Happyending

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牧野を送った運転手から、道明寺HD日本支社の近くまで無事に送り届けたと連絡はもらっていた。
だから、そろそろ来るだろうとは思ってロビーを見渡す。

____いたっ!


ギリギリセーフといった感じでロビーに入って来た牧野。
俺が選んだグレーのスーツ。今日は俺もグレーでお揃いなんだなんて、あいつは知るはずもない。インナーの白のタートルネックは俺が好んでるブランドのレディースで、着心地は最高なはず。トレンチコートは牧野の背丈に合わせて昨晩急遽丈詰めさせたから、ひざ丈ぴったりの長さ。俺が用意した黒の鞄。昨日はポシェット一つだったから、あの中身は何も入ってねぇんだろうな。そんな、全身、俺がコーディネートした彼女。いいな、これ、癖になりそうだ。

おっ!?

俺が牧野を確認した途端、牧野はさっと太い円柱の柱の陰に入った。
もしかしなくても、隠れてるんだろうな。
くくっ。面白れぇ。

あいつは大河原の経理課にいるはずだったよな。
ったく、ややこしいこと言いやがって。
だいたい昨日の発言でバレてるとは思わねぇのか?

俺と顔見知りになりたくて、ベタベタくっついてくる女は多い。
なのに、俺が約束までして誘いに行ったお前が俺の視界から消えてどうすんだよ。
お前にとって俺ってやっぱその程度か?
できれば、関わり合いになりたくないとか、思ってんのか?

けど、悪りぃな。
俺はもう、決めたぜ。




___昨晩
こっそり牧野の頬にキスをして、隣のリビングのソファーに寝そべった。
さすがに同じ部屋っていうのは、やりすぎかと思ったし。
けどよ。
惚れた女が同じ屋根の下で無防備に寝てるって、
そう考えただけで眠れずに、何度も様子を見に行っちまった。
見に行く度に、起きねぇかな・・とか期待して。

やべぇな、オレ。
これって、完全なストーカーだろ。

ホンモノになる前に、この状況を変えなきゃなんねぇ。
つまり、俺があいつの恋人になるってこと。


それに、こいつは無防備すぎる。
前にラウンジで聞いた話によれば、牧野は彼氏いない歴24年のはずだ。
けどこんなんじゃ、いつ誰に持ち帰られても文句は言えねぇし、その俺と出会うために守ってたとしか思えねぇ輝かしい経歴に終止符を打つのは、やっぱ俺しかあり得ねぇし。


だから、ここは告白しかない。
それ以外の方法なんて、考え付かなかった。



***



うっ・・・生まれて初めて告白されたっ!!
しかも、会社の上司からっ。

こっ・・こんなにドキドキするものなの?
しかも電話って・・・
でも、でも、電話で良かったぁ。
これが面と向かってだったら、その場から逃げ出してたかも知れない。
だって、恥ずかしいし、何て言っていいか分からないし。
そもそも、あたしたち、この間会ったばっかりだし。
それに何より、会社の専務だもんっ。


付き合おうって、恋人にって・・・・
そこまではっきり言われたら、勘違いなんかじゃない。
あたしと専務が・・・・恋人っ!?


びっくりしすぎたあたしはとっさに、

「いっ、今から仕事なんでっ。じゃあ!」

ピッと携帯を切ってしまった。


一昨日会ったばっかりだよ。
昨日食事して、今日は告白・・・これって普通?
信じられないよ。
だけど、専務があたしを揶揄っているしたって、そんなことをする理由も見当たらない。


どうしよう・・・
どうしよう・・・
そもそも、あたしは専務の事、まだあんまり知らないし。
いや、ちがうっ。そもそもそういう対象じゃないし。
あたしと専務なんて、住む世界が全く違うじゃないの!


朝から仕事も手に付かないぐらいに動揺して、やっとのことでお昼休憩。
今日はお弁当を持って来ていなかったから、社食で軽めのお蕎麦を啜りながらも、あたしは専務の事ばっかり考えてた。頭の中は、昨日の優しかった専務の笑顔でいっぱいで、自分の向かい側に宮川さんが座ったことにも気づかなかった。


「牧野さん。」
「へ・・あっ、宮川さん。」
「どうしたの?珍しくぼーっとしてる。」
「え?いや、そんなことは・・・。」

あった・・かも。

「そうそう、ケーキの件なんだけど。」
「あ、その件なんですけど、やっぱりお断りさせてください。」
「どうしても?」
「はい。」
「そうか、残念だなぁ。それなら、代わりに、二次会は行かずに二人だけでお祝いさせてくれない?」
「え・・・?」

宮川さんが、あたしのお祝い?
二次会には行かずに二人だけで?
そんなことまでしてもらわなくたっていいのに・・と思っていたら、ブーブーブーと携帯のバイブ音が鳴った。

「すみません・・」

ちょっとだけ助かったと思いつつ、携帯を見ると、

うわっ!
専務だっ。
どうしよう・・。

「・・・どうぞ?」
なんて宮川さんに言われたけど、この場で専務からの電話に出るなんて。
今はお昼休憩中だけど、会社だし。
だけど、携帯が全く鳴りやまない。
あたしに気を使ったのか、宮川さんが、少し横を向いてペットボトルのふたを開けた。
聞いてませんよって感じに。
だからあたしは覚悟を決めて通話ボタンを押した。


「あの・・もしもし・・・」
『俺だ。』
「うっ・・うん。分かる。どうしたの?」
『いや、どうもねぇけど、今昼休憩か?』
「うん。」
『返事・・・・』

返事!?今!?社食で!?
むっ・・無理だし。
考えてないし。
目の前に宮川さんいるしっ。

『・・いや、まぁ、それは焦ってねぇけど。俺、これからアメリカなんだ。』
「えっ、アメリカっ!?・・・そうなんだ。」

アメリカだなんて、軽ーく言っちゃうんだね。
専務は世界中を飛び回ってるって聞くけど本当なんだ。
昨日は、荷造りなんてする暇なかったと思うんだけどなぁ。
ああ、でも専務には荷造りなんて関係ないのか・・・何て思ってみたり。

でも・・ちょっと残念。
また会えると思ってた。
___って、やだやだあたしったら、なに期待してんのよっ!


『28日に帰国するから。お前の誕生日は一緒に祝いたい、いいだろ?』
「あ・・・でも、その日は忘年会があって。」

そう、あたし幹事だから抜けられないし。

『終わってからでいい、っていうか、迎えに行く。場所・・・』
「いいっ、だめっ。来ちゃだめっ!」
『何で?』

なんでって。
だって、道明寺HDの忘年会だもん。
専務が来たら大変なことになる。

「だめなの!だめっ。あたしが、行くから。ね?どこに行ったらいい?時間と場所、教えて。必ず行くから。」
『なんでだよ。店に入らねぇから、いいだろ?』

そんなこと言ったって・・・。
だめだよ。
そもそも、あたし、何を迷ってるのよ。
あたしと専務なんて釣り合わないのは明らかなんだから、お付き合いなんてあり得ないのに。
だけど、もう一度、きちんと話を聞きたい・・なんて思ってる。


『なあ、いいだろ?好きな女の誕生日、一緒に祝いたいって思うのって普通じゃねーの?』

好きな女・・・

専務が・・・あたしを・・・・本当に・・・?


『28日、迎えに行くから。もう、フライトだ。じゃ。』
「あ、待って、だめなの、その日はっ・・・」

呼び止めようとしたけれど、もう電話は切られてた。

どっ・・どうしよう・・・。


しばらくじーっと切られた携帯電話を見つめて、ようやく、はぁーっと顔を上げたら、ばっちり宮川さんと目が合ってしまった。

そうだった・・宮川さんがいたんだった。


「今の電話って、もしかして、彼氏?」

いつも柔らかい雰囲気なのに、一瞬怖い感じになった宮川さん。

「いえ、そう言う訳じゃ・・・。」
「もしかして、オレのライバルかな?」

「え・・・?」
「誕生日の夜に会いたいって言ったら、普通分かるでしょ?」

宮川さんが、急に照れたように目を伏せた。


え・・・え・・・・ええっ!?


____好きな女の誕生日、祝いたいって思うのって普通じゃねーの?

そう言った専務の言葉が頭の中をぐるぐる回る。
それって、宮川さんが、あたしをってこと!?


「じゃあ、そういうことで。」
「ちょっ・・ちょっと待って下さい。」

宮川さんを追って、ガタッと席を立つ。
社食なんだから、大きな音なんか立てたら目立つって言うのに、あたしの気持ちは決まっていた。


「忘年会の後は予定があるんです。ごめんなさいっ!」






あたしは、何でこんなにはっきりと宮川さんを断ったんだろう。
じゃあ、何で、専務の誘いは断らなかったんだろう。
専務なんて、あたしには不釣り合いな人なのに。


だけど、本当は、何となく気付いてる。

あたしは、もう一度専務に会いたい。
あたしの話を面白そうに聞いてくれるあの笑顔をもう一度見たい。

役職なんて関係ない。
また会えたら、凄く嬉しい。

これって、どういう気持ち?
急に心臓がドキドキする。


もしかして、あたし・・・
____専務のことが好きになっちゃったの?


ぼぉっと頬が熱くなる。
もう一度会ったら、それが確かめられるかな。


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年内にキリがいいところまで進めたいのですが・・・
日にちが足りないかも?(;^_^A
コメントへの返信、後程しますね。
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Comments 5

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Re: タイトルなし

さと●様
あれ、お返事と入れ違いだったかな?いつもゆっくり書いてるから・・(笑)。
もうね~、司に「いいだろ?」とか電話口で耳元で言われたら、OK出すしかないっしょ!!ですよね。
そして、宮川・・・どうやらまだ諦めていないようですよ。ちょっと虐めすぎて可哀想だったら、脇役キャラの篠ちゃんとでもくっつけてあげようかな・・。って、余計なお世話ですね・・(笑)。
わたし、ストーカー司好きなんですよ・・。もう、コソコソしてる司とか凄く好き!それだけを集めた作品集を作りたいぐらいです!ではでは、また~。

2017/12/29 (Fri) 23:29 | EDIT | REPLY |   
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こんばんは~(*^^*)

いつもたくさんの応援をありがとうございます。
本当に年末ですねぇ。スーパーに買い物に行ったら、お野菜がすっからかんで、しかもかなり高騰してました。え~っていう位に。びっくりです。

さて、
花●様
見つけていただきありがとうございます。お仕事お疲れさまでした。宮川はですねぇ。まだねばってそうですよ(笑)。まだ最後のところを決めかねていますが・・あはは。どうしようかな~。

スリ●様
宮川、コテンパですね。リクエストお受けいたしました(笑)。もろもろ、ありがとうございます!余談ですが、私はコテンパンって言うんですよ。でもコテンパっていういい方もあるんですね。まぁ、わたくし、田舎者なので・・(あは笑)。今年は31日まで更新して、一旦終了して、しばらく休憩しようと思っています。年始に来客が立て続けにあったり、檄込みの遊園地に行こうかという話になったりしていて、この冬休みは休みであって休みでないかも・・。なので、明日はちょっとリラックスしに髪を切りに行こうかな・・何て思ってます。

い●様
拍手コメントありがとうございます!朝のお弁当、大変ですよねぇ。私は休み期間のみ、子供たちの分を作りますが、毎日となったらどうしよう・・と今から脅えています・・。いえいえ、コメントはなかなかできないですよね。私も、かなり勇気出さないと無理です(笑)。でも、拍手とかポチとかをみて、ああ、読んでもらっているんだなって実感できます。なので、応援して下さるとやる気になるんですよ(笑)。単純ですね・・(^^;) また是非、覗いてくださいね~。

ま●様
あはは。必死!一途!(笑)。そうですよ、こちらの司君、頑張ってます。無事につくしちゃんをゲットできるように応援よろしくお願いします。


一応、明日、明後日で、一旦区切ろうと画策しています。
年末まで、是非、チラッとお立ち寄りください。

2017/12/29 (Fri) 22:58 | EDIT | REPLY |   
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2017/12/29 (Fri) 22:48 | EDIT | REPLY |   
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2017/12/29 (Fri) 15:22 | EDIT | REPLY |   
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2017/12/29 (Fri) 14:57 | EDIT | REPLY |   

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