花より男子の二次小説。CPはつかつくonlyです。

With a Happy Ending

リムジンが銀座の某デパート前に止まった。
運転手さんがうやうやしくドアを開け、司さんにエスコートされながら、車を降りる。
土曜日で、銀座の歩道は多くの人で溢れている。
そんなところにリムジンが停車すれば、周囲の人々が、好奇の目を向けるのも無理はない。
車を降りたとたんから感じる多くの視線。
和服を着て、ちょっと舞い上がってたあたしには予想をしていなかった緊急事態。
どこから湧いてでてきたのか、黒服を着た男性たちに囲まれて、目が点になっているあたしと司さんはデパートの正面ゲートをくぐった。

たぶんデパートの偉い人がやって来て、司さんに挨拶をする。
「食器が見たい。」
司さんがそれだけ言うと、あたしの右手を掴んだまま、あっという間に誘導された。

シーンと静まり返るフロア。
人払いでもしたのかな・・
でもさ・・
ここ・・違うよね・・
この大皿とか、明らかに観賞用だよね。
この和柄も豪華すぎて、あたしの焼き鮭とか乗せられないよね。
粘土をこねたようなお皿も重くて使いにくそう。
あたしが欲しいのは、もっとシンプルな食器なんだけど・・
フンフンと隣でご機嫌な司さんには悪いけど、ここにはとても買いたいものなんてない。
目の前に霧がかかったみたいに、現実味がない買い物だ。
だいたい、ここで、あたしが買えるものなんてあるわけないでしょーがっ!

「司さん、あのさ。あたし、ここはちょっと・・」
せっかく連れてきてもらったのに申し訳ないけどお店を変えたい・・という意味で、やんわりと言ったあたし。
「やっぱ、そうか。だよな。じゃ・・」
と、司さんが少しだけ右手を挙げて、合図した。

へ?
ささっと、店員さんが動き、あたし達は別の部屋へ案内される。
そして、行き着いたのは、たぶんVIPルーム。
ふかふかの絨毯に、革張りのソファ。ガラスのテーブル。

「やっぱ、あそこじゃゆっくり選べねぇよな。ここでいいか?」
・・・。
返す言葉もない。
そこへ、木箱に入った、いくつもの陶器が運ばれてくる。
店員さん、みんな手袋してるけど?
「普段使いの」って言ったよね?
こんな食器、普段に使えるわけないじゃないのっ。
それに・・それにだよ?
あたしの初任給で買うんだよ?
司さん、何か勘違いしちゃってるんじゃないの??
なんだか背筋に変な汗が流れたよ。

素晴らしい陶器の数々にめまいがしそう・・
でも、その中に、白磁で、丸い形の飯椀があった。
大小一つずつ並んでいる。
なんだか、かわいい感じ・・。
これって、いくらするんだろ・・・?
思わず、じーっと観察してしまう。
みんなが見ていない隙に、そーっと裏返っている値札を覗く。
1っていう数字が見えたけど、0の数は数えられなかった。
1万かな?1つで?ペアで?
高いだろうとは思ってたけど、うー。
無印●品とかでいいのになぁ。っとに~。

本来なら、司さんが気に入ったものをプレゼントすべきなんだろうけど、無い袖は振れない。
値段ありきで決めるのは失礼だけど、ここは仕方ないな・・。
あたしはとりあえず、司さんを追い出すことにした。
「これはあたしがプレゼントするんだから、司さんはあっちに行ってて。」
「はぁ?」
「いいから、早くっ。」
「なんでだよっ!」
あたしは文句を言う司さんを無理やり立ち上がらせて、外に出した。
こうなったら、予算の中でなんとか買い物をするしかない!
司さんは何やら店員さんに指示を出して、名残惜しそうに出て行った。


もう一度白磁の飯椀を手に取ってみる。
やっぱり綺麗。
食洗器に入れることはためらわれるけど、でも、凄く素敵。
炊き立てのご飯から湯気があがるのを想像すると唾まで出てきそう・・。

「これ・・。このお茶碗っておいくらですか?」
あたしはドキドキしながら、店員のお姉さんに聞いてみた。
「こちらは夫婦茶碗ですので、ペアで、1万円になります。」
「ペアで?」
「はい。」
百貨店のVIPルームで、1万円の買い物ってできるんだね。
うん、これなら買える。
それにすっごく気に入ったし。

「じゃあ、これを、プレゼントにしてもらえますか?」
「畏まりました。」
お姉さんがニッコリと笑って、いそいそと奥に引っ込んだ。
あたしは、ほっと息を吐いて、出されたお茶を啜った。
1万円の買い物なのに、店員さんの対応が凄くいい。
嫌な顔一つしないわ。
百貨店の接客対応って、ホテルに似てる。
あたしも、見習わなくっちゃ。

しっかし・・はぁ~。良かったよぉ。
本当にどうなるかと思った。
だいたい、こんなところで買い物するなんて、司さんどーかしてる。
あたしが考えていたのは、無印●品とか、雑貨屋さんとかの食器だったんだけど。
でも、良ーくわかった。
司さんと買い物に行くのは目立ちすぎる。
次からは、司さんへのプレゼントは一人で選ぶに限るわ。
一緒に買い物なんて、いろんな意味で、とても心臓がもたない。

綺麗にラッピングされた箱を受け取って、お会計は現金で1万円を支払った。
「素敵なご主人様ですね。」
そう言われて、動きが止まってしまった。
ご主人様・・?
ふふっと笑った店員さんは特に嫌味っぽくもない。
だけど、ご主人様って・・。
あたし達が、夫婦に見えるんだろうか?
あっ、夫婦茶碗買ったからかぁ。


店員さんに見送られて、VIPルームを出ると、司さんが待っていた。
荷物を持って出て来たあたしに、嬉しそうに微笑む。
「決められたのか?」
「うん。」

「どうする?他に、欲しいモノあるか?」
「いや、ない、ない、帰ろっ!」
これ以上、このデパートにいてたまるかっ!

あたしは司さんを引っ張って、リムジンへ乗り込んだ。
今度は裏の通用口から出た。
それで・・これはどうやって渡せばいいのかな・・?
迷ってみたものの、結局はラッピングされたプレゼントを紙袋ごと司さんに渡すことにした。

「はい、これ。いつもお世話になっております。」
「社員かよ。」
「あんなところで買い物なんて、緊張したんだからねっ。もう、絶対に行かない。」
「でも、気に入ったのあったんだろ?」
「うん。あった。デパートのVIPルームなんて、あたしお金足りなかったらどうしようって思ったけど、大丈夫だった。」
「そっか。良かったな。」
そう言って、司さんが、あたしの前髪をクシャっと撫でた。

紙袋を受け取って、鼻歌なんて歌ってる。
なんだかご機嫌な司さん。

「それねぇ、夫婦茶碗なの。それを買ったせいか、司さんのこと・・あっ、いや、いいや、何でもない・・。」
「何だよ。途中で止めんな。」
「いや・・だから、店員さんが、司さんのこと、素敵なご主人様ですねって・・。」
あ~もう、言ってるあたしが恥ずかしいよ。

あたしの言葉に司さんは満面の笑み。
「ああ~、もう、早く結婚しようぜ。」
ぎゅっと抱き付いてくる。
まだ、就職して1か月ちょっとなのに。
そんなの、まだまだ先に決まってるんだけど。

「俺が本当に欲しいプレゼントはお前なんだぜ?分かってんのか?」
「今は、お茶碗で我慢して?待ってくれるんでしょう?」
「やっぱ、待てないって言ったら?」
「そんなの困るよ。」
あたしの肩で、はぁ、と司さんが溜息をついた。
と思ったらぱっと顔を外し、何故かもう一度あたしをじっと見おろした。
その次には、またあたしの肩に顔を埋めて、何度もあたしの匂いを嗅ぎまわる司さん。
クンクン、クンクン、犬みたい。

何か変な匂いでもするのかな・・自分では全然分からないんだけど・・
そう思っていると、司さんが顔を上げた。
「結婚は待ってやるけど・・。その着物は脱げ。やっぱ、だめだ。」
「だめだって・・。」
「どんな理由であれ、俺以外の男が見立てたものなんか、身に着けさせるわけにはいかねぇ。」
「ホント、我儘坊ちゃんね。」
「うるせぇ。」
そういって、あたしを放してぷいっとそっぽを向いてしまう。

これって、嫉妬?独占欲?
でも、そんなのおかしいよね。
あたしのことなんかで、司さんが嫉妬したりとか?
まさか、そんなことあるはずない。
でも、なんだかすねてる司さんが可愛いけど。

軽々しく「結婚」なんて言葉を言う司さんの考えは絶対におかしんだけど、でも、そういうストレートな表現に、あたしはいつも安心を貰っている。
今日は、せめて、彼の思い通りにしてあげようか・・。

「脱ぎたいけど、でも、着物だから、司さんのお邸でもいい?タマさんに手伝ってもらわないと着物の扱い方とか全然分からないから・・」
司さんの顔がパッと綻ぶ。
あたしがそう言うのを待ってましたとばかりに、司さんは運転手さんに内線で帰宅を伝えている。
ホントにもう、バカ坊ちゃんだ・・

「ねぇ、それ、今晩使うから、早く帰って来てね。」
「おう。楽しみだな。」
「うん。」

二人で仲良く帰宅して、タマさんに呆れられながら着物を脱いで、
体が軽くなったと思ったら、司さんにシャワールームへ連行された。



 

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  1. 続・俺の女
  2. / comment:4
  3. [ edit ]

こんばんは~!

  1. 2017/03/16(木) 22:39:37 |
  2. URL |
  3. Happyending
  4. [ edit ]
いつもたくさんの拍手ありがとうございます!
今日は、リキュールのお話はお休みしました。というか、いろいろと間に合わなくって。てへへ。

こちらのお話もそろそろ、次の段階に入って行きます。
長くなってきたので、そろそろ息抜きしたいところでありますが・・(笑)。

さてさて、
悠●様
リレーお疲れ様です!私、実はじっくり楽しめてないんですよ~。いや、読みましたよ。だいたいは。でも、じっくり読めてなくて・・。この連休にじっくり読みたいです。そうそう、なんだかんだいって、無印●品、高いですよね。私もそう思う。

四葉様 
四葉さんところの総様、いいですよね~。いや、読んでるんですよ。時間無くて、コメントできないだけで。てへ。こちらの総ちゃんは、ごめんなさい~っ、な設定です。いや、これ、つかつくだしねっ。そうそう、これ1万円の訳ないです。みんな、そう思ってくれたかなぁ。

スリ●様
私も最近疲れ溜まってます。やはり週末の疲れが取れてないような。で、2つのお話を同時に進める頭が回らない・・。ボケ?
それから、山をはる!凄い!凄すぎる!私はできないっ!
そろそろ、お話を動かしていくんですが、ふっと、展開変えようかなとか思って、今更悩んでます(笑)。どうしよう・・。

ま●様
そうなの。1万円の訳ないです。このまま、つくしを騙しておきたいので、明かしませんが(笑)。しかし、ペアで1万円だとしても、普段に使わないっしょっ。クンクン司さん、一体なにを嗅いでいるんでしょ?

さてさて、明日は、AM 5:00に続きを。
週末は、ちょっと忙しいから、リキュールを終わらせることに専念するかも知れません。私も、二次めぐりしなきゃっ。早く休みになーれ!

管理人のみ閲覧できます

  1. 2017/03/16(木) 09:40:24 |
  2. |
  3. [ edit ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます

西門先生

  1. 2017/03/16(木) 07:33:44 |
  2. URL |
  3. 四葉
  4. [ edit ]
危ういところでした。西門先生が本気になる前で良かった(●´ω`●)そして、夫婦茶碗。きっと、一万円じゃないんだろうなぁーと思うのはわたしだけ?
美作さん出てきたら、これまた夢子さんが凄そう。
次々と変わる展開にドキドキしっぱなしです♡

管理人のみ閲覧できます

  1. 2017/03/16(木) 07:08:44 |
  2. |
  3. [ edit ]
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