花男の二次小説になります。つかつくonlyです。

With a Happy Ending

一緒にお風呂に入った司さんを見送って、あたしはタマさんと一緒にお茶をしている。
タマさんの部屋は純和室で、落ち着くんだよねぇ。

「司さんって、本当に女性嫌いだったんですか?」
「そうだねぇ。女嫌いもそうだけど、人嫌いかね。誰のことも信用していなかったね。」
「人嫌い?」
司さんのあたしに対する態度は、ちょっと行き過ぎてることもあるけど、愛情に溢れてると思う。
そんな彼が、人嫌いだなんて、想像できない。

「このお邸で、姉の椿様と二人で育ったようなものだからね。ご両親は多忙でずっとニューヨークだったしね。」
タマさんがあたしに語る話は、何から何まで、あたしが考える家族像ではなかった。
多忙な両親。
愛情に飢えた少年時代。
繰り返す非行。
あたしはお茶をすすりながらその話を聞いていた。

楓社長は、道明寺財閥の女社長で、メープルの統括も行っている。
メープルの名前は、その社長のファーストネームから付けられたもの。
楓社長の経営手腕を知らないメープルの職員などは、存在しないに違いない。
あたしにとっても、楓社長は雲の上の人で、憧れの人でもあった。

ビジネスにおいては、自分にも他人にも厳しい、社員なら誰しもが畏敬の念を抱く女社長。
多忙で、子育てどころではなかったのかも知れない。
あたしはこの時になって初めて考えていた。
いや、どうして今までそこを考えていなかったんだろうとも思う。

メープルを統括する楓社長が、司さんのお母さん。
そんな人が、あたしと司さんの付き合いなんて認めるんだろうか・・・


「あんたは、あんたらしくいればいいんだよ。あんなに優しい顔をする坊ちゃんを、あたしゃ、初めて見たよ。坊ちゃんには、あんたが必要なんだ。離れないでやっておくれよ。」

タマさんに言われなくたって、離れるつもりなんて無い。
けど、ますます、司さんとあたしの格差を思い知った。
楓社長に認めてもらうには、まずは、仕事。
メープルの仕事を絶対に頑張らなきゃいけない。
あたしは、司さんに釣り合うものは何も持っていない。
せめて、仕事では、一目置かれる人間でありたい。

あたしはとても険しい顔をしていたみたいだ。
「そんな怖い顔をしなくても、大丈夫だよ。さて、そろそろ夕食の支度じゃないかい?その茶碗とやらを使うんだろ?どれ、どんな茶碗にしたんだい?」
タマさんにそう言われて、あたしは今日の武勇伝を語った。
店員さんにバレないように値段をチラッと見た事とか、司さんを追い出してなんとか1万円の買い物ができたこととか・・

豪華な木箱から取り出したお茶碗をもう一度眺めてみる。
白なんだけど、少しだけ青っぽく見える。
形は丸い感じで、手になじむ。
やっぱり一目見ただけで心惹かれるお茶碗だ。

「へぇ・・・これが1万円かい。」
「そうなんです。すごいでしょ?」
「・・まぁ、さすがは坊ちゃんだね。」
「なんで、そこで司さん?」
「いいよ、あんたは・・さて、厨房に行こうかね・・」


その日あたしは、帰宅した司さんと、お邸の司さんのお部屋で食事をとった。
白いお茶碗によそった炊き立ての白米は、いつもよりおいしく感じた。
あ、お米自体もあたしが買うものとは違うだろうな。
お邸で和食が出ること自体が珍しいみたい。
司さんはちょっと驚きつつも、喜んでくれた。

「次は、いつ、買いに行く?」
「ん?何の話?」
「食器。」
「ええ~?そんなの決めてないけど。また何かの記念に・・かなぁ。」
「じゃあ、このプロジェクトが成功したら、また買いに行くか?今度は俺がプレゼントする。」
司さんはすごく行きたそうだけど・・
「司さんと買い物すると、なんか疲れるんだけど・・。」
正直に言っただけなのに、司さんに睨まれた。

「いやっ、だってね。緊張するっていうか。司さんと一緒に行動すると、目立つ・・でしょ?」
しどろもどろになって言うと、
「俺が目立つのは仕方ねぇだろ?」
「うん。」
「俺は、早く、お前を恋人として連れて歩きたい。」
「うん。分かってる。」
「本当に分かってんのか?」
「分かってるって・・。」

だけど・・
司さんのお母さんである、楓社長はどう思うんだろうとは聞けなかった。
だって、まだ、聞ける段階にも達してない。
社会人として、仕事で、結果を出さなきゃだめだ。



あたしは、その日はお邸に泊って、次の日からはマンションに戻った。
仕事をしっかり頑張らなきゃいけない。
お邸はメープルから遠いし、それに、司さんのお世話になりっぱなしなのもよくない。
あたしは、あたしで頑張らないと・・。                                                                                                                                                                                          

どうしてか分からないけれど、仲良くなったメイドさんに泣かれてしまって困惑した。
「牧野様、また是非、お待ちしています。」だって。
タマさんに至っては、
「早く、子作りでもして、あたしを安心させてくれないかねぇ。」
なんて言って、あたしを焦らせた。
「またあんたが来るのを待ってるからね。」
そう言って、タマさんは優しくあたしを送り出してくれた。

先のことはまだ分からない。
けれど、今すべきことは、司さんが指導してくれるプランを成功させることと、ホテルでの研修に邁進することだ。
あたしは、大きく手を振って、道明寺邸を後にしたんだ。



*****



西門流とのコラボとも言える、海外外国人宿泊客向けの茶道教室の企画は順調に進み、早ければこの8月からお客様にプランを提供できそうだ。
それに向けてのプロジェクトチームがメープル内に作られて、あたしは今、西門先生と作ったプランを具体化していくために、その準備で忙しい。
それと並行して、美作夢子先生のお料理教室のプランも、明日の午後にご自宅へ招かれると言う形で、アポイントメントが取れた。




___フロントで、宿泊客の対応に追われる時間帯。

「チェックインでございますね。」
17時前後はチェックインで込み合う。
今、目の前に現れた女性は、色白の美人。
緩いウェーブが可愛らしく、お人形さんのような顔立ち。
「美作で予約が入っていると思います。」
みまさか・・・偶然?
一瞬、その名前に戸惑いそうになったけれど、すぐに気を引き締めた。
「はい、確かに、今晩より1泊、美作あきら様で2名様ですね。スイートルームにご案内となっております。」
カチャカチャとキーボードを打ち、チェックインの確認を行う。
記入をお願いした台帳には、『三条桜子』との文字。
「お部屋は、3501号室になります。只今、係りの者がご案内致しますので、あちらのソファに掛けてお待ちくださいませ。」
そう言って、お客様をソファへご案内しようとすると、
「あなたが案内して下さる?」
とその女性が言った。

えっ?と思ったけど、ここで怪訝な表情をする訳にはいかない。
ホテルウーマンはどんな状況にも冷静に・・だ。

「はい、畏まりました。少々、お待ちくださいませ。」
あたしは、フロントチーフに事情を話し、フロントを空ける許可を得てから、彼女の元へ戻った。

「お荷物をお預かり致します。」
お客様の鞄を持ち、高層階専用のエレベーターに案内する。
特に会話はない。
お客様も求めているようでもない。
階の説明とエレベータの使い方の説明のみ淡々と行う。
無言のまま部屋の前まで歩き、カードキーの使い方を説明しようとすると、
「分かるからいいわ。」
と断られ、部屋の中へ入った。
荷物を荷物棚に置き、
「エアコンや浴室の使い方はご存知でしょうか?」
と聞いてみると、
「ええ、あとは大丈夫、ありがとう、牧野さん。」

