花男の二次小説になります。つかつくonlyです。

With a Happy Ending

1月31日 火曜日。
1月末は司君の誕生日だと記憶している。
だけど、さすがに支社長として帰国してからは、彼が平日に店に来たことは一度も無かった。
彼にとっては、誕生日なんていつも無意味なものの様だったけど、彼がニューヨーク行きを決めたのも、やはり1月31日だったということは、何か理由があるのだろうか。


21時過ぎに、司君が店に現れた時には驚いた。
彼が平日に現れるなんて。
何事も無いかのように、冷めた様子で個室に入る司君。

その姿を見て、5年前の誕生日を思い出した。
あの頃の司君が飲んでいたのは、マッカランの「ロック」。
今でこそ、ストレートを好む司君も当時の定番はロックだった。
ニューヨークでは、僕には想像できないほどの苦労もしてきたんだろう。
仕事のストレスを発散させるのは、マッカランのストレート。
けど、今日は、司君の誕生日。
ゆっくり疲れを癒してほしい。


僕は、いつもと同じヴィンテージボトルとグラス、そしていつもとは違い、アイスペールと多めのつまみを用意した。

牧野さんが当然のように近づいてきて、
「あれ?今日はロックですか?」
と聞いてくる。

「あぁ。平日だしね。飲み過ぎちゃ、ダメだろう?」
そう言った僕に、
「そうですね。」
と彼女が笑った。


それでも、結局司君は、ストレートで飲んだらしい。
牧野さんが心配そうにしているなと思ったら、どうやら酒のことではない。
「お客様の誕生日だから」と言って、厨房を使いたいと言い出した牧野さん。

もしかしなくても、司君の誕生日だよな。
どうしてそれが分かったんだ?
聞きたい気持ちを押し殺して、僕は厨房を使う許可を出した。

甘ったるいお菓子の匂いが裏の厨房に充満した。
そんな中で、コーヒーをドリップし、司君に運んでいく牧野さん。
コーヒーなんてメニューはこのBarには存在しない。
彼女なりに、司君の体を気遣っているのだろう。

もはや、このお菓子を司君に渡すのは間違いないな。
司君が、女性からの贈り物を喜ぶとは到底思えない。
しかも、甘いモノが苦手な司君だ。
大丈夫か・・・?


僕の心配をよそに、司君がマフィンを持ち帰った時点で、やはりと思った。
本来ならば、いくら僕が彼女のフォローをしたからと言って、司君が女性からもらったお菓子なんて、持ち帰るはずはないんだ。
それなのに・・・
やはり、二人はどこかで結ばれている。
それは、僕が何か教えてあげる必要なんてないぐらいの強い絆の様だ。



誕生日の後から、司君の目つきは変わった。
カウンターの端に座り、牧野さんをつまみに酒を飲む。
冷静沈着なその男が、牧野さんを見つめる瞳はただの男。
司君は、間違いなく牧野さんに恋してる。

僕は、司君の姿に総帥を重ねた。
ビジネスセンスは両親譲りと言われている司君。
けれど、きっとそれだけじゃない。
総帥も、一度志したものを諦めることはしない男だった。
今の司君は、その総帥と同じ目つきだ。


牧野さんは・・・
彼女は鈍感そうだからな。
彼にあれだけ熱い視線を向けられたら、普通だったら気づきそうなものなのに、何も感じていないらしい。
しかも、あれほどの容姿の男と一緒にいても、取り入ろうともしないようだ。
恐らく、そんなところも司君のツボだ。
彼は、近づいてくる女には拒否的なんだ。
やっぱり、牧野さんが運命の相手か。



バレンタインデーには、牧野さんがそわそわ・そわそわ落ち着きがない。
聞いてみれば、司君にチョコムースを用意したんだとか。
マフィンは甘かったから、今度は甘さ控えめにしたんだとか。
だけどね。僕らスタッフには、ムースは配られなかった。
僕らには箱入りのチョコレートだけだったんだ。
彼女にとって、このバレンタインデーは、ある意味特別なものだったのは間違いない。
12時前になって、今年のバレンタインデーが終わりかけるギリギリで、司君が店に現れた。
司君と一緒に、店内へ戻って来る牧野さんの嬉しそうな表情は忘れられないな。
だから、僕は「もうあがっていいよ。」と彼女に声をかけてあげた。
牧野さんが本当に嬉しそうに瞳を輝かせた。
当然、彼女の勤務時間は終わっていたんだしね。
これぐらいはいいよね。

