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Happyending

Happyending

牧野が秘書兼パートナーになって、1週間。
俺は今日、ロスへの日帰り出張だ。
今回は工場の視察だったから、西田が俺に同行する。

当然のことながら、今朝、俺を迎えに来たのは予定通り西田で、
無茶苦茶テンションが下がった。
ここ最近の自分がどれほど浮かれていたのか自覚する。
あいつのパワーは本当にすげぇ。
あいつがいれば、どんなに仕事を振られたとしても全く疲れねぇ。
それを見越してガバガバ書類を持って来る西田はムカつくが。
何だかんだ言って、牧野との時間を作ってくれているのはヒシヒシと感じているから文句は言えねぇ。
それに、俺はあいつと夕食をとるためなら何だって出来た。
朝晩30分のリムジンの中と、彼女との夕食の時間は俺の癒しだから。

なのにあいつ、二言目には「ゆっくり休んで」とか言いやがって。
俺はジジィかっつーの。
俺と一緒に行動しているあいつだって疲れてるってのは承知しているが、どうしても離せねぇ。
このオフだって、あいつはゆっくりしてぇのかも知れないが、やっぱり誘わずにはいられなかった。
1日でも会えなければ落ち着かない。
3週間が過ぎれば、あいつはババァの秘書に戻っちまう。

あいつは食い物に釣られやすい女だってことは分かった。
なら、日曜日はうまいもんでも食いに行くか?
思い切ってマグロでも釣りに行くか・・・


そんなことを考えていたら、

「今日は牧野さんが同行されず、残念でしたね。」

なんて、いけしゃあしゃあと言う西田。
ちっ、分かってんなら牧野も連れて来いっつーの。

「あぁ、さっさと終わらせて早く帰るぞ。あいつ、今日も会社に出るっつってたから、迎えに行ってやる。」
「それは、専務の頑張り次第かと。」


今朝、あいつはバスで会社に行ったはずだ。
車で行けっつってんのに、俺と一緒じゃない日はバスに乗るとか言って、聞かねぇし。
これまで社長秘書をしていた時もそうだったとか。
俺とババァは違うんだっつーの。
お前は俺のパートナーなんだから。
ちょっとは自覚しろ。
また広く周知されているわけではないが、ビジネス上でのパートナーだったとしても、あいつに付け込んでくるバカがいてもおかしくねぇ。
ってことで、心配だった俺は、実はこっそり牧野にSPを付けた。
あいつに何かあってからじゃ遅ぇからな。





視察を終えて、17時に会社に戻った。
驚異的なその速さに、西田すらも驚いていた。
ふんっ、俺の本気を舐めんなよ。
SPからの報告では、あいつはまだ会社にいるらしい。
それなら、一緒に帰るのには丁度いい。
明日のデートも考えなきゃいけねぇし。
けど、50階のフロアに牧野の姿は見当たらなかった。

どこをほっつき歩いてんだ!

いてもたってもいられねぇ俺は、執務室を出て行った。

50階にはいない。
ってことは、49階か・・・。

エレベーターを待つことももどかしく、俺は階段に向かった。
すると、階下から話声が聞こえてくる。

その声が気になって、足音をひそめて階段を下りて行った。



「牧野さんは専務のパートナーとして、ワインパーティーに行くんだって?」
「あ、はい。すみません、初めは鈴木さんにお願いしていたのに。」

ちらっと覗けば、そこには牧野と鈴木。
牧野の様子は、鈴木の背中に隠れて見えない。

「凄く残念だったな。まぁ、専務のパートナーじゃ仕方ないけどね。」
「本当にすみません。」
「そんなに謝らないでよ。でも、こうやって牧野さんと話せるようになって嬉しいんだよね。」
「え?」
「ほら、牧野さんって、社長秘書だったから、話しかけにくかったし。」
「そうですか?」
「今度は専務のパートナーになってしまったから、ますます遠い人だなぁ。」

踊り場で話をしているその会話はまるっきり筒抜けだ。

「牧野さんのことを気に入ってる男って多いよ、知ってた?」
「へ?」

探るような鈴木の言葉に、相変わらずボケた牧野の返事。
なに、すっとぼけてんだっ。
この男はお前に気があるってことだろーがっ。
こんなところに二人きりで呼び出されてる時点で警戒しろよっ。
ったく、だからこいつは放っておけねぇんだよっ。

「俺も・・なんだけど。」
「ええっ!ちょっと、待って下さい。」

ほらな・・・くっそぉ。
部下に先を越された苦々しい思いが広がる。
そして、そこまで言われなきゃ分からねぇ、お前もバカかっ!
いや、こいつの鈍感は半端ねぇから、これがデフォルトなんだろう。
この分じゃ、俺の気持ちだって分かってる訳ねぇ。

鈴木と牧野の距離が近づいた。
って、壁ドンって奴じゃねーのか・・これ。

「あのさ、パートナーはダメになったけど、一度ぐらい食事はどう?」
「食事・・?」
「今日は、専務は出張だよね。時間はない?無理かな。」
「えっと・・・」

あー、ホントバカだっ。
何やってんだよっ。
牧野の態度を見ていれば、鈴木に気があるって訳じゃねぇ。
だが、こいつは、人の頼みを断り切れない。
お人好しっつーか、なんつーか。
俺との食事にしてもデートにしても、俺が強引に推し進めてるところがあるからな。
こいつの食いしん坊っぷりにかこつけている俺も情けねぇけど。
それは、俺だから許されるんだ。
だから、こんな話には黙ってられねぇ。
この女は頼まれたら迷った末にYESと答えちまう女だ。

そうはさせるかっ!
と、俺が走り出そうとした瞬間に、


ドンッ!!

「痛ってぇ。」

俺は目を丸くした。
痛ぇのは、俺じゃない。

ぷっ・・久しぶりに面白いもん見た。

階下では、鈴木が尻もちをついている。
どうやら、牧野が突き飛ばしたらしい。
牧野は無意識だったんだろう。
自分がしでかしたことに唖然としている。
それを見た瞬間に、にやける俺。
ま、俺も張り倒されて、コーヒーぶちまけたことがあるけどな。
残念だったな、鈴木よ。


無様な鈴木に冷静さを取り戻し、
カンカンカン・・・・
俺はわざと靴音をたてて階段を下りた。

その音に驚いた二人が俺を見上げる。

「あっ・・専務っ!」
牧野は俺を見て、ほっとした後に嬉しそうな顔をした。
そんな表情を見ただけで、こいつの全てを許せるんだから、俺も相当甘い。


「何してんだ?」

その俺の声に、鈴木がさっと立ち上がった。
牧野はぐっと表情を引き締める。

「まさか、俺のパートナーに手を出そうってんじゃねーよな。」

俺のパートナーだと分かっていながら牧野に迫るとは、鈴木の奴も案外度胸がある。
それだけ本気だって事かも知れねぇな。
ただし俺がいない日を狙うってところが汚ねぇんだよっ。

「いえ・・。」
鈴木は顔面蒼白。

「専務、違います。」
「お前は黙っとけ、牧野。」

俺はゆっくりと、牧野を背中に庇った。

「他の奴らにも言っとけよ。牧野つくしに手を出したやつは、アラスカ行きだ。」

こんな雑魚に本気なんて出さねぇけど、一応指をポキポキと鳴らして見せた。

「ひぃっ!!」
「せっ・・専務っ!」

「一回忠告してやっただけでも、ありがたいと思え。」

情けねぇ声を上げた鈴木が、一礼して、49階のドアへ走っていく。



そこに残った俺と牧野。
こんなこと、つい先日もあったっけな。
あの時は、俺が牧野の肩を抱き寄せた。

そして今日は・・・

「専務、ありがとう。でも、アラスカ行きはやり過ぎだよ。」

牧野は笑いながら、俺の腕に手を添えた。


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2017/10/07 (Sat) 22:35 | EDIT | REPLY |   
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2017/10/06 (Fri) 07:46 | EDIT | REPLY |   

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