだろ?」
「いやっ、無理、あたし、別な部屋に行く!」

出ていこうとするあたしの腕の、道明寺がつかんだ。
「心配しなくても、手なんてださねぇよ。」
「そうかもしれないけど、やっぱりだめ。」
「今はシーズンだから、他に部屋はねぇよ。ここをとるのも大変だったんだ。」
「・・・。」
「寝室も別だし、鍵もある。」

・・・
パーティを抜け出そうっていうわがままを言ったのに、逆に道明寺はあたしを楽しませようとして用意してくれたお部屋だって分かってる。
だから、ここはあたしが折れるしかないよね。
「・・ん。わかった。絶対変なこと考えないでね。」
そういうあたしに、
「お前こそ自意識過剰なんだよ。」
と道明寺が笑ってあたしの頭を小突いた。

「とりあえず、いったん着替えようぜ。お前の部屋はあっち。」
そう背中を押されて、あたしは、部屋へ入った。


*****


部屋のクローゼットを開けると、たくさんの洋服たち。
どれを着たらいいのかも分からない。
アクセサリーをはずし、とりあえず一番楽そうなワンピースに着替えた。

あたしは、自慢じゃないけれど、今まで彼氏がいたことなんてない。
ましてや、男の人と旅行なんて、行ったこともない。
それなのに、道明寺に一緒に逃げようと誘うなんて、どうかしていた。
男の人と一緒のビィラに泊まるなんて、すごく恥ずかしいよ。
道明寺はあたしのこと、軽い女だって思ったのかな・・。

そう思いながらリビングにもどると、すでに道明寺は着替えて、あたしのことを待っていた。

あたしはなんだか恥ずかしくなって、下を向きながら早口で聞いた。
「ねぇ。リゾートに来るなんて思わなかったから、お弁当作ってきちゃった。
お部屋でこれ食べる?」
「食うよ。飲み物は持ってこさせる。ワインでいいか?」
「うん。」

道明寺の態度はいつもと同じ。
あたしの気にしすぎみたいだ。


切り替えの早いのはあたしの取り柄。
さっそくリビングスペースにお弁当を広げていく。
おにぎり、卵焼き、えのきのベーコン巻、から揚げ、ちくわきゅうりなどなど、庶民料理のオンパレード。
ポテトチップスやたけの○この里など、コンビニで買ったお菓子も登場。
あっ、チーズ持って来れば良かったかも・・

「ねぇ、道明寺、ワインにはチーズほしいよね。チーズ、頼める?」
「OK。・・・って、お前、これ、何だよ?」
「なにって、お弁当。」
「・・・これ、食えんのか?」
「しっ、失礼ね!結構おいしいって評判よ!」
家族にだけどね。

固まっている道明寺。
お坊ちゃんは、こんな料理みたことないのか・・。
しまった・・。
「んっと。ほら、見かけより、いけるから。
だめだったら、なにかルームサービスとろう?」
と言いながら、あたしが道明寺の腕をつかみ、上目使いで見上げると、
真っ赤になった道明寺が、
「おっ、おう。」
といって、あたしをソファへエスコートしてくれた。

まずは、お部屋にあったシャンパンで乾杯。
無理やり割り箸を道明寺に渡して、じっと見つめてしまった。
「うっ。」
と言いながら、卵焼きに箸をのばす道明寺。
こいつ、やっぱり、結構かわいいところあるよね。ぷぷ。
興味深々に見つめるあたし。
道明寺がまじまじと卵焼きを眺めて、口に入れた。
と、彼の目が開き、
「うまい。」
と一言。
「やったね!」
その言葉をきいて安心したあたしも、おかずを食べ始めた。





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  1. 初恋
  2. / comment:3
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「道明寺、準備できた?」
「おう。」

パーティー当日の土曜日。
あいつが俺の部屋に入ってきた。

「お前、何だよ、その荷物。」
「これ?ほら、夜ご飯とか食べられないかも知れないから・・お弁当。」
「・・・」
こいつは、完全にピクニック気分のようだ。


それでも、今日のこいつは綺麗だ。
俺が選んだ、スカイブルーのシフォンドレス。
色白のあいつの肌にすげぇ合ってる。
ドレスのカットは控えめだが、あいつの細い体のラインをさらに綺麗に見せていた。
それに合わせた、ダイヤのネックレスとブレスレット。
足元はホワイトベージュのサンダル。
アップにした髪にはブルーのリボンが編み込まれている。

「せっかく準備してくれたのに、もったいなかったね。ドレス。」
「別にいいんじゃね。」
「そう?」

とりわけ美人っつー訳じゃないが、人を引き付ける魅力がある。
あの類が、
「司と婚約しないなら、俺とする?」
なんて言ってやがったんだ。


最近の俺は、こいつと婚約、先には結婚っつーのも悪くないと思い始めている。
道明寺家に生まれた以上、自分の人生はある程度決まっている。
それでも、こいつと一緒に人生を歩んで行けたら・・・。

俺は、たぶん、こいつのことが好きだ。

俺が今現在持っているステータスなんかには興味を示さず、
これから歩んで行く未来を気にかけてくれている。
道明寺家の長男として、これができて当たり前、あれができて当然という、そういう見方しかされてこなかった。
敷かれたレールをそこから脱線しないように走る。
それにプレッシャーを感じてこなかったわけじゃない。

でもこいつは、無条件に俺の可能性を信じてくれる。
そんな女、今まで出会ったことがなかった。
こいつが一緒にいてくれたら、俺はどこまでもやれる気がする。


しかし、そんな俺に対して、こいつは頑なだ。
初めから、縁談は断るという姿勢を崩していない。
それがまた、こいつの魅力なのかも知れねぇが。

こいつが、邸にいるのもあと2週間ちょっとだ。
それまでに、こいつとの関係を進めたい。
そう思った俺は、今回の逃走にサプライズを仕掛けた。


~・~・~・~・~・~


時計を見ると、17時。
「そろそろ行くか。」
と荷物を使用人に渡し、俺はあいつをエスコートした。

パーティー会場の少し手前で、
「ここからは歩く。」
と運転手に伝え、二人でリムジンを降りた。
完全フォーマルな俺たちなのに、あいつが用意したバスケットがあまりに不釣り合いで笑える。
リムジンが発進するのを確認して、二人で顔を見合わせた。
あいつの手を引き、すぐに、近くに停車していたタクシーに乗り込む。


乗り込んだとたんに、
「はぁ、ドキドキしたぁ。ねっ?」
と言いながら、ふぅっと息を吐き、あいつが大きな瞳で俺を見上げた。
その楽しそうな表情に、俺の胸は高鳴った。



俺たちが向かったのは、東京湾・・と見せかけて、
道明寺のヘリポート。
邸のヘリポートはさすがに使えねぇから、羽田近くのヘリポートに向かった。

「なんで、ヘリ?クルーザーは?」
「夜にクルーザーは危険だ。ヘリで行こうぜ。」
「ええっ!どこに行くのよ!」



アワアワするあたしにお構いなく、ヘリに連れ込まれた。
すぐにヘリが飛び立ち、見えてきたのは東京の夕焼け。

東京湾に夕日があと少しで沈んでしまう時間。
ヘリコプターに乗るのも初めてだけど、こんなきれいな夕焼けも見たことない。

「すっごく綺麗・・こんなの初めて。」
ぼーっとしながら道明寺を振り返ると、彼が笑っている。

「よかったな。」
と言う少しはにかんだ笑顔にドキンとした。
あれれ、あたし、どうしちゃったのかな・・。



そういえば、
最近の道明寺があたしを見つめる瞳は、とっても優しい感じがする。
女嫌いだなんて、本当なのかなって思っちゃうぐらい。
男の人とこんなに長い時間一緒にいたことがないから、その距離感に戸惑ってしまう。
なんで、こんなにドキドキするの?
あたし、本当にどうしちゃったの?


あたしの顔はたぶん真っ赤だったと思う。

夕焼け空で良かった。
真っ赤な顔の理由なんて、あいつに説明できるわけがないもの。





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  1. 初恋
  2. / comment:3
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「つくしっ、まずいわ。」
と滋さんからのTEL。
「どうしたんですか?」
「今日、パパから連絡が来てね。
知り合いの代議士の娘さんの婚約パーティーに出席するようにって言われたの。
道明寺司も一緒にだって。どうしよう?」

今、滋さんは、鷹野さんのマンションに潜伏している。
滋さんのお父さんからしたら、おとなしく道明寺家にいる娘は道明寺司とうまくいっていると思っているのかも知れないけれど。

「さすがに、パーティーとなると、私の知り合いも来ると思うから、道明寺司と一緒に出席するなんてまずいわ!」
「お断りできないんですか?」
「仕事でつながりがあるのと、家柄的にもあちらも名家だから、無理だと思う。」
「そんな・・。」
「今週の土曜日だから、急に腹痛とか頭痛とか、急病で行けなくなれば・・」
「そっ、そうか。その手があるか。」
「つくし、大丈夫?ごめんね。あたし達のために。」
「ううん。すでに乗り掛かった船だもの。なんとか最後まで行くつもり!」
「道明寺司とはどう?」
「うん。まあ、口は悪いけど、悪い奴じゃないですよ。お互いに、見合いは断るってスタンスだし。なんか、男友達って感じかな。一緒にいても苦痛じゃないですよ。大丈夫です。」
「道明寺司と一緒にいる?」
「晩御飯は一緒に食べますし、話もよくしますよ。お友達関係になったみたいです。」
「お友達関係・・。」
「心配しなくても、大丈夫ですよ。今のところ、順調です!」
歯切れの悪い滋さんを励ましたくて、明るく言ったつもりだったけれど、
滋さんはなんだか考え込んでいるみたいだった。

「本当に大丈夫ですから!」
「分かった。何かあったらすぐに連絡してね。」



*****



「おいっ!」
と道明寺に呼びかけられた。
来たっ。
「明後日のパーティーのこと?」
「あぁ、お前どうする?」
「道明寺は行かないの?」
「お袋からは、お前と行けって言われた。」
「あたしも同じ。」

面倒くさそうな道明寺の顔。
あたしは、その顔をみて、この人も行きたくないんだなって思った。
しかも、あたしを連れて行くなんて。
パーティーにあたしを連れて行ったら、周りからどう思われるかなんて知れている。
もちろんあたしだって、出席するわけにはいかない。

だから・・
「ねぇ、あたしたち、さぼっちゃおうか?」

それは、今までバイトも勉強もひたすらまじめにやってきたあたしの、
初めての反抗かもしれない。
なんだか、ドキドキしながら、道明寺の返事を待った。


~・~・~・~・~・~


「ねぇ、あたしたち、さぼっちゃおうか?」

という滋に、驚く俺。
「そんなに、行きたくねぇの?」
俺と・・という言葉は飲み込んだ。

あいつは気まずそうに、
「そのパーティーに二人で顔をだしたら、世間からも、あたし達はそういう関係だって思われちゃわない?」
と言う。

まぁ、それは否定しない。
ババァたちだって、それが狙いだろう。

「あんただって、行きたくないでしょ。だったら、そう!二人でどっかに、逃げちゃおう。」
「例えば、どこだよ?」
「例えば・・、うう~ん。誰も追いつけないところ、船、とか?」
「クルーザーか。」
「うんうん!」
「ギリギリまでは、パーティーに行くと見せかけて、逃げるの。楽しそう。どう?」

俺とパーティーに行くのは嫌なくせに、俺と逃げてクルーザーに乗ると言う。
それはどういう意味なのか、さっぱり分からねぇ。

けれど・・・
「乗った!」
と俺が口角を上げると、嬉しそうに右手を挙げたあいつと、ハイタッチを交わした。


高校生のガキかよっ、と思ったが、こいつが俺と出かけたいというのは初めてのことで、うれしい気持ちがあったのも事実。
そんなことを思いながら、一人苦笑した。





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  1. 初恋
  2. / comment:3
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あのパンケーキの日から、俺は滋と過ごす時間が増えた。
別に、あいつに気があるって訳じゃねぇけど、あいつといるのは嫌じゃなかった。
あいつは本が好きらしく、気が付けば、俺の部屋にも出入りして、俺の書棚から本を持ち出したりしている。
代わりに、あいつがお勧めだという本を貸してもらったり、案外友好的な関係だ。

女嫌いなはずの俺が、女といることに苦痛を感じない。
あいつは初めから、俺に色目を使ったりしていなかったこともあるが、なんというか信用できる女という気がしていた。

それに、あいつは俺に媚びない。
この間も、この俺様がランチに誘ってやったんだ。
それなのに、
「ごめん、今、見たいテレビあるから。
勝手にお昼するから、気にしないでね。」
と、こちらを振り返ることもなく、返事をされた。

その前も、
本屋に行くというあいつに、俺も行くと言ったら、
「あんたと行くと、目立ちそうだから嫌。」
といって、拒否された。
この俺を拒否するなんて・・と軽くショックを受けたな。

それから、あいつは俺のことを「道明寺」と呼び捨てにしてやがる。
いつからそうなったのかは記憶にないが、普段なら呼び捨てなんぞされたらぶっとばしているところだが、この女から言われるのは気にならない。


この夏休みから、さすがの俺も、後継者教育が始まっていた。
ババァにはNYに来るように再三言われていたが、それを拒否っていたため、さすがに大学3年ともなると、後継者教育を受けると約束させられた。
滋は基本的には、ずっと邸に閉じこもっていて、あまり外出はしていないみたいだが、俺は平日は夕方まで、会社に行ったり、自宅で専任講師から経営に関する特別講義を受けたりしていた。

最近は、俺が会社に出ている間や、講義の間に、類やあきら、総二郎が遊びに来ている。
昨日も、講義が終わってあいつの部屋に行っても、あいつがいなかった。
聞けば、あきらたちが来ているから来客用のリビングにいるという。
あわてて向かうと、

「司と婚約しないなら、俺とどう?」
なんて、類に言われてやがった。
まあ、当然、類も断られていたけどな。
俺がだめで、類がいいとかねぇよな。マジで。

まぁ、最初から婚約するつもりはないとはっきり宣言していたんだから、
こんなもんかとも思うが、それでも少し気に食わない。
そんな思いから、最近の俺は、少しでもあいつの視界に入ろうと必死になっている節があることは、自分でも自覚していた。


そんなある日、NYのババァから、連絡が入った。
「司さん、滋さんとはうまくいっているのかしら?」
「あぁ?互いにそんな気はねぇよ。」
「ふぅ。あなた、ご自身の立場を分かっているの?
大河原とのつながりは今後大事になります。しっかりなさい。」
「・・・。」
「それから、今週の土曜日の夜に、松原代議士のお嬢さんの婚約パーティーがあります。
道明寺からは、あなたに出席していただくわ。滋さんと一緒に行ってちょうだい。」


*****


このお邸に来てから、もうすぐ3週間になる。
あたしと道明寺の関係は、割と友好的。
ばれたら困るし、今後のこともあるから、あんまり接触を図りたくなかったんだけれど、
なにかと絡んでくるあいつに、ついつい乗ってしまって、気が付けば一緒にいることが多くなった。
男友達ってこんな感じだったかな?
あたしは、高校までは公立に通っていた。
家は家計が苦しかったから、大学進学はあきらめようかとも思ったんだけれど、当時の担任の先生から、永林の特待生枠を狙ってはどうかと勧めてもらった。
そのお話はあたしにとってはすごく魅力的で、高校時代も必至に勉強したっけな。
だから、高校時代もクラスの男子と話すことはあっても、コンパに行くとか、もちろんデートするとか、そんなことはなかった。
しいて言えば、中学時代はわりと男子とも仲良かったけれど、今考えるとすごく子供だったと思う。

道明寺は口は悪いけど、お坊ちゃまらしく、優しいところもある。
美作さんなんかによると、高校時代ぐらいまではかなり荒れてたらしいんだけれど、あたしの前ではそんなことはないな。
でも、冷めてるっていうか、人生あきらめてるっていう感じのオーラがあって、それはなんとなく気になってしまう。
ほら、やっぱり、人生は前向きにいかないとダメでしょ?

でも、この間、道明寺が特別講義を受けていると聞いて、ちらっと覗いてみたのね。
そうしたら、すっごく真剣な表情で抗議を聞いているの。
そりゃ、当たり前なんだけれど、うまくいえないけど、いつものオーラじゃないの。
すっごく輝いてる感じ。
こいつ、こういう顔できるんだなって、ちょっと嬉しくなった。

だから、その日の夕食で言ってみたんだ。
そりゃ、経営のことなんてわからないけど、道明寺を応援したかった。

「あんた、結構、経営とか合ってるんじゃない?
トップマネジメント?あんたならできそう。」
「お前に何がわかる?」
「・・・感。
だけどさ、そりゃ、あんたたち後継者っていうのはいろいろ不自由でつまらないこともあるのかもしれないけどさ、
でも、それを極めていったら、後継者じゃなくて、先駆者になれると思う。
あんたなら、出来そう。
道明寺ホールディングスを新しい道へ導いて、今よりも発展させられる!」

道明寺は、しばらくポカンとしていたけど、
その後にニヤッと笑って、
「俺は生まれながらにトップに立つ人間だからな。
お前に言われなくても当然トップに立ってやるよ。」
と宣戦布告した。

「約束ね!」
その道明寺の言葉を聞いて、あたしはまるで自分のことのように嬉しかった。





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  1. 初恋
  2. / comment:3
  3. [ edit ]

こんにちは。
happyendingです。

今日は忙しく、夜に更新ができそうにありません。
明日の日曜日、AM5:00に更新予定です。
来週の月曜日からも、夜ではなく、AM5:00の更新を予定しています。
最近は夜9時に更新していたのですが、
夜9時に必ず投稿できるとも限らず、朝5時ならば、予約投稿で頑張れそうなので。
また、懲りずに遊びにいらしてください。


それから、コメントにも書いたのですが、
やっぱり、中身はつくしとはいえ、司が滋という名前の女性に興味を抱くというのは、私的には結構辛いです。
もう少し、後先考えてお話を始めるんだった・・と後悔しました。

しかし、ここまで書いてしまったからには、最後まで乗り切ります。
応援していただけると嬉しいです。

では、明日の5時に。




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  1. 初恋
  2. / comment:4
  3. [ edit ]

このお邸で、あたしは本当にすることがない。
道明寺司には初日に会ったっきり、その後3日経つけれど、全く顔を合わさない。
まぁ、その方が都合はいいんだけれど、とにかく暇!
あんまり、おおっぴらに道明寺家から外出するのも憚られるし。
持って来ている勉強道具とか、本とかで時間をつぶしてはいるものの、本当にもう、限界かも。
あたしは元々貧乏学生だから、バイトをしたり、家事をしたりと体を動かしていないとダメみたい。

コンコンっとノックの音。
「お部屋の掃除に参りました。」

・・・
この時間になるといつも部屋にお掃除が入る。
ベッドメイキングもしてもらえるし、洗濯もしてくれる。
でも、やっぱり・・・

「あのっ、お掃除、自分でしてはだめですか?掃除機貸していただけます?」
メイドさんが驚くのを横目に、あたしはどんどん掃除を進めていった。
あわてたメイドさんが、タマさんを連れて戻ってきた。

