花より男子の二次小説。CPはつかつくonlyです。

With a Happy Ending

引き継ぎ業務の最中、牧野は俺の執務室のソファーで資料の整理をしていた。
秘書室にはこいつのデスクも用意させていたが、1か月ばかりの事だったし、実際仕事が多すぎて、指示を出すにも近くにいた方が便利だったから。

大手の取引先への挨拶を済ませれば、残りの関連企業への挨拶周りは基本的に西田の役目となったから、俺はここで牧野と二人きりの時間が増えた。

「牧野、この資料は・・・」
「企画のマイヤーさんですね。」
「おっ・・おう。」

一つ教えれば、10を覚えるほどの吸収力。
1週間もすれば、俺の癖も見抜き、阿吽の呼吸で対応してくれる。
西田ほどではないにしても、かなりやりやすい秘書だ。
女秘書に期待などしていなかったが、すでにかなりな戦力となり、いなくてはならない存在になっている。

そして、何より俺の癒し・・・。
部屋の隅でPCを打っている姿を見るだけで、俺の能率も上がる。
今では、食事の時間が待ち遠しい位だ。

「司様、そろそろ・・・」
「飯か?」
「はいっ。」

正直、俺は一食や二食抜いても問題ねぇんだが、この女はダメらしい。
腹が減ると能率が落ちるらしく、外勤でなければ12時には昼食をとりたがる。
だから、今では毎日昼には弁当が届けられるようになった。
それを俺も一緒に食う。

「じゃあ、コーヒー淹れてきますね。」
今日も、いそいそと昼休憩に入る準備をするこの女。
その姿を見て、思わず笑う。

一体、ババァは何のためにこいつを俺に付けたんだ?
今や俺の癒しになりつつあるこの女だが、ババァがそんなつもりで俺に秘書を送り込んでくるとは思えねぇ。
純粋に仕事の為・・・か?
確かに、こいつが秘書として加わることで、西田も楽になっただろうし、俺も助かっている。

「今日は、ベーグルサンドですよっ。うわぁ、クリームチーズだぁ。さっ、さっ、司様もどうぞ。」

って、お前が食いてぇんじゃねーの?
目をキラキラ輝かせて俺を見つめているのは、決して俺に惚れてるからって訳じゃなく、早く食事の席に着けということだということは分かっている。

「お前、そんなに食って、太らねぇの?」
「そうですねぇ。もぐもぐ。あんまり、太らないです。」
「ババァの秘書してた時も、こうやってババァと飯食ってたのか?」
「へ?」
「俺は初めてだ。秘書と飯食うとか。」
「あ・・・すみません・・。こちらに知り合いもいませんし・・つい。あ、私、外のデスクで食べますね。」

そう言って、広げたサンドを片づけようとする牧野。
おっ・・おい。
お前は今や俺の癒しだ。
出て行くことねぇし。
つーか、ババァもこいつと飯とか食ってるのか不思議に思っただけだ。

「おい、いーんだよ。ここで。行くなよ。」
「でも・・・。アメリカでは、社員食堂もありましたし、もちろん、社長とお昼を食べるなんて、外勤の時にお弁当を食べる時ぐらいでした。すみません・・・。」

馴れ馴れしくてすみませんと謝っているが、確かにこいつの言う通り、こいつはこっちに知り合いなんていねぇし。あと1か月もすれば日本だし。こいつと飯を食ってやれるのは、俺か西田しかいない訳で。
まぁ、それなら別に付き合ってやってもいい。てか、俺の楽しみになってる。
つーか、こいつがいるから昼飯なんか食ってるんだよな・・俺。

思わず、プッと笑っちまったら、
「あ・・・・なんだか、意外です。」
「は?」
「司様が笑うの。」

牧野もそう言って笑ったが、俺が笑うこともレアだろうが、こうして女と食事していることも、同じ部屋で空気を吸っていることも、女に癒しを感じていることも、全てがレアなんだけどよ。

しかし、何でこいつなんだ。
今まで女に興味何て湧いたことがなかったのに。
どうして俺が興味を持ったのはこの女なんだ?

俺はその後、この答えを知ることになる。






12月24日。
クリスマスイブ。

この日も遅くまで仕事をしていた俺たちだったが、窓の外を覗いた牧野が、
「ドイツのクリスマスを見られるなんて、感激です。」
と呟くのを聞いて、

「ちょっと、外出てみるか?」
そう誘っている俺がいた。

その日は丁度西田は他の用事で外していて、俺たちは二人きりだったから。

「えっ!・・あぁ・・・でも・・・。」
「どうせ今夜もここに缶詰だろ?少しぐらい外に出ても大丈夫だ。」

俺は立ち上がってコートを着た。
牧野も慌てて秘書室へ戻り、コートやマフラーを着込んで出てきた。
そして俺たちは、ベルリンのクリスマスマーケットに出かけたんだ。


俺の後ろを付いてくる牧野。
この人混みの中、そんなんじゃはぐれちまう。
だから、俺は牧野と手を繋いだ。
嫌悪感は全くない。
むしろ、ぱっと離されそうになったが、「はぐれるだろ」とひとこと言ってやれば牧野も黙った。
それから、手を繋いだまま、大きなもみの木に青白い電飾が灯るクリスマスツリーを見た。

「凄い・・・綺麗だぁ。」

隣で目を輝かせる野。
お前の方が、綺麗だけど・・・って、何考えてんだ、俺。
チクショー、なんでこんなにドキドキすんだよっ。
俺はなんだかすげぇ病気になったのか!?


しばらくツリーを堪能して、クリスマスマーケットの屋台を歩いた。
途中ポテトやケバブや、ウインナーなんかを牧野が物欲しげに見つめていた。

「食いてぇの?」
と聞いてやれば、真っ赤な顔をして俺を見上げる。
俺は女とデートもしたことねぇから分からねぇけど、これって買ってやるべきだよな。
しかしこんな食い物がそんなに欲しいのか?
何が入ってるか分かんねぇだろ?

ウインナーを買い、牧野に渡してやると、
「ありがとうございます。」
と言って嬉しそうにかぶりつく。
何か・・エロいんだが・・・
しかし、当の牧野はそんなことはお構いなしだ。
「おいしっ。」と目を丸くして、俺にも少し食うように促すから、俺は初めて、他人の食いかけに口を付けちまった。

「うめ。」
「でしょ。」
いつの間にかタメ口になっているこいつにも、怒りなんて湧いて来ねぇ。
むしろ、居心地がいい。

それから調子にのって、サンドやポテトも二人で食った。
こんなに楽しい気持ちになったのは、いつ以来だろう。
ビジネスが成功した時の高揚感とは全く違う。
もっと温かい何か・・・。


食い終わればまた牧野の手を引いて歩く。
牧野はキョロキョロと辺りを見回してばかりいるから、手を繋いでねぇと絶対に迷子になるな。
しばらく無言でマーケットの中を歩いていたが、途中で牧野が足を止めた。
その先には、クリスマスオーナメントを売る店があった。

「それ、欲しいのか?」
「うーん。どうしよ。本当は、ローテンブルクのクリスマス村で買いたかったなぁ。せっかくドイツに来たのに、残念。」
「・・・。」
「あ、いや、ごっ・・ごめんなさい。遊びに来たんじゃないのに。このマーケットを歩けるだけで幸せです。さっ、もう帰りましょう。」

そんな風に勝手に一人で納得して歩き出そうとする牧野を引き戻した。

「どれがいい?」
「え?」
「またいつか、クリスマス村は連れて行ってやるから、今日はこれで我慢しろ。」

俺は、何でこんなことを言ってんだ?
わかんねぇ。

「いえ・・本当にそんなつもりじゃ・・・」
「いいだろ?お前がドイツに来た記念だ。食い物ばっかじゃ、何も残らねぇだろ?」
「じゃあ、自分で買います。」
「おいっ、俺に恥かかす気か、さっさと選べ。」
「ええっ!じゃっ・・じゃあ、これ・・・かな?」

牧野が上目遣いで俺を見上げた。

この視線・・・わざとか?
あー、今すぐローテンブルクに連れて行ってやりてぇ。
サンタだかなんだか知らねぇけど、こいつが見て笑ってるところを見てぇ。

牧野が選んだのは、木彫りのサンタクロースのオーナメントだった。
今からローテンブルクに向かえるはずもなくて、仕方なく俺はそれを買って牧野に渡してやった。

「ありがとうございます・・司様。すごく嬉しいです。」

牧野がふわりと微笑んだ。

___ドキッ。
俺の心臓が大きく鳴る。

牧野は手渡されたサンタクロースを嬉しそうに、本当に嬉しそうに見つめている。

マジかよ。
これって1000円もしねぇよ。
今日食ったもんだって、5000円もかかってねぇ。

安上がりな女。

だけど、その笑顔は間違いなくホンモノで。
俺に取り入ろうとする、作りモノの笑顔を取り付けた女じゃねぇ。
自然に微笑んでいる。
それは柔らかくて、優しくて、温かくて。
こんな女・・・・今までいたか?

きっとこいつは、俺を意識してねぇ。
今の姿はこいつのデフォルトなんだろう。
恐らくは、このプレゼントを他の男がしたとしても同じように喜ぶ筈だ。
それはすげぇ悔しいが・・・

俺を特別視していない。
ごく普通の男として見ている。
そうじゃなきゃ、俺の前でこんな小さなプレゼントで喜んだりはしねぇだろ。
俺は、もっと高価なものをいくらだって買える男だ。
そんな男に、こんな小さなプレゼントをもらって喜べる女がいるんだな。

あぁ、だから、俺はこいつに惹かれるのか。
こいつが、俺を一人のただの男にしてくれるから。
こんな小さなプレゼントで、買った俺までも嬉しくなれるから。
だから、こいつの目に留まりたくて、こいつに振り向いて欲しくなる。


高価なものなんて必要ない。
金が無くても、幸せになれる、幸せにしてやれるんだと知った。


なんだよ、世の中の男ってのは、案外幸せなんだな。
好きな女にこんな顔をしてもらえたら、それだけで幸せだろ?


___好きな女・・・

あぁ、なるほどな。
俺はこいつが好きなんだ。


女なんて一生好きになることはないと思っていた。
その俺が、一発で恋に落ちた瞬間・・
俺はその事実を、極自然に受け入れていた。


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完全に落ちました・・
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  1. / comment:5
  2. [ edit ]

こんばんは〜。

  1. 2017/11/14(火) 21:57:07 |
  2. URL |
  3. Happyending
  4. [ edit ]
いつもたくさんの拍手をありがとうございます。
完全に落ちてる坊ちゃん・・
つくしちゃんは・・・どうしましょうねぇ。
今、続きを考え中ですが、やっぱりコンスタントに書いていないとお話や登場人物の設定を忘れたりして書きにくい・・(^_^;)
かと言って時間もないしなぁ・・うーんです。

そんなバタバタなため、今回もまとめてのお返事で失礼いたします。

ドイツのクリスマス!いいですよね〜。司は現金持ってたのかとか、いろいろ書きながら突っ込んでましたけど・・(笑)。
ウインナーにするか、フランクフルトにするかも迷いましたけど、ドイツののウインナーっていろんな形や色のがあるんですよね〜。だから、大きめのウインナーを二人でかぶりついていたってことで(笑)。

しかしつくしの立ち位置をどうするか・・いまいちまとまらず・・。明日の朝に間に合うかどうか・・・。

そんなこんなで、目標、明日には1話更新!!と思っています。
では、妄想に入りまーす。

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  1. 2017/11/13(月) 21:42:32 |
  2. |
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  1. 2017/11/13(月) 17:09:35 |
  2. |
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  1. 2017/11/13(月) 09:59:15 |
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  1. 2017/11/13(月) 07:17:10 |
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