花より男子の二次小説。CPはつかつくonlyです。

With a Happy Ending

金曜日。
フロアのお客様からの注文をマスターに伝え、フルーツの盛り合わせを用意しようと厨房へ入ろうとすると、あたしの傍にドスンと誰かが座る音。

思わず「ひゃっ」と驚いた。
でももっと驚いたのは、そこへ座ったのが「司さん」だったこと。


あたしはずっと気になっていた。
無理やりマフィンを押し付けちゃったことを。
よく考えれば、知り合いでもない女にいきなりプレゼントなんか渡されたら気持ち悪いよね。
次に会ったら、どうしようってちょっと緊張してた。

でも、あの日、電話で話してた司さんは、なんだか投げやりな感じで。
誕生日を「忘れてた」だなんて、絶対に嘘だと思った。
誕生日に嫌な思い出でもあるのかな?
それとも、今日、何か忘れたいことでもあったのかも知れない。
誕生日に一人で、お酒を飲むだけだなんて。
だって、結局、ウイスキーをストレート・ダブルで5杯だよ?

何があったのか知らないけど、だけど、今日ぐらい、誕生日ぐらいは、ちょっとだけでも笑って欲しかった。

そりゃ、この歳になれば誕生日パーティーなんてしないかも知れないけどさ。
うちなんて、未だに誕生日には家族でケーキを買って食べてるよ。
そりゃ、いい年かもしれないけどさ。
いつもとは違う、ちょっとだけ特別な日であってほしいじゃない。


あたしは、司さんのあの冷たい瞳が気になっていた。
あの切れ長の目は、笑うことはないのかな。
笑ってくれたらいいのに。
笑った方が、きっと今より素敵な人だと思う。
ほんの少しでも、笑顔を見せて欲しくて、あたしはマフィンを焼いた。

お菓子なんて受け取ってもらえないかも知れないって思った。
だってお金持ちの人だもん。
手作りマフィンなんかより、ずっと高級なお菓子が似合う人。
でも、お店の材料であたしがすぐに作れそうなものはマフィンぐらいしかなかった。
プレゼントの内容よりも、気持ちがこもってるかどうかが重要!

お誕生日おめでとう。
あなたが生まれた日に、あなた幸せを願います。

それだけでいいじゃない?
だから、あたしは思い切ってマフィンを渡し、ダッシュで逃げ帰った。




でもっ、でもっ、でもっ、
今さっき、司さんに、「サンキュ」って言われた。

凄くうれしい。本当にうれしい。嘘でもうれしい。
しかも司さんが、ちょっと笑ったように見えた。

それから、今日はカウンター席に座ると言う司さん。
司さんが注文を聞けと言う。
マスターを見ると、マスターもそうしろって。

ん?何かいつもと違うのかな?

注文を聞こうと思ったら、店内のピアノの演奏が始まってしまった。
それで、声を聞き取ろうと、司さんの口元に耳を寄せた。
その時の香った、コロンの匂い。
なんだか、酔いそうな香り。

ドキドキしながら注文を待つあたしに、司さんが、
「いつもの。ストレート。ダブルで。」
と囁いた。

耳元で囁かれる声はバリトン。
鼓膜が振動するのが分かるぐらいの心地よい低音。
思わず、カァーっと顔が火照りそうになって、慌てて叫んじゃった。

「いつもと同じじゃん!」

そうしたら、司さんがお腹を抱えて笑い出した。
何がそんなにおかしいの?
あっ、そっか、あたしまたタメ語だった。
でも、だからって、そんなに笑うこと?


司さんは笑わない人だと思ってたのに、こんなに笑っているなんて。
普段笑わない人が、弾けたように笑う姿にとっても嬉しくなる。

あぁ、良かった。
あたしは司さんに笑って欲しかったから。

まぁ、いっかぁ。
あたしはなんだかホッとして、思わず自分も笑ってしまった。
カウンターを見たら、マスターも笑ってる。
大丈夫、怒られてはいないみたいだ。




カウンター席に座る司さんは、当然のように注目を集めている。
ストレートでウイスキーを飲む姿も様になっている。
目立つよね。この人。
司さんとマスターが楽しそうに話をしているのが見える。

何だか意外だな。
こんなに普通に話せる人なんだ。
もっと恐い人かと思ってた。
でも良かった。
今日は、あの瞳が冷たくない。
笑うとすこーしだけ、目じりが下がるっていう新しい発見をした。



テーブル席の片づけを終え、あたしはカウンターに戻った。
もうすぐ23時だというのに、金曜日の今日はとても混雑している。
宿泊のお客様は、最後に夜景を見るためにBarへ寄ることもあるから。
次のお客様が来店して、あたしは窓際の席へと案内した。
60代のご夫婦みたい。

「ご注文は後程伺いに参ります。」
そう言ってメニュー表を広げて立ち去ろうとすると、
「辛口のお勧めのボトルワイン、白で、お願いできる?」

「あっ、はい、畏まりました。」
慌ててお辞儀をするあたし。
ボトルの白、辛口、かぁ。

あたしはいくつかおすすめを覚えてはいるけれど、ここはマスターに確認した方がよさそう。
それで、カウンターに戻った。

でも、カウンターにマスターはいなくて、
回りを見渡しても、先輩たちも接客中で、すぐに話しかけられそうにない。
どうしよう・・

キョロキョロしていると、
カウンター席に座る司さんと目が合った。
思わず、じっと司さんを見てしまったあたし。

「どうした?」
と話かけられて、思わず事情を話した。

「白ね。どの客?」
「あっ、あちらの窓際の席のご夫婦です。」
「あぁ。後藤会長か。フロアなんて珍しいな。そのクーラーの中なら、モンラッシェ、いいんじゃね?」
そういって、あたしの後ろにあるワインクーラーを見ている司さん。

「モンラッシェ?」
「あぁ、喜ぶと思うぜ。」
「本当ですか?助かりました。あっ、でも、マスターに確認したほうがいいですよね。」
「大丈夫だろ?持ってけよ。シャルドネのモンラッシェ。行って来い。」


そんな風に司さんが言えば間違いないような気がして、あたしはマスターに確認することなく、ボトルを持ってお客様の元へ。

「こちらは如何でしょう?シャルドネのモンラッシェになります。」
あたしはボトルのラベルをお客様に向けた。
「あぁ、いいね。この年代の白がでてくるとは、さすがはThe Classicだね。これで頼む。」
「では、ご用意して参ります。」


お店を褒めてもらって嬉しくなり、すぐにカウンターに戻って司さんに伝えた。
「すごく褒められました。」
「だろ?あーいう、オヤジはヴィンテージに弱いからな。」
「ヴィンテージ?」
「あぁ、なかなか良い状態のは手に入らねぇしな。」
「へえぇ。」

司さんなウイスキーを飲みながら、自慢げにあたしを見る。
あたしは思わず笑ってしまった。
だって、なんだか可愛らしく思えたんだ。
「ありがとうございます。司さん。」
そう言うと、司さんが、ちょっとだけ笑った・・と思う。


冷えたグラスを用意したところで、マスターが帰ってきた。
「あれ、モンラッシェ、オーダー入った?」
「マスター、窓際のお客様にお持ちします。」
「お客様のご指名?」
「いえ、辛口の白と言われて、司さんがモンラッシェがおすすめだって教えてくれたので。まずかったですか?」
ちょっと不安になるあたし。

マスターはちらっと司さんを見ると、溜息混じりに言った。
「なるほど、司君のチョイスね。牧野さん、司君の言うことは半分聞き流してね。このモンラッシェは1本50万円だから。」

ひぇっ。50万???

「やっ、どうしよう。お値段のこと伝えてないです。」
「大丈夫だよ。あの会長さんは、ワイン通で価値を分かっているからね。」
「大丈夫って・・」
セレブなお客様が多いからって、1本50万はないよね。
もし、お客様が払えなかったら、どうするのよね。
司さん、このボトルの値段知らなかったのかな。

「そうですか。あ~、でも、良かったぁ。良かったです。ね?司さん。自腹切れとか言われたら困りますもんね。」

司さんも安心させてあげようと思って言ったのに、次のマスターの一言でぶっ飛んだ。

「あはは。ちなみに司君が飲んでるのは、1本80万円だよ。牧野さん。」
そう言って、マスターが笑う。
司さんは、しれっとウイスキーグラスを傾けた。


80万って??嘘でしょー!?
いつもガバガバ飲んでるじゃないの。
この人いったい何者なのー!?



 

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  1. 俺の女
  2. / comment:3
  3. [ edit ]

こんばんは(^^♪

  1. 2017/01/11(水) 21:52:15 |
  2. URL |
  3. Happyending
  4. [ edit ]
たくさんの拍手ありがとうございます。
コメント・拍手コメントも有難いです!

つくしにいつ気づかせるか・・
最初考えていたものと、ちょっと変えるかどうか、迷い中です(笑)。
何となく、また別な妄想がやってきたりしていて。あはは。
あぁ、でも、最初の妄想で行こうかなぁ。
迷う・・・

今日は寝落ちする前にコメントが書けました。
今から執筆頑張ります!

管理人のみ閲覧できます

  1. 2017/01/11(水) 08:56:00 |
  2. |
  3. [ edit ]
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  1. 2017/01/11(水) 06:01:47 |
  2. |
  3. [ edit ]
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