花より男子の二次小説。CPはつかつくonlyです。

With a Happy Ending

軽くシャワーを浴びて、つくしを着替えさせた。
つくしのために用意した、オフホワイトのワンピース。
忌々しい、ブライダルの制服は処分した。

「良かった。洋服、どうしようかと思ってたの。桜子にも悪いことをしちゃったな。」

あきらと三条には、つくしの無事は知らせていた。
帰宅した親父とお袋とは、予定より遅くなったが、21時半から来客用のリビングスペースで食事をすることになった。

「食事だって・・大丈夫かな?」
と不安になるつくし。
「痛くて食えそうにねぇなら、食事は無しにしてもらおう。」
「そうじゃなくって・・マナー・・」
「はぁ?」
「食べるのは大丈夫。むしろ、お腹空いた。だけど、テーブルマナーが。」
「それこそ、心配すんな。」

緊張極まっているはずなのに、こいつのすっとぼけ具合に安堵する。
応接室で立たされ、真っ青になっていたこいつを見た時には、本当に息が止まりそうだったんだ。
いや、今だって、無理をしているのには違いないんだが。
だが、とりあえず、ババァがつくしを「俺の婚約者」と認めていることは、俺達二人とも、理解できていた。

マナーなんて、心配いらねぇんだよ。
そんなに心配なら、俺が食べさせてやる。
何も心配すんじゃねぇよ。

俺たちは、どちらからともなく抱き合って、
それから、来客用の部屋へ向かった。



5分早く部屋に入り、席を確認する。
両親と俺達が向かい合う形だ。
座って待とうぜと言うのに、つくしは嫌だと言って、着席しなかった。
やっぱ、緊張してんだな。

カチャッとドアが開き、入ってきた俺の両親。
道明寺総帥夫妻。

その姿を見て、
「あっ」
とつくしが声を上げて、すぐに手で口を覆った。

なんだ?

「やぁ、牧野さん。大変な目にあったんだってね。ごめんね。うちのバカ息子のせいで。」

・・?・・はぁ?

「そろそろ、バカ息子が恋人を連れて来るって言ったよね?」

親父が、つくしに向かってにこやかに話しかけている。
こんな親父、見たことねぇし。

「つくし、親父に会ったことあるのか?」
「先日、The Classicのカウンターに・・」
「何だよ、偵察かよっ。」
「司さんっ。」

息まく俺に、親父が落ち着いた口調で言った。
「まぁ、席に着こうじゃないか。」
親父の一言で、全員が席についたが、つくしだけは座らなかった。

俺達に向かって深々と頭を下げる。
「初めまして。牧野つくしです。この度は、メープルに多大なご迷惑をお掛けしてしまいました。申し訳ございませんでした。」

「つくし、いいから座れ。」
俺が立ち上がって、つくしを椅子に座らせようとすると、すかさず、ババァが言った。

「そんなこと、気に病むことではないわ。その分、あなたには働いてもらうつもりよ。」
「おいおい、楓。いきなりは驚くだろう?」
「だって、私のような仕事をしたいのでしょう?それなら、私の元で学ぶのが一番いいわ。丁度よかった。メープル関連の専属秘書が欲しいと思っていたの。メープルの仕事はあなたに秘書として動いてもらうわ。」

突然のババァの爆弾発言に、俺も黙っては居られない。

「何言ってんだよ、お袋。」
「あら、どうせ、海外研修に行くつもりだったのでしょう?それなら、丁度いいわ。来月から、ニューヨークへいらっしゃい。みっちりしごいてあげるわ。」



***



結果として、つくしは俺の婚約者として認められた。
いや、初めから認められていた。

ババァは当然つくしのことを知っていた。入社成績も、入社後の仕事ぶりも。そして、俺と付き合っていることも。
そして、幹部候補として、ニューヨークに転勤させようと目論んでいたらしい。
元々つくしは、海外勤務希望で入社していたし、海外転勤の候補の筆頭だっただろうからな。


話を聞いていたつくしが、恐る恐るといった様相でババァに尋ねた。
「あの・・どうして、私を司さんの婚約者だと認めて下さったのでしょうか?」

確かに、それは少し疑問だった。
俺が紹介したい女性がいると言った時点で、ある程度は調べていただろうし、考えもあっただろうが、すでに認めているとは思っていなかった。

すると、ババァが、ふっと笑った。
なんか・・恐ぇな・・何を言い出すんだ。

「あなたが、鍛え甲斐のありそうな女性だったからよ。東京メープルの企画を担当した、その内容は、まぁまぁね。一年目だからこそ、及第点ではあるけれど、二年目以降ではダメね。けれど、伸びしろがあると思った。これは、メープルの総支配人としての視点からよ。牧野さん、今のあなたに足りないものが、何か分かる?」

「経験・・でしょうか?」

「そうね。それも大きいわ。けれど、一番足りないのは、メープルを利用するお客様の心理を捉えきれていないことよ。そこを鍛えなおす必要があるわ。そのためには、道明寺司の婚約者として、ニューヨークで鍛えることが理にかなっているのよ。」

どういうことだ?
俺の恋人というよりも、メープルで働く人材として欲しいと思ったってことかよっ。

「司のパートナーになるためにも、今持っている視点での物の考え方は改めてもらわないといけないわ。そうね、あなたの場合、全てにおいて教育が必要です。社会人としても、道明寺家の嫁としても。その教育を施すことが、メープルというホテルをより深く理解することにつながるはずです。」

道明寺の嫁として教育されることが、メープルを理解することにつながる。
確かに、そうかも知れねぇ。
つくしが想像する俺らの世界と、実際の俺らの世界にはまだまだ隔たりがある。つくしは元々、メープルを利用するような暮らしはしてねぇからな。東京メープルが5つ星ホテルであることを考えれば、俺らの世界のことを深く学ぶ必要があるのは確かだ。だが、そのために、つくしを俺の婚約者として迎え入れてもいいというのか?


「私が目を付けた女性が、息子が付き合ってる女性だと分かった訳。だけど、牧野さんには、まだまだ教育が必要だわ。道明寺家の嫁になるためには、相当な努力が必要よ。だけど、その努力ができる人物かどうかを知りたかった。だから、実さん・・いえ、総帥にお願いして調査をしたの。ふふふ・・。そうしたら、総帥が言うのよ。あの子なら、君のシゴキに耐えられるんじゃないかって。」

シゴキ?
何だよっ、それはっ!

「私が課す教育に根を上げるようでは、道明寺家の嫁にはなれっこないわ。お飾りの嫁なんて、私は認めない。仕事であれ、家庭人であれ、その時々の状況に甘んじることなく、立ち向かっていく女性が好きなの。そういう女性が欲しかったのよ。何かあれが、実家に泣きつくような嫁は要らないの。その分、あなたは大丈夫そうね。仕事への意欲は十分にある。そして、司自身があなたを欲しがっている。そして、その仕事を極めるためには、道明寺の嫁としての教育が役に立つわ。一挙両得ね。鍛え甲斐があっていいわ。」

「おいっ、つくしを虐める気か?」
「司さんっ。」
「だって、そうだろ。婚約者として認める理由が、虐めやすいからって何だよ。」
「虐めるじゃないよっ、鍛えて下さるのよっ。」
「バカっ。同じだろーがっ。」

言い合う俺達に向かって、ババァが言った。

「つくしさん。今のあなたは甘すぎるわ。社会人としても、道明寺家の嫁としても。今回の事件もそういった、あなたの甘さにも一因があるわ。まぁ、元を正せば司が悪いのだけど。司は、あなたにデレデレしているようだから、きっときついことは言えないのでしょう。ですから、私がみっちりと社会人としても嫁として教育するわ。どうかしら?」

「よろしくお願いします。」
「つくしっ!」

即答したつくしに、ババァが満足そうに笑った。
俺の声なんて聞いちゃいねぇ。




それから、ババァとつくしは隣のソファにならんで座り、何やら話し込んでいる。
その様子を、ダイニングから、親父と観察している俺。

なんだよ、案外、ババァの奴、つくしを気に入っているみてぇだ。
どうやら、自分に憧れていると言われて嬉しかったらしい・・というのはオヤジ情報だ。
ババァも今の地位を築くまでには相当な苦労があったとか。んなこと、俺の知ったこっちゃねぇ。俺は、つくしに苦労をさせるつもりなんてねぇよ。

親父によれば、どうもつくしは、ババァに似ているという。
見た目じゃねぇ・・性格が・・。
「お前は、案外、マザコンって奴だったんだな。」

って、んな訳ねーだろっ!!
ババァと会話なんて、ほとんどしたことねぇよっ。

そういうオヤジだって、どうやらつくしを気に入っている様子だ。
ババァに憧れているなんて言ったつくしが可愛いらしい。
そうだ・・そういえば、こいつはオヤジキラーだった・・。

「臼井がさ。言うんだよ。〈牧野さんは、きっと一生司君を守ってくれますよ〉ってさ。」
「はぁ?」
「なんでも、運命の二人なんだとか言ったな。臼井の奴、案外ロマンチストなんだな。知らなかった。」
「・・・。」
「それで、牧野さんを愛して守ろうとする司は、道明寺のトップに立つ器なんだと。まぁ、私がこの財閥を背負っていく姿を、私の間近で見ていた男がそう言うんだから、間違いではないんだろうな。」
「オヤジを間近で見ていた男?」
「知らなかったか?臼井は、元々、私のSPだ。」
「はぁ~??」

マジかよ・・。
臼井が、オヤジのSPだったとは・・。
確かに、腕っぷしは相当だった。
昔から懐の深い男だった・・と今更ながら思う。
俺がどんな悪さをしても、軽く受け流してくれていた。
臼井は、オヤジのSPだったから、オヤジのことを知っていたんだ。
俺の将来に、オヤジを重ねてやがったな。
ニューヨークに行くまでは、俺に同情でもしていたのかもしれねぇ。
そして、帰ってからは、ひそかに俺の恋路を応援していた。
ったく・・臼井には、頭が上がんねぇじゃねぇかっ。

でもな、臼井!
言っとくが、つくしさえいれば、俺はオヤジなんて軽く超えてやる。
オヤジ以上のトップになってやる。
俺がつくしを守っていく姿を見せつけてやるから、覚悟しろよ!


俺が拳を握りしめたのを見て、オヤジが笑った。

「婚約でも、何でも、したらいいさ。けど、そうなると、牧野さんを楓に預けるのが得策だろう?彼女はまだ社会経験が少ない。しかし、道明寺司の婚約者として働かせるには、楓の元にいるのが安全だ。」

確かに、このまま日本にいても、つくしにとっては働きづらい状況になった。
そして、悔しいが、ババァの元であれば、仕事もできるし、セキュリティーも万全。
しかも、つくしが望む、メープルの仕事を一番確実に把握できる、これ以上ない待遇だ。



お袋とつくしの声が聞こえてくる。

「ニューヨークでは、うちの邸に住んだらいいわ。余計な荷物は要らないから、出発までに契約書類全てに目を通して頂戴。」
「はい。」
「書類も、かなりの量ですからね。道明寺のニューヨーク本社の決まり事から、ニューヨークメープルの契約内容まで。隅々まで頭に叩き込んで。」
「はい。」
「分からないことは何でも聞きなさい。他の秘書でもいいし、私でも構わないわ。」
「はい、ありがとうございます。」
「念のため聞きますが、あなた、英語は大丈夫よね?」
「はっ、はいっ、大丈夫ですっ!」

顔を引き締めるつくしを見て、見たこともないような優し気な表情で笑うババァ。


なんだよ。
そいつは、俺の女なんだぞ。
勝手に決めてんじゃねぇよ。


だけど・・

行かせるしかない。
来月からと言われれば、正直戸惑うが、行かせるしかないだろう。

つくしの夢を叶え、俺の願いも叶えられる方法には違いない。


親父まで混ざって、三人が楽しげに会話しているのを見つめながら、俺も覚悟を決めた。



にほんブログ村
いつもたくさんの応援をありがとうございます!
関連記事
スポンサーサイト

  1. 続・俺の女
  2. / comment:3
  3. [ edit ]

こんばんは(^^♪

  1. 2017/05/06(土) 20:10:36 |
  2. URL |
  3. Happyending
  4. [ edit ]
いつもたくさんの拍手をありがとうございます!
ついに、つくしちゃんNYへ。
今日の記事に思いがけず時間がかかりましたが、これを乗り越えたら、昨日の夜中までかけて、下書きだけですが、最後まで書けました~。
なので、残りあと3話で完結です!

スリ●様
そうです(笑)。臼井さんが司パパのSPであったことの種明かしはありますか?というコメントをずっと前に頂いて、どこかに入れたいなと思っていたんです。細かい?(笑)
いつもコメントありがとうございます!

ふぁいてぃ~んママ様
すっかり忘れていた!ワーキングビザ!メチャクチャ調べたこともあったのに!実は、前回のリゾートも海外の設定でして、パスポートは作ってあります。司が勝手に。シマッタなぁ。ワーキングビザはそうそうおりません。道明寺の手を使ってもねぇ?という訳で、まずはBビザを申請の上、ビザウェイバーで入国が現実的?90日で一回出国して、再入国?細かい!(笑)。司はグリーンカードもってるはずだから、結婚したら、こっちを申請かな?なーんて。どうかなぁ??

という訳で、残すところあと3話。
いっきに完結するつもりです!
明日もAM5:00に~(^^)

管理人のみ閲覧できます

  1. 2017/05/06(土) 09:14:35 |
  2. |
  3. [ edit ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

  1. 2017/05/06(土) 09:10:18 |
  2. |
  3. [ edit ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます

 管理者にだけ表示を許可する
 
 

プロフィール

Author:Happyending
ときどき浮かぶ妄想を書き留めたくて始めました。

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR

« 2017 10  »
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -