花男の二次小説になります。つかつくonlyです。

With a Happy Ending

楓社長が退出し、静まり返った応接室。

震えあがっていた町田隆弘が我に返り、司さんに詰め寄ってきた。
「まさか、あの時の人物が道明寺支社長だったなんて知らなかったんです。どうか、制裁だけは解除してください。お願いします。」

必死な様相の町田隆弘を、司さんは一刀両断した。
「悪いが、すでに町田との契約は末端まで全て解除している。今頃、町田は大慌てだな。結婚相手が、銀行関係の娘だったか。町田が負債を抱えるとなると、銀行も不運だな。早く戻って、謝罪した方がいいんじゃねぇか?」

町田隆弘がガクリと膝をついた。
司さんは顎をしゃくって、SPに指示を出し、町田隆弘を部屋から連れ出させた。


「道明寺支社長、大変申し訳ありませんでした。まさか、牧野さんが支社長の婚約者だとは存じ上げず・・・」

その支配人の言葉に、司さんは向き直らなかった。

「西田。」
「はい。」
「この男を更迭する。」
「はい。」

「支社長っ!それはっ!」

顔面蒼白で慌てふためく支配人に、初めて司さんが視線を向けた。

「牧野つくしが俺の婚約者だからじゃない。この状況で、社員を守ろうとしない社内体勢に問題がある。古い体質は必要ない。」

あたしを抱きしめる腕は優しいのに、司さんから発される言葉は冷酷だ。
メープル東京は100%道明寺HD資本の子会社だ。
その経営権は司さんが握っている。
だから、この判断は決して揺るがない。

だけど・・これは、あたしのせいだ。
あたしが、後先考えずに行動を起こしたから、こんなことになったんだ。
いくら反省したところで、もう取り返しの付かない事態に発展している。
それは、あたしにも分かる。


西田さんが、支配人を連れて部屋を出た。
そして、この部屋には、あたしと司さんだけが残された。

顔を、上げられない。
司さんに顔向けができない。
こんなことになってしまうなんて・・

「つくし。」
頭の上から降ってくる、司さんの優しい声。
「は・・い。」
あたしの返事は、震えていた。


「俺のせいで、こんな目に合わせて、済まない。本当に、申し訳ない。」

道明寺HD支社長の司さんからの謝罪の言葉。
あたしの恋人であり、このホテルの経営権を握る彼からのその言葉。

なんでよ。
どうしてよ。
なんで、司さんが謝るのよ。
あたしのせいなのに。
あたしが馬鹿だったのに。

彼にも、会社にも迷惑を掛けてしまった。
なのに、どうして、そんなこと言うのよ。


我慢していた涙が、一気に溢れ出す。
恐かったこと、悔しかったこと、そんなことじゃなくて、ただただ、司さんに申し訳なくて。
道明寺司の恋人なのに、その自覚が足りずに、こんなことになった自分が惨めで。
それなのに、あたしを優しく抱きしめてくれる司さんが愛しすぎて・・

司さんの背中に腕を回して、しがみついた。

「うっ・・ひっく・・ごめんなさい・・ごめんなさい・・司さん・・。」

これ以上の言葉が見つからない。


「お前は謝るな。」
司さんが、あたしを強く抱きしめてくれる。

「ふっ・・うっく・・なんでっ・・」

どうして、そんなこと言うの?
あたしが、あまりに迂闊で、呆れているの?
あたしには、謝る資格さえないの・・?


「お前が、俺の女だからだ。」

「ふぇっ・・えっ・・?・・」


「お前の言動の全てに俺が責任を持つ。だから、謝らなくていい。」


うっ・・
うぇっ・・ふぇっ・・・
うわーんっ・・!!

その場に崩れ落ちるあたしを、司さんが支えてくれる。
二人その場にしゃがみこんで、司さんと視線を合わせた。

涙があふれて、大好きな司さんがぼやけてる。
司さんが、優しく左頬を撫でて、あたしの唇に軽くキスを落とす。

こんなあたしを、『俺の女』だと言ってくれる。
無条件にあたしを信じてくれる。
どうして、こんなに優しいの・・?

司さんの胸の中に飛び込んで、ワンワンと泣くあたしの髪を、ずっと撫で続けてくれる司さん。


しばらく、そのまま抱き合って、
あたしが少し落ち着きを取り戻した時に、
司さんが言った。


「だけど、ま、あれだな。」
あたしを見つめながら、司さんが嬉しそうに言う。
「もう、後戻りはできねぇな。」

「俺の婚約者として、お前には今後SPを付ける。拒否は許さない。」

・・・。

「それから・・花嫁教育ってやつ?始めた方がいいな。」

・・・?
・・え?

「しかし、ババァにいいとこ取られたわ。」


・・・!!
そうだっ。そうだったっ!


「司さんっ!!」
「何だよ。拒否はさせねぇぞ。」
「何だよじゃないよっ!そうじゃないよっ!あたしが・・あたしが司さんの婚約者だって・・楓社長が言ってた・・」
「あぁ、言ってたな。」
あたしの頬を撫で続け、そんなことはどうでもいいとでも言う様な司さんの態度。

「ねぇ、婚約者だって言われたんだよ?」
「事実だろ?」
「だって、まだ、御挨拶もしていないんだよ。初対面だったんだよ。」
「けど、認めてんだろ。良かったじゃねぇかよ。」

どうしてよ。
こんな事態を引き起こしたあたしを、どうして婚約者だと言ってくれたんだろう。
それに、どうして、あたしの事を知っていたんだろう。


司さんの胸の中、安堵に浸っていたけれど、急に現実に引き戻された。

「良くないよっ。今回の事、きちんと謝罪も、お礼もしたい。ねぇ、今から、お邸に行くんだよね。予定通り、総帥夫妻にお会いできる?」
「マンションに戻るつもりだ。」
「ダメっ。お邸に連れて行って。」
「今日はゆっくり休んだ方がいい。俺も一緒にいるから。挨拶は改める。」
「休まなくても大丈夫っ。っていうか、休める訳ないでしょっ。ねぇ、お願い、お邸に連れて行って。」

必死になるあたしを見て、司さんが、ふぅと溜息をついた。

「仕方ねぇな。」
司さんが少し困ったような、だけど、ちょっと満足そうな笑みを浮かべた。



*****



つくしの頬を冷やしながら、リムジンで邸へ戻った。
まだ、親父とお袋は帰っていなかった。
俺の部屋で、つくしの手当をしてもらったが、左頬の腫れと口内が切れている以外には、外傷は無かった。
「だから、大丈夫だって言ったでしょ?」
なんて言うつくし。
だが、俺はもう、お前の言うことなんか信用しねぇ。
徹底的に管理してやる。
拒否はさせねぇ。

タマが持ってきたミルクティーを口にした瞬間に、
「イタッ」
とつくしが小さく呟いた。

俺は、あの男の顔を見た時の怒りが再燃した。



三条が異変に気づき、移動中のあきらの携帯が鳴った。
話を聞いたあきらは、すぐに俺のプライベートではなく、ビジネス用の携帯を鳴らした。
それは、緊急性を意味する。

仕事中のつくしには、SPを付けていた。
俺は、ホテルウーマンとしてのつくしに敬意を払っているつもりだが、やはり、こいつのややすっとぼけた所は、以前から心配の種だった。
過保護だと言われようが何だろうが、SPを付けるのは、こいつが俺の女である限りは当然のことだと考えていた。

「町田隆弘って、お前が沖縄でプールに投げ込んだ男だ。牧野、やばくねぇか?」

あきらの話を聞いて焦った。
すぐに西田を通して、SPに連絡を入れた。
すると、つくしがつい先ほど2501号室に入ったと言う。
あのバカッ!!

SPに俺の権限で室内に飛び込めと指示を出し、俺もすぐにメープルに向かった。
その間も、心臓がバクバクして、息ができない程だった。

間に合ってくれ。
俺が全ての罪を負うから、どうか、つくしを傷つけないでくれ。
つくし・・恐い思いをさせて本当にごめん。
リムジンの中で、俺は必死に祈った。

町田の奴、絶対に、許さねぇ。
自分の爪が掌に食い込んだ。

隣の西田が、冷静に言った。
「町田産業は、道明寺と幾つかの取り引きがあります。」
「潰せ。一片たりとも残すな。」
「承知致しました。」

ギリッと奥歯を噛み締めた。
そこへSPからの報告の電話が鳴った。

間一髪と言うべきか。
しかし、つくしに辛い思いをさせてしまったと言う意味では遅かった。
けれど、大事には至らなかったことに安堵した。

SPがつくしを連れ出そうとしたが、メープルの主任と共に、町田もろとも、支配人室に移動させられたと聞いた。

まさか、町田の言い訳でも聞くんじゃねぇだろうなっ。
リムジンの防弾ガラスを思いっきり殴り、イライラをなんとか鎮めながら、メープルへの到着を待った。

地下駐車場から、専用エレベーターで役員室へ直行。
そして、支配人室のドアを蹴り開けた。
飛び込んだ瞬間に、太々しい、町田の姿が飛び込んで来て、自分の怒りを抑えることなんかできっこなかった。
一気に間合いを詰めて、殴り倒した。
言っとくが、本当なら、これぐらいじゃ足りなかった。
けど、そこで聞こえたつくしの声。
振り返った時に見た、腫れたつくしの頰。

俺の女が、ポツンと一人、立たされていた。

こんな奴、殴ってる場合じゃねぇ。
今すぐ、つくしを抱きしめてやらねぇと。

俺がつくしの頬に触れたとたんに、つくしの目から涙がこぼれた。
どれほど恐ろしい思いをしたのか、計り知れない。

自分の軽率さを反省せざるを得ない。
あんな雑魚を適当にあしらった、そのせいで、俺の命よりも大切なつくしの心に傷を負わせてしまった。
未遂に終わったからと言って、俺は自分を許すことはできない。
この罪は、俺の一生をかけて償うつもりだ。


町田産業とのパイプは全て完璧に切るように、西田へは伝えている。
ババァに言われるまでもなく、完膚無きまでに叩きのめすつもりだった。
あそこは、産廃系の仕事をしているはずだ。末端子会社まで含めれば、道明寺とのつながりはそれなりにあるだろう。だからと言って、手を切ったところで、こちらの痛手はほぼない。
つくしを襲った罪・・それは、俺への罪と同等だ。

町田を警察に引き渡すこともできた。
だが、それはしなかった。
ババァも指示しなかった。
それは、町田を許したと言う訳ではなく、警察沙汰になれば、例え罪がなくとも、つくしも事情聴取を受けることになるからだ。
俺だけなら構わない。
だが、これ以上、つくしにはこの件を思い出させたくなかった。


それから、ババァの言う通り、つくしの警護を徹底すると同時に、つくしを教育する必要性を痛感した。
今までは過保護だなんだと俺に大口を叩いていたが、今回のことで、こいつも相当反省しているはずだ。
俺の婚約者として公表することで、つくしのSP帯同は必須になる。
これにはもう、拒否という選択肢はない。
窮屈かも知れねぇが、もう、絶対に過ちを許すわけにはいかない。


しかも、今回の騒動で、つくしの周囲は一変するだろう。
客室での騒ぎを聞きつけて、多くの客とスタッフが事態を把握したはずだ。
そして、応接室に、俺とババァが入っていったこともすぐに噂になるだろう。
その上、支配人が更迭されたんだ。
つくしが、俺の婚約者だという事実が、すぐにスタッフの中で広まるはずだ。

俺の婚約者として、海外へ出すつもりではいたものの、これほどに早く、情報が公開されることは考えていなかった。
つくしが、このまま、メープル東京で働き続けられるか・・
つくしはまだ、現状の把握ができていないが、俺はそれを心配している。

どうするべきか・・


それを考えていた時に、オヤジ達が帰宅したと連絡が入った。



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いつもたくさんの応援をありがとうございます!
昨日の記事から、「総支配人」を「支配人」に訂正しました。
メープルの総支配人は、楓様です。
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  1. 続・俺の女
  2. / comment:4
  3. [ edit ]

こんばんは~(^^)

  1. 2017/05/05(金) 20:03:22 |
  2. URL |
  3. Happyending
  4. [ edit ]
いつもたくさんの拍手をありがとうございます!
司さんも、いろいろ頑張ってたんです。
でも、元を正せば、お前がわりぃってところは変わりませんが・・。許してあげてね・・。
そして、つくしも、いい加減自覚をもって頂戴ね。

ということで、
花●様
連日のコメントありがとうございます!司さんはつくしちゃんを愛しすぎてるし・・。。つくしちゃんは、愛され過ぎちゃってるから、この男がいかに稀有な存在か今一つ理解に乏しいかったけど、今回大きく反省しているはず・・。そろそろ、Happyendingに向けて、お話をまとめていきまーす。

じゅんこ様
よかったです。司好きのじゅんこさんに褒めて頂けて(笑)。
そうなんですよね、さっさと捕まりなさいですよ。本当に!
今日は、まだ一言も記事書いてないんです。一応、明日までに書くつもりでおります・・。今日は、余裕があったのですが、ぼけーっとして時間が過ぎてしまってました・・。

スリ●様
良かったです。司さんもカッコよいと言っていただけて・・。あー良かった!!明日は、そうです、ご対面。今一つ、書く気にならないですが、仕事始まったらさらに書けないので、頑張ろうと思います!あ、コメント長くても、全然OKです!いつもありがとうございます!

名前なし様
朝から、拍手コメントありがとうございます!司も、最高!よかった~。心配だったので。楓さんの次だから(笑)。
そうなんですよね、拍手の数とか、時間帯毎に確認できるのですが、5時台にもたくさん頂くんです。本当に、申し訳ないやら、嬉しいやら・・です。最後まで、どうぞお付き合いください!

あ●様
そこが、萌えシチュですか~。逆の、『男泣きする坊ちゃんを抱きしめるつくし』。たまに、坊ちゃんを泣かせていますが、男泣きか~。それは今まで書いたことないなぁ。うぉ~ぐらいの??うん。心にとどめておきます!明日の楓さんは、結構皆さんの思う通り?ぐらいでしょうか。って、今から書きますが・・。
あ、「あいみての~」の和歌。そうか、田辺聖子さんだとそう言った解釈ですか。私があの時に見た本では(娘の百人一首本ですが・・)逢瀬の後、離れ離れになってつらくて詠んだ歌って感じの解釈だったんです。だから、前向きに頑張っている二人には、後ろをを振り向いてほしくなくて使えなかったんですよねぇ。でも、恐らく、一度結ばれて、離れた心境はこうでしょうねぇ。うん。私がもう少し、文才に長けていたら、さらっと和歌とか使ってかけるんだろうな~。ま、仕方なし・・(笑)。あれ、七夕?そうだっけ?また、コラボできたらいいな~とは思っています(笑)。

ではでは、一応明日もAM5:00で!
今から書けば間に合うと思います。

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  1. 2017/05/05(金) 10:11:31 |
  2. |
  3. [ edit ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます

  1. 2017/05/05(金) 08:13:50 |
  2. URL |
  3. じゅんこ
  4. [ edit ]
こんにちは♪お天気よくてデート日和ですね。つくしと司ならどこ行くのかなぁ?
今回の司!ちょーーー男前💕判断力やっぱりあっていーですわぁ(^3^)/あんな支配人なら働きたくないものね。改善改善!
しっかりはしてるけど、自分の事になるとぽやっとしてるからこれを期におおいに反省しなきゃねつくしちゃん。
そして司の婚約者としてさっさと捕まりなさい(^-^)
楽しいお話ありがとうございました☆次も無理なく更新して下さいね♪

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  1. 2017/05/05(金) 05:40:40 |
  2. |
  3. [ edit ]
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