花男の二次小説になります。つかつくonlyです。

With a Happy Ending

「牧野、就職祝いに、一杯おごる。付き合えよ。」

司さんにそう言われて、固まったあたし。
思わずマスターを見てしまった。

え?え~?
あたし、今ちょっと酔ってるから、聞き間違えた??

「つくしちゃん、今日は、司君の同伴者ということで、来店しても大丈夫ですよ。」
「ええ~っ!!」
無理っ。無理だって。
「あっ、いえ、お誘いありがとうございます。でも、結構です。はい。大丈夫ですから。はい。」
いやいや、あたしっ。何言ってんのか分かんないよ。

「まだ11時前だし、帰りはチケットあげるから。お客様のお誘いだし、一杯だけ飲んできなさい。つくしちゃん。」
いやいや、マスター。強引な。
こんな安物のリクルートスーツの女なんて、このBarで見かけたことないよ。
あたしにとっては精一杯なスーツだけど。
って、そうじゃなくて、司さんと二人で飲むなんて・・

「早く来いよ。」
そう言って、司さんはサクサクと店に入って行ってしまった。
あたしは焦ってマスターを見ると、
「個室だから、心配しなくて大丈夫だよ。」
と言ってくれる。

せっかく司さんに誘ってもらったんだから、女、牧野つくしっ、行くべしっ。
って、なんの気合なのよ、これ。
困るよ、困るよ、急に。
カウンターでお客様として、接している方がいいよ。
だめだ、なんでよ。
すごくドキドキしてきた。


マスターに背中を押されて、あたしも店内に入り、司さんを追いかけて、個室へ移動。
まさか、自分がお客さんとして来店する日がくるとは思わなかった。
ここは本来会員制で、あたしなんかが気易く入れるところじゃない。

きっ、緊張するよ!
あっ、でも個室でよかったかも知れない。
フロアなんて、誰が見ているか分からないもん。
司さんに恥をかかせちゃうかも知れないし。
そうだ、個室だからいいんだ。
なんて、あたしは訳が分からず納得して、角の個室へ入った。




「お前、何緊張してんだよ?」
コートも脱がず、ソファに座って、ピンと背筋を伸ばしているあたしに向かって、司さんが言った。

「あっ、あたしっ、こういうお店初めてで。」
「プッ。何言ってんだ?いつもバイトで来てんだろ。」
「そうですけど。お客さんとして来るのは、ちょっと・・・」
「お前の言う、〈非日常〉ってやつか?」
司さんがちょっと笑った。

あたしの話、覚えててくれたんだぁ。
「そうです・・ね。」
ちょっと嬉しい。

そこへ、マスターが入って来た。
「つくしちゃん、何飲む?」
「えっと。マスターのお勧めでお願いします。あっ、ちがう。やっぱりウーロン茶で。」
飲んでる場合じゃないよ、あたしっ。
ここは、お茶だよ、お茶!って思うのに、

「せっかくなんだから、僕のお勧め飲んでよ、つくしちゃん。司君はいつものやつでいい?」
なんて言うマスター。
「ああ、頼む。」
司さんはお酒に強いから何だっていいだろうけど、あたしはヤバイ。
もう1杯飲んできてるし。
自分がお酒弱いのなんてわかってるし。
っていうか、マスターだって知ってるでしょっ。

断ろうと思ったのに、マスターはそのまま出て行ってしまった。


あぁ、もうっ。
あたしは緊張しすぎて、部屋をキョロキョロ。
この部屋はそれほど狭くもない・・けど、広すぎることもない。
壁際には豪華な花瓶。
壁はウッドパネルで、落ち着いた雰囲気。
コーナーになっている部屋で、あたしは司さんの90度右隣に座っていた。

ふっと顔を上げると、遠くには東京の夜景。
何度もこの部屋に出入りをしていたのに、ここからの夜景がこんなに綺麗だなんて、知らなかった。

思わず立ち上がって、
「凄い、綺麗。」
と呟くと、
「いつも見てるだろ?」
と司さん。
「いつもは仕事に集中してるんですよ。」
とあたしが言うと、
「お前は意外と、真面目だからな。」
と言う。

「意外とって何ですか?」
と睨むと、
「まぁ、座れよ。」
ともう一度席を勧められ、あたしはソファに腰かけた。

90度左には、司さんの横顔。
綺麗だなー。この人。
男の人に綺麗なんて、おかしいかな。

そんなことをぼーっと考えたあたしに、司さんが言った。
「で、メープルどうだった?」

そう言って笑った司さんの横顔がちょっとだけ甘い感じがして、あたしはドキっ。
心臓がキューンとなって胸が痛いって、こういうことを言うんだって初めて分かった。



***



「ヒック。だからねぇ、司さん。宿泊部門っていうのはー、ホテルの顔なんですよぉ。」
「あー、もう、分かったっつーの。」
牧野は、俺の顔をじっと見たまま、その視線を外さない。
それで、さっきから同じようなことばかり言っている。
お前は、年寄りかよっ。


臼井が届けたカクテルを飲んだまではまだ良かった。
始めこそ緊張していたみてぇだが、酒を一口飲んだとたんに、緊張がほぐれたのか、いつものように楽しそうに話し出した牧野。
メープルに対するこいつの熱い想いってやつを長々と聞いた。


飲み始めて30分も経たないうちに、牧野が急におかしなしゃべり方になった。
口調がゆっくりしてきて、視線が俺を見たまま、逸らすことはなくなった。
臼井がこいつの限界はカクテル1-2杯だと言っていた意味が分かった気がする。


だんだんと、話題は仕事から逸れていく。
自分の手を見ながら、ネイルは控えめにしなきゃとか。
靴を見ながら、黒いパンプスを買いに行くんだとか。
やれ、同期が付き合いだしたんだとか。
けど、それも面白くて、適当に話を聞いていた俺。

「それで、お前は、誰か付き合ってる奴いんのか?」
冷静な顔を取り付けて、一番聞きたかったことを聞いた。
「んー。それ、さっきも言われたし。誰もいないって言ったでしょう?あたしは、仕事に生きるからいーの。」

俺は同期じゃねぇっつーの。
仕事に生きるからいいのかどうかは別として、とりあえず、こいつには今、恋人がいないってことは分かった。
今日の収穫はここまでと思っていたところに、


「あー、喉乾いた。それっ、下さい!」
「おい、待てっ!!」

牧野は、案外素早い手つきで俺のウイスキーグラスを掴み、シングルぐらいに残っていた俺のマッカランを一気飲み。

「うがーっ。喉、喉、焼ける!うぇー。お水っ!お水っ!うぇー。」

ウイスキーを勢いで一気飲みした牧野が、急に苦しみ出した。
そりゃそーだろ。
この酒はアルコール40度を超えている。
しかも、ストレートだ。
喉を抑えてむせている牧野に焦った俺は、すぐに隣に移動して、こいつにチェイサーを飲ませた。
ごくっ、ごくっ、と喉を鳴らす牧野。
ドキッとする俺。

「うはー。」

チェイサーを全部飲み干して、牧野が隣に座った俺を見上げる。
その距離、15センチ。
とろんとした牧野の瞳。


「司さん。今、ドキってしました?」
「ああ。」
「ふふ。あたしもしました。うぃっ、ひっく。」
「お前、やべぇな。そろそろ帰るか。」
「ええ~。ちょっとぉ、まだ帰しませんよぉ。話はぁ。終わってまーせん。ういっ。」

牧野が俺のスーツの上着をぎゅっと掴んだ。

「ホテルに泊まるっていうことはぁ。そーいう、ドキってすることだとー、わたしはぁ、おもいますっ。ヒック。」

「そーだな。」
と適当に相づちを打つ俺。
腕時計は、すでに0時30分を回ってる。
何で臼井のやつは入って来ねぇんだ。

「だからぁ、あたしはぁ、おきゃくさまが、ドキってすることをぉー・・・んん。・・・ん・・ふぅ。」


次の瞬間、コトンと牧野の頭が俺の胸の中に落ちて来た。
突然のことに、心臓が飛び出しそうになった俺。
牧野が・・俺の胸に・・・

そーっと、胸に落ちて来た牧野を覗き込んでみた。


・・・・
寝て・・やがる・・・

マジか・・・


これはどうしたらいいんだ。
俺が誘った責任もあるが、お前もお前だろうが。
一人で勝手に酔ってんじゃねぇよ。
お前、いつもこんななのか?
こんなんじゃ、持ち帰られても文句言えねぇんだぜ。


俺に寄りかかって寝息を立てているこいつ。
俺は、恐る恐る牧野の背中に腕を回し、牧野の体を抱え直した。



 

にほんブログ村
いつも応援ありがとうございます!
いえ・・たいしたことは無いです。。。
関連記事
スポンサーサイト

  1. 俺の女
  2. / comment:3
  3. [ edit ]

こんばんは。

  1. 2017/01/19(木) 22:58:43 |
  2. URL |
  3. Happyending
  4. [ edit ]
いつもたくさんの拍手ありがとうございます。

いや~。
期待しないでくださいね。
やっぱり、酔ってる女に手を出すほどのガッツキは・・ね?

据え膳・・かぁ。
そう言われちゃうと、困っちゃうなぁ。
もう少し、待っていただけますでしょうか。。。ね?

管理人のみ閲覧できます

  1. 2017/01/19(木) 09:48:23 |
  2. |
  3. [ edit ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

  1. 2017/01/19(木) 05:58:26 |
  2. |
  3. [ edit ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます

 管理者にだけ表示を許可する
 
 

プロフィール

Author:Happyending
ときどき浮かぶ妄想を書き留めたくて始めました。

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR

« 2017 06  »
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -