花より男子の二次小説。CPはつかつくonlyです。

With a Happy Ending

「俺を待ってたって、このムースか?」
「はい。」
「なんでチョコじゃねーの?」
「チョコが良かったですか?」
「いや、そーじゃねぇけど。」

俺の隣に座った牧野は「我ながら美味しい」と言いながら、ムースを口に運んでいる。

「いや、何でもいいかと思ったんですけどね。」
何でもいいってなんだよ、ったく。

「でも、ほら、お誕生日もお一人だったみたいだし。チョコレート渡しても、司さん食べてくれるか怪しいでしょ?それなら、一緒に食べるの方が、楽しくていいかなって。」
「そーいうもんか?」
「そうじゃありませんか?」
そう言いながら、牧野が微笑む。

「チョコを渡すよりも、一緒に食べたいなぁって思ったんです。今日はぎりぎりで来てくれたから、ご一緒できてよかったです。さすがに勤務中はお客様と食べられませんから。それに、もうすぐ、最後のお客様がお帰りになったら閉店ですから、本当にタイミングが良かったです。」
「そっか。」

俺も良かったと思っちまった。
ぎりぎりで、バレンタインに間に合ったんだからな。

しかし、このチョコムースってやつには何か意味があるんだろうか?
俺のことが好き・・って感じはねぇな。
こいつの言う、義理ってやつなのか。
まさか、誕生日も一人だったからって、この俺が同情とかされちまってんのか?


「お前、このムースに意味ってあんの?」
「えっ?」
牧野はスプーンを口にくわえたまま驚いた表情だ。

「意味・・ですか?」
と首を傾げた。

じっと答えを待つ俺。
期待なんかしちゃいねーけどよ。

いや・・・待てよ。
もしこれが「本命チョコ」だったとしたらどうする?
こいつが・・俺のこと好きだとか言ったら、俺はどうするんだ?
はん、この俺が、女と付き合うなんてありえねぇし?
かと言って、こいつのことは気に入ってるから、無碍にすんのも可哀そうか。
ちょっとぐらいなら付き合ってやっても・・・


「うーん。義理チョコ?って訳じゃないし、友チョコ?でも、司さんは友達じゃないですしね。難しいなぁ。」
「友チョコってなんだよ。」
「お友達に渡すチョコレート。」


・・・オトモダチ・・・
いや、だからっ。
期待とかしてねぇし。
変に興味持たれても、俺も困るし・・?


俺は、あまりにも険しい表情になっていたようだ。
「ちょっと、冗談ですよ。お客様を友達だなんて言ったら、マスターに怒られます!」
と焦った牧野の声。

「友達じゃないですけど、でも、なんとなく、一緒に食べたら、司さんが喜んでくれるんじゃないかなって勝手に思っちゃったんですよ。だって、司さん、高級なものは食べ慣れているでしょう?」
「まぁ、そうだな。」
「でも、たまには、非日常もいいでしょう?」
「非日常?」
「自分一人では考えもつかないような時間を過ごすこと。」
「そうかもな。」
「そういう意味です。そのチョコムース。」


非日常・・か。
そうかも知れねぇな。
それが、ちょっと幸せだったりするのかもな。

「それに、このカップ。ちょっと可愛いでしょ?」
それは、オフホワイトと赤のボーダー柄の陶器のカップ。

「こういう、可愛い柄って、司さん、絶対使わないでしょう?」
こんな柄もん、使う男っているんかよ、と思う。
だから、何なんだよ。

「あたしにとって普通のものが、司さんにとってはそうじゃない。逆に、司さんたちにとって普通のことは、あたしにとって普通じゃない。」

それって、俺たちは分かり合えないってことか?

隣で牧野がクスクス笑っている。
「でも、こういうところで、一緒にムース食べてるって不思議ですよね?」
「そうだな。」
俺も思わず微笑んだ。

本当にそうだと思う。
俺がこんなところで女とムースを食ってるなんて不思議だ。

でもよ。
俺にとっての非日常は、このムースを食うことよりも、お前とこうして隣同士座ってしゃべってることかも知れねぇ。
何となくお前に会いたくなって、何かもらえるかも・・なんて期待して、こんなギリギリの時間にこのBarにやって来ること自体が、これまでの俺からしたらありえねぇことだ。
俺は、女が隣に座るのを許したことなんか、今まで一度だってないんだぜ。
お前はきっと知ねぇんだろうけど。



