花より男子の二次小説。CPはつかつくonlyです。

With a Happy Ending

「マスター、1番席にドンペリの黒です。」
そう言いながら、この名門Barにはそぐわない明るい笑顔を振りまく女の子。
来年4月から、東京メープルの総合職として内定が決まり、急に人手が足りなくなったうちのBarにバイトに来てくれている牧野さんだ。

まだ大学生で、笑顔が可愛いと大評判。
会員制のうちのBarで、爆発的人気の彼女。
お父さん世代にバカ受けしている。
当初は少し心配もしたものだが、彼女はするりと店に馴染んだ。
仕事はすぐに覚える頭の良さ、プラスアルファの仕事までこなす柔軟性、瞬時の判断には抜群に優れている。
更に相当な努力家で、酒に弱いくせに、お客様にお出しする酒の味を知っておきたいと、仕事の最後や合間にちょっと舐めては、感想をメモしている。
東京メープルの見る目は流石のようだ。きっと彼女は将来、メープルを担う人材になるだろう。


僕が休憩をとるためにバックヤードに入ると、入れ替わりで牧野さんが、ハンカチで手を拭きながら出てくるところだった。
僕は、そのハンカチの柄に見覚えがあった。

そう、あの____パンダ柄。


「つくしちゃん、そのハンカチ・・・」
「あっ、これ、お店でファンシー雑貨はまずかったですか?」
ささっとポケットにしまっていたが、忘れもしないあのパンダ柄。

「いや、そのハンカチって、何か有名な物なの?」
「えっ?いいえ、そんなことは無いと思います。これ、むかーしから持ってるんです。近くのファンシーショップで激安で。二枚で100円になってたんです。バレンタインデー用に、二枚一組のカップル仕様だったんですよ。でも、バレンタインデーの後は激安セールのワゴンに入ってて、買っちゃいました。これは赤いパンダで、もう一枚は黒いパンダなんですけど、カレカノで一枚ずつ持つと幸せになれるっていう、幸福を呼ぶパンダなんですよ。まぁ、あたしはそういうのを信じている訳じゃなくって、ただ安かったから買ったんですけどね。。。」
そう言いながら、えへへと笑う牧野さん。

黒のパンダ・・・確か、あの時、司君が持っていたハンカチの柄は黒いパンダだったんじゃ・・・

「付かぬ事を聞くけど、つくしちゃん、その黒いパンダのハンカチ、今も持ってるの?それとも、誰かにあげた?」
カップル用だということは、牧野さんも誰かにあげたのだろうか?

「えっ?えーと。うーんと。今は、持って・・無いです。高校生の時に、唇切っていた人にあげちゃったから。」


僕は、驚いた。
それはきっと司君だ。恐らく、間違いない。
こんな偶然ってあるんだな。
丁度、来月から司君が、日本に戻って来る。
あの頃よりも、一回りも二回りも成長して帰ってくる。
僕はそれを楽しみにしていた。

司君がニューヨーク行きを決めた理由は、結局のところ本人にしか分からない。
あのパンダ柄のハンカチで唇を抑えながら入って来たあの日。
司君は、ニューヨーク行きを決意していた。
あの日に、一体なにがあったのだろう?
女の子にハンカチを渡されたことは聞いていた。
それ以外に何かあったのだろうか・・?


「つくしちゃん、そのけがをしていた人のこと、覚えてる?」
「うーん。どうだったかなぁ。でも、こーんなつりあがった目をしちゃって、馬鹿な喧嘩してきましたって感じで。だから、あたし言ってやりましたよ。そんなことしてないで、一円でも自分で稼げって。今のあんたがいるのは親のおかげなんだから感謝しろってね。あー、あの人、大丈夫だったかなぁ。」

そう言って、ぺこっと僕に頭を下げて、フロアに戻っていく牧野さん。


僕は一瞬唖然とした後に、急に笑いが噴出して止まらなくなった。
へぇ。
あの司君が、彼女のそんな言葉に打たれたのか。
確かに、「親に感謝しろ」と言われたようなことは言っていたけど、けれど、あの道明寺司に向かって、「一円でも稼いでみろ」とは、喧嘩を売っているとしか思えない。
そして、その喧嘩を、司君は買った訳だ。



僕は、バックヤードで休憩をとりながら、過去に想いをめぐらせていた。

あの頃、道明寺財閥の一人息子として、目に見えるものは全て与えられていた彼。
けれど、中学3年生の時に初めて出会った時から、彼の心の闇は深かった。
僕は道明寺財閥の現総帥・道明寺実氏を知っている。
分単位で世界中を駆け回る男だ。その妻である、楓社長も然り。家庭を顧みたくとも、顧みれない二人だった。そんな彼らの息子である司君は明らかに愛情に飢えていた。

何故、僕が総帥を知っているのか。
それは僕は若い頃、当時財閥副社長であった、道明寺実氏のSPだったからだ。
大学卒業後、僕は実氏のSPに採用された。当時はまだ財閥の副社長となったばかりだった実氏は、若い僕を可愛がってくれた。その翌年に司君が生まれたことはよく覚えている。
僕は10年間、実氏と共に世界を回った。それは常に危険との隣り合わせで、道明寺財閥の世界経済への影響力というものを日々感じていた。もしも実氏が亡くなれば、世界経済に激震が走る。現に、先代がお亡くなりになったことで、実氏の肩には財閥の全てが圧し掛かっていた。
SPとして10年目を迎えた年、ドイツ視察の最中に、当時すでに総帥の地位についていた実氏が狙撃された。それを阻止した先輩のSPは命を落とし、僕は左足に銃弾を受けた。

重症を負った僕はSPを続けていくことができなくなった。その時に、総帥からこのBarで働かないか提案を受けたのだ。僕がその提案を受けたのには、深い理由はない。ただ、何かをして働かないといけなかったし、向いていなければやめるつもりだった。けれど、思っていたよりも、この世界は自分に合っていて、いつの間にか支配人にまでなっている。

司君は14歳の年に初めてこのBarにやって来た。
『どこの店も飲ませてくれねぇから、ここで飲ませてくれよ。』
今思えば、あれは姉の椿さんが結婚する前後だったんだろうな。
僕は少し迷ったが、彼をカウンターの隅に座らせて、ウイスキーのロックを出した。
『サンキュ。』
御曹司に礼を言われることが意外だった。
それからも時々訪れては問題を起こしたり、起こしそうになったりを繰り返す。けれど、僕は彼を拒否することは無かった。
それは恐らく、道明寺を継ぐということが、どれだけの危険と隣り合わせにあるかを身をもって知っていたからだと思う。家族愛が欲しければ、ニューヨークで暮らしたって良かったはずだ。けれど、家族が離れて暮らしていたのは、ビジネスという側面が大きくはあるが、それと同時に子供たちの安全を考えた親の愛でもあったはずなんだ。日本だって、完全に安全ではない。けれど、このBarで飲んでいる限りであれば、彼の身は守れると思った。


彼の闇は日に日に深くなった。
当時、自分自身に対する苛立ちを抑えきれない司君を見守るしかできなかった僕。
彼の身を守るものは、彼自身が身につけなければならない。それは、ビジネスでもあり、彼の人間性でもあった。実氏がもつようなカリスマ性が彼にあるのかどうかは未知数だ。かつての僕たちSPが総帥を守ったように、本気で身を挺してまで守るべき価値のある存在に、彼自身が成長しないことには、結局彼は自分の身を守ることはできないんだ。


それが分かっていたにも関わらず、何もできずにいた僕とは対照的に、司君に喧嘩を売った少女がいた。
「1円でも稼いでみろ」「自分の親に感謝しろ」と言い放った。
誰もが薄々は気が付いていた事。けれども、直接彼に進言した者はいなかっただろう。

その少女の声を聴いて、司君は目覚めた。
「自分の存在意義」を確かめ、それを世間に知らしめることを決意した日。
彼が、自分自身の価値を見出すと言うことは、自分の身を守ることにつながる。
そう、あの決断の日、司君は牧野さんに会っていたんだ。



かつては親の庇護のもと、勝手ばかりして周囲に迷惑をかけていた司君が、今では名実ともに、道明寺財閥の後継者に成長した。もう、あの頃の彼ではない。
誰もが、彼の稀有な能力を高く評価し、彼の価値を知った。
そして、彼を取り巻く環境も変わっただろう。
周囲は彼をサポートし、彼の身の安全のために動くはずだ。

そう考えれば、牧野さんは司君の命の恩人だとも言える。


そんな牧野さんは、司君のことを覚えていない。
そして、帰国する道明寺司は有名人だ。
その司君を見て、牧野さんが高校生の時のことを思い出すとは思えないな。
すると、この事実を知るのは僕だけと言うことになる。


あの日、司君は、あのハンカチをパンツのポケットにしまっていた。
あのハンカチはあの後どうなったのだろう?


この事実を誰かに伝えたいような、でも、これから起こることを静かに見守りたいような、そんな楽しい気持ちで、僕は司君の帰国を待つことになった。



 

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臼井さん、勝手にしゃべり出しちゃった。
長い語りですみません。。。
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  1. ある日のThe Classic
  2. / comment:7
  3. [ edit ]

こんばんは~(^^)

  1. 2017/02/12(日) 22:33:51 |
  2. URL |
  3. Happyending
  4. [ edit ]
いつもたくさんの応援ありがとうございます。
わぉ。臼井さんの語りにも、たくさんの拍手、恐縮です。
初めは、臼井さんの語りはそれほど無かったんです。でも、せっかくだし、思いっきり書きたくなっちゃって、臼井さん語るの巻きとなりました。
そして、パンダ柄のハンカチ。詳細はあえて書かなかったけれど、想像にお任せします。私は、小さいパンダが一杯書いてあるのを想像していましたが・・・(笑)。

悠●様
臼井さん、好きですか。ありがとうございます。私も好き(笑)。

le●様
バレた?そうそう、お気に入り。お気に入りでなければ、語らせないですよね。

みる●様
それそれ。私もですね。思ってました。つくしのハンカチ、大丈夫??しかも、1枚50円だし、素材もかなり安物とみた。でも、つくしはきっとアイロン当てたりして、大切に使っているという設定。司は・・絶対使ってないな。パンダ柄(笑)。

スリ●様
臼井さん、SP上がりだったんです。そして・・そうそう、その通り。明日の臼井さんに御注目下さい。

さと●様
わぉ。臼井さんに目を付けて下さっていましたか!!オリキャラ好きとは、なんと。恐らく少人数派じゃないんでしょうかね(笑)。刑事並みの推察力!!よく考えたら、そうですね。笑っちゃった。パンダ柄、お持ちなんですね。つくしとおそろい、かつ、司とおそろいですよ!!

H●様
そうだったんです~。しばらく、臼井さんにお付き合いくださーい。

ではでは、明日もAM:500に。

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  1. 2017/02/12(日) 13:21:55 |
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  1. 2017/02/12(日) 11:58:33 |
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  1. 2017/02/12(日) 09:33:30 |
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  1. 2017/02/12(日) 08:57:34 |
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  1. 2017/02/12(日) 08:21:59 |
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  1. 2017/02/12(日) 06:21:21 |
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