花より男子の二次小説。CPはつかつくonlyです。

With a Happy Ending

間違いなく・・破水だと思う・・。


陣痛は、来ていないと思っていたけれど、少し前からお腹が張る感じがしていた。
タマさんに協力してもらって着替えを済ませると、司さんが心配そうに待っていた。

すでに病院には連絡されていて、あたしは司さんに抱えられ、一緒に病院へ向かうリムジンへ乗り込んだ。

色々な出産のシチュエーションを、頭の中でシュミレーションしていたはずなのに、破水したとたんに動転してしまった。

司さんが一緒にいてくれて、本当に良かった・・・。


手はずっと繋がれてる。
それだけで、すっごく安心できる。
破水したからって、すぐに生まれる訳じゃないけれど、
だんだんとお腹の張りが強くなってきた。

これが、陣痛・・?
規則的に、差し込まれるような痛みがお腹にきてる。
下半身全体が重くなるような痛み。


「どうした、具合わりぃのか?」

そう聞かれて、よく考えてみたら、さっきから、お腹に痛みがくる度に司さんの手を強く握っていたみたい。

「陣痛・・始まってるみたい。まだ、我慢できるけど・・。」

司さんがあたしとの隙間が無いように、ぴったりと横に座り、あたしの肩を抱きしめた。

「ずっと傍にいるから。」
「うん。」

目を閉じて、司さんにもたれると、またお腹が痛くなってきた。
さっきより、痛みが増してきてる。

落ち着け、落ち着け、落ち着け・・・あたし。

大きく息を吸って、それから大きく吐き出し、あたしは何とか冷静になろうと努力した。



***



「破水ですね。陣痛も約5分間隔です。破水によって、陣痛が促進されたようですね。子宮口も5㎝開いています。」

破水すると、陣痛が強くなるとは聞いていた。
確かにどんどんお腹の痛みが強くなってきてる。
午前中までは、何も感じていなかったのに・・。

「このまま入院して、出産の準備に入りましょう。初産ですので、時間がかかるかも知れません。赤ちゃんに会うために、頑張りましょうね。」

入院の説明を聞き終わった頃には、すでに背中にも骨盤にも痛みを感じるようになっていた。

頑張りましょうね・・って、いったい何を頑張るんだっけ?
あれほどシュミレーションしたことが、全部頭から抜けちゃったみたい。
これから、どうするんだっけ?
あたし、どうしたらいいんだっけ?


用意された豪華な個室へ移動する間も、あたしの頭の中はプチパニック。

促されるがままに部屋に入り、指定された服に着替えた。
それから、司さんに手を引かれて、コロンとベッドに横になって、次の痛みが来るのを待った。
まだ我慢できるけど・・なんだか、痛みの間隔が狭くなっているような気がする。
しばらく続いた痛みが引いていくと、ふぅーっと息を吐いた。


「凄く痛たいのか?」
司さんがあたしの手を握ってくれる。

「痛いけど・・。きっと、まだまだ・・だよね・・。」
「俺が、代わってやりてぇよ。」
そう言う司さんが真剣で、なんだか可笑しくて笑ってしまった。

「本気だぞ?」
「うん。でも、私も頑張るから、大丈夫。」

司さんの声を聴いたら、冷静になってきた。

そうだ。
司さんとあたしの赤ちゃんが生まれるんだ。
あたしが頑張らなくちゃいけないんだ!


「今のうちに何か食っとけって言われたけど。」
「そうだ、お誕生日ケーキ、せっかく焼いたのに・・。あっ・・また来た・・・たっ・・いたたっ・・・。」


そこへ、ノックの音が聞こえて、タマさんが入ってきた。
飲み物や、おにぎり、サンドイッチ、いろんなものが持ち込まれる。

「どれぐらい時間がかかるか分からないからね。最後まで体力を残しておかないと。少しずつお食べよ。」

司さんが体を起こしてくれて、あたしは飲み物を飲んだり、おにぎりを食べたりして、陣痛の合間を過ごす。

破水しているから、シャワーを浴びることはできなかったけど、顔と手足を拭いて、髪を縛ろうとゴムを取り出した。
そうしたら、司さんがあたしの後ろに回って、髪を梳いてくれた。
気持ちいい・・。

梳かした髪を三つ編みにして、肩から前に垂らした。


そうしているうちに、少しずつ陣痛の間隔が狭くなり、反対に痛みの時間が長くなる。

だんだんとあたしの余裕は無くなっていった。

骨盤と背骨が軋んでる。
痛い・・痛い・・・。
こんなに痛いなんて・・知らなかった。

いつの間にかあたしは無言になっていて、繋いでいる司さんの手を握りしめているだけ。
その手の平すらも汗で滑りそう。

司さんは何も言わずに黙って傍にいてくれる。
汗を拭いてくれたり、腰を摩ってくれたり。


当たり前だけど、子宮口が開かなければ赤ちゃんは生まれない。
あたしはとんだ勘違いをしていたみたい。
出産って、産む瞬間が痛いんじゃないんだ。
こうして赤ちゃんを待つ時間も、ずっと痛みと闘うんだね。
本当に、経験してみなければ分からないことばかりだ。


ますます痛みが強くなった。
陣痛の合間に、その痛みを逃す。
これ以上間隔が狭くなったら、休む時間も無くなっちゃう。
あたし・・本当に産めるのかな・・。
痛みに耐えながらも、そんな不安が胸に広がった。

すると、一瞬だけ、司さんの手が離れた。
司さんがパンツのポケットから、何かを取り出す。
それは、あたしがあげたばかりのシルクのハンカチ。
それがあたしの手の平に置かれ、その上から司さんの手が重なった。

もう片方の手をあたしのお腹に当て、司さんが言う。

「お前も、頑張ってるんだよな。早く出て来いよ。」

そうだった・・。
あたしだけが辛いんじゃないんだ。
ポコちゃんも、あたしたちに会うために頑張ってるんだ。
そして、司さんも、ずっとあたしを応援してくれている。

怖がっている場合じゃないよ!あたし。
そう思ったら、また力が湧いてきた。


更に痛みが強くなって、陣痛が次々とやってきて、
もうダメかも・・と思った時、
様子を見に来てくれた助産師さんが、

「子宮口が開いてますね。いい陣痛が来ています。これで、分娩に入りましょう。」

と言い、部屋の中が、あっという間に出産準備で整えられていった。
そうと決まったとたんの急激な展開に、あたしはついていけなかった。

もう・・生まれるの?
赤ちゃんが・・?


女性医師と助産師さんがやってきて、いよいよ・・・

汗だくのまま、司さんを見上げると、やっぱり緊張しているみたい。
どうしたらいいのか分からないような様子だったけど、バーを握るあたしの手をそっと包んでくれた。


「はい、息んでみましょうか・・そこで、止めて・・そう。いいですよ。」
「もう一度・・息んで・・・そうです。いいですよ。」

助産師さんの言う通りに、陣痛が来る度に、力を入れたり、抜いたり。
言われる通りに頑張っているけれど、いったいどうなっているのか・・。
途中、何度も司さんが汗をぬぐってくれて、あたしはその度に、心配そうな彼に向かって頷いた。

あたし、大丈夫だよ。
大丈夫・・・頑張れる。


「もう一度・・そうです。上手ですよ。頭が見えてきましたよ。」

え・・頭??
陣痛を逃す間に少し冷静になる。
ふっと司さんを見ると、司さんも「頭」に反応したのか、目をパチクリしてる。
こんな時なのに、笑いそう。
大丈夫。
あたしはちゃんと産める。
だって、あたしには司さんが付いてる。

あたしがヘロヘロになりながらも笑っているのを見て、司さんもちょっと笑った。
「つくし・・頑張れ。」
「ん。」


「はい、息んで。」
んーっ!

「もう一度、いきますよ。」
ふっ、んんんーっ!!

「もうすぐ出ますよ。次の陣痛で産みますよ。」

つっ・・・次っ?!

あたしの手を包んでいる司さんの手に力が入ったのが分かった。
あたしは、バーを離して、司さんの手首をギューッと掴んだ。

次で、必ず・・・


んっ・・んんーっ・・・んんんーっ!!!


あ・・・
スルリと何かが出てたような感覚。
その感覚と同時に、全身の力が抜けた。
頭の中が・・真っ白・・・



・・・
・・・・・
フギャッ!フギャッ!オギャー!!!



うっ・・うっ、うまれた・・・。
生まれたんだっ!


「おめでとうございます、道明寺さん。元気な男の子ですよ。」


半分放心したまま、司さんを見上げる。
司さんは、あたし以上にぼーっとしたまま、空を見つめている。
それから、そんな彼と視線が合った。

お互いに、一気に現実に引き戻される。

あたしたちの赤ちゃんが、無事に生まれたんだ。
良かった・・良かった・・・嬉しい・・・。


「司さん、ありがとう。やっぱり、男の子だって・・。」

ずっと、傍についていてくれた司さんにお礼を言いたかった。
お邸にみんなにも、病院のスタッフさんにも。
だけど、誰よりも、司さんに。

司さんが頷いた。
司さんの目が真っ赤だ。
手をつないだまま、司さんがあたしの汗だらけの頭をなでてくれる。

「つくし、お疲れ様。ありがとう。」

漸くして、司さんから聞こえた言葉はやっぱり、感謝の言葉だった。


赤ちゃんの泣き声が聞こえる。
元気なんだ。
まだ、来ないのかな。
早く、会いたいよ。

そう思っていると、
「はい、お母さん、赤ちゃんですよ。」

あたしたちの元に、白いタオルに包まれた赤ちゃんがやってきた。
そっとあたしの枕元に置かれた赤ちゃん。

あたしと司さんの、大切な、大切な、赤ちゃん。

タオルの中で、目を閉じている赤ちゃんを、二人同時に覗き込んだ。

小さい。
小さくて、愛しい。
無事に生まれてくれて、ありがとう。
そんな気持ちでいっぱいで・・・

「いらっしゃい、ずっと待ってたんだよ。」

そう言って、そっと赤ちゃんの頬に触れると、赤ちゃんの目が開いた。

大きな目。
あれ、髪の毛が生えてる。
やっぱり・・くるくるだ。
かわいい・・・。

「司さん、凄く可愛いね。」

笑いながら司さんを見ると、司さんが、さっと、手の平で自分の片目を隠した。


「幸せすぎて、頭がおかしくなる。」


それから、ごくっと唾をのんで、手の平を外した。
そこには、今まで見た司さんの中で、一番素敵な、本当に素敵な笑顔。

誰よりも逞しくて、誰よりも優し気で・・・

「俺が、必ず守ってやる。俺の家族を。」


あぁ、あたしは、この笑顔が見たかったんだ。
この人の子供ができたって分かった時、この瞬間を想像したんだ。

あぁ、良かった。
司さんが幸せそうで。
司さんがいてくれたら、あたしも、赤ちゃんも、きっと幸せになれる。

だから、ずっと、一緒にいよう。
あたしたち家族は、ずっと一緒に、幸せになろう。



____1月31日。
愛する夫の誕生日に、
あたしたちは、愛する我が子を授かった。



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やっ・・やっと、生まれました・・。
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