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Happyending

Happyending

雑誌に写る道明寺はいつも無表情。
大きな仕事を成功させたとか、大学生の身分で国際会議に出席したとか、その容姿も目立つから、すでに日本にはいない人なのに、道明寺の話題は事欠かなかった。

女性をエスコートする姿も見た。
ズキッと胸が疼く。
当たり前。
だって、私はまだ道明寺のことが好きだから。

私達が別れたのは仕方のないこと。
でもあの決断があって、今の私達がいる。
こうやって大学生に通う私がいて、アメリカで芽を出した道明寺がいる。
アメリカで頑張っている道明寺の姿を雑誌や新聞で見る度に、私も頑張ろうって思える。
だから、あの時の決断は決して間違っていない。


だけど時々思うんだ。
どうして、もっとがむしゃらにならなかったんだろう。
あの時・・あの雨の日。
もし、私を連れて逃げてと言ったら、きっと道明寺は逃げてくれた。
だけど、私はそうしたくなかった。
道明寺には未来がある。
その未来を潰してしまいたくなかった。
それに、逃げたとしても、きっと逃げ切ることはできなかっただろうし、もしかしたら、もっと決定的な別れが来たかも知れない。

私はずるいな。
道明寺が私のことを好きだと言ってくれるうちに別れた。
あのまま一緒にいたら、もしかしたら道明寺から愛想をつかされてたかも知れない。
私みたいな女と一緒にいる価値が見出せないとか言われたかも知れない。
そうなるのが怖くて、憎まれても私を好きなままでいて欲しくて、道明寺のお母さんを理由にして逃げたのかも知れない。

今となってはどうしようもないことを、今でも考えてしまうなんて、私はバカだとおもう。
どんなに後悔しても、あの時は戻ってこないのに。

一層の事、私が完璧に振られたら、この想いは忘れられたのかな。

でも、やっぱり違うと思う。
振られたからって忘れられない。
私が忘れたいと思えないから。
私の心の中から道明寺がいなくなっちゃうことは、永遠にないと断言できる。



***



司がニューヨークに渡って、3年以上が経ったころ、俺は牧野に告白したことがある。
あれは、ちょうど司の婚約の記事が出た頃だった。


「まーきのっ!」
「花沢類。どうしたの?」


バイト前の牧野に会いに、牧野がいつも通っている大学の図書館に行った。
丁度出てきた牧野を捕まえて、公園のベンチに腰掛けた。
牧野はきっと記事のことを知っている。
この3年、牧野は司のことを口にしていない。
だけど、胸元にはあのネックレスが常にあった。


「珍しいね。類が、うちの大学にくるなんて。」
「なんとなく牧野に会いたくなったんだ。」

それからしばらくの沈黙。
暑い夏はとっくに過ぎて、外は少し冷たくなった。
冬の気配が急速に近づいて、モミジが色付き始めた頃だった。
そんな景色を牧野と二人で見ていられることに幸せを感じた。
だから、言ってしまったんだ。


「ねぇ、牧野。」
「ん?」
「司のこと、忘れなくてもいいんだ。」
「え?」

「けど、いつか・・」
「いつか?」
「俺を、牧野の恋人にしてくれない?」


牧野が息をのんだ。
相当びっくりしたんだろう。
そこから息をすることを忘れているみたいだ。
牧野が司のことを忘れてないことなんて、百も承知だ。
ずっと見守って来たんだから十分すぎるぐらいに分かってる。
でも、いつか、俺のことを見てくれないか?
今は、無理でも・・。


「そんなの無理だし、ダメだよ。恋人は、本当に好きな人だけだよ。」

予想通りの牧野の返事に、少しだけ笑ってしまった。

「俺、待つよ。」
「類・・。」

牧野の返事なんて分かっていた。
だけど言いたかったんだ。
言わなきゃ、前には進めないと思ったから。
この秋の雰囲気に後押しされた。

今じゃなくてもいい。
気長に待つから。
だから・・。

牧野は困った顔をしたまま、胸元のネックレスを握りしめていたっけ。





その後、俺は司に会いに行った。
正確には、父親の代わりに出席しなければならないパーティーの為に、ニューヨークに飛んだ。
俺は牧野に告白した訳で、それが司に後ろめたいということではなかったけど、でも、どうしても、あいつが今、何を考えているのか、牧野のことはもういいのか、それとも・・・牧野を諦めていないのか、知りたかった。

司の気持ちを知らずに、自分の気持ちだけを牧野に押し付けるのはフェアじゃないと思ったんだよね。

例え、牧野が司を想っていても、俺が傍にいてやることはできる。
だけど、それは司がもう牧野を想っていないならば・・という条件付き。
だから、今回司に会って、司の気持ちを聞きたかった。


今、守りたいものはあるのか?と聞いた俺に、司は、「ある」と答えた。
ポーカーフェイスがうまくなった司だけど、その瞳が真実を語ってる。
守りたいもの、それは会社のことなんかじゃない。
自分自身の人生。
それから、自分とともに歩んでくれる人の人生。
それが、誰かなんて、聞くまでもない。

なぁんだ。
やっぱり、司は牧野を忘れてないんだ。

言えない・・・か。
それ位にあやふやな未来なんだろう。
司にとって、牧野を手に入れるということがどれだけ大変なことかは分かっているつもりだ。
安易な気休めなんていうことはできなかった。


だけど、なーんだ、やっぱりそうなのか。
それなら、俺の出る幕はやっぱりないということだ。
そう思ってソファーから立ち上がると、司が声を掛けてきたんだ。

あれって、牧野のことを聞きたかったんだよな。
でも、聞けなかったんだろう。

司、牧野はずっとお前のことを想ってるよ。
そう言ってやろうかと思ったけど止めた。
今の司にその言葉は必要ないと思った。
言わなくても、信じているからこそ頑張ってるんだろ?


「司、頑張ってよ。みんな待ってる。今度は日本で飲もう。」


これを言うのが精一杯。

もし、司が戻ってこなかったら・・・
俺が本当に牧野をもらっちゃうよ。

だから、早く帰って来いよ、司。


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Comments 3

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Happyending  
こんばんは~(^^)

いつもたくさんの拍手をありがとうございます!

類君って、私の中ではこういうスッゴクいい男なんですよねぇ。涙出ちゃう・・。

さてさて、
スリ●様
そう、次は事故のお話です。その傍にいるのは類君。だけど、つくしはブレませんから・・大丈夫。次のお話は、どうしようかなぁ。Eternalの後だから、ちょっと楽しい感じにしたいなぁと思うのですが、そういうのってワンパターンになりがちで、迷います・・。

ka●様
確かに・・。これ程見守る愛が似合う人っていないかも。類君に幸せになって欲しいと思うのですが、じゃあ、つくし以外なら誰とお似合いなんだろう・・と思うと、思いつかないんですよね・・。ごめんなさい・・類君・・。


ではでは、あと3話で終わりそうです。
もうしばらく番外編にお付き合いお願いいたします!

2017/09/03 (Sun) 23:13 | EDIT | REPLY |   
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2017/09/03 (Sun) 21:36 | EDIT | REPLY |   
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2017/09/03 (Sun) 13:11 | EDIT | REPLY |   

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