花より男子の二次小説。CPはつかつくonlyです。

With a Happy Ending

あの日、あの後、モンラッシェを勧めた俺に対して、
「50万のボトルを勧めるなんて・・非常識・・」
「もしお客様が払えなかったら、恥をかかせちゃうところだったじゃないの。まったく。」
牧野は、そんなことをブツブツ言い始めた。

フロアを回り、時々カウンターに戻っては、俺に文句を言ってくる。
この道明寺司に向かって、文句だぜ?
その幼稚な態度に呆れもするが、それ以上に愉快だった。

最後に戻って来た時には、
「司さん。あのご夫婦、今日が結婚記念日だそうですよ。ご夫婦ともにワイン好きなんですって。それで、7年前のあの年のワインは、ご主人が会社を息子さんに譲った年なんですって。ご主人様がね、今後は夫婦の時間を大切にしたいと思ったんですって。いいですよねぇ。あの年になっても、こうして二人、ワインを飲みに来るなんて。」
そう言って、はぁ~と羨ましそうな表情をして、もう文句を言うことはなかった。

後藤会長が、会社を息子に譲った時期は知らねぇが、うちのBarには評判の良いヴィンテージのワインしか置いていない。いずれにしても、喜ばれたはずだなんだ。
しかし、頑固なイメージの後藤会長が、実は愛妻家だったとは、初めて知った。
あんな頑固オヤジでも、大切にしている妻がいるということに驚く。

俺には、今まで、そばにいて欲しいと思った女なんていない。
幼いころは、将来は政略結婚でもするんだろうと思ってもいたが、今の自分は絶対にそんな結婚は受け入れないだろう。
自ら苦痛を背負いこむ必要はない。
政略結婚なんかせずとも、自分が力を付ければいいだけだと気が付いた。





あの日から俺の定位置はカウンターの、向かって左奥。
フロアからは死角になるが、俺からはフロアが見渡せる。
当然、あの女、「牧野」の仕事ぶりも一目瞭然だ。

俺は週2回程度のペースでBarにやって来ては、このカウンター席に座る。
牧野が勤務している日にしか出向かない。
忙しくしている牧野を観察するのが俺の楽しみになったからだ。
今日も、ウイスキーを流し込みながら、俺の目は牧野を追っている。


いつも楽しそうに接客している牧野。
食いものは、さっと自分で盛り付けて席へ運ぶ。
手際はすごくいい。
複数のテーブルをそつなく回り、サーブしている。

見ていて分かったことだが、このBarは常連の客は、テーブルに牧野を指名するオヤジが割と多い。
「牧野さん、今日も頼んだよ。」   

なんて、いい年したオヤジに声をかけられて、
「はーい。」
なんて、返事をしていやがる。

俺は何となく面白くない。
「おい、臼井。あれ、いいのかよ?」
「何がです?」
「牧野だよ。〈はーい〉とか言ってんぞ。」
「彼女は優しくて可愛らしいですから、世のお父さん世代に人気なんですよ。娘につらく当たられているオヤジ世代ってやつですかね。ですから、いいんです。」

なんで、オメーまでそんな甘いんだよ、臼井!
そこばビシッと指導するべきだろうがっ!

不機嫌顔の俺を見た臼井が、
「では、司君が牧野さんに教えてあげたらどうですか?オーナー。」
と笑いやがる。
「おい、でかい声出すな!」

俺は、ここメープル東京の出資母体である、道明寺ホールディングスの日本支社長だ。
ホテル直営のこのBarは俺の管轄内。
ここのオーナーともいえる。
そのことを知らない牧野。
俺は、とりあえず、あいつには教えるなと従業員に徹底した。

だって、面白れぇだろ?
あの反応?
俺が誰だか知らないからこその反応。
俺の地位を知ったら、あいつどういう態度をとるんだろうな。
あいつによそよそしくされるのは何となく寂しい気がして、俺は、俺の立場なんて、あいつに知られなくていいと思っていた。



「あれー。司さん。いらしていたんですか?」
突然カウンターに現れた牧野。
今では、フツーに話しかけてくる。
俺のことは「司さん」で定着した。
こいつがいると、場の雰囲気が和らぐ。

俺が、ウイスキーを飲み干し、カウンターに置くと、すかさず牧野が、ボトルを傾けてきた。

「今日はこれで終わりにした方がいいですよ。」
「何でだよ。」
「飲み過ぎると、胃や肝臓に悪いんですよ。ほら、また何にも食べてないじゃないですか。」
そう言って、俺の前にあるつまみを見た。

「せっかく作ってるんだから、食べないともったいないのに。」
「じゃあ、お前が食べるか?」
「そりゃ食べたいですけど。仕事中なんだから、お客様のものを食べるなんてダメに決まってます。」
「俺が許可する。」
「ぷっ。何?俺様モードですか?」

そう言って、クスクス笑う姿が、可愛い・・なんて思う。

「それに、飲んでばっかりで、きちんと食べなかったら病気になるかも。」
「まだ、そんな歳じゃねぇよ。」
「司さん、20代後半でしょ?あっという間に30歳ですよ。」

あ?
お前、俺をいくつだと思ってんだよ。

「俺は、まだ23だぞ。」
「へ?」
「23。」
「うそっ!」
「マジ。」
「ええー!?1つしか違わないのー?信じられないっ!!って、あわわ。すみません。」

驚き過ぎだっつの。
しかし、俺、そんなに老けて見えんのか?

「ビジネススーツがとてもお似合いなので、もっと上かと思ったんです。」
「顔引きつってんぞ、牧野。」
「・・・ごめんなさい。ぷぷ。」

でも、そんなやり取りも楽しい。
こんな時間がずっと続けばいいと思うのに、

「じゃ、他のテーブルを見てきますね。」
そう言って、牧野はさっとその場を去って行く。
それを見送る俺。


この女が、ずっと俺のそばにいてくれたら楽しいだろうな・・・
そんなことを思っているなんて、
俺は自分が信じられなかった。



*****



最近、あたしと司さんは、割とフツーに話している。
冷たそうだと思っていたけれど、温かい人だと分かった。
あたしは、司さんと話ていると、とても楽しい。
あたしのチラッと見ながら、話しを聞いてくれて、そして楽しそうに、ちょっと口角を上げる。

もっともっと笑って欲しくて、ついつい余計なことまで話してしまう。
しかし、司さんが23歳だなんてびっくりだ。
23歳なんて、あたしと1つしか違わないのに、やっぱりすでに社会人だからか、とても落ち着いて見える。
23歳で超VIPって、いったいどんな仕事をしているんだろう。

司さんが座るのは、カウンターの左端。
フロアのお客様をサーブしつつ、時々カウンターを伺うけど、こちらからは司さんは見えない。
皆から見られたくないのかも知れないななんて思う。



2月に入ってからのあたしは、とっても忙しくしていた。
家庭教師をしていた高校生は無事に大学に合格して一安心したところに、東京メープルから、『未来の東京メープル像を考える』という課題を与えられたんだ。

入社まであと2か月弱。
今月中には課題を提出しなければならない。
その課題の評価で、入社後の運命が決まるのかも知れないと思うと、ドキドキだ。
同期のみんなとは次は3月に会おうと約束している。


あたしの描く『未来のメープル像』。
それは、入社試験の時にもディスカッションの話題にはなっていた。
だけど、内定が決まった今だからこそ打ち出せる新しい未来像があるような気がする。
そして、このBarで働くようになって、また考えたこともあった。

メープル東京は、日本一の高級ホテルだ。
その高級ホテルにくる人たちは、やはり上流階級の人達が多い。

あたし達一般庶民が夢見る高級ホテルというものは、「非日常」を体験するような、ドキドキするような、そんなホテルだと思う。

でも、セレブにとってはどうなんだろう?
セレブにとって当たり前な高級ホテル。
そこに出入りすること自体がステータスになる。
でも、セレブにとっての非日常って何だろう?
このホテルに宿泊したら、少しでも「非日常」を味わってもいいんじゃないかな。


ふっと、司さんが思い浮かんだ。
司さんがマフィンを食べること。
司さんがカウンターで笑いこけること。
それって、結構レアなんだよね。

あたし達にとっての日常は、もしかすると、彼らにとっての非日常なのかも知れないな。



 

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  1. 俺の女
  2. / comment:3
  3. [ edit ]

いつもありがとうございます(^^)

  1. 2017/01/12(木) 22:04:37 |
  2. URL |
  3. Happyending
  4. [ edit ]
沢山の拍手ありがとうございます。

司君はだいぶつくしにやられちゃってますね。
そして、たぶんつくしも好意を抱いている。
私としては、つくしちゃんに、敬語を辞めさせたいんですけど、なかなかそこまで進んで行かない・・・。
妄想ばかりが先行中です。

管理人のみ閲覧できます

  1. 2017/01/12(木) 09:07:40 |
  2. |
  3. [ edit ]
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  1. 2017/01/12(木) 05:15:32 |
  2. |
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