あたしは、自分の名前が呼ばれたことに焦った。
「一度、あなたを見てみたかったの。ありがとう、牧野さん。」

もう一度、名前を呼ばれた。
自分のジャケットには、ゴールドのプレートで『Makino』の文字。
名前を呼ばれたこと自体は不思議ではないのかも知れないけど、でも、『あなたを見てみたかった』というのはどう考えてもおかしい。
どう返答したらよいものか分からず、お客様を正面から見てしまったけれど、向こうもあたしをじっと見つめていた。
どうして、こんなに見られているのか全く見当が付かない。
だけど、オカシイということは分かった。

「失礼ですが、以前にお会いしたことがありましたでしょうか?」
そう聞くと、
「いいえ、無いわ。」
という答えが返ってきた。
なら、どうして・・?

その後、彼女の視線が逸らされた。
「ただ、興味があったの。また、お会いできるといいわね。」

訳が分からない・・
そう思うけど、それ以上どうしようもなくて、
「失礼します。」
あたしも部屋を下がった。



 

にほんブログ村
いつも応援ありがとうございます!
関連記事
スポンサーサイト

  1. 続・俺の女
  2. / comment:4
  3. [ edit ]

こんばんは~。

  1. 2017/03/20(月) 22:32:15 |
  2. URL |
  3. Happyending
  4. [ edit ]
いつも応援ありがとうございます!
自分でも訳わからなくなってきたこの展開。
しばらくお付き合い下さい。

それから、いつもは投稿した記事をi-padとスマホでも途中で確認するのですが、今回PCは大丈夫ですが、スマホでは改行がおかしいところがあったり、i-padもなんだか記事のサイズが小さくなったりして、おかしかったです。
投稿した記事はいつも通りで、直しようがないんですよねぇ。明日もだったらどうしよう??

さてさて、
悠●様
頑張りましょう!お互いに。私も浮き沈み激しいです・・。でも、ここを乗り越り超えると元気になれると信じたい!

四葉様
ジョーズきたきたっ。恐いよ~。えーん。どうして、この展開にしたのか、自分でも分からなくなっちゃいました。。。

スリ●様
類君のBD・・。来るよ、来るよ・・。一番やばいっ!でもなぁ。一人だけ無視もできないので、焦ってます。来週頭が仕事であわわなので、今週中に、なんとか1話でも書きたいのですが・・。恐らく、全く類君のBDに合ってないお話になっちゃいそう。それもなぁ・・うーん。もうしばらく、悩みます。

ま●様
桜子、これから活躍です。私、桜子好きなので、あんまり嫌な役目は負わせたくないんですよねぇ。私も、たまに見逃した記事とかまとめ読みすると、すっごく得した気分で嬉しいです。この週末は、私は仕事もなく、結構一杯読めました~。その分書いてませんが・・。また、ぼちぼち覗いてやってください。

さてさて、なんじゃこりゃ展開のこのお話。
しばらく、桜子にお付き合いくださいませ。

管理人のみ閲覧できます

  1. 2017/03/20(月) 09:38:57 |
  2. |
  3. [ edit ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます

ダダン

  1. 2017/03/20(月) 08:28:35 |
  2. URL |
  3. 四葉
  4. [ edit ]
ダダン、ダダン、ダダ、ダダ、ダダ、ダダ、ダダ、チャララーン、チャララーン。頭の中で、ジョーズの曲が∑(゚Д゚)桜子が、来るどーーー!でも、なんか、憎みきれない♪この先が気になる♪

管理人のみ閲覧できます

  1. 2017/03/20(月) 06:01:27 |
  2. |
  3. [ edit ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます

 管理者にだけ表示を許可する
 
 

プロフィール

Author:Happyending
ときどき浮かぶ妄想を書き留めたくて始めました。

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR

« 2017 05  »
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -