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Happyending

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今日はついに忘年会の日。
この3日間、あたしは専務のことばっかり考えていた。

専務はあたしのこと本気なのかな?
あたし達、つい最近出会ったばっかりなのに。
そんなにすぐに人を好きになれるもの?

それにあたしは専務に釣り合うものを何も持っていない。
なのに、そんなあたしのどこがいいの?

聞きたいことがたくさんあって、専務に会いたい気持ちがどんどんと強くなる。
今年の忘年会が青山のお洒落なレストランで開かれることなんて、あたしにとっては、もうどうでもいい事になってしまった。


営業部と合同の忘年会を、他の皆はとても楽しみにしている。
部長も課長も、お局様も、皆ね。
独身の女の子は、我が社の精鋭部隊・営業部の方々とお近づきになれるとあって、たかが忘年会なのに相当気合入ってるし。元々営業部は女子が少ないって言うのもあるから、あちらも楽しみにしてるって聞いている。

確かに一軒家レストランの貸し切りは惹かれるんだけど、あたしはどっちかっていうと、居酒屋さんでワイワイする忘年会が好きだな。いろんな席を回って、みんなと話をして、肩肘張らずに1年間の労をねぎらうっていうのが忘年会だと思うし。お洒落なレストランは、女の子同士で行った方が楽しいし。あとは、恋人・・とか?

恋人・・あたしがもしも専務の恋人になったら、あたし達ってどんな付き合い方をするのかなぁ。。例えばご飯はどうするんだろう?あたしが作ったものなんて、専務は口にしないよね。
だって、先日の専務のお宅でのディナーは凄く美味しかった。専務はいつもあんなに美味しいものを食べてるんだよね・・なんて、また専務のことを考えちゃってる、あたし。

初めは専務と二人きりでどうしようかと思ったけど、メイドさんとかタマさんとかシェフさんとか、みんなの目が温かい感じで居心地が良かった。
あれって、全部専務が準備してくれていたんだよね。
楽しかったなぁ。
でもそれって、あたしのことが好きだからだったの?
もしかしして、あのパーティーよりも前からあたしのことを知っていた?
あたしには、専務と出会った記憶なんてないけれど・・・。


専務のことを考えると、次から次へと疑問が湧いて来るのに、あれから、専務からの連絡は一切なくて、そのまま今日になってしまった。

迎えに来るなんて言ってたけど、忘年会の場所も時間も伝えてない。
今日帰って来るって言ってたから、連絡してみようかな。
あたしが会いに行くからって伝えたいんだけどな。
専務が迎えに来たらみんながパニックになっちゃうし、あたしの嘘もバレちゃう。
これ以上隠しておくわけにはいかないって分かっているけど、こうなってしまった経緯を説明していない以上、お店に来てもらう訳にはいかないよ。


携帯電話を握りしめて、専務の番号を押そうかと考えていた時に、同僚の篠ちゃんに声を掛けられた。

「ねぇ、マキちゃん。宮川さんのこと、どう思ってるの?」

クスッと楽しそうに篠ちゃんが言う。

「どうって?」
「またぁ、分かってるくせに。宮川さん、マキちゃんに本気みたいだよ。ほら、ビンゴゲームの後に、お題ゲームがあるでしょ?くじで当たった人が、紙に書いてあるお題に答えるやつ。」
「うん。」

お題が入った箱と人名が入った箱が用意されて、司会者が一枚づつ引くんだよね。

「宮川さん、当たりのお題だったら、みんなの前でマキちゃんに告白するって噂だよ!」
「え?」
「お題ゲームは営業部に任せてるから詳細は分からないけど、ほら、今年中に言いたいこと!とかさ、そんなお題で?」

うそっ。
宮川さんからの誘いは断ったから、もうその話は終わりだと思ってた。
あたし、専務のことで頭がいっぱいで、宮川さんのことなんてちっとも・・・。


篠ちゃんの言うことが本当かどうかは分からないけど、
そんなことになったら困るよ。
あぁ、もう。どうしてこんなことになっちゃったの?

そんなことに気をとられて、あたしは結局、専務に連絡を入れるタイミングを逃してしまった。




***




急遽決まったニューヨークへの出張。
来年提携を目論んでいる会社の社長が、今年度中に一度会いたいと言い出した。
これは俺にとって想定外だった。

牧野に電話で告白したのは、その場で断らせないようにするためだ。
ボケボケのあいつに直接告白なんかしたら、「えーっ、嘘っ!?」とか言って、簡単に俺を振るかも知れねぇから。まずは電話できっちり俺の気持ちを伝えて、俺とのことをじっくり考えてもらいたかった。
それから、もう一度面と向かって告白するつもりだったんだ。

けど、決まっちまったものは仕方ねぇ。
早く渡米すれば、その分早く帰って来れる。
28日は牧野の誕生日だ。
絶対にこの日は外せねぇ。
誕生日だってことを知っていながらスルーしたとなれば、未来の『彼氏』としての沽券に関わるからな。

アメリカへ向かうジェットの中、提携の資料に視線を落としつつも、牧野の誕生日をどう過ごすか・・そのことばかりを考えている俺に、西田がゴホンと咳払いをした。

さっきから俺と牧野の会話を聞いていたであろう西田に、今更隠すことなんて何もない。
こいつは、なかなか食えねぇ奴だが、味方につければ頼りになる。
ビジネスにおいては、悔しいがこいつ無しでは立ち回れないこともあるぐらいだ。
その西田に、
「経理の忘年会だが・・・」
と話を振ってみると、
「今年度は営業部と合同の様ですね。場所は青山のフレンチレストラン・ラ・フルールで18時半開始です。」

・・・すげぇな、おい・・鉄仮面のくせに。
ニコリともせずにこの返事が返って来た。
いつから調べてやがったんだ・・と少し恐ろしくもなるが、つまり俺の意図は分かっているってことだ。

「それまでに絶対に帰るからな。」
「それは専務の努力次第かと。」

絶対にヘマはしない。
牧野の誕生日がかかってるからな。

「5番街に寄る時間も作ってくれ。」
「30分が限度でございます。」
「それでもいい。」

牧野への誕生日プレゼントだ。
絶対にこの目で見て買い求めたい。
30分もあれば十分だ。行き先は決まってる。
俺が気に入っている宝石店だ。
まだ、あいつの返事は聞いてねぇけど、誕生日にプレゼントしたいものなんてあれしかねぇ。
あいつはしっかりしているようで、かなりボケてるからな。
しっかりと、俺の女だって言う印を・・・

「楽しみだな。」





ニューヨークに着いた俺は、精力的に動いた。
提携を検討している会社の社長とは速攻で会食を済ませ、手ごたえを得た。
来月中に提携のアウトラインを作成し、調印する方向で話は決まった。


それからもう一つ、俺にはすべきことがあった。


決意込めて、母親である社長の部屋をノックする。

「お入りなさい。」

冷たい空気が部屋中を充満している。
牧野と一緒にディナーを食べた日とは対照的だ。
あの日は、いつもは冷たい邸の中がほっこりと温かく感じた。
それは牧野という存在のせいだ。
だからこそ、俺は絶対に彼女を手に入れる。


社長室のデスクに腰を落ち着けたまま、俺の母親がちらりと俺を確認した。

「話とは何ですか?時間がないの。単刀直入に言って頂戴。」

へぇ。いいんだな。
じゃあ、遠慮なく言わせてもらう。

「好きな女がいます。その女性と、結婚を考えています。」

母親の視線が上がって、じっと俺を見返した。
ポーカーフェイスを装っているが、わずかに動揺しているのが分かる。
それもその筈だ。
今の今まで、俺は女を毛嫌いしていたし、持ち込まれる縁談は全て拒否していた。
パーティーでのパートナーすらも最低限しか容認しない。
その俺が、結婚を考えているって言うんだからな。


「そうですか。それは、どちらのお嬢様かしら?」

母親から動揺が消えた。

「彼女はお嬢様という種類の人間ではありません。」
「では、どういった方なのかしら?」
「ごく普通の温かい家庭で育った女性です。」
「・・・そう。それで?」

俺はこの女から許可をもらうつもりは無かった。
俺は牧野以外の女は考えらんねぇし。
だから、俺が言いたいことは、

「私が決める事に文句は言わないでもらいたい。彼女を傷つけることも許しません。」
「私がそんなことをするとでも?」


家族とはいっても、俺の家族は普通じゃない。
息子に大切な女性がいると聞いても、会社の利益が最優先。
姉ちゃんの時もそうだった。
何度も家出をして拒んだが、結局母親の決めた相手に嫁がされた。

でも、まぁ実際、俺たちはまだ付き合っていない。
ここでそのことには触れないが、付き合ったからってあいつに苦労なんか絶対にさせるつもりはない。
俺が望んでいるのは、道明寺の駒になる女じゃない。
俺の隣で、傍にいるだけで俺を癒してくれて、俺を、俺自身を愛してくれたら、それ以外の何も望まない。

あいつは俺が守ってやる。
母親には、一切手出しはさせない。
それ位の力は俺にある。


「やりかねないでしょう?あなたは。」

皮肉を言った俺を見て、俺の母親はゆっくりと一回頷いた。
息子の俺すらも、一瞬たじろぐ。
何かを決定した、その態度。

「そう、分かったわ。では、来月のあなたの誕生日パーティーに、その方もお連れしなさい。あなたが選ぶ女性がどのような方なのか、見てみたいわ。」

「手出しはしないと約束してください。」

「いい年の息子が決める事に一々親が口を出すとでも?でもそうね、私が手を出さなかったとしても、彼女が怖気づくなら仕方がないわね。」


来月、1月31日は俺の誕生日だ。
この日はうちの邸のホールを解放して、盛大なパーティーを催す予定になっている。
今年は止めたいぐらいだったが、こうなったら受けて立つしかねぇ。

「分かりました。」

「楽しみね。もういいわ。下がりなさい。」




ババァから積極的な反対意見は出なかった。
だが、こんな世界に彼女を巻き込むことが果たして正しいことなのか・・。


だけど、諦められねぇ。
自覚しちまった気持ちは、鎮火できないぐらいに燃え上がってる。
どんどん膨らんで、爆発しそうだ。

今すぐ、牧野に会いたい。
会って、俺の気持ちを伝えたい。


「今すぐ、フライトの準備を。」


リムジンのシートに体を沈めて、
あいつの笑顔だけを思い浮かべる。


あいつが変わる必要なんてない。
仕事はきっちりするくせに、恋愛には鈍感で、ボケボケしてて、危なっかしくて。
だけど、そのままでいい。
そのままでいいから、
お前のことは、俺が守ってやるから、


頼む、俺を選んでくれ。


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Comments 4

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Happyending  
こんばんは~。

いつもたくさんの拍手をありがとうございます!
いよいよ今年もラスト1日ですね。今日は、髪を切りにいったら、予想外に短くなってしまった!!ショートとまではいかないけど、でもショートボブ。おーっ!久しぶりにかなり短いっ!!
もうすぐ主人が帰ってきたらびっくりしそうです。

さてさて、
花●様
うはは。信用されてる!いや、いいです。それしか書けないから(^^;。本当は、もうちょっと怖い楓さんにしようかな~なんて思ったんですが、年末にハラハラする終わり方もね?それに、最終的に伏線を回収できなくなったら困っちゃうので。でも、連れてきなさいって、何すんの??私も、なーんにも考えていません(笑)。眼鏡・・(笑)了解です!皆が忘れたころに登場させようかな。ちょっとシチュ考えよっ( ´艸`)

スリ●様
宮川さん、きっと悪い人じゃない筈なのに、このような役回りでごめんなさい・・あは。
そうそう、明日の記事ほぼ書いたんですよ。今からもう一回見て、直して、明日投稿予定です!・・・が、思ったほどコテンパ(ン)になってないかなぁ。手加減してしまった・・・かも。それ以上に、司の登場シーンだったため、そちらに勢力を注いでしまいました・・・(笑)。あと1話でだいたいいいところで終われそうでーす。

あ●様
>全然元々無理だから。 笑っちゃった。ね~、宮川さん、相手が悪かったよぉ。司相手じゃ、敵う訳ないです。
あ、ミニ漫画読まれたんですね。で、今ツイッター見てきました。そっかぁ。続きがあるのか!しかも、神尾先生自身も24日にアップするネタじゃないって書いてますね~。続き、楽しみに待とうっと!ご連絡有難うございます!

H●様
忙しいですねぇ。明日は、最後の掃除して、もう一度買い物行って、夜はのんびりしたい。同じく、私も司に守られたいです(笑)。

では、明日も、5時に!

2017/12/30 (Sat) 23:55 | EDIT | REPLY |   
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2017/12/30 (Sat) 14:12 | EDIT | REPLY |   
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2017/12/30 (Sat) 10:40 | EDIT | REPLY |   
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2017/12/30 (Sat) 08:42 | EDIT | REPLY |   

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