花より男子の二次小説。CPはつかつくonlyです。

With a Happy Ending

____ホテルメープル東京 11時00分。


正面ロビーより反対の北側に広がる日本庭園。
広大な敷地を誇るその庭園には、鯉の泳ぐ池や、この夏のうだる暑さをしのぐ東屋もある。

俺は、普段は絶対に歩くことなどないその庭園を、東屋に向かって歩いていた。

あと30分後に、行きたくもねぇ、見合いの席に着かなきゃならない。
面倒くせぇことこの上ねぇが、俺も会社の副社長という肩書がある以上、両親が持ち込んだその見合いを、会いもせずに断ることはできなかった。

まぁ、ビジネスだ。ビジネス。

相手は、白鳥物産の令嬢のなんとかって女だ。
写真も見てねぇけど、見る価値もないだろう。
俺は、この縁談を受ける気なんてサラサラねぇからな。

東屋に向かって歩きながら、胸ポケットを探る。
タバコを出して火を付けようとして、手を止めた。

東屋に先客がいた。
この東屋は知る人ぞ知る東屋。
手前には大きな木があるため、見つかりにくい。
そこは、高校時代に何度か来たことのある、俺にとっては思い出の場所でもあった。


近づいてみると、女が本を読んでいる。
薄い水色のワンピースを身に着けた、色白の女だ。
黒く長い髪を片方だけ耳にかけた、その横顔が見える。
真剣に本を読んでいる姿に、邪魔しちゃいけねぇなと思えた。

俺はたばこを胸ポケットにしまうと、しばらく女を観察した。
見合いまでの30分の暇つぶしだ。
コの字のベンチがある東屋に入り、俺も女の向かい側に座った。
女が一瞬だけ顔を上げ、俺を確認する。
その一瞬だけ、目が合った。
零れそうな、黒目がちの瞳。
すげぇ美人っつー訳じゃなかったが、その瞳に吸い込まれそうだ。

左腕のロレックスを確認しながら、俺も風景を観察している振りをしていた。
女は真剣に本を読んでいる様子で、それ以降、目が合うことは無かった。


俺は本来一人でいることが好きだ。
女と二人きりとか、絶対にあり得ない。
だが、この女が醸し出す雰囲気が何となく心地よくて、女をどっかに行かそうとか、俺が場所を移そうとか、そういう考えには至らない。

悪くねぇ・・・そう思った。


俺は日本トップの財閥系企業の御曹司って奴だ。
28歳にして、副社長の地位についた。
今後社長の座に就くためには、結婚は必須条件と言われている。

条件の良い女との結婚。
はぁ・・・・溜息が漏れる。
それに、何の意味があるんだ。

激務に加えて、家までが針の筵じゃやってられねぇじゃねーか!

と言う訳で、今のところ、俺は結婚なんてする気はない。
そもそも、俺は、女嫌いだからな。
無理する必要なんてないっつーのが、ここ数年で俺が出した結論だ。

でも、もし・・
もし、俺が家庭を持つのなら、こんな女がいいのかも知れねぇ・・
その場に一緒にいるだけで、満たされるような雰囲気・・
なんて向かいの女を見ながら思うのは、今日が、行きたくもねぇ見合いの日だからなのか。


東屋から少し右手の細い小道に沿って、川の様に作られた池が続いている。
日陰になっているその池から、少しだけ涼しい空気が流れて来た。

10分もした頃だろうか。
4-5歳のガキがこちらへ向かって走ってきた。
目の前の女も気づいたようだ。
どこかに両親もいるのだろうが、見当たらない。
きゃっきゃっとはしゃいで、池の鯉に手を伸ばそうとしている。

目の前の女と目が合った。
何気なく。
何となく。
ドキッとした。

女が本をベンチに置いたとたんに、

ドボンッ!!

ガキが池に落ちた。

とっさに立ち上がり、女が駆け寄っていく。
当然、俺も後を追う。

女は、躊躇せずに、池に入った。
幸い池は浅く、溺れるようなことは無かった。
だが、びっくりしたガキは自分で立ち上がれず、女が腰をかがめて引っ張り上げた。
綺麗な薄い水色のスカートが濡れていく。

「こっちに渡せ。」

全身水浸しのガキは重くなっている。
女が池から出すには、重すぎる。
俺は、手を差し伸べて、女からガキを引き上げた。

自力で池から出ようとする女にも、何故か、自然と手が伸びた。

女の右手を引いた時に、小さな声で「ありがとう」と聞こえた。

ガキの両親が駆け寄って来る
池を出た女はすぐに俺の手を離した。
両親はガキの無事を喜び、それから俺達に頭を下げた。

「ありがとうございました。」
「いえ、無事でよかったです。」
「そのお洋服、クリーニングに出させてください。」
「いえ、それより、息子さんの着替えをしてあげて下さい。」

結局、女はクリーニングを断り、家族はホテルの方向へ戻って行った。
父親に抱かれながら、こちら向きに手を振っているガキに、女も手を振り返していた。


それから、クルリと踵を返した女と再び目が合った。

「お前どうすんだ?それ。」

女のワンピースは膝上まで濡れていて、足にぴったりと張り付いていた。
慌てた女が、スカートの裾を掴んでぎゅーっと絞る。
すげぇ大胆な仕草だ。

「もうっ、だから嫌だって言ったのに。お見合いなんて勧めるからこういうことになるのよっ。全くもうーっ!」

その言葉はどうやら俺に対してではなく、独り言らしい。

そして、この女も見合いでここに来ていたのだと知る。

「時間、大丈夫か?」

もう一度声を掛けると、腕時計を確認した女が、
「やっ!大変っ!」
と言って、東屋に駆け戻っていく。

心配してやった俺のことは無視かよ。

荷物を持って、駆け戻って来て、
「それでは、ありがとうございました。」
と勢いよくお辞儀をして、立ち去ろうとするその腕を、思わず掴んだ。

女が驚いた顔で振り返る。
俺も・・自分の行動信じられない。

「あの・・」
「スカート、透けてんぞ。」
「えっ・・ぎゃっ!!」

小さく叫んだ女に、俺は自分のジャケットを掛けた。
女は目を丸くして俺を見て、それから、真っ赤になって俯いた。

「ありがとう。」

女がジャケットの合わせを握りしめながら言う。
「これ、クリーニングしてお返ししますので・・」

その言葉に被せるように、俺も言った。

「お前、今から見合いなのか?」

「え?」
顔の女が再び俺を見上げた。

「見合いなのかよ。」
「あ・・はい。でも、この恰好なので・・」

その恰好だからどうするんだ?
どっかで、着替えを調達すんのか?

「何時から?」
「11時半。」

「どこ?」
「メープルのプライベートラウンジです。」

「相手、誰?」

そんなこと聞いてどうすんだ・・俺。

「えっ・・えーと・・・」
「相手の名前覚えてねぇのかよ。」
「あ、そうだ・・塚狭(つかさ)さん・・という方です。」

つかさ・・?

俺は、じーっと女を見つめた。

こいつが、白鳥物産の令嬢?
いや‥どう見ても、違うだろう。
身に付けているものも、品物は悪く無さそうではあるが、一流品ではない。
時計も、国内有名ブランドものだ。

だが・・

こいつが、俺の見合い相手だったら?

そんな希望が湧いてきた。
ぜってぇ違うだろうと思うのに、0.01%の希望に懸けたい気持ち。


「そうだ、所長に連絡します。そこから、相手の方に連絡を入れてもらいますから・・」

「いや、その必要はねぇよ。」

「え?」

「お前の見合い相手、たぶん、俺だわ。司・・だろ?」

「へ?」

「メープルのプライベートラウンジ 11時半。」

「はい。」

「間違いない。俺だ。」

目ん玉飛び出んじゃね?ってぐらいのびっくり顔。
止めろっつーの。
その顔も、案外可愛いんだ。

ベンチに座っていた時の「静」の表情と、今、俺の前で見せる「動」の表情のギャップにぐっとくる。

俺は、こいつに興味がある。
どうせ見合いをするんなら、こいつがいい。
こいつを、他の男んとこになんて行かせたくねぇ。

女にこんな感情を持つこと自体が初めてだった。


「行こうぜ。」
「ええっ!でも・・」

俺は、女の肩を抱き、女を守るようにして歩き出した。



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昨日思いついたお話です。
長くはならない予定でいます。
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  1. Switch
  2. / comment:5
  3. [ edit ]

こんにちは。

  1. 2017/06/25(日) 14:19:37 |
  2. URL |
  3. Happyending
  4. [ edit ]
いつもたくさんの拍手をありがとうございます。
この1週間はいろいろ考えていて、正直、このまま書けないかなと思ったんですが、急に思い立ったことがあって。これなら、イケルかなって言う妄想が降りて来ました。でも、妄想は、途中までしかなくて、最後までは考えてない(笑)。でも、このままじゃ、絶対に掛けなくなるなと思うので、思い切って投稿しちゃいました。願いは、長くしないことのみ・・(笑)です。

さてさて
スリ●様
いつもコメントありがとうございます。これ、適当に始めたから、最後までたどり着けなかったらどうしよう・・。前半はサクサク行けると思うのですが・・後半が・・(笑)。

まる様
初めまして!楽しんで頂けていますか?嬉しいです。
そして、私としては、完全な見切り発車のこのお話。最後まで、お付き合いいただけると嬉しいです。

澪●様
そうそう、いわゆる、一目惚れって奴ですよね。出会いは、ぱっとひらめいたんですが、続きが・・・。長くはしたくないので(笑)、上手く完結させたいです(笑)。コメントありがとうございました。

さと●様
えへへ。無理やりなネーミング。ちらっとググって適当に決めました(笑)。ま、一時しのぎの名前なので、許してくだされ。
展開はどうするか・・これから考えます(笑)。

ふぁいて~んママ様
このタイトルですね。意味はあるのですが、吟味はしていないです(汗)。あは。つまり・・適当?さっさと投稿するぞっと意気込んで、ぱっと閃いたこちらに決定。お話の途中で、題名の意味も分かるようにしたいなとは思います。お嬢さんはお呼びでない・・(笑)。そうですね。お呼びでないですね。この辺をごちゃごちゃにすると長編になりかねないので、気を付けます!


実は、昨日投稿してから、題名のスペルミスに気付いたんですよ。
もう、信じられません・・。
投稿後30分ぐらいの間に読まれた若干名の方は、「?」と思われたことでしょう。
お恥ずかしい。申し訳ありませんでした。

ではでは。
また今日中に一話アップしまーす。


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  1. 2017/06/25(日) 13:20:21 |
  2. |
  3. [ edit ]
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  1. 2017/06/25(日) 08:32:34 |
  2. |
  3. [ edit ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます

  1. 2017/06/24(土) 23:49:30 |
  2. URL |
  3. まる
  4. [ edit ]
はじめまして!
結構前から、はじめから見させていただいてます!
このシリーズもおもしろそう(*^^*)たのしみにしてます!

管理人のみ閲覧できます

  1. 2017/06/24(土) 21:23:26 |
  2. |
  3. [ edit ]
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