「お嬢様、こんなことをされては。」
「だって、花嫁修業にきたのでしょう?だったら・・」
「道明寺家では、女主人となる方が掃除をなさるようなことはありません。」
「それなら、何をしに来たのかわからないじゃないですか。」
「しかしねぇ。」
「せめて身の回りのことだけでも、自分でやらせてください。」
「・・・。面白いお嬢様だねぇ。けれど、奥様からも好きにしてもらうようにと言われているから、どうぞお好きなように。」
「はいっ!」

それからのあたしは、掃除に洗濯、さらには厨房に入り浸ってお料理を教えてもらったりと、花嫁修業を満喫することになった。


*****


「坊ちゃん。今日は出かけられないのですか?」
「あ?タマ、なんかあんのか?」
「滋お嬢様のことですよ。」
「あぁ、あいつ。なんかあったのか?」
「ぷっ。あの方は、案外坊ちゃんとお似合いかもしれませんけどねぇ。」
「・・・?」
「先日から、花嫁修業だといって、掃除や洗濯、料理まではじめていますよ。
それは楽しそうに。タマは、気に入りましたよ、滋お嬢さんのこと。」
「何言ってんだよ。ババァが送り込んできた女だろうが。」
「本人は、この見合いを受ける気はないそうじゃないですか。」
「・・・。」


確かに、あいつは初めから見合いを受ける気はないと言っていた。
好きな奴と結婚したいとか・・。
俺たちの世界では通用しないようなことを言っていたな。
俺だって、昔は思っていた。
道明寺を継ぐとしても、結婚は好きな女としたいとか、そんな夢物語。
けれど、それは現実にはあり得ないことだと、徐々に理解するようになった。
あいつだって、大河原の娘なんだから、分かっているはずだ。

でもあの時、そんな夢物語をいうあいつが、なんだかとても儚く見えて、守ってやりたくなった。
だから、眠っているあいつを抱き上げて、部屋まで運んだんだ。

あいつらは俺のことを冷やかしていたが、別に恋愛感情ってわけじゃない。
けれど、なんだか、あいつの純粋な言葉が胸に響いて、
大事なことを思い出させてくれたような気がして、
あいつを大切に扱いたくなったんだ。
ただ、それだけだ。




タマに言われて、あいつの様子を見に行くことにした。
ほんの気まぐれだ。
あいつは調理場にいるらしいと聞いたが、そんな場所行ったことがない。
タマに案内されて向かうと、メイドたちがおどろいた顔をしてお辞儀をしてきた。

中から、女の声が響いてくる。
「わぁ、すっごい!パンケーキも、こうなると芸術品ですね。」
はははっ。と笑い声が聞こえる。

「トッピングは滋様がなさいますか?」
「はい。良いのですか?」
「なさりたいのでしょう?」
「へへへ。ばれました?」
「どうぞ!」

楽しそうな声とともに、甘ったるい匂いが充満してくる。
俺は甘いものは嫌いだから、とてもこの場にはいられねぇ。
出なおすか・・・と思いながらも、中を覗いてみる。

三角巾をつけた、エプロン姿の女が、楽しそうになにやら作業をしている。
その姿があまりに幸せそうで、思わず俺も微笑みそうになった。
って、何だよ俺。

「つっ、司様!」
俺に気が付いたパティシエの声が聞こえた。
あわてて、顔を引き締める。

「お前、ここで何してんだよ。」
「なにって、お菓子作りを教えてもらっているのよ。」
「なんでだよ。」
「・・・花嫁修業?っていうか、あたし、料理好きだから。」

「滋様は、とってもセンスがよいですよ。」
とパティシエが合いの手を入れてきた。

皿をみれば、生クリームやフルーツでデコレーションされた、パンケーキ。
驚くことに、結構うまそうに見える。
しかし、俺の口から出た言葉は、
「これぐらい、誰でも出来んだろ?」

むっとした女が言い返してきた。
「じゃあ、あんたもやってみなさいよ。」

うっ。
「ほら、出来ないんじゃない。」
「ちょっと、貸せよ。」
売り言葉に買い言葉、俺は、生クリームの絞り器をもぎ取った。

パティシエがパンケーキを持って来て、俺の前に置く。
はぁ。仕方ねぇ。
これを絞って、デコればいいのか。
はは~ん。なるほど。
結構面白れぇな。
俺は昔から、結構器用なんだよ。
なんて思いながら、自分が思うようにデコレーションを施す。
差し出されたフルーツも盛り付ける。

気が付くと夢中になっていたようで、
「あんた、なかなかやるわね。」
という滋の声で、我に返った。

「すっごく、おいしそう!」
そういって、笑う滋。
その笑顔を見て、俺は、思わず、イチゴを落とした。
そのイチゴは、パンケーキの中央へ・・。

それを見た滋が、笑いながら、
「それで完成?私のもできたから、一緒に食べよっか?」
と言ってきた。



あれよ、あれよ、と準備されたティータイム。
滋は、俺がデコッたパンケーキを、
俺は、あいつがデコッたパンケーキを、
一緒に食べた。

いつもなら、甘いものは一口だって食わねぇ。
けど、この日は、なんだか、あいつが嬉しそうにしているのをずっと見ていたくて、
パンケーキを完食していた。





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ダイニングに案内されると、そこには広いダイニングテーブル。
どこに座ったらよいか分からなくて、もたもたしていたら、
西門さんが、
「滋ちゃんは、俺の隣ね。」
といって、席に案内してくれた。
滋ちゃん?って突っ込みたくなったけど、まぁ、いっか。
あたしの前には道明寺司。
その隣には、花沢さん。
あたしの両隣は、西門さんと美作さん。
なんか変なポジション?って思ったけれど、よく分からないから流されるがまま・・。


西門さんは、茶道西門流の家元候補。
話ている感じでは、かなり女慣れしているっていうか、軽い感じ?
でも、話上手なんだよね。
西門さんのおかげで、この夕食も苦痛ではなくなったから、感謝かな。

美作さんは、美作商事の御曹司。
御曹司の友達は、御曹司って訳ね。
話によると、マダムキラーだとか。
あたしに言わせると、不倫なんて、不毛っていうか、その良さが全く分からないんだけれど、
御曹司っていうのは、きっとあたしには理解できない人種なんだろうな。
でも、マダムキラーだけあって、なんていうか、繊細なんだけど、落ち着いた雰囲気で安心できそうな人。

花沢さんは、やっぱり花沢物産の御曹司。
類は友を呼ぶ?っぷぷ。
瞳の透き通った感じがクールな人。
何を考えているのかよく分からないけれど、時々笑う姿にドキッとしちゃった。
こういう無表情な人って、ちょっと笑っただけでも、なんか嬉しくなっちゃうよね。

そして、最後は道明寺司。
滋さんのお見合い相手。
この人は、みんなの話を総合すると、やっぱり女嫌いってことらしい。
ふーん。怖そうだけれど、見た目はカッコいいのにね。もったいない。
まあ、口が悪いから、マイナスポイントの方が高いわね。

「お前ら、こんな奴と仲良くなってどうすんだよ。」
はぁ?こんな奴?
「まぁ、まぁ、司。仮にも1か月以上、一緒に過ごすんだろ?」
「一緒に過ごすわけじゃねぇよ。邸にいるってだけだろ。」

「そうですよ。私も、断りきれなくってこういうことになってますけれど、
両親には、お見合いは断るって伝えてますから。
それでも、この夏休みだけはって言われちゃったから、仕方なく来ているんです!」

そりゃ、こんな男に興味もないけれど、
あんまりな言われようにちょっとムカっときちゃう。
はっ、いやいや、だめだめ、冷静に、冷静に・・。
あたしは滋さん、あたしは滋さん・・。

「けど、まっ、道明寺と大河原なら、文句の付けようがないな。」
「同感。」

「なっ、何言ってるんですか!」
ちょっと、余計なこと言わないでよ。
お断りだっていってるでしょうがっ。

「んなこといったって、俺らの世界じゃ、両家が乗り気になってる縁談を断るのはむずかしいっしょ?」
むむっ。
「そんなこと、ありませんよっ。お互いに断ればいいんです!」
「だから、それが無理だって。」
「だって、好きじゃない人と結婚なんてできないでしょう!?」
やばっ、なんか乾杯で飲んだシャンパンが回ってきたみたいだ。

「なになに、滋ちゃんは、好きなやつがいるわけ?」
「いませんよっ!」
あっ、さらにやばいかもっ。
でも・・、ここはこれでいいかもな。
彼氏がいた経験もないのに、彼がいるふりもできないし。
もちろん、好きな人なんて、いたこともないもん。

「へぇ。」
「なら、いいじゃん。司、お買い得だよ。」
「おいっ!余計なこというなっ!」
「無理です。」
即座にこっちを向いた道明寺司とにらみ合う。
両脇では、西門さんと美作さんが声を立てて笑っていた。
「「案外、お似合いジャン?」」


「滋ちゃん、なんで司じゃだめなの?」
と美作さん。
「好きじゃないんだから、当たり前でしょう?
それに、道明寺さんだって、このお話に乗り気じゃないでしょう?」
「そう決めつけるのは、まだはやいよね?」
と花沢さん。
道明寺司は無言を貫いている。

「え?」
「だって、二人は今日知り合ったんでしょ?だったら、好きになるかも知れないでしょ。」
この人が、口を開くのも意外で驚いちゃったけど、
確かに、あたしは、道明寺司をよく知らないわけだから、
初めから決めつけちゃうのはおかしい・・。
って、いやいや、違う。あたしは好きになりに来たんじゃないんだから!
あぁ、やばいなぁ、なんかシャンパンが回ってきて、眠くて思考回路がおかしい・・。

「そうかも知れないけど、でも、あたしは、会社のために結婚するなんて嫌だな。
結婚は、本当に好きな人としたいもん。
両親とか、会社とか、関係ないよ。
それに、お金持ちと結婚したからって、幸せになれるわけじゃないでしょ。
自分で選んだ人と一緒になるから、幸せになれるんだよね?」
そうだよね、滋さん。
あ~何を言ってるんだろう、あたし。
だんだんと瞼が重くなってきたあたしの視界のなかに、複雑な表情の道明寺司が映ったような気がする。

「だったら、これから好きになればいいんじゃないの?」
そんな言葉が聞こえたけれど、だんだん眠くなってきて、
あたしはテーブルに腕をおいて、突っ伏してしまった。


*****


「すっげ~、意外だったな。」
「マジ、ビビった。」
「俺は、なんとなく、司の気持ち、わかるけど?」
「マジか?類。」

ダイニングで眠ってしまった滋を起こそうとした俺たちに、
司が言ったんだ。
「俺が運ぶから、そのままでいい。」

自他ともに認める女嫌いの司が、女を横抱きにしてリビングを出て行った。
ふだんは、女に触れられることを極端に嫌っているくせに、自ら抱いて行ったんだ。
使用人ならいくらでもいる邸だ。
司が運ぶ必要なんてないのに。

「司のタイプって、ああいう子なのか?」
「俺たちの周りにはいないタイプだな。純情?」
「ありゃぁ、絶対処女だな。間違いない。」
「いいんじゃね?童貞と処女。」

「なんだか、逆に応援したくなるよね、あの二人。」
という類も、なんだか意外だった。





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滋さんの家のリムジンが、道明寺邸のロータリーに到着した。
堂々とするように言われているけれど、生粋の庶民であるあたしにそんなことできるわけない。
玄関ではすでにメイドさんたちが列を成して待機していて、
「お待ちしておりました。」
と迎え入れられ、ついつい、あたしもペコペコと頭を下げてしまった。

大きな玄関をくぐり、メイド頭のお婆さんに部屋へ案内された。
お婆さんは、タマさんっていうんだって。
長いカーペットが敷き詰められた廊下を歩いていく。
滋さんのお邸も相当な大きさだったけど、このお邸はさらにすごい。
玄関を入ったところには、なんとシンデレラ階段!
自宅にこんな階段ある?ふつう。
しばらく歩いてやっとついたあたしの部屋にまた驚いた。
淡いピンクの壁紙、天蓋付のベッド、白で統一された家具。
真っ白なソファーの上には、花柄のクッション。

ショールームよりもすごいお部屋に、声も出せずにいると、
タマさんから、
「お茶でも入れましょう。いかがなさいますか?」
と聞かれた。
「では、紅茶を。」
と言いながら振り返ると、そこには、ミニキッチンが備え付けられていた。
お嬢様の部屋にもキッチンがあるのねぇ、なんて思っていると、
「滋お嬢様は、料理がお好きだとか。
それを聞いた奥様が、急遽キッチンを入れられたんですよ。」

・・・絶句。
ミニキッチンっていったって、うちのアパートのキッチンよりずっと大きいし、豪華で使いやすそう。
それに、滋さんがお料理できるわけないし、ってことは、滋さんがあたしのためにそう伝えてくれたみたいだ。
あたしは、高級なものは食べ慣れていないから、キッチンがあるっていうのはすごくうれしかった。
気軽にそうめんとか食べたいよねっ。


「とっても素敵なお部屋ですね。」
と自然とそんな言葉が漏れる。
「気に入ってもらえたなら良かったですよ。」
とタマさんも笑顔で答えてくれた。

荷物はすでに運び込まれていて、私がすることは何もない。
さてさて・・・
「あの・・、私、花嫁修業といわれて来たのですけれど、何をしたらよいでしょうか?」
滋さんは、仲を取り持つためなんて言っていたけれど、本当は違うかも知れないし、
一応きちんとしておかないと・・、と思って聞いたあたしに、
タマさんはとても驚いたようで、
「お嬢様にとくにして頂くことはありまんよ。ご自宅だと思って、ゆっくりお過ごしください。」
と返してきた。

やっぱり、することないのかぁ。はぁ。
けれど、何もせずに1か月以上もここにいるなんて無理だよ~。

ん?
・・・?
そういえば、御曹司はどうしたんだろう。
やっぱり、この縁談に乗り気ではないから、顔も見せないんだろうか。
まぁ、こっちとしてはその方が都合がいいけどね。

「坊ちゃんは、いえ、司様は、後程挨拶に来られますよ。」
「えっ。いえ。あのっ・・。」
「坊ちゃんは、気難しいですが、割とかわいらしいところもおありですから。」
とタマさんが笑う。

もしかして、あたし、独り言っちゃった?
恥ずかしい。
時々やってしまうんだよね。気を付けないと。

けど、気難しいのに、かわいらしいって、矛盾しすぎじゃない?

「夕食は、坊ちゃんと御一緒にどうぞ。また、お迎えに上がります。」
そう言って、タマさんは退室してしまった。

はぁ、あたし、本当にここで何をしたらいいの??


****


コンコン。
ぼーっと窓の外をながめていると、部屋がノックされた。

誰かな?
夕食?
はぁ、結局、御曹司は挨拶にも来なかったな。
まぁ、一人の方がゆっくり夕食もとれるし、いいかなぁ、
なんて思いながら、
「はーい。」
と返事をして、カチャッとドアを開けると、そこには4人の長身の男性。

誰??
キョトンとしたあたしに向かって、
「君が、大河原滋さん?」
と、黒髪ストレート・サラサラヘアの男性に声をかけられた。

そっ、そうだ、あたしは大河原滋!
ちょっと、気が緩んでいたところを引き締めなおす。
「はい、初めまして、大河原滋です。皆様は?」

「へぇ・・。」
とだけ呟いて、その後の会話はない。

「あの~。」
「君が、司の見合い相手で間違いないよね?」
もしかして、ばれてる?とドキドキするあたし。
「はい、そのはずですけれど・・」
と自信なく答えてしまうあたしに、
むこうは面白くなったのか、3人がクスクス笑い始めた。

「思っていたよりも、固いイメージだな。」
と茶髪でさらさらロンゲの人。

「思ったより、小さい。」
というのは、茶色いビー玉のような瞳をしたこれまた茶髪の男性。

一人だけ、ムスッとした顔の男性がいるけれど、その人は無言・・。
その髪型は・・ちょっと面白い。チョココルネ?ぷっ。
だめだめ、笑っちゃ!

もう一度気を引き締めて、
「あの・・。」
あたしは、最大の疑問を聞いてみた。
「道明寺司さんって、どなたなんですか?」

4人がそろって驚きの顔を見せた。
「君、司のこと知らないの?」

「知りませんけど。」
「マジ?」
「マジです。今回のお見合いで、初めてお名前を聞いたんです。」

「「「へぇ~」」」
と3人が驚きの声を上げ、一人はやはり無言。

もしかして、この中の誰かが、道明寺司なのかもって思った。
どうして、あたしってば、写真位確認して来なかったのよ~と後悔したけれど、
時すでに遅し。
だって、セレブ生活のプレレッスンで頭がいっぱいだったんだもん。
相手のことなんて、はっきり言って興味なかった。

お見合い相手なのに知らないって、やっぱりまずかった?
でも、むこうも滋さんのこと知らないみたいだよね?
これはこれで、なんとかうまくいっているのかも?

「道明寺司はね、こいつ。」
そう言って、黒髪ストレートの男性が、無言の男性を指し示す。

あぁ、この人なんだ。。
髪型を別にすれば、すっごく美形。
でも、すっごく怖そう。
ほんと、見合いなんて興味ないって感じね。
まぁ、あたしもないけどね。
滋さんだって、大事な彼がいるんだし、都合はいいよね。
お互い断れば、それでいいってことじゃないの?

よしっ!
じーっと、道明寺司を見上げて、
「道明寺さんですか。初めまして。」と言ってみる。
「・・・」
むこうから挨拶はない。

「おい、司、挨拶ぐらいしろよ。」
「うぜぇ。」

ほほーう、やっぱり、この態度か。
これならこれでいいかも。
予想通りね。

「道明寺さんはこのお話に乗り気じゃないって伺っています。
でも、正直、私もまったく乗り気じゃないんです。
両親が休み中だけでもどうしてもというので、この夏休みはこちらでお世話になりますけれど、
私の方も、お断りするつもりでいますので、滞在中も私のことは気にしていただかなくて結構ですよ。」

しーん。

その場が静まり返る。
何か悪いこと言ったかな。

「「「ぶっ」」」と3人が笑いだした。
「だってよ、司。」

視線を向けると、先ほどよりもさらに機嫌が悪そうな、道明寺司。
なんでよ。
あんただって、興味ないんでしょ?

「あぁ、俺も興味ねぇし、ほっとしたわ。」

あはは。聞きようによってはショックなことかもしれないけれど、あたしと滋さんにとっては好都合。

「でも、まぁ、せっかく知り合ったんだし、仲よくしようぜ。
俺は、西門総二郎。」
「俺は美作あきらね。」
「花沢類。」

あたしは、ちょっとほっとして、
「どうぞよろしくお願いします。」
と、それぞれに差し出された手を握り返した。

道明寺司は手を出してこなかったから、どうしようかと思ったけれど、
一応これからお世話になるので、こちらから手を差し出すと、
じーっと手を見つめられ、考え込んでいる様子。
それから、
「しゃーねーな。」
といって、握手してくれたんだけれど、その顔がちょっと赤い??
ふーん。確かに、割とかわいいところはあるみたい。ふふ。


とそこへ、タマさんがやって来た。
「皆様、夕食の準備が整いました。ダイニングへどうぞ。」

丁度良いタイミングで夕食へと向かうことになった。




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