俺がムースをやっと食べ終えたとき、
「大変!」
と牧野が叫んだ。

「終電が行っちゃう!じゃあ、司さん。またっ。」
そう言って、立ち上がって、俺に一礼した。

ちょっと、待てよ。
もう0時過ぎだ。
俺が送ってやる・・そう言おうと思ったのに、

牧野はすぐにフロアに向かって、
「マスター、皆さん、お先に失礼します。」
そう言って、俺を振り返ることなく、走って消えていきやがった。



一人残されて、唖然とする俺。
目の前には、空になったボーダー柄のカップ。

「司君、何か飲みますか?」
と臼井に声をかけられた。
「いや、今日はいいわ。つーか、もう閉店だろーが。」
「ははは。そうなんですけどね。」
臼井が目を細めた。

「あいつ、いつもは23時あがりなんだよな。」
「そうですね。でも、週末は0時ぎりぎりまでは働いていることが多いですよ。真面目な子なんですよ。」

そうみたいだな。
見ていれば分かる。

「それに、今日は火曜日だからいつもなら23時には上がっているんですが、ずっと待っていたみたいですよ。」

はっと顔を上げた俺は、臼井の視線を受け止めた。

「司君のことですよ。」

俺は、顔がにやけるのが抑えられない。
期待するなって思っても、期待しちまうだろ、この状況。
友チョコだか何だか知らねぇけど、チョコをもらうより、あいつと同じ空間で同じ時間を過ごせるほうが断然嬉しい。
牧野もそう思ってくれてんじゃねーのかって。


「臼井、このカップ、持って帰るから、洗ってくれ。」
そう言った俺に、臼井は皿を拭きながら口角を上げていた。



*****



地下鉄の終電は0時25分。
あたしは必至でダッシュした。
時間がなくて、お店の制服にコートを羽織っただけ。
これを逃したら、自腹でタクシーだよ。
大変だっ!

今日は終電に間に合わなくっても仕方がないと覚悟はしていた。
ギリギリ0時まで、司さんを待とうって。
それで、0時になったら一緒にムースを食べようって。

司さんのために作ったチョコムース。
甘さは控えめ。
だって、マスターが言ってた。
「甘いものが苦手な司君が、マフィンを食べるなんて珍しい」って。
せっかくなら、美味しいって思ってもらいたいじゃん。


司さんは0時前に来店した。
その姿を見つけたとき、あたしは凄く嬉しかった。
別に「本命」チョコをあげるって訳じゃないのに、ドキドキした。

0時になったのを確認して、あたしはムースを出した。
そして、司さんはムースを食べてくれた。
美味しかったかどうかは聞けなかったけど、でもちょっと嬉しそうだった。
あたしは本当にホッとした。
だって、司さんに喜んでほしかったから。


司さんと一緒にいることがあたしの非日常であるように、きっと司さんにとってはあたしの存在は非日常。
そんな時間を少しでも楽しんで欲しかった。


でも・・
あたしはどうしてこんなに司さんのことが気になるんだろう。
司さんに喜んでもらいたかったのは本当。
けど、それ以上に、あたしは今日、司さんに会いたかった。

義理チョコでも友チョコでも何でもよくて、
あたし、本当は・・・
ただ、司さんに会って、同じ時間を過ごしたかっただけなのかも知れない。



 

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いつも応援ありがとうございます。
やっぱり、寒いですね~。
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  1. 俺の女
  2. / comment:3
  3. [ edit ]

いつもありがとうございます(^^)

  1. 2017/01/15(日) 21:49:36 |
  2. URL |
  3. Happyending
  4. [ edit ]
こんばんは~。
沢山の拍手ありがとうございます。

甘い!甘すぎる~。
私の思っていた展開の前に甘すぎになってしまったなぁ。
もう、両想いで終わっちゃう?というこの展開。
でも、目の前の妄想がこうだったから、仕方ないし・・と諦めて、先へ進んでいきます。えへ。

今日は寒かったです。雪も少し積もって。
でも子供の習い事は休みじゃないから、連れて行ってあげなきゃいけなかったりして。なんだかんだと忙しかったです。
明日から月曜日。
電車ちゃんと動くかなぁ・・心配です。

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  1. 2017/01/15(日) 11:25:50 |
  2. |
  3. [ edit ]
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  1. 2017/01/15(日) 07:18:47 |
  2. |
  3. [ edit ]
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