花より男子の二次小説。CPはつかつくonlyです。

With a Happy Ending

1月31日。
今日は火曜日で、仕事は21時に終わった。
別に早く終わる必要なんてなかったが、今日は会食も急ぎの決済もなかった。
秘書の西田が俺に向かって、
「お疲れ様です。今日はゆっくりなさって下さい。」
と頭を下げた。

ゆっくりと言われたところで、俺にすることは仕事ぐらいしかない。
酒や女に夢中になることもなければ、いわゆる趣味ってやつもない。
だったら、その仕事が一段落しているのであれば、あとは部屋に帰ってゆっくりしたらいいのかも知れないが・・


けれど、俺は部屋には帰らず、何となくフラフラとBarにやって来た。
いつもは平日に飲みには行かない俺だが、寝る前に一杯酒でも飲んでおくかと思っただけだ。


店内に入ると、臼井が驚いた顔を見せた。
「司君、珍しいですね。」
「おう、一杯くれ。」
それだけ告げて片手を上げ、俺はいつもの個室に入った。

少しして、あの女がウイスキーを持ってやって来た。
いつもの通り、俺が指定しているマッカランのヴィンテージボトルとグラス。
いつもと違うのは、今日は少し多めのつまみと、アイスペールを持ってきているところ。

女がグラスに氷を入れようと準備した。
俺は、いつもストレートだ。
氷なんて必要ねぇ。
「おい、ちょっと待て。」

女の手を止めようとしたその時に、俺の携帯が振動した。
女は手を止めたまま黙っている。

「あぁ、俺だ。なんだよ、あきら。あぁ、メープルにいる。はぁ?誕生日?俺の?今日だったか、忘れてた。」
女が出て行こうかどうするか迷っているようだ。

「もう、誕生日とか言ってる歳じゃねぇだろうよ。歳くっただけだ。あぁ、サンキュ。切るぜ。」

幼なじみのあきらからの電話は誕生日を祝福する内容。
もう、ガキじゃねぇっつーのに、相変わらずあきらの奴は細けぇな。
以前は、俺の誕生日にはデカイパーティーをしていたもんだが、それも今年からは無くした。
帰国直後で多忙であることもあったが、本当に祝う気の無い奴らとのビジネスのためだけのパーティーに俺の名前を使われるのは、もうまっぴらだった。
それでも、会社にはたくさんの祝いの花や電報、贈り物なんかが届いたらしい。
恐らく邸も同様だな。
うぜぇっつーの。
それに何の意味がある?
そんなもん、いらねぇよ。
自分が欲しいもんは、自分で手に入れる。
これまでもそうだったし、これからもそうだ。
誕生日にかこつけたご機嫌とりのプレゼントなんて、見たくもなかった。


「あのぅ・・・」

はっと気が付くと、女が戸惑った様子で俺を見ていた。
俺の表情が険しくなっていたのに驚いたようだ。

「あぁ、わりぃ。俺は、いつもストレートだ。」
そう告げると、

「でも、マスターが、今日はロックを出すようにと。」
「あ?」
「ですから、今日はロック・・」
「お前、何様だ?」
「あっ、いえ、その・・・すみません。でも・・」

何がロックだ。
ロックなんて、水と同じだ。
そんなもん、酒じゃねぇよ。

「ストレートだ。」

つべこべ言い出した女に、最後に一喝すると、
女が慌てて、グラスにウイスキーをいつも通りダブルで注いだ。

「すぐにチェイサーをお持ちしますね。」
そう言った女が慌てて出ていく。


はぁ。
俺は何となく溜息をついていた。
今日、ここに来たのは、何か期待してたって訳じゃない。
でも、女の明るい雰囲気が気に入っていた。
ただその雰囲気を感じたかったのに。

慌てて出ていった女。
というより、俺がビビらせちまったか。

はぁ。
無意識に、もう一度ため息が漏れた。


それから女がチェイサーを用意して、また出て行った。
その女はいつも20分間隔ぐらいで様子を見に来る。
グラスが空になっていれば、酒を注ぎ足していく。
チェイサーも毎回新しいものに変えていく。
そんなことが何度か繰り返された。


不思議なことに、俺がこの店に来ると、必ずあの女が担当になる。
今日は初めて平日火曜に来たのに、あいつが担当だった。
女は面倒くさいから傍に置かない俺だが、あの女は悪くねぇんだよな。
俺に色目を使うこともなく、淡々と仕事をこなしている。
経営者目線で言えば、さすがは「The Classic」の従業員だという評価になる。


20分おきに姿を見せるのも、楽しみだった。
そろそろ来る頃かと思うと、ウイスキーを注がせたくて、つい酒が進んじまう。
1杯だけのつもりだったのに、今日は早めに来たせいで、すでに5杯目だった。
来て欲しくなければ、「呼ぶまで来るな」と言えばいいだけのことなのに、何となくそうは言いたくなくて、飲み続けちまった。

また約20分が経って、
「失礼いたします。」
と女が丁寧に部屋に入ってきた。

空になったグラスをみて、
「お客様、どう致しましょうか?もう少し、飲まれますか?」

少し心配そうに俺を見ている。
この俺の心配をするなんて、100万年早ぇ。
けど、なんとなくくすぐってぇ。

「もう少し飲むか。」
そう言った俺に、女が首をかしげて考えている。

「でも、もう時間も遅いですし、そうだ、コーヒーをお持ちしましょうか?」

確かにこれ以上飲めば、さすがの俺も明日に響く可能性もある。

「じゃあ、それで頼む。」
素直に従った俺に対して、女がパッと顔を綻ばせた。


それから、女は俺にコーヒーをサーブすると、もう部屋には入って来なかった。
飲み物のサーブが終われば、俺には用は無いってことだ。
そんな風に考えると、思わず自嘲的な笑いがもれちまった。
この「道明寺司」が女にサーブされたがっているなんてな・・



もうすぐ0時。
閉店時刻だ。
そろそろ、チェックして、部屋に戻るか。
やっと、無意味な俺の誕生日が終わりを告げるその時刻。

俺が立ち上がった瞬間に、再び女がやって来た。
女は思ったよりも背が低い。
俺の肩ぐらいの身長で、俺をまっすぐに見上げてきた。


「あの・・いつもお仕事お疲れ様です。
それで・・お誕生日おめでとうございます。」

そう言って手渡されたのは、丸い形の食い物。


無言になる俺。
この俺に、直接プレゼントを渡してきた奴なんて今までいない。
しかも、食い物なんてありえない。

思わず受け取っちまったが・・
「おい、これ・・」

「あれ?ご存知ありませんか?マフィンですよ。明日の朝にでもどうぞ。」

マフィン・・

こんなもん、返そうと思った時に、
「では。これで。」
と、女がすっと立ち去った。


マジ・・ありえねぇ。

俺はその場に呆然と立ち尽くした。



 

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明日から2日間は「第三医務室の牧野先生」です。
また夜にアナウンスを予定しています。
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  1. 俺の女
  2. / comment:6
  3. [ edit ]

ありがとうございます(#^.^#)

  1. 2017/01/07(土) 00:15:49 |
  2. URL |
  3. Happyending
  4. [ edit ]
いつも応援ありがとうございます。

楽しみと言っていただけてホッとしています。
相変わらずのお話ですが、どうぞお付き合いください。

明日の牧野先生が不安です。
アナウンスしすぎたかなぁ。
コメディ苦手なのに・・・

管理人のみ閲覧できます

  1. 2017/01/06(金) 18:18:02 |
  2. |
  3. [ edit ]
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  1. 2017/01/06(金) 14:32:27 |
  2. |
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  1. 2017/01/06(金) 12:35:38 |
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  1. 2017/01/06(金) 09:08:39 |
  2. |
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  1. 2017/01/06(金) 06:29:50 |
  2. |
  3. [ edit ]
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