花より男子の二次小説。CPはつかつくonlyです。

With a Happy Ending

「すっごい・・・」

目の前には、西門邸。
圧倒される純和風の門構え、隅々まで手入れされた広い日本庭園。
様々な形に広がった松は、その数、数えきれない。
足元には白く細かい玉砂利が敷き詰められ、敷石が行く先を示してくれていた。
周りをみると、庭園内にはいくつもの小道が分かれ、散策ができるようになっている。
これが、人の家なの??
国宝級の庭園じゃないのっ!?


「一度、稽古をしてみよう。気楽に来てくれる?」
そう言われて、本当に気楽に来てしまった。

一応、一通りの茶道の知識は入れて来た。
けど、あたしは一度もお抹茶なんて頂いたことはない。
ここまで来ちゃったけど、あたし、本当に大丈夫なんだろうか・・・。


西門総二郎先生は、表千家西門流の家元の次男。
次期家元候補の筆頭。
司さんと同じF4メンバーで、幼なじみ。

「あいつがそう言うなら、気楽に行って来いよ。外国人が楽しめるかどうかだけじゃなく、お前が楽しめるかどうかも重要だろ?自分が経験した上で、プランをじっくり練った方がいい。」
と司さんもあたしを送り出してくれたけど、
「俺も行ってやれたらよかったな。」
なんてグチグチ言ってたな。
ホント、過保護なんだから。

結局、司さんは、あんまり西門先生のことは教えてくれなかったけど、唯一教えてくれたのは、「あいつは女にだらしねぇとこあるから、気を付けろ。」ということだけ。
そんなの、今回の仕事と全く関係ないじゃん。
でもさぁ。F4って、神のレベルだっていうじゃない?
それって、どういうことなんだろ?
アイドル並みのカッコ良さのことかな。
人間性はどうなんだろう。
司さんの幼なじみで、女にだらしがないって・・・
なんだか、想像できないな。

あっ、もちろん、あたし達の関係は秘密。
だって、仕事だし、司さんの部下として知り合ったんだからね。
司さんは、しぶしぶ同意してくれた。


「牧野さん、いらっしゃい。こっち。」
気が付くと、少し離れたところから、西門先生が手を振っていた。



*****



週に一度程度、牧野と俺の都合を合わせて、西門邸で茶道の手ほどきをしながら、プランを考えることになった。最終的な応諾はまだ決定していない。ただし、西門流から協力はする心づもりではある。
司も参加したがっていたが、支社長のあいつにそんな余裕がある訳ない。
「絶対に手を出すな」という睨みをきかせつつ、しぶしぶ計画に同意した司に笑った。

初対面の時は、司の豹変っぷりに気をとられて、じっくり牧野を観察できなかったが、こうしてみると、かなり地味な女だな。
確かあの時も、グレーのスーツで、新入社員感半端なかった。
今日の牧野は、ネイビーのワンピースに、白のカーディガン。
この女なりに、気を使って来たのかとは思うが、どうにも垢抜けない。
司がこの女に惚れた理由がよく分かんねぇ。
強いて言えば、司にも、俺にも色目を使ってこねぇってとこは感心に値する。
もしかして、実は、すっげぇ秘密兵器でも持ってんのかも知れねぇな。
俺は、今日の手ほどきで、じっくり観察することにした。


「西門先生、どうぞよろしくお願いいたします。」
流石は東京メープルの社員、お辞儀の角度は完璧だ。
「では、こちらへどうぞ。」

通したのは、離れの茶室。
にじり口からの入室は難しいと考えて、広間側の和室から入ることにした。
実際に、メープルの茶室にはにじり口なんてないしな。

音を立てずに歩く所作はOK。
どうやら、少しは練習してきたらしい。
敷居や畳の縁は踏まないぐらいの知識はありそうだ。

部屋に入って、床の間の軸・花・香合をみて回る。
道具にしても、作法にしても、何も分かっていない彼女に、一体何を教えればいいのかと悩む。
けれど、企画対象は外国人セレブだというのだから、まずは、茶の湯を楽しむところから入ってもらった方がいい。問題は、それは、それほど簡単なことでは無いってことだ。

「まずは一服差し上げましょうか?」
俺がそう言うと、緊張気味だった牧野の表情が緩んだ。
「あっ、有難き幸せにござりますっ。」
「ぶっ。なんだよ、それ、武士かよ。」
一瞬で、その場の空気が和んだ。
「すっ、すみませんっ。なんか、緊張しちゃって・・。」
「司から聞いてるから大丈夫だよ、つくしちゃん。」
「つくしちゃん!?」
「俺のことは総二郎先生ね。」
「ええ~?」
目を白黒させている牧野。
結構ボケた子の様だ。

それから、湯を調節し、丁寧に一服淹れてやる。
「お点前頂戴致します。」
たった今覚えてきました、と言わんばかりのその所作に、笑いが込み上げる。
覚えたての作法で、茶碗を右へ二回し、真剣な表情で、牧野が薄茶をすすった。

「うげぇっ。」
ゲホッ!ゴホゴホッ。ゴホッ・・

しーん。
その場に広がる沈黙。
下を向いて、茶碗を持つ牧野の手が震えている。

もう、耐えらんねぇ・・・。
「ブッ。あっ、ははははっ・・・腹・・いてぇ。」

俺だって、茶道なんて知らない牧野がきちんとした所作で飲み切れるなんて期待はしていなかった。
けど、西門流教授の俺の入れた茶に、「うげぇ」だ。
笑うしかねぇだろ?
怒る気にもならねぇ。
面白過ぎる。
まさに、これが、海外セレブの反応だろうよ。

「つくしちゃん、分かった?」
真っ赤になっている牧野に言ってやる。
「外国人に抹茶を勧めるのは、なかなか難しいってこと。」

「そうですね。本当に。本当に、失礼致しました。」
牧野は当然のことながら恐縮仕切りだ。
「謝ることは無い。俺も、海外に茶道を広めようと思うと、この壁にぶち当たるんだからな。」
「そうでしたか。」

俺のこの話を聞いたら、こいつはこの企画を諦めるのだろうか?
これは、俺の賭け。
この程度のことは想定の範囲内なんだ。
これで無理と思うなら、この企画は到底成り立たない。

「けど、面白いと思います。」
「どうして、そう思う?」
「日本に来て、美味しいものばかりを食べていても、深い記憶には残りません。けれど、この苦み、渋みは記憶に残ります。」
「それで?」
「ただし、それだけでは、面白みが足りません。」
「うん?」
「滞在期間中に、茶道についての基本知識を学んで頂きます。それから、着物に着替え、扇子を持ち、お茶の作法にのっとって、一服を頂戴する。」
「当たり前だな。」
「だから、西門先生です。」
「は?」
「日本に来た外国人が、西門先生のお茶を頂けるなんて、あり得ないことです。日本人であっても、茶道を嗜んでいる方であっても、なかなか西門先生のお点前を頂くことなんてできないのでしょう?」
「そうだな。」
「ひと月1回で構いません。」
「は?」
「ゲストの教育は私がしますので、どうか、一服差し上げて頂けませんか?」
「俺が?直接?」
「はい。」
「それは・・・高くつくぜ?」
「日本で、西門先生にお点前を頂いたセレブは、きっと海外でも茶の湯の普及に携わって下さいます。実際に、ニューヨーク、パリ、ロンドンには、西門流の教室がありますよね?それを広める窓口になると思います。悪い話ではないかと。」

牧野が正面から俺を見る。
こいつ・・なかなか、痛いところを突いてくるな。
実際のところ、海外での茶道の普及はまだまだで、俺の知名度もそれほど高くはない。
しかし、日本での知名度はもちろん高い訳で、その日本で、俺が外国人をもてなし、茶の湯の記憶を植え付ける。
そうすることで、海外での普及を促進させようということか。

「何度か体験をしてくださった方で、本格的に茶道を始めたい方が出てくれば、ステイして頂く度に、メープルで個人レッスンという形をとって頂いても良いかと思います。その場合には、先生のお弟子さんにお願いすると言う形で。コストはかかりますが、対象はそこを気にする方々ではないです。むしろ、メープルならではの手厚いアクティビティになりそうです。」

一流ホテルのメープルで個人向けの茶道教室か。
悪い提案ではない。
これは、案外、日本人でも喰いつきそうな話だ。


ふぅ。
この答えは、予想していなかったな。
しかしこいつは、しっかり、考えて来ていたんだろう。
こいつとの企画は俺にとっても、有益だ。

「乗った。」
その俺の返事に、ぱっと顔を輝かせる牧野。
あぁ、これか。
これが司の惚れた理由か?

ボケかと思えばデキル女。
そして、結構可愛いところがある。
腹の内を見せない人間が多いこの世界で、これだけ素直で感情豊かな人間も珍しい。
この女の笑顔に、満たされた気分になる。
司が落ちた理由が見えた気がした。



 

にほんブログ村
いつも応援ありがとうございます!
関連記事
スポンサーサイト

  1. 続・俺の女
  2. / comment:3
  3. [ edit ]

こんばんは!

  1. 2017/03/10(金) 21:50:45 |
  2. URL |
  3. Happyending
  4. [ edit ]
いつもたくさんの拍手、ありがとうございます。
ホワイトデー企画、盛り上がっていますね!それを見ていて、私もなんだか書きたくなってきましたよ。明日の土日、書けると言いな。前回のような無理はしませんので、大丈夫です。軽めです。

さてさて、
悠●様
総つく、書いたら読んでくれるんですか?マジですか?絶対読まないでしょ??というか、書けませんが・・・(笑)。茶道、軽ーく勉強しました。外国人には、それっ!で行くつもりです。えへ。

スリ●様
お疲れ様です~。涙は流れませんでしたか~。それでも、卒業とはジーンと来ますよね。しかし、今からだと、春休みが長くて、大変だ~。

ま●様
確かに。総二郎は、女を見る目があるっ!そうだと思う。そして、つくしに惹かれちゃう?どうしよう?(笑)。

では、明日もAM5:00に。

管理人のみ閲覧できます

  1. 2017/03/10(金) 17:11:44 |
  2. |
  3. [ edit ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

  1. 2017/03/10(金) 10:53:37 |
  2. |
  3. [ edit ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます

 管理者にだけ表示を許可する
 
 

プロフィール

Author:Happyending
ときどき浮かぶ妄想を書き留めたくて始めました。

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR

« 2017 10  »
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -