花より男子の二次小説。CPはつかつくonlyです。

With a Happy Ending

パーティーを機に、司とつくしの関係が大きく変わったかといえば、そんなことはなかった。
つくしが超鈍感だということもあったが、司もまた恋に不慣れで、甘い雰囲気になりそうで、そうはならない微妙な関係が続いていた。
 
それでも司は自分が彼女に恋をしている自覚はあった。それを素直に表現できないだけで。
彼女を知ってから、彼は無意味な暴力を振るうことはなくなった。もちろん、赤札を貼ることもなかった。彼女に嫌われたくない、彼女に好かれたいというごく普通の青年の想いがあるだけだったのだ。
昼休みにはわざと非常階段に出かけて行って、いつも彼女の食事に付き合った。カフェに誘いたかったが、一度彼女に断られてから、なかなか誘えずにいた。何事も恐れる必要もない生活を送ってきた彼だったが、彼女からの拒絶だけは恐かった。
彼女は相変わらず類とも仲が良かった。仲が良いとはいっても、非常階段限定のようだったが。そんな類に嫉妬する自分にも司は気付いていたし、もしかすると、つくしは類のことが好きなのかもしれないという危惧もあった。
司は自分から告白することはないくせに、類を排除することには余念がなかった。そこで、直接つくしに聞いたのだった。
「お前、類のことが好きなのか?」
すると、つくしは顔を真っ赤にして、
「何言ってんのよ。そりゃ、素敵な人だとは思うけど。花沢さんには、静さんがいるでしょ。」
「もし、類に告られたら、お前どうすんだよ。」
「馬鹿っ。何てこというのっ!そんなことあるわけないでしょっ!」
非常識にもほどがあるとばかりにつくしが怒り始めた。
そして、さらに顔を赤らめて、
「あんた、なんでそんなこと聞くのよ。」
と聞き返したのだった。
司はその問いに返事をすることはなく、話を切り出した。
「お前、今週の日曜日、暇ある?」
「日曜日?うん。大丈夫だけど?」
「デートしようぜ。」
「デート??」
つくしは、とても驚いた様子だったが、次の瞬間には、ふんわりと笑顔になった。
「うん。たまにはいいかもね。」
 
 


*****

デート当日。
待ち合わせは、恵比寿ガーデンプレイス。
司はそわそわと待ち切れず、約束の1時間も前からその場所に来ていた。というよりも、ドキドキしながら初めて自ら誘ったデートを断られなかったことがうれしすぎて、前日から殆んど眠れないぐらいの有り様だった。
約束の午前11時にあと10分と迫ろうという時になって、彼女が走ってきた。白のダッフルコートにチェックのミニスカートがのぞいている。すらっとした足には、こげ茶のブーツ。大きな瞳はいつもまっすぐで、息の切れている彼女はほんのりと頬が赤かった。司の周りには、美人と言われる人間はごまんといたが、今日の彼女の可愛らしさに敵う女はいないと思われた。

「ごめん。待った?」
「いや、ちょっと早く来てた。」
「そっか。それで、今からどうするの?」
「歩きながら、飯でも行こうぜ。」
「でも今日はクリスマスイブだから、どこもいっぱいじゃない?」
「リザーブしてるから問題ない。」
そう言って、どんどんと歩き出す司。それを追いかけるつくし。
司がいかにも高級そうなレストランに入っていく。つくしは焦った。そんなところに入るお金もないし、マナーも知らなかった。息を切らしながら、司の腕をつかみ、
「ねぇ、ねぇ。あたし、こんなところ入れないよ。」
「金の心配ならいらねえよ。」
「いや、そっ、そうかもだけど、その、じゃなくって・・」
あわあわとしているうちに、レストランの中庭に面した一番良い席へ案内されていた。
つくしは、さっきまでの心配など吹き飛んだようだった。
「すごくきれいなお庭だね。」
クリスマス仕様に化粧をされた木々が並ぶ中庭をみて、つくしはそう呟いた。その姿に、司は満足そうな微笑みを浮かべた。
 

つくしは、最初こそは緊張していたものの、通された席が個室であり、マナーは逐一司が教えてくれるというサービス付きで、思いがけず楽しい時間を過ごしていた。つくしは、道明寺司という男性に惹かれていた。本名を知った時には、赤札を貼るような人間は信用できないと思ったが、彼と接しているうちに、道明寺司という男性の人間性を理解できるような気がしていた。一瞬傲慢に見えるけれど、実は繊細で、寂しがり屋さん。分かりにくいけれど、いつもつくしには優しかった。つくしが冷たくしたら寂しそうで、笑ってあげたら彼も笑顔になることを知った。そして、だんだんとつくしの心の中に司が占める割合が大きくなっていったのだった。


食後のデザートを食べながら、二人はゆっくりと会話を交わしていた。
「そういえば、道明寺は大学は英徳にあがるの?」
「あぁ、このままいけばそうなるな。」
「そっかぁ。」
「お前は?」
牧野家はつくしが英徳大学に行きたくても、学費が払える経済状態ではなかった。
「英徳には行かないよ。行くとしたら、国立かな。」
「なんだよ、行くとしたらって。大学行かねぇつもりなのか?」
「うん。弟もいるしね。国立なら、奨学金をもらえればなんとか行けると思うけど、パパはすぐにお金を使っちゃったりするから、どうなるかはわからないし。」 
司は先日の期末考査でも、彼女が総合で学年トップの成績であったことを知っていた。どの大学を狙ったとしても、彼女の成績をもってすれば合格圏内であることは一目瞭然だった。
「将来の夢・・とかねぇの?」
彼にだって夢なんかなかった。けれど、彼女の夢を聞きたかった。
「夢かぁ。道明寺は?」
「俺は、ある意味決まってるか。」
そう言った司から出たのは、乾いた笑い。道明寺財閥の後継者として、将来はそのグループを率いていくという未来。それは、決して彼の望んだ未来ではなかったが、それ以外の選択肢はないと諦めて、彼は他の将来を模索することもなかった。
「道明寺はさ、道明寺ホールディングスを継ぐのは嫌なの?」
嫌なのか?と問われれば嫌だ。けれど、他の奴にその立場を奪われるのも嫌だった。生まれながらに決められたレールの上を走ることは不本意ではあるものの、他の誰かが道明寺グループのトップに立つというのであれば、自分がそれ以上の成績で打ち負かしてやりたいという気概はあった。

「道明寺が道明寺ホールディングスの社長になったら・・あたし、自慢できるね。」
と彼女がいたずらっぽく笑う。
「あたしは高校生の時、道明寺社長とご飯を食べたことがあるのよって。」
その言葉を聞いて司はやるせなく思う。未来の彼女の隣には、自分は描かれていないのだということを。そのことが強烈に空しくて、彼は彼女を何とか繋ぎ止めたいと思った。
すると、口を開こうとした司よりも先に、彼女がまた話し出した。
「あたしの夢はね。実はすごく普通のこと。あたしの家族がちゃんとご飯を食べて、ちゃんと笑える未来になること。別に、今の生活に不満がある訳じゃないけど、今のままじゃ、うちのパパとママ、まだまだ苦労しそうだしね。だから、本当は大学にいって、いいところに就職して、ちゃんと働いて、お給料をもらって、パパやママにも仕送りしてあげたいな。そう考えたら、あたしの夢ってすごく平凡だよね~。」

彼女が語る未来は確かに平凡な未来だ。笑いが絶えない温かい家族がいる未来。でも、そんな未来は司にとって、恐らくは手にしたくても手に出来ないもの。彼女の未来に自分が存在できたら?いや、自分の未来に彼女がいてくれたら?そんなふうに願ってしまう。
「俺がトップになるから、お前、道明寺に就職しろよ。」
そう言った司に、つくしは目を丸くする。
「わぁ、言ってくれるわね。じゃあ、約束ね。あたし、道明寺ホールディングスを目指すから、道明寺は社長を目指してね。」
そう言って、カラカラと笑うつくし。彼女は冗談だととらえていたかも知れないが、司は本気だった。
「俺は、甘くねぇからな。ちゃんと大学いけよ。使えなかったら雇わねぇぞ。」
つくしは、まだまだおかしそうに笑っている。
「うんうん。分かった。頑張る。じゃあ、道明寺も約束守りなよ。社長にならなかったら、絶交だよ。」
約束を破ったら絶交だなんて、面白いことを言いやがると司は笑った。そんな言葉が何よりも自分に火をつけるだなんて、思ってもいないんだろうと考えていた。


彼女との将来を夢見るのであれば、自分がするべきことが見えてきた。彼女との未来を手に入れるためには、自分が一人前になる必要がありそうだ。そして、ずっと彼女の隣で彼女を守っていきたい。
道明寺財閥を継ぐということに、何の意味も持つことができなかった彼だったが、彼女を幸せにするためにならば、この決まりきったレールに乗ることも厭わないと思えた。
_____まさに、司の中に夢が芽生えた瞬間だった。



 

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いつも応援ありがとうございます。
なんだか、この二人、可愛いんですよねぇ。
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  1. My Daddy-Long-Legs(完)
  2. / comment:4
  3. [ edit ]

こんばんは~

  1. 2016/12/11(日) 20:57:02 |
  2. URL |
  3. Happyending
  4. [ edit ]
いつも応援ありがとうございます。

そうですね~。
まったりと時が流れていて、原作とは全く違いますね(汗)。
私、結構この二人が好きなんですよね~。
長編ではないので、できるだけ丁寧に書きたいとは思っています。
実ははじめに書いたものより、流れは同じだけれど、だいぶ直してます(笑)。
ではでは、また明日も遊びにいらしてくださいね!

管理人のみ閲覧できます

  1. 2016/12/11(日) 12:25:26 |
  2. |
  3. [ edit ]
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  1. 2016/12/11(日) 11:22:39 |
  2. |
  3. [ edit ]
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  1. 2016/12/11(日) 06:32:06 |
  2. |
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