FC2ブログ

Happyending

Happyending

『ねぇねぇ、ちょっとだけ黙って・・・・
3・・2・・・・あけましておめでとう、専務!!』

電話口から聞こえてくる、牧野の柔らかくて明るい声。

「おめでと、牧野。」

そう答えている俺は、少し不機嫌かも知れねぇ。



____何故かって?


「なぁ、会いに行ってもいいか?」
『会いにって、ここに?』
「静岡なら、車飛ばせば2時間ぐらいで着く。」
『でも、とんぼ返りになっちゃっうし、元旦から会合があるんでしょ?』
「・・・・・・。」
『午後には帰るから・・ね?』
「もう3日会ってないんだぜ。寂しくねぇのかよ。」
『さっ・・寂しいよっ。でも、仕方ないじゃない。年末はおばあちゃんちに行くって前々から決まってたんだから。』

このところ毎日交わされる俺たちの押し問答。
分かってる・・けどよ、

「会いてぇ。」

今の俺の正直な気持ち。


俺たちは28日の牧野の誕生日以来、会えてねぇ。
その28日はどうだったかっていうと・・・







「牧野・・・?」
リムジンの中で俺に凭れて来た牧野。
俺と一緒にいると幸せな気持ちになるなんて言って俺を喜ばせたかと思ったら、

___寝てやがった・・・

どっと力が抜けた俺。
つーか、どうしてこいつはこうも無防備なんだ。
シャンパンとワインで酔い潰れたのだって、つい先日のことだろ。
あの日だって、俺がどれだけ我慢してベッドで寝てるお前を見つめてたかなんて全く分かってねぇんだろ。
しかも俺たちは、たった今恋人同士になったんだぜ?
普通もっと緊張しねぇか?
俺が何もしないとでも思ってんのか?
幸せな気持ちになるって言ったって・・・安心し過ぎだっ。

もっと『男』として意識してくれよと思いつつも、かといって意識され過ぎてぎくしゃくするのも御免だったりする。俺って人間を信用してくれてるんだろうなと思えば嬉しくもある。
はぁ・・惚れた方が負けってのはよく言ったもんだぜ・・・。


すっかり眠っている牧野を抱いてリムジンを降りれば、使用人たちが驚いた顔をした。
そりゃそうだろう、未だかつて寝てる女を連れ込んだことなんてない。

「あれまぁ、また寝ちまったんですかい、この子は。」
なんて、タマだって呆れてた。

数日前と同じように牧野を抱き抱えて私室へ入る。
時計を見れば、まだ22時過ぎだ。
寝るには早いだろーが。そう思って、牧野をソファーへ下した。
タマが持ってきたブランケットを掛けてやり、俺はジャケットを脱いでから隣に座った。
牧野の背中に腕を回し、彼女の頭を自分の肩に乗せてやる。
女に肩を貸してやるなんて考えたことも無かったが、肩の重みが想像よりも軽くて、女ってのはこんな華奢な生き物なのかと初めて知った。あぁ、やっぱり、こいつは俺が守ってやらなきゃいけねぇなと改めて思った。
そんな事をぼーっと考えていたら、俺としたことが、いつの間に眠っていた。
ジェットの中でも仕事をしていたし寝不足だったのは事実だが、まさか、自分が人前で寝ちまうなんて・・これまでの俺には考えられないことだった。
誰にも隙を見せずに生きて来たってのに、この牧野という小さな恋人にかかれば俺って男はイチコロらしい。

しばらくして、肩の重みがないことに気付いて目が覚めた。
リビングの明かりが薄暗く落とされていてはっとする。
俺の体には牧野に掛けたはずのブランケットが掛けられていて、隣には牧野がいなかった。
焦って周りを見渡すが、牧野の姿は見当たらない。寝室を覗いても牧野はいなくて、もしかして帰っちまったのかと部屋を飛び出してみれば・・・

「きゃっ!」

開いたドアのすぐ隣に牧野がいた。
その隣にはタマ。

「何やってんだ?」
「いえね、この子が、坊ちゃんがソファーで寝てるからベッドに運ばなくていいかとか、帰るからタクシーを呼んでくれないかって言うものでね。」
「はぁ?タクシー!?」

何だよ、それ。
寝てる間に帰っちまうつもりだったのかよっ!

「こんな夜更けに帰す訳ねぇだろ。泊っていけよ。ケーキも食ってねぇだろ?」
「でも・・」

今更何を戸惑ってるんだか。
オロオロしている牧野に言ってやった。

「この前も、俺のベッド占領してただろーが。」
「へ?」
「だから、前回もお前はワインで酔って爆睡して、俺のベッドで寝ただろうって。」
「ええーっ!知らないっ。ええっ?本当に??」

どうやら、前回俺のベッドで寝ていたとは知らなかった牧野が首をブンブン振って焦り出した。
さすがに男の部屋に入るのはマズイっていう認識はあるらしい。
けどまぁ、もう俺達は恋人同士な訳だし、問題はないと思うが。

「さすがに、専務の部屋に泊まるのは・・ちょっと・・・。」

つーか、前回は泊まって、なんで今回はダメなのか知りてぇよ。
いや、待てよ。それって、俺のことを『男』として意識してるってことだよな。
そーか、そーか。

嬉しくなった俺は、強引に牧野の腕を引いて部屋へ連れ戻した。
部屋の明かりを点けると少し眩しそうにする牧野。
一緒にもう一度ソファーに座って、牧野の手を握る。
じっと顔を覗き込んでやれば、キョトキョトと落ち着きがない。

「泊るよな?」

ちょっと意地悪過ぎたか?
今すぐに何かしようって訳じゃない。いや、牧野がOKだったら、俺はいつだってOKなんだけど、そんな訳はないだろうってことぐらい理解しているつもりだ。

「せっ・・専務・・・あたし・・・・」
「ん?」
「その・・初めてで・・・」
「何が?」
「だから・・その・・・えっと・・・」

こいつが言わんとすることなんて分かってた。けど、真っ赤になってアワアワしている姿が可愛くて、まだ虐めたくなった。

ピンクの唇に軽くチュッとキスをする。
それだけで、耳まで赤くして、もう泡でも拭きそうな牧野に思わず笑いが込み上げた。
さっきだってキスはしただろうに・・・。
目をぎゅっとつぶって下を向いた牧野を優しく抱き締めてやった。

「冗談だ。急ぐつもりはねぇよ。」
「え・・?」
「俺は、いつでもいいけど・・・」
「ええっ!?」
「お前がいいって言うまで待つから。変な心配すんな。」

半分は本気で、半分は強がりだ。
それでも、無理矢理しようだなんて思ってないのは事実。
ホッとした様子の牧野を見て、今はこれで間違っていないと思った。


それから、パティシエが喜んで運んできたケーキを食べた。
前回連れて来た時に、牧野が上手そうに食事をするのを見て、うちのシェフもパティシエも今日を楽しみにしていたらしい。
「こんな夜更けにごめんなさい」なんて言いながらも、パクパクと上手そうに食ってる彼女を、俺はいつものブラックコーヒーを飲みながら見つめてた。

「美味いか?」
「うん。こんなに美味しいケーキ初めて・・モグモグ。」
「そう言えば、お前・・・忘年会のケーキはどうなった?」
「え?断ったよ。当然でしょ?」

そうか、宮川が用意しようとしたケーキは断ったんだな。
少し安心した俺だったが、

「・・そうか。つーか、お前は隙がありすぎっからな。俺以外の男と食事とか行くなよ。外泊とかも許さねぇから。」
「そんな事ないし・・っていうか、今日はいいの?・・モグモグ。」
「俺はいいんだよっ!」

美味そうに食う牧野を見ていたら、またこいつが危なっかしく思えてきた。
食い物につられて平気で誘われちまいそうだし、男の前ですぐ寝るし。

「専務ならいいの?」
「当たり前だろ。俺以外の男と出歩くんじゃねーぞ。誘われても絶対に断れ。屋上とか呼び出されても行くな。」
「・・・屋上?」
「たっ・・例えばだよっ。俺以外の男は狼だと思えよ。絶対に付いて行くな。」

まるで幼稚園児にでも諭すようないい方だ。
けど、マジで、こいつは危なっかしい。
これでよく今まで無傷だったもんだ。


「えっと・・でも、年末はおじいちゃんとおばあちゃんの家に行くけど。それはいいよね?」
「・・・・・は?」
「30日から元旦まで、おばあちゃんちに行くの。もう決まってるから。」
「はぁ?」

恋人の俺を無視して、年末出掛けるってか?

「ダメだって言ったら?」
「そんなの困る。」
「男は一緒じゃねーよな?」
「そんな訳ないでしょ。弟とパパとママ。」

「仕方ねぇ、俺も行くか・・・」
「ええっ??何言ってるの?専務。」

俺は至って真面目に考えていたが、

「専務も年末年始はお休み貰えるの?」

・・・もらえねぇ。
つーか、明日も仕事だ。

「ね?仕方ないでしょ?」

なんて勝ち誇った様子の牧野。
何だよ、夜だけでも会いてぇとか思ってくれねぇのかよ。
じとっと恨めし気な俺に、牧野は相変わらず鈍感だ。

「お土産買ってくるから・・・」
「そんなの要らねぇし。」
「じゃあ・・・」

「今日は、一緒に寝ろよ。何にもしねぇから。」
「・・・・。」
「何だよ?」
「本当に何にもしない?」
「手を繋ぐぐらいはいいだろ?」
「・・・うん・・・そのぐらいなら・・・。」





そして、その夜、俺は拷問を受けることになる。
やっぱり中途半端な男気は見せるもんじゃなかった。
手を繋ぐだけで満足できる訳がない。
寝ぼけて俺の腕に絡みついてくる牧野を抱き締めてぇし、腕にあたる牧野の胸は触りてぇし・・。
牧野の吐息を感じれば体が疼いて仕方ねぇ!

結局一睡もできず・・・
朝はなんとか濃厚なキスをするも、名残惜しさ満点で別れた。
それでも、俺の体の興奮が収まるはずもなくて・・

こんなことなら、
待つなんて言うんじゃなかった・・・


あぁ、会いたい。
牧野に会いたい。
声だけじゃ足りない。

会わずにいれば、ますます欲求不満が募るから。
せめてキスだけでも、牧野を少しでも感じていなきゃ、俺はもう生きていけそうにない。


にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村

いつもたくさんの応援をありがとうございます!
次はつくしちゃんサイドの予定です( ´艸`)
関連記事
Posted by

Comments 5

There are no comments yet.
Happyending  
Re: タイトルなし

さと●様
あはは、顎、やってみました(笑)?
そして、さと●様風に言えば、仙人並みの忍耐力をもつ司。
ちょっと哀れだから、そのうちご褒美を・・(笑)。
本年も、どうぞよろしくお願い致します!

2018/01/10 (Wed) 23:03 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/01/10 (Wed) 16:20 | EDIT | REPLY |   
Happyending  
こんばんは~(*^^*)

いつもたくさんの拍手をありがとうございます!
こうなっちゃいましたよ・・(笑)。どうしよっかな~。全然考えてない!

さてさて、
スリ●様
そう来たか~、宮川さんか(笑)。どうしよう・・・。司のライバルになってしまったという不運で、可哀想キャラになってるけど・・ちょっと考えてみます(笑)。うちも明日から給食です。はー、お弁当終わって助かります!

花●様
わはは・・ですよね、司・・・ごめん!何というか、この二人は、ボケボケな感じかなぁと・・(笑)。恋愛初心者同士! この先考えてないから書きながら考えます(;^_^A

では次のお話で!

2018/01/09 (Tue) 22:22 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/01/09 (Tue) 09:12 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/01/09 (Tue) 07:32 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply