花男の二次小説になります。つかつくonlyです。

With a Happy Ending

寮とは思えないぐらいに豪華な部屋を、グルグルと見て回った。
炊飯器も、オーブンレンジも、コーヒーメーカーまである。
コーヒー豆はメープルで初めて飲んだ『ブルーマウンテン』。
こんな高級コーヒー豆がなんでこの場にあるのかな。
廊下の扉を開けると、収納には掃除機が入っているし、洗面所は広いし、洗濯機も最新型で乾燥機能付き。
バスルームを覗くと、シャンプーや石鹸も新品が用意されている。よく見たら、バスタオルも用意してあるし、はっきり言って、ホテルに泊まるような感じだ。

おかしい、おかしいと思いながら、写真を撮っては司さんにLINEで送る。
こんな部屋にあたしが住むなんて何かの間違いだと思う。
しばらくして、既読になっていたけど、返信はなかった。
やっぱり忙しいんだろうな。
初めての一人暮らしがこんなに豪華なお部屋だなんて、なんだか気遅れしちゃうけど、契約書は確認したし、確かに家賃は3万円だった。

『こんなにそろっている部屋なんて、おかしいと思う?総務に聞いてみたけど、この部屋で間違えてないって言うの。本当にここに住んでいいと思う?』
と書いて送った。

それから、ベッドルームに入って、キョロキョロとあたりを見回した。
ん?ん?
ベッドメイキングまでされているってことにも驚くけど、このベッド、シングルサイズじゃない。
恐らく、ダブルサイズって位だと思う。
どうして・・?

あっ、でも、待って?
もしかして、本当は新婚さんが住む予定だった部屋なのかも。
それが、たまたま空いたのかな?
それなら、本当にラッキーだ。

ベッドルーム続きのウォークインクローゼットを開けてみると、さすがにそこには何も入っていなくって、ちょっとホッとした。
新婚さんの持ち物とか残されていたら、びっくりするもんね。

冷蔵庫を覗くと当然のことながら空っぽで、あたしは近くを散歩がてら買い物に出た。
歯ブラシなんかの日常品や、お砂糖とか、お醤油とかの調味料、それからすぐに必要になりそうな飲み物や食材を買って戻った。
重くて、一度では運びきれず、2回に分けて運んだ。
そうするとすでに、時間は17時を回っていて、あたしは慌ててバイトに出かけることになった。


今日は、The Classicで働く最後の日。
この5か月はあっという間で、とても楽しくて、また勉強になった。
一般庶民のあたしが、ホテルの高級Barでウェイトレスとするということは、これから東京メープルで働く上でとっても役立つと思う。
司さんに出会えたのも、このバイトのおかげ。
今までのお礼をしっかり伝えたくて、あたしは持ってきていた手作りクッキーの大きな箱を持って、マンションを後にした。



*****



マッハで仕事をしたとはいえ、全ての業務が終わった時には、すでに23時近かった。
バイトの迎えに行くことは伝えてあるから、絶対にあいつはいるはずだけど、あいつの仕事の最後に立ち合いたかったから、俺は急いで執務室を後にした。
手には、バラの鉢植え。
案外重てぇけど、俺が持ってやるし、これを口実にあいつの部屋に上がり込んでやろうかと思ってる。
そして、「結論」を聞くつもりだ。


最近はBarで飲むことは少なくなっていたが、今日はカウンターのいつもの席に座った。
それに気が付いた牧野が、満面のの笑みを見せた。
ほらな、やっぱり、こいつ俺に惚れてんじゃん。
そう思うと、やっぱりニヤけちまうな。

トコトコとカウンターに戻って来た牧野。
小さな声で、
「今日は飲むの?」
なんて聞いてくる。
こいつは俺とのつきあいをBarの連中には知られたくないらしい。
つっても、きっと臼井にはとっくにバレてると思うぜ?
さっきから見える臼井の横顔は口角が上がってる。

「いや、今日は止めとく。」
「じゃあ、コーヒーにする?」
「あぁ。」

そう言って牧野が奥に消えると、すかさず臼井に話しかけられた。

「牧野さん、今日で最後ですね。こちらは寂しくなります。」
「そうだな。」
「司君は、何か良いことでもありましたか?」
「まぁな。ま、これからが本番って感じだけどな。」
「牧野さんのこと、泣かせないでくださいよ。」
「なんで、お前にそんなこと言われなきゃなんねぇんだよ。まぁ、もちろんそんなことさせねぇけど。」
「はは。このBarで起きたことは全て僕の責任ですからね。一応は。」
「なんかムカつくな。」

臼井の奴。
俺と牧野のキューピットだとでも言いたそうだ。
でも、あながち嘘じゃねぇってとこもムカつくけど。
ガキの頃から知っている臼井は、俺が信用している、数少ない人間の一人だ。
牧野が初めて俺に酒を運んで来た時、いつもの俺だったら、きっと女なんて叩き出していたはずなんだ。今でも思うが、なんであいつなら良かったのか。
それは、臼井が信用しているやつだと思ったからじゃねぇかな。
そんなことは意識もしてなかったが。
そう思えば、やっぱりこいつはキューピットって奴なのか?

「一番初めの時にね、牧野さんが、司君のテーブルにグラスを運んだのは、僕の指示じゃなかったんですよ。」
「あ?」
「もちろん、僕が運ぼうとしたんですよ。でも、牧野さんは仕事が速いから。さっと、司君のいる個室へ持っていってしまった訳です。けど、常々女は入れるなって豪語している司君が、彼女ことは追い出さなかったですからね。僕が多少なりとも協力したのは、その後からですよ。」

臼井が、面白そうに俺を見る。
それはどういうことなんだ。
つまりは、俺たちの出会いは偶然だったってことか。
それとも、出会うべくして出会う運命だったとか。
それで、俺があいつに惚れたのはまさしく本能ってことなのか。

「ですから、それほど感謝いただかなくてもいいですよ。」
ちっ。臼井の奴、恩着せがましいこと言いやがって。
まぁな、昔はこのBarには迷惑かけたからな。
多少は目をつぶってやる。

「今からが本番なんだよ。まだ、油断は出来ねぇ。」
俺がそう言うと、臼井が少し目を大きくして言った。

「ご健闘を祈ります。」

臼井がそう言った後に、牧野がコーヒーを手にして戻って来た。
それから閉店まで、俺は牧野の最後のウェイトレス姿を見つめていた。



 

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気長にお付き合いいただけると幸いです。
本日0時より、司君Birthday企画をスタートしています。
次回のアップは本日AM 8時『まさかのHappy Birthday 2』です。
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  1. 2017/01/31(火) 05:31:54 |
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