花男の二次小説になります。つかつくonlyです。

With a Happy Ending

ざざーっと、白波が引いては寄せてくる。
司さんと手をつないで、白い砂浜に足跡を付けながら歩く。

こんな時間を二人で過ごせるなんて、すごく贅沢だよね。
司さんの時間には途轍もない価値があるんだって、桜子が言ってた。
その時間を、あたしのために使ってくれる。
何もせず、何も考えず、こうして二人だけでいる贅沢。


あたしが司さんに出会う前に抱いていた自分の未来。
いつか、誰か好きな人ができて、その人と結婚して、その人の子供を産んで、あっ、きっと共働きで、あくせく働きながら子育てをする。
そして、年に1回は家族で国内旅行をして、贅沢だね~なんて言って、幸せをかみしめる。
そんな未来。

ふふっ。
でも、おかしいよね。
結局は同じなの。
今、あたしの隣にいる男性は、なんだか凄い男で、なかなか自由になる時間がなくて、こうして初めて一緒に旅行にきて、こんな幸せな時間が持てた。
そしていつか、司さんと結婚して、司さんの子供を産んで、きっと共働きで、相変わらず忙しくて、そんな中で子育てをして、そうやって二人で生きていきたい。
あたしが描く幸せな未来は、『道明寺司』という男と一緒になったとしても、きっと、叶えられるに違いない。


「何、笑ってんだよ。」
「え?ふふ・・。あたしってさぁ、安上がりな女だったはずなのにね・・。」
「は?この俺を捕まえて、そんなこと言う女はお前だけだな。」
「ほんとだよねぇ。好きな人が傍にいてくれるだけで、そんな時間があるだけで、それ以外の何が欲しい訳でもないのに、こうして、一緒にいること自体が貴重な男と付き合っているなんて・・。」

「なんだよ、その、貴重な男って。」
「だって、司さんと毎日一緒にいるからつい忘れちゃうけど、道明寺司の時間には途轍もない価値があるんでしょう?」
「はっ。アホか。俺の時間は、全てお前のためにある。どんなに多忙だったとしても、お前との時間を削るつもりはねぇよ。お前との時間がなくなるんだったら、もう仕事もしない。」
手をつなぎながらも、ぷいっとそっぽを向く司さんが可愛い。

「またぁ。そんなこと言って。西田さんに怒られちゃうんだから。」
「だったら、責任とって俺と婚約しろよ。今すぐ。なんなら、今すぐ入籍してもいい。」
「せっかちだなぁ。」
「お前を絶対に手放すつもりはない。お前にとっては、ややこしくて、面倒くさい男なんだろうが、お前を完全な自由にしてやることはできない。」


あたしは、司さんから自由になろうなんて思ってない。
司さんに囚われている幸せが、どんなに心地いいか分かっているもの。
何より、彼以外の男性と、あたしが幸せな未来を築くことなんて絶対に出来ない。

だから、婚約でも結婚でも、今すぐしたいと思ってるよ。
海外に研修に行くとしても、道明寺司の女として、堂々と行きたいと思っているんだよ。
司さんから離れることなんて、もう、あたしにはできないって分かったんだもの。

でもね・・
現実は、そんな簡単じゃないでしょう?
今は、お互いの、その気持ちがあればいいんじゃないかな?
互いに、将来は一緒になろうと思う気持ち。

それなのに、まったく、この人は、せっかちなんだから・・
クスクス・・

少し先に、チャペルの十字架を見えたから、
性急な彼に呆れつつ、半分冗談で言ってみる。

「じゃあ、今すぐ結婚する?」



***



「じゃあ、今すぐ結婚する?」

つくしの一言に、俺は心臓が止まるかと思った。
足が止まって、動けねぇ。
逆につくしに手をツンと引かれた。

「冗談だよ。大丈夫?司さん。」

はっ??冗談??
目を大きく開く俺に、つくしがクスクスと笑った。

「結婚って、そんなに簡単にできないでしょ?それに・・司さんのご両親だって、どう思うかな。そういうの考えたことある?」
つくしがちょっと不安そうに、俺の顔を覗き込んだ。

考えたことなんて、あるに決まってる。
お前に覚悟ができたら、オヤジ達に紹介する気でいたんだ。
絶対に反対なんかさせねぇ。


「俺の辞書に、冗談っつー文字はない。」
「えっ?」

俺はつくしの手を引いて、どんどん、どんどん歩いていく。
「ちょっと、司さんっ!」

お前が言ったんだ。
結婚しようかって。
だったらいいだろ?
神なんて信じてねぇんだけど、その前で誓ったって。


ここは、ババァの肝いりで3年前にオープンさせたリゾート。
「道明寺楓」が自ら指揮を執った、メープル系列の完璧なリゾートということで、かなりな人気を誇る。
ここのチャペルで結婚式を挙げるセレブも多い。

チャペルはホワイトとブラウンを基調とした、完全なコロニアル調。
家具は全て、マホガニーで統一された豪華な空間。
このリゾートに咲く花で飾られたチャペルは、豪華な中にもアットホームな雰囲気を醸し出すと評判だ。

そのチャペルの前に立つ。


「うわぁ。可愛い教会。素敵・・。」

つくしの手を引いて、誰もいない教会に入っていく。
正面に掲げられた十字架が、俺達を見守っている。
その十字架の前で立ち止まった。


つくしに向かい合い、その両手を握る。
すぅっと息を吸い込んだ。

「牧野つくしさん。僕と結婚して下さい。」


これは、俺の本気のプロポーズ。
つくしが目を見開いて俺を見つめる。
俺はその視線を受け止めた。

頼む。
拒むな。
これは、冗談なんかじゃない。

つくしは、ゆっくりと俺の手を離した。
一瞬、息を飲んだ俺の胸に、
ボフッと彼女が飛び込んで来る。
彼女の腕が、俺の背中に回った。

「どうぞよろしくお願いします。司さん。」


俺は反射的に、ぎゅっとつくしを抱きしめた。

ビビらせてんじゃねぇぞ、この俺を。

速まる鼓動を沈めつつ、俺はポケットに手を入れた。
本当のことを言えば、ずっと前から用意していたもの。
いつか渡したいと思っていた。

名残惜しく、彼女を胸から離し、その左手をとった。
左手の薬指に指輪を滑らす。
ハートの形をしたダイヤモンド。
プロポーズには、指輪は必須だろ?

「司さん、これ。」
「前から、プレゼントしたいって言ってただろ?」
「でも・・」
「プロポーズしたんだ、これは拒むな。」
「うん。ありがとう。」
「絶対に外すなよ。」

ん?
つくしが微妙な顔をする。

「何だよ。」
「だって、ホテルウーマンは、結婚指輪以外は認められていないんだよ。」
「はぁ?」
「だから、ずっと着けてることはできないの・・。」
つくしが、上目遣いに俺を見る。

「だったら、今すぐ、結婚しよう。今すぐ、マリッジ買いに行くぞっ!」

焦る俺をクスクス笑いながら、つくしが俺に手を引かれてついてくる。

「司さん。ネックレスに通してずっと身につけておくから、それでいいでしょ?」

俺はつくしを振り返った。

「絶対に毎日着けておけよ。」
「うん。」

つくしの背中に手を回し、勢いよくキスをする。
十字架の前での誓いのキス。
絶対に破られることのない約束のキスをした。




その日は、つくしとこの島を見て歩いた。
片時も、彼女の手を離さずに。

プライベートアイランド。
この島自体が貸し切りなんだ。
島には5つほどの区画があるが、この3日間は、俺が全てを貸し切った。

コロニアル調の邸宅が各区画に配置されている。
それぞれに、コンセプトは異なる。
俺が今回選んだのは、『マリアージュ(結婚)』。
教会のある区画だ。
そのほかに、『ファミーユ(家族)』『メナージュ(夫婦)』『リヤン(絆)』『キャマラード(仲間)』の区画に分かれる。


「すごく大胆な発想だね。メープルリゾートならでは・・こんなリゾートがあるなんて、知らなかった・・。」
「まぁ、一般客にはあまり知られてねぇのかもな。いかにも、ババァが考えそうなことだぜ。」
「ババァって・・もしかして、楓社長のことを言ってる?」
「それ以外に誰がいんだよ。」
「やっぱり・・」

つくしが遠い目をしていた。
『ファミーユ』の区画に入ると、そこには、子供達が遊べるプールや公園が付いている。一つ一つの区画が、別荘といった感じだ。プライベートが完全に確保された空間。

「やっぱり、楓社長は凄いなぁ。」

つくしがぼんやりと呟いた。

「何がだよ。」
「あたしはね。お客様に非日常を楽しんでいただこうと思ってた。」
「そうだな。」
「それが間違いだとは思わないんだけどね。でも、これだけのプライベート空間を大胆に配置したリゾートを見て思ったの。非日常って、いつもと違うことをするだけじゃないんだね。こうやって、完全に守られたプライベートな空間で、誰の目も気にすることなく、大切な人と過ごすこと。それが、非日常になるのかもしれないね。」

「もしかしたら、楓社長はこういうところに家族と一緒に来たかったのかな?」

つくしが俺に笑顔を見せる。

分かんねぇ。
ババァが何を考えていたかなんて。
少なくとも、俺はババァやオヤジと家族旅行をした思い出は無い。
だから、ババァがそんな希望を持っていたとは考えられない。

「やっぱり、楓社長を尊敬しちゃうな。」

ビジネスにおいては、俺の更に上をいく、鉄の女。
そんな母親に、俺が生涯を共にしたい女を紹介する日が近づいて来た。



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  1. 続・俺の女
  2. / comment:3
  3. [ edit ]

こんばんは〜

  1. 2017/04/27(木) 20:56:23 |
  2. URL |
  3. Happyending
  4. [ edit ]
いつも沢山の拍手をありがとうございます。
昨日コメントをしたばかりなんですが、やっぱり、60話では収まらないかも知れません。番外編に回そうと思っていたところを、やっぱり書かなきゃダメかも。早く完結したいのになぁ。でも、まだ、かかるなぁ。もうしばらくお付き合い、どうぞよろしくお願いします。

さてさて、
スリ●様
ここからまた、もう1つ山を越えます。軽めの山です。書いてみないとわからないのですが、当初考えていたHappyendingと少し変わりそう。もうすぐ、GWですね〜。どれぐらいアップできるかなぁ。止まったら書けなくなりそうで怖いので、下書きだけでも書き終えてホッと一息つきたいです。

では、明日も、AM5:00に!

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  1. 2017/04/27(木) 07:23:05 |
  2. |
  3. [ edit ]
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  1. 2017/04/27(木) 06:50:56 |
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