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Happyending

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「お前ら、知り合いなのか?」


目の前には、相変わらずのダセェ黒スーツを着た牧野つくし。
総二郎との会話に割り込んだ俺に、相当驚いて固まっている。

そりゃそうだろう。

『あんた誰なのよ!』

あの言葉は強烈だった。
自分とこの会社の専務を知らねぇとはな。
だが、その時思った。
なんだ、こいつのことを少しばかりでも気にしてたのは俺だけだったのか・・。
そう思ったら、それ以上文句を言う気にもなれず、その場を後にしちまった。

それから1週間、俺が牧野を見かけることは無かった。




今日は総二郎が邸に来ると聞いて、1時間前に帰宅していた。
あいつがニューヨークでの茶道のデモンストレーションで、うちが所有している器を展示したいとか言い出したから、ついでに会うことになった。
総二郎に会うのは1年ぶりで、以前もあいつが仕事でドイツに来た時に会って以来だった。

小一時間程話をして、
「じゃ、俺、ホテル帰るわ。」
と総二郎が席を立った。

「泊まってくか?」
「バカ言えよ、金髪美女とのアバンチュールが待ってんだよ。」
「まだそんなことしてんのかよ。相変わらずだな。」
「お前こそ、まだ女いねぇのかよ。」
「俺はお前らとは違うんだ。」

そんな以前から変わらないやり取りをして、総二郎をうちの車で送り届けようとしたら、玄関ロビーでまたあの女、牧野に出くわした。

1週間ぶりに見かけた・・
そんなことを自分が覚えてるってことに、この時少し驚いた。
俺のことなんて知らねぇと言った女のことを、俺はまたどこかで会うことはないかと探していたことに気づいたからだ。

そして、更に驚いたことに、牧野は総二郎の知り合いらしい。





「こいつ、大学の後輩なんだよ。司も知ってんの?牧野のこと。」
「・・・・いや、知らねぇ。」

つい、嘘をついた。
知らない訳なんてなかったが、「あんた誰なのよ」と言い放たれたんだ。
俺はお前を知ってるなんて、すぐには言えなかった。

俺の言葉に牧野ははっと息を飲み、何を考えているのかよく分からない複雑な表情をしていて、一瞬だけ俺と目が合うと、ぱっと視線を逸らして俯いた。


「牧野、ちょっと付き合えよ。俺が泊まってるホテルのラウンジ行くか?」

総二郎がまだしつこく牧野を誘ってやがる。
当然、こいつのことを知らねぇと言った俺は誘われねぇ。
けど意外だった。
F4と呼ばれる俺らが、わざわざ声をかけてまで連れ歩きたい女なんていなかったはずなのに。
この女が、総二郎のタイプの女とも思えねぇし。
だいたい、今夜はアバンチュールとか言ってた総二郎が、それを止めてこいつを誘ってるってことが不思議だった。

「折角ですけど、今晩はちょっと・・・。」

しっかりと総二郎を断る牧野。
俺らの誘いを断る女も珍しいが、俺は少しほっとしていた。
それは何でだろうな・・。
そうだ、俺のことは覚えてもねぇっつーのに、総二郎にはひょいひょいついて行くとかありえねぇからだ。

「ちょっとぐらい付き合えって、帰りは送ってやるから。」

まだ誘い続けている総二郎に向かい、次にこいつが言った言葉に、俺は驚いた。

「送るって言われても、私、ここに住み込みしてるの。だから、出るのが面倒・・。」


「「はぁ~??」」

総二郎と、俺の声が被った。


この女、ここに住んでたのかよっ!?
予想もしていなかったこの展開。
ババァの秘書だからと言って、この邸に住んだ奴は未だ嘗ていなかったはずだ。
どうりで、あの日、庭なんかをうろうろしてた訳だ。


「マジ?牧野、ここに住んでんのか?」
俺の疑問そのままに、総二郎が牧野に問いかけた。

「はい。楓社長の秘書なんです。社長の送迎の都合で、こちらでお世話になってます。」
「そういや、お前、司の母ちゃんを崇拝してたんだっけか?」
「はい。」

そう言われた牧野がニコリと笑う。

ババァを崇拝?
マジかよ。
信じられねぇ。

「今年、第三秘書に抜擢されたんです。」
「すげぇじゃん。さすが、英徳創立以来の才女だな。」
「えへへ。」

才女っ?!
このボケボケ女がか?
ますます、信じがてぇ・・


「じゃあ、お前の部屋はどこにあんの?そこで飲もうぜ?」
「何言ってるんですか。私の部屋は男子禁制っ!」
「かてぇこと言うなよ。お前を襲うような真似は一切しない。」