二人隣同士に並んで、ファンシーなカップに入ったデザートを食べている。
あんな幸せそうな司君を、僕は初めて見た。
彼の笑いは、いつもどこか皮肉めいていた。
こんなに自然な笑い方ができる男だったのか・・
隣の牧野さんも、そんな司君を見て、嬉しそうだったな。



これで彼女も司君への恋心に気付くかと思っていたら、そうではなかった。
彼女はどこまでも鈍感だった。
けれど、バレンタインデーを境に、司君は積極的になった。
そりゃ、手作りのムースを貰えば、その気にもなるだろう。
俄然やる気を出した司君は、研修後に店を訪れた牧野さんを、個室に誘った。

はっきり言って、この時は、僕も緊張したね。
牧野さんがお酒が弱いのは知っていたし、すでに同期との飲み会で1杯は飲んできている様子だった。
もう1杯飲めば、酔い潰れてしまうだろう。
すでに恋心を隠していない司君と二人きりにするのはどうなんだ?と思いもしたが、これは司君が仕掛けた事。僕は軽くアシストするのみ。

12時半を回って、閉店の準備ができた頃、僕は二人の様子を見に行った。
僕が牧野さんに作ったカクテルには、リキュールは半分以下の量だったのに、牧野さんはグデングデンになって司君にもたれかかっていた。
そんな彼女を、優しそうな視線で見守っている司君。
牧野さんが司君に色目を使っているわけではないことは一目瞭然。
しかし、これ程に酔ってしまえば、きっと帰ることはできないだろう。
僕は本気で彼女をここに泊め、僕も別室で寝るつもりだった。
それをさえぎったのは、司君。
想定内のことではあったけど、けれど、本当に二人を一緒にしていいのかどうかは判断に迷った。
もしも、酔っている牧野さんに、司君が何かをしたら・・・。そういう可能性だってある。

迷った僕が、次に見た光景は、司君が牧野さんの前髪を愛おしそうに払う姿。
前髪から続くサイドの髪を耳にかけてあげていた。
あぁ、この様子なら大丈夫だ。
司君は、牧野さんに本気だ。
本気の男が、本命の女に、こんなところで手なんて出す訳がない。


「司君のこと、私もつくしちゃんも信用していますので。」
僕は、司君に牧野さんを預けた。



 

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  1. ある日のThe Classic
  2. / comment:4
  3. [ edit ]

こんばんは~。

  1. 2017/02/16(木) 23:00:38 |
  2. URL |
  3. Happyending
  4. [ edit ]
たくさんの拍手ありがとうございます。
臼井さん視点のお話で、復習中。
しかし、社会人編になかなかエンジンがかからず、困っています。いつも、私は、うわーっとくる妄想をサクサクと書いていくんです。この「俺の女」はもともとは、社会人編をメインに考えていたお話だったのに、なんだか第一部が長くなりすぎて、書きたかったことが微妙にずれちゃった感じ。
いや、ちょこっと書いてみたんですが、ぐわーっというのがないので、どうにも進まず。そろそろ、ぐわーが来て欲しい!です。あれが無いと長編は難しい・・・。なんて愚痴でした。

さてさて、
悠●様
第二部楽しみにしていただいて嬉しいです。が、まだぐわーっと来ていないので、何とも言えない・・・

四葉様
コメントありがとうございます!臼井さんにもキュンなっちゃいません?(笑)臼井さんは、独身だな。決定。

スリ●様
そうそう、臼井さんは、もう保護者です(笑)。司は、臼井さんが総裁のSPだったことは知りません。これはですね。一応、第二部で分かる設定にしたいと目論んではいるんです。が、なにせ、第二部の出だしをどうするか、ぶわっという勢いが来てほしいんですけどねぇ。

翔●様
コメントありがとうございます。私もUsui's Barに行きたいです!!The Classicで、臼井さんと総帥の再会!なるほど。これはいい。頂きました~。スリ●様ご希望の、司に臼井さんの過去が分かる設定と、このあたりを絡めたいかな。
いずれにせよ、かなり最終段階とみた。先は長いです・・・。


さてさて、明日は、あの人の登場(笑)。
明日もAM 5:00です!

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  1. 2017/02/16(木) 09:53:42 |
  2. |
  3. [ edit ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます

きゅん♪

  1. 2017/02/16(木) 07:23:02 |
  2. URL |
  3. 四葉
  4. [ edit ]
司くんの変化に、きゅんとなる朝。臼井さん、ありがとう。貴方の語る二人の物語は、私の朝の気付薬です。おメメぱっちり、シャキーン♪

管理人のみ閲覧できます

  1. 2017/02/16(木) 05:23:46 |
  2. |
  3. [ edit ]
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