Happyending

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宴もたけなわ・・だね。

忘年会は予想以上に盛り上がってる。
お洒落なレストラン貸し切りでどうなることかと思ったけど、思ったよりも気さくな雰囲気のフレンチで、みんな和気あいあいと楽しそう。しかも、一人ずつ食事がサーブされるから、上司にあれこれ気を使わなくていいっていうのは良かったかも。
それでも、幹事のあたし達は、様子を見てはお酌をして回ったり、色々と気は使うんだけどね。


忘年会の間中、何度もスマホの画面を眺めているけど、やっぱり専務からの連絡はない。
帰国しているのかどうかも分からないし。
ショートメールいれてみようかな・・・。

だって、ビンゴが終わって、次はもう、例のお題ゲームなんだもん。
正直、もう帰りたいぐらい。

篠ちゃんが言ったことなんて嘘かも知れないし、あたしが気にし過ぎなのかも知れないけど、あたしは、こういうことはあまり好きじゃないから。宴会のノリで告白するとか、そういうのは嫌。笑えないもん、あたし。
だから、もしそんなことになったら、本当に嫌だな。



「では、ただ今より、お題発表~!」

あーあ・・・始まっちゃったよ。
何も起こりませんように・・・。

あたしが小さく溜息を吐くと同時に、あたしの携帯が小さく鳴った。
ぱっと画面を見ると、専務からのショートメール。

『もうすぐ迎えにいく。』

もうすぐ・・?
ここにっ!? 
なんでっ!!

辺りをキョロキョロ見渡したって、それらしき人なんている筈もない。
どうして、お店の場所を知ってるの?
本当に来るの??
あたし、どうしたらいい?
もう、ゲームどころじゃないよっ!!


「次のお題は~___“今日、告白したいこと”!
で、答える人は~___おっ、営業部の宮川だぁっ!」


急に『宮川』という声が聞こえて、慌てて姿勢を正した。
あたしはもう、殆んどゲームなんて聞いていなかったから、何がどうなっているのかなんて分からない。
宮川さんが嬉しそうに席を立って、あたしの方に視線を向けた。

何っ?一体、何を言う気なの!?
もう嫌っ!!


あたしが下を向いたその時に、

___お客様、困ります。本日貸し切りでして・・・

遠くから店員さんの戸惑った声が聞こえてくる。


急に入口の方がざわざわし始めて、

「きゃーっ!!!!」

と女性社員の歓声が上がった。



それもそのはず。
その場には、うちの会社の専務取締役がいたんだから。

あたしは、ただただびっくりして、
椅子に腰を降ろしたまま、瞬きも出来なかった。

凄いタイミング。
何で?
どうして、専務がここに?
これが、どういう場面か分かってる?


とっさに部長たちが立ち上がった。

「道明寺専務。これはこれは。どうかされましたか?まずはこちらへ。」
「いや、牧野つくしに用があって来ただけだ。」
「牧野にですか!?」

ご指名だ。
完全にバレてるんだ。
ここは道明寺グループの忘年会で、あたしはその社員だって。
それなのに、こんなに堂々と現れるなんて・・・信じられない。

「まっ、牧野さん。早く、応対してっ!」

そんなこと言ったって、足が動かないのよ。びっくりしすぎて。
そんなあたしに向かって、専務がツカツカと歩いて来る。
なんだか・・・機嫌が悪い?

バッチリ目が合って、その視線を逸らすのは絶対に困難。
とうとう、専務があたしの目の前に立った。


「何やってんだ、お前は。行くぞ。」

いや、それはあたしのセリフです。
何やってるんですか・・・専務。

周りのみんなが相当ざわついている。
当たり前だよ、どうして専務が、経理のあたしを迎えに来るの?

「あの・・もしかして、コーヒーの件ですか?」

とりあえず、仕事らしき話を振ってみた。
仕事のことで来たんだって、皆が思うかなって。
そうしたら、専務がニヤッと笑う。

「そんなわけあるか。」

ううっ。どうして話を合わせてくれないのよっ。

「おい、誰か、こいつの荷物持ってきて。」

専務が半分腰が抜けてるあたしを立たせながらそう言ったら、篠ちゃんが急いであたしの荷物を持ってきてくれた。

その中にあった大きな紙袋。
それを見た専務が、

「俺がプレゼントしたコートを着てきてくれてんだな。嬉しい。」

なんて言って本当に嬉しそうに笑う。
うっわぁ、どうしようっ。
どうしてそんなに綺麗に笑うの!?
何でこんなにドキドキするのっ、あたし!?

でも、違うのよ。これは返そうと思っていた物一式で、あたしのコートは別に・・・

そう言おうと思ったのに、専務はあたしにトレンチコートを着せて、ボタンまで締めて、そのままあたしをがっちりエスコートしてレストランを後にする。あたしの大荷物は、どうやらお付きの人?が持ってくれるみたいだ。

居た堪れない・・・あたし。


しーんとした部屋の中をあたし達が抜けていくと、
次の瞬間、

「「「「ぎゃーーっっ!!!!」」」」

という悲鳴が、背後から聞こえて来た。







専務に連れられて、またあのリムジンへ乗り込んだ。
言いたいこと、聞きたいことはいっぱいあるんだけど、一体何を言ったらいいのか・・・。

「専務・・あの、もしかして、あたしが道明寺HDに勤めていること、知ってた・・とか?」
「ああ。」

何となく不機嫌な返事。
もしかして・・

「すごく・・怒ってる?嘘ついてたこと。」
「あ?」
「だって、怖い。」
「違うっ。そうじゃねーよ。お前は隙がありすぎるからっ。」

やっぱり怒った風にそう言って、プイッと横を向いてしまった。
あたしも、シュンとなっちゃうよ。
専務が来てくれて、恥ずかしかったけど、嬉しかったのにな。
でも、横を向いたままの専務から次に出た言葉は意外なもので・・

「俺以外の男に、告られてんじゃねーよ。」
ちょっと拗ねてるみたいな言い方。

「・・・何も言われてないよ?」
「初めは店の前で待ってたんだよ、お前のこと。けど、煙草を吸いに外に出て来た奴らが言うじゃねぇか。営業の宮川が、ゲームにかこつけてお前に告るつもりだってよ。」
「それで・・入って来てくれたの?」
「仕方ねぇだろ、そんなことさせられるか!」

ぷっ・・・ぷぷぷっ。嬉しい。
あたし、本当に嬉しい。
嬉しすぎて、笑いが止まらない。ぷぷぷぷぷっ。


「おまっ、何笑ってんだよっ!!」
「だってぇ。」
「だってじゃねーよっ。だいたい、お前は俺に返事もしねぇで、他の男に告られるとか、迂闊なんだよっ。」
「え~? ぷぷぷっ。」
「何だよ、俺。かっこ悪ぃじゃねーかよ。」

かっこ悪くないよ。
あたしの為に、忘年会に乗り込んでくれた。
あたしを助けてくれた。
本当に、迎えに来てくれた。


宮川さんには抱かないこの感情。
嬉しくて、一緒にいるとほんわかして、楽しくて、
これからもずっと一緒にいたくて・・・


「笑うな。」
「うん。ごめんね。あのね、あたし、専務のことが好きみたい。」


自然に口から出た言葉に、自分でも少しだけ驚いた。
だけど、絶対に間違ってない。
聞きたかったことも全く聞けていなかったけど、
もう一度専務に会って確信した。

___あたしは・・専務が好きなんだ。



「なんで、お前が先に言うんだよっ!!」

専務が真っ赤になって怒ってる。
ううん、照れてる?

「えへへ・・・。」
「たくっ・・・。」

大きな手であたしの髪をクシャッとして、ふぅっと溜息を付いたと思ったら、専務は急に真剣な顔つきになった。

あたしの目をじっと見つめて、

「俺もお前が好きだ。」
「うん。」
「だから、付き合おうぜ、俺たち。」
「・・・はい。」

そう答えたら、いきなり専務に抱き締められた。


「はぁ~、もう。お前、何なんだよ。全然予想できねぇ。」

あたしだって、自分から告白するなんて、今の今まで思ってもいなかった。
だけど、これは絶対に嘘じゃないから。

「だって、今、気付いたんだもん。」
「いっとくけど、俺はずっと前からお前のこと見てたんだからな。」
「そうなの?」
「危うく、ストーカーになるところだった。」
「ええ~っ??」

専務の目が笑っていて、あたしも笑った。


一通り笑いあって、一瞬シーンとなった時に、
専務の顔が斜めに近づいてきて、

専務の唇があたしの唇に重なった。

___あたしのファーストキス


静かに目を閉じて、ぎゅっと専務のジャケットを握った。
ゆっくりとキスが繰り返される。
初めは優しく、それから、だんだん強く吸い付かれて・・

あたしはどうしたらいいのか分からなくて戸惑っていたら、そっと彼の唇が離れていって、そのまま彼の胸に抱き締められた。

恥ずかしくて、顔を上げられない。
あたしは、火照った顔を隠すように、専務の背中に手を回した。

細身なのに、意外とがっちりしてる。
それに、凄くいい匂い。


もうしばらくこのままでいたいって思ったのに、すっと専務の体が離れた。
あたしが顔を上げないから、専務が「ん?」って覗き込んできた。
だって、恥ずかしいんだもん。
あたしにとっては、何もかもが初めてのこと。

恋人が出来たことも。
キスすることも。
こうやって抱き合うことも。


「牧野。」
って名前が呼ばれて、やっと顔を上げた。
専務の顔がすぐ目の前。
ドキドキして、死んじゃいそう。

「誕生日、おめでとう。」


そっと左手を握られて、そのまま目の高さに持ち上げられた。
そのあたしの左手の薬指に、すっと通されたのは、小さなダイヤが並んだたリング。

「・・・え?」
「誕生日プレゼント。」
「え・・やだ。こんなのもらえないよ。」
「そう言うなって。恋人に誕生日プレゼントを渡さない男なんていねぇよ。」

そうか・・そうなのかな。
でも、あたし達は、今日からなのに。

「それに男除けだ。」
「そんなの必要ないけど・・。」

ギロッと軽く睨まれた。

「本物は、近いうちに用意するから。」
「ホンモノ?」
「婚約指輪。」
「婚約っ!?」

「何だよ、当たり前だろ。付き合ってんだから当然だ。」

ちょっと待って。
今日付き合い始めたのに、もう婚約・・。


「これって、普通?」
「は?」
「付き合い始めたばっかりなのに、指輪とか婚約とかって・・。」
「普通だろ?」

専務があっさり肯定するから、

「そっか。」
あたしは妙に納得してしまった。
専務は自信満々で、疑問なんて抱いていないみたい。
それに、これが現実になるかは分からないけど、あたしは、お付き合いをするのなら、結婚まで考えられる人が理想だったから、専務が『婚約』だなんて言ってくれるのが、本当は凄く嬉しかった。


そっかぁ、そうだよね。
何が普通かなんて、基準があるわけじゃない。
あたしたちがそれでいいと思えば、それが普通なんだ。


「ありがとう。」

そっと指輪を撫でて、専務を見上げて微笑んだら、
彼も凄く嬉しそうに破顔した。


それから、もう一度、少しだけ深くなったキスをした。


温かくて、優しくて、心地よくて、
信じられないぐらいに幸せ・・・


彼氏いない歴24年だったあたし。
25歳になった今日・・・

こんなに素敵な恋人が出来ました。


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今年もたくさんの応援を頂き、ありがとうございました。
(夜にまた、本年最後のご挨拶を上げたいと思っています。)
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Comments 10

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Happyending  
こんばんは~。

いつもたくさんの拍手をありがとうございます。
やっと恋人になった二人・・・。
先ほどご挨拶もあげたのですが、この先、どうしようかな~と悩み中です。

たくさんのコメントをありがとうございました。
年末で、バタバタしておりまとめてのお返事でごめんなさい。

それから、公開コメントいただいたゆん様。
ゴメンなさーい。明日からしばしお休みなんです!申し訳ない~。
でも10日前に花男二次を知ったとは!!とはいっても私もまだ2年にはなりませんが・・(^^;
今や閉鎖されてしまったサイト様も多くて、私も寂しいのですが、今もまだまだたくさーん読むことが出来ますよ!是非二次サイト様を巡って下さい。楽しい年末年始を!!

では皆様!
今年は大変お世話になりました。
たくさんのコメントに癒され、元気を頂きました。ありがとうございました。

また来年もどうぞよろしくお願い致します。

2017/12/31 (Sun) 23:26 | EDIT | REPLY |   
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2017/12/31 (Sun) 22:10 | EDIT | REPLY |   
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2017/12/31 (Sun) 18:43 | EDIT | REPLY |   
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2017/12/31 (Sun) 16:34 | EDIT | REPLY |   
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2017/12/31 (Sun) 15:47 | EDIT | REPLY |   
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2017/12/31 (Sun) 12:01 | EDIT | REPLY |   
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2017/12/31 (Sun) 09:19 | EDIT | REPLY |   
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2017/12/31 (Sun) 08:48 | EDIT | REPLY |   
ゆん  
はまっています

こんな明日が楽しみな年越しなんてなん年ぶりでしょうか。
ふたりのお付き合いがどうなっていくのか気になりますね。

10日ほど前から花男の二次小説というものを知り、こちらのサイトにたどり着いてすっかりはまってしまいました。
来年も楽しみに読ませていただきたいです^ ^

2017/12/31 (Sun) 07:42 | EDIT | REPLY |   
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2017/12/31 (Sun) 06:33 | EDIT | REPLY |   

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