牧野が聡二郎の誘いに易々とのる女じゃねぇっつーことは分かったが、
勝手に盛り上がっている二人を後目に、俺は完全に蚊帳の外。
なんか・・・面白くねぇ。

だから・・・

「総二郎、帰らねぇなら、俺の部屋で飲みなおすか?」


どうしてか、そう言っちまってた。
それは、もれなく、牧野も誘ったということで。
俺は今まで、女を自分の部屋に入れたことなんてねぇんだけど。

それを知っている総二郎が、目を丸くしているのをスルーして、俺は自室に向かって歩き出した。
やべ、なんか緊張する。
俺としたことが・・。

背後に、二人の会話が聞こえてくる。

「牧野、司の部屋行こうぜ?」
「え?え?司って・・専務の部屋ですか??」
「そうそう。」
「いや、ちょっと、無理です。私、まだご飯食べてないし。せっ・・専務のお部屋だなんて。西門さん、また今度・・。」

そう言って、牧野が逃げようとしているのが分かったとたん、思わず振り向いて怒鳴っちまった。

「グズグズすんな。メシも用意させるから、早く付いて来い!」

俺の顔が相当恐かったのか、牧野が飛び上がった。

「はっ、はいっ!」

こうして、俺は、生まれて初めて女を部屋に入れることになった。



***



東の角部屋。
そこのソファーに座った俺ら三人。
総二郎の隣に促され、カチコチに固まった牧野。
今までに一度も経験したことがねぇシチュエーションだ。


「初めまして、楓社長の第三秘書をしております、牧野つくしと申します。」
「あぁ。」

けっ。何が初めましてだよ。
2度も助けてやっただろうが。

俺が知らねぇって言ったからって、
完全に知らんぷりをするつもりかよ。

つーか、マジで俺のこと分からねぇの?

やっぱ、軽い・・いや結構なショックを受ける俺。


「あの、私、このお邸でお世話になっておりまして・・・」
「そうらしいな。さっき、聞いた。」

牧野にとっては、全く初対面の設定らしい。

俺が命の恩人だってこと、スルーするつもりかよ。
そう思ったら、急にイラついてきた。

そうはさせねぇぞ。
思い出させてやる!

俺がじっと牧野に視線を合わせると、こいつはビクッとして姿勢を正した。

「お前、俺が誰か分かってるよな。」
「とっ・・当然です。当社の道明寺司専務です。」
「そうじゃねぇよ。俺は、お前の命の恩人だよな。」
「うっ・・。」
「忘れたとは言わせねぇぞ。」

牧野が急に真っ赤になった。
何度も瞬きをして、少し上目遣いで俺を見た。

やっぱ、分かってんじゃねーか。
バカめ。

って・・・・・少し、ほっとしている俺。
本当に俺のことを知らなかったんなら、それはそれでやっぱ腹立つだろ?


「せっ・・専務が、私のことを覚えていらっしゃったとは・・その、その節はありがとうございました!それに、失礼なことを申し上げてしまって・・。ずっと、謝罪をしようと考えておりました!」

牧野がガバッと立ち上がり頭を下げた。


そんな俺らの様子をみて、総二郎もちょっと驚いたみたいだ。

「なんだよ、司。お前、やっぱ牧野の事知ってんの?」
「まぁ、ちょっとな。」
「へぇ。」

奴が意外そうな顔をした。



そこへタイミングよく、食事が運ばれてきた。
湯気がたったスープに、前菜のオードブル。
それらを横目で見た牧野は、立ったまま目を輝かせている。

・・・なんて、ゲンキンな女なんだ。

まぁ、いつまでも、“ネチネチ”してても仕方ねぇか。
こいつをここへ誘ったのは俺なんだからよ。


「総二郎のダチなら許してやる。」
「あっ・・ありがとうございます!!専務!!」
「一回だけだぞ。いいから、座れ。」
「はい。」

牧野がほっとしたように腰を下ろした。
そして俺に向かって、初めてニッコリと笑った。
無意識だろうが、少し首を左に傾けた姿。

・・・・ちょっと可愛い。
いや、全然美人じゃねーんだけど・・・。


「何があったか知らねぇけど、司、優しいじゃん?」

総二郎がニヤリと笑う。

だよな。
女を私室に入れる時点でありえねぇし。
失礼な女を許してやるってのも俺の主義に反する。
なんでこんなことをしてるのか。
社長秘書とはいえ、女嫌いの俺が、大して知らない女をどうして自室に招いているのか。

それが何故か・・・はよく分からねぇ。



「実は、専務に2回も助けてもらっちゃったの。ちょっと怖いけど、優しいです、専務は。」


____ドキッ。

総二郎を見上げながら俺のことを説明する牧野が、すっげぇ可愛く見えた。


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Comments 5

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Happyending  
こんばんは♪

いつもたくさんの拍手をありがとうございます。
司、落ちるの早すぎたかな(笑)。でも、まだ自覚は薄い・・と思う。いつも通り、恋愛初心者同士だから(笑)。

さてさて、
ka●様
楓さんお気に入りのつくしちゃん。これからどうなるかな?
司は、自然に笑える女の子が好きなんじゃないあなぁと思うんですよね。だから、つくしみたいな無自覚オンナにイチコロ(笑)。それから、すごい量の間違いでした・・。何故・・。総ちゃんに怒られちゃう・・。ご指摘の助かりました!

スリ●様
そうそう。つくしは無自覚です。そこがつくしの凄いところ。多分意図的に何かをしようとしても、すぐにばれそう・・(笑)。これ、私の考えていた展開から若干ずれて来ている気もするのですが、なんとか当初の設定まで持ち込みたい!
台風、こちらは日曜日のようです。大きな被害がないといいのですが・・・。文化祭、明日、明後日なら、関東はギリギリ大丈夫かな?いいタイミングで通過してくれるといいですね。

の●様
そうなんですよ。せっかくの連休。うちは日曜日に台風が来そうです。どうなるか心配・・。
そう言えば、初めから秘書設定のお話は私の中では初めてです。原作の続きで、つくしが司の秘書とか、道明寺HDに勤めてるのに隠れて付き合ってる設定が好きなんですよね〜。これぞ、王道!いつか書いてみたいですが、すでに素敵なお話いっぱい読んでいるので、なかなか手を出せないですね〜(笑)。

あ●様
顔面認識力が低い!!(笑)。ですね。
実を言うと私もそうなんですよ。コンタクトの矯正が弱いってこともありますが、はっきり言って仕事を以外では、全く人を覚えてない。いや、覚えようとしていないのか・・。子供のお友達のお母さんとか、向こうは覚えてくださっていても、私は全く・・と言うことが多くて。見たことあるな〜、ぐらいで。よほど親しくならないと覚えない人(笑)。ま、つくしの場合は覚えているけど別人だと思ってたからちょっと違うか・・。
私も原作のコメディ司が懐かしくて、書きたくなっています(笑)。単純、強引な司の、イイなぁ。

名無し様
拍手コメありがとうございます。
他のお話も読んでくださっているとは・・ちょっと恥ずかしいですが、ありがとうございます。書き直したい点がたくさんあるんですよね。でも時間がなくて放置。いつかやらねばと思うのですが・・・(汗)。

H●様
おお!再読・・。恥ずかしいんですよ!本当に。この二人、おバカさんですよね。つくし、とても才女とは思えません。でも、ちょっとボケたつくしちゃんを書きたいなと思っています。


ではでは。
明日は明後日5時の予定。
その後は定時は難しいかも知れません。
また時々覗いてくださいね〜。

2017/09/15 (Fri) 22:58 | EDIT | REPLY |   
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2017/09/15 (Fri) 20:48 | EDIT | REPLY |   
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2017/09/15 (Fri) 09:32 | EDIT | REPLY |   
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2017/09/15 (Fri) 07:45 | EDIT | REPLY |   
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2017/09/15 (Fri) 05:18 | EDIT | REPLY |   

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