花より男子の二次小説。CPはつかつくonlyです。

With a Happy Ending

今日の仕事にひとまずの目途がつき、彼はニューヨーク本社ビル51階の窓から夜景を眺めた。
観光名所としても名高いマンハッタンの夜景を、この場から眺めることができるのはごく一部の限られた人間のみだ。しかし、多くの人々を魅了すると言われるその美しい輝きも、彼に特別な感慨も抱かせることはない。ただ、そこに景色があるだけで、色付いて見えることはない。極端に言うならば、昼であっても、夜であっても、晴れであっても、雨であっても、彼にとっては、そこに映る景色は同じ色合いなのだ。
灰色・・・彼の心と同じように・・・。
それから彼は、ゆっくりとデスクへ戻り、ノートパソコンを開いた。そして、今でも彼の心を掴んで離さない、ただ一人の女性のためだけに用意された、専用のフォームからメールの確認を行った。
 

 
『おじ様へ
 
お仕事お疲れ様です。
先日書いていらした、難しいプロジェクトは成功しましたか?
きっと、おじ様のことだから、うまくいったんだろうな。
 
私の方は、先日2学期のテストが終わりました。
おじ様が大事だっておっしゃっていた語学は、かなり頑張りましたよ!
テスト結果が出たら、またご報告しますね。
 
もうすぐクリスマスですね。
ニューヨークはとっても寒いと聞いています。
お風邪など召されないように、お体ご自愛くださいね。
 
つくし      』
 

 
他愛もない文面にもかかわらず、彼の表情が緩む。
今の彼にとっては、唯一の楽しみ。至福の時だ。
彼が人間らしい感情を思い出せる、唯一の時間。
 
 

彼の名前は道明寺司。
言わずと知れた、道明寺ホールディングスの後継者で、その経営手腕は、先日のアメリカの大手服飾メーカーの買収を機に、着実に世界に知れ渡ることとなった。
地位も、名誉も、美貌さえも当然であるかのように手にする男。
ただし、まだ若年でもある彼の周りは、彼に取り入ろう、もしくは取り込もうとする、腹黒い人間たちばかりが取り巻いていた。
しかしながら、彼はまた、そういった人間の扱いには慣れたもので、母親譲りの冷徹さを兼ね備え、ビジネスに関しては寸分の隙も与えない男でもあった。
天性のビジネスセンスを持ち、莫大な資産を継ぐ男。彼の周囲には、彼と一晩だけでも共にしたいと虎視眈々と狙いを定めてくる女達が群がることも必然だった。
そしてその美貌。微笑むことなど微塵もないそのクールさもまた彼の魅力となり、彼は年頃の女性たちからの注目を一身に集め、どこぞの令嬢が彼を射止めるかということは、常にニューヨークのゴシップ誌の話題になっていた。
彼自身も当然そのことを自覚していたが、当の彼はそんな女達に興味など示さず、ひたすらにビジネスを極めようと貪欲であった。それもそのはずだ。彼には目標があったのだから。

『自分の初恋の女性をいつか必ず迎えに行く』
それだけが、彼の原動力だったのだ。
 




 
 ***** 
 
「牧野さん。」
高校3年生の牧野つくしは、下校しようと鞄の整理をしていたところで、担任である女教師に呼び止められた。
「すこし、お話があるの。いいかしら?」
 
職員室隣の来客用の部屋へ入ると、そこには英徳学園の学校長が腰を下ろしていた。
「牧野さん、大学は受験しないということですが?」
学校長が話し始めた。
「はい。お恥ずかしながら、うちには大学に通うほどの金銭的な余裕がありません。国立大学を考えてはいるのですが、弟も高校に入りますし、何かと物入りなんです。」
つくしは、正直に説明した。
「この英徳高校でトップレベルの成績である牧野さんが、大学進学をしないことについては、全職員が残念に思っているところです。是非英徳大学に進学してもらいたいと考えています。」
「・・・・。」
つくしは黙ってしまった。自分だって、大学進学は夢ではあるのだ。しかし、現実問題を考えると難しく、就職せざるを得ない状況だった。
「牧野さん、実はあなたに、学費を支援したいというお話があります。」
「えっ?」
「優秀な学生に学費を援助し、将来の日本の発展に寄与してもらいたいと考える企業や団体はたくさんあることは知っていますか?」
「なんとなくは・・。」
「あなたの学校での成績を知り、あなたを援助したいとの申し出がありました。企業によっては、自分の企業に就職するように斡旋するケースもありますが、今回は、純粋に大学の学費の援助をするということです。」
「誰が、そんなこと・・。それに、条件を聞かないことには、話は進められません。」
 
学校長の話す条件とは、とても簡単なもので、週に一度、大学での様子や、成績などをメールで報告すればよいのだという。
本当にそれだけで?
ただより怖いものはない、と実生活の中で学んでいるつくしとしては、考えられないことだった。
匿名の援助なので、支援してくれる相手は分からないが、学校長が言うには英徳学園の出身者であるとのことで、匿名であることもまたこの援助の条件だった。
将来的な就職先についても制限はしないとのことで、では何のために?という疑問を抱かざるを得ない。
そもそも、この英徳学園に援助を必要とするような学生など殆んど存在しないのだが、つくしのように特待生として入学した数名の学生にとっては、英徳大学への進学はかなりな費用を要するため、英徳には進学せず、国立大学を狙う者もいた。学園長としては、優秀な学生を英徳に残すことのできる、このような援助を今後も活用したいのだと言う。
 
「先方は純粋に、未来を担う学生へ投資をしたい。いわばノブレス・オブリージュの精神を体現したいそうです。その対象として牧野さんが選ばれた。どうです?牧野さん、受けてみませんか?」
「では、両親とも相談をして、お返事をさせてもらってもいいですか?」
 
 


つくしは一般家庭の出身で、父は中小企業のサラリーマン、母はスーパーでパートをしていた。3つ年下の弟は現在中学3年生で、高校受験を控えていた。
その夜、両親に援助の件を相談すると、母の千恵子は喜んだ。
「良いお話じゃない。あんた、大学に行きたいんじゃないの?ほら、パパとママじゃ、大学には行かせてあげられないから、そんなお話だったら受けたらどう?」
相変わらずの能天気さだ。玉の輿狙いで、つくしを英徳に無理やり入学させたのも母だった。特待生とは言え、高額な制服や学用品、学生らしくもない修学旅行費用など、予想以上の出費のせいでうちは万年金欠状態なのに・・・と思うつくしであったが、母の思いも理解していたため、文句は言わずに卒業するつもりだった。
「それに、あんた結局、玉の輿には乗れそうにないしね。高校生にもなって、彼氏のひとりもいないなんて。」
「ママ!またそんなこと言って。」
そこへ、つくしの父・春男が口を挟んだ。
「まぁまぁ、つくし。パパは自分が不甲斐ないせいで、つくしが大学に行けないと思うと悔しいんだ。パパのためにも、このお話、受けてみてはどうかな。」


もし、英徳大学を卒業したら・・・いつか、彼ともう一度出会うことができるだろうか。
彼女はそんなことをぼんやりと考えていた。



 

にほんブログ村
いつも応援ありがとうございます。
一応書いておきますが・・・サスペンスではないです・・・。
関連記事
スポンサーサイト

  1. My Daddy-Long-Legs(完)
  2. / comment:7
  3. [ edit ]

ありがとうございます(#^.^#)

  1. 2016/12/05(月) 22:23:04 |
  2. URL |
  3. happyending
  4. [ edit ]
いつも応援ありがとうございます。
何とプロローグにたくさんのコメントがっ!

そうです。その通り!
このタイトルは、直訳で「わたしのあしながおじさん」です。
こんな有名なお話をタイトルに持ってくるなんて、どうしたものかと思いましたが、これしかないっというお話でもあり(笑)。
以前にも書いたのですが、初恋を書いてブルーになった時に、サクサクと書いたお話なんです。これ。
なので、そんなにすごい展開があるってこともない・・・です。
いや~、こんなにコメントを頂いてしまうと、もっと気合を入れて書きなおしたいぐらいですが、時間もないので、手直しで参ります。今夜も、今から手直し作業。実は、昨日から、結構直してる(笑)。さすがに、そのままはアップできない代物なのです。
英文で呼んだ方もいる中、私のこの文章・・・恥ずかしさ極まりなし・・。大目に見てやってください。

そうそう、いつも一人称で書いているのに、なんと今回は三人称の文体。
自分で読んでいても、なんだ?これ?サスペンスか?と思いまして、かといって今更書き直す暇もなく、かなり不安でしたが、あまりそのあたりツッコミがなくて、ちょっとホッとしましたよ。「こわっ」とか、コメントあるかと思っていたんです(笑)。H様、サスペンスだと思われても不思議はないです(笑)。私も、そう思う人いるかなって思ったので、一応注釈を入れました(笑)。

いつもと違う雰囲気を体験!ということで、良い方向に考えていただけるとうれしいです。
お話は基本甘いと思いますよ~。

管理人のみ閲覧できます

  1. 2016/12/05(月) 13:33:34 |
  2. |
  3. [ edit ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます

楽しみです

  1. 2016/12/05(月) 10:12:00 |
  2. URL |
  3. さち子ママ
  4. [ edit ]
いつも更新ありがとうございます!
今回は足長おじさんてきな話しなんですか?
前回の理想の恋人もオバさんは大好きで毎日が楽しみて今回も間をあけず更新ありがとう〜〜>_<
楽しみにしています

管理人のみ閲覧できます

  1. 2016/12/05(月) 09:05:31 |
  2. |
  3. [ edit ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます

足長おじさんは

  1. 2016/12/05(月) 08:19:09 |
  2. URL |
  3. もかもか
  4. [ edit ]
おはようございます!
忘れもしない足長おじさんは、私が初めて英文で読んだ本です。
非常に読みやすい内容で、当時高校生?だった私にもなんとか読めました。日記形式なのでなのかな?
主人公の前向きさと、そしていつ、あえるのかしら?という少しドキドキした気持ち、よく覚えています。原作では正体を明かさずにだんだん親しくなりましたよね。
あんなシーンがあるのかしら?そして手紙で恋心を打ち明けて、病身になっていた彼のところへいってハッピーエンドでしまよね。
素敵なセレクトですよね、今からワクワクします。
クリスマスシーズンにぴったりですよ!!!
ありがとうございます!って勝手にお礼を言っときます(笑)

次が待ち遠しいです。
ぜひともときめくストーリー期待していますね。

管理人のみ閲覧できます

  1. 2016/12/05(月) 07:16:51 |
  2. |
  3. [ edit ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

  1. 2016/12/05(月) 06:09:56 |
  2. |
  3. [ edit ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます

 管理者にだけ表示を許可する
 
 

プロフィール

Author:Happyending
ときどき浮かぶ妄想を書き留めたくて始めました。

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR

« 2017 10  »
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -