Happyending

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専務第一秘書の西田さんから連絡を頂き、昼食を食べた後、13時に西田さんと顔合わせをすることになった。西田さんのことはもちろん知っているけれど、直接話したことは一度も無かったから緊張する。

「秘書課も基本は、12時から13時が昼休憩ですので、食事は自由にとってください。」
「はい、承知しました。では食堂で食べてから伺います。」

電話でそんなやり取りをした。
敏腕秘書の西田さんって、どんな人なんだろ?
ドキドキしながら、約束の10分前には専務秘書室に伺うつもりで、12時過ぎには社員食堂に向かった。



うちの社食はメニューが豊富。
Aランチはお肉系、Bランチはお魚系、Cランチはパスタ系、その他うどんやお蕎麦、一品小鉢も充実してる。
本日のうどんは、カレーうどんかぁ。
今日は秘書課に初出勤だから、きちんと白のブラウスを着て来てる。
カレーの汁がぴょんって跳ねちゃったら困るからやめておこう。
Bランチのサバの味噌煮もいいんだけど、Aランチの照り焼きチキンにマスタードソースも美味しそう。
小鉢はオクラのマリネ・・・ああ、やっぱりBにしよっ。
・・・と思ったけど、

あれっ?うっわー、どうしようっ!
めったにお目にかかれない、本日のスペシャルランチがまだ残ってる。
黒毛和牛のステーキランチ、1400円。
ゴキュ・・・。
黒毛和牛がこの値段は破格だよ!どうしようっ。
気合入れるために、ここはいっとこうか!?
でも、500円のBランチに比べたら随分高い・・あぁ、迷う~。

あたし、ダメなんだよ、こういうの。
優柔不断なの。あーもう、決められない!!

だけど、なかなか巡り合えないスペシャルランチ。
これを逃したら、次にいつ出会えるか分からない。
うーっ、女は度胸!決めなきゃだめっ。
えいっ・・とスペシャルランチの食券ボタンを押そうとした時に、

「牧野さん、どうしたの?」

と、背後から聞きなれない声が掛かった。

ん?

「久しぶり。良かった、最後に会えて。聞いたかな。俺、大阪に転勤になったんだ。」

みっ、宮川さんだっ。ひゃあ。
別に疚しいことなんてないのに、どうしてか緊張しちゃう。
だって、専務が今でもグチグチ言うから・・

「お昼、一緒にどうかな?」

うう~っ。困った。
男性と食事には行かないっていう専務との約束があるから。
社食でも、食事を誘われたことになる?

「え・・っと・・・・」
「誰かと待ち合わせ?」
「いえ・・あの・・・」

返答に困っていた時に、

ピッ・・・

目の前で、一つスペシャルランチが売れた。
スペシャルは限定10食。早くしないと売り切れちゃうっ。
誰か、助けて~っ!!


焦ったあたしが思わず宮川さんを見上げたら、その宮川さんに影が出来た。
随分大きな人が宮川さんの後ろに来たみたい。
更に首を上げてみれば・・・・


「待たせたな。」
心地よいヴァリトンヴォイス。


うわぁ。なんで??

クルクル頭の男性が、あたしを見て顔を引きつらせてる。
数日ぶりに会う・・専務だ。

でも、あたし・・・待ってないよ?


「どっ、道明寺専務!」

宮川さんがびっくりして腰を抜かしそう。


「西田。」
「はい。」
「ここは、どうやってメシ食うんだ?」

隣には、西田秘書室長だ。
知らなかった。専務も社食使うんだ。
だけど、初めてってこと?

「牧野さん、専務に食券の買い方を教えて差し上げてください。」
「はっ、はいっ!」

慌てて受け取ったのは、ゴールドの社員証。
そこには、『専務取締役 道明寺司』って書いてある。
残念、写真は無いんだ。
役員はゴールドだって本当だったんだ。
レアっ。お宝だよ!

あたしは初めて見るゴールドの社員証にすっかり興奮してしまって、
宮川さんがあたしを見つめていることも、
西田さんがちょっと呆れ顔なことも、
専務がさりげなくあたしの肩に手を回していることも、
何も見えていなかった。


「どうやって使うんだ?」
「まずは、これ、首から掛けて。」
「こうか?」
「うん。」

専務の首にIDホルダーを掛けてあげた。
なんだか、可愛い。大きな幼稚園生みたい。

「それからメニューを選ぶ。」
「どれがいい?」
「専務は?」
「どれでもいい。お前は?」
「思い切ってスペシャルランチにしようかなって。」
「じゃあそれ。」
「これ、押して?」

ピッ・・・

「あーっ。最後の一つだったんだ。売り切れになっちゃった。くぅ~!残念っ!」
「いいよ。お前が食え。」
「ええ?いいの?」
「他にお勧めは、何がある?」
「あたしだったらBランチなんだけど。」

ピッ・・・

「あ、だめだよ。あたしが買う。」
「うるせぇ。」
「じゃあ、半分こにしようか?」

出て来た食券を持って、カウンターに並んだ。


そこでやっと気づいた。
社食内、全員の目があたし達に注がれているってことを。
調理の人の目も、その場にいる社員も、全員が目を丸くしてる。

しまった!
あたしって・・なんて馬鹿なの?
専務との関係は秘密でしょ?
あたし、今、何をしてた?

かぁ~っと頬が熱くなるのを自覚する。
何やってんのよ、あたしっ!

そんなあたしにお構いなしに、スペシャルとBランチが用意される。

専務がさっと用意された2枚のトレーを持ち上げて、
「どこに座るんだ?」
なんて甘くあたしを見つめてくる。

社食で妙なフェロモン振りまかないでよっ。

うう~っ、どうするの?どうすればいい?
二人で食べるの?ここで?


さっと専務の後ろにいた西田さんに助けを求めたら、
西田さんとばっちり目が合った。

「牧野さん、専務と昼食をお願いします。」
「ええっ!・・あの・・・こちらでですか?」
「そうですね。専務が食堂を見学したいとのことですので。」
「・・見学ですか!はいっ!」

思わず大きな声が出ちゃう。
そうよ、そうよ。見学よ。
あたしは今日から専務秘書だもの。
見学に同行しているのよっ。

そうと決まれば・・
すぐに専務を窓際のカウンター席に案内しようとした時に、

「牧野さん」と声が掛かった。
・・・・宮川さんだ。

反対側から、「牧野」と呼ばれた。
・・・・言うまでもなく専務から。


あたしは大きく深呼吸。
それから、専務を見上げて頷いた。
心配しないで。大丈夫だから。

そして、宮川さんに言ったんだ。

「宮川さん、忘年会は迷惑をかけてしまってすみませんでした。大阪に行っても、頑張って下さい。」
「ああ・・ありがとう。牧野さんも・・頑張って。」

宮川さんがもう少し何か言いたそうだったけど、あたしは会釈をして背を向けた。
あたしはやっぱり・・・

すぐ隣で不機嫌そうな声が聞こえた。

「おいっ、どこに座るんだって聞いてるだろ?」
「ああ、ごめんなさい。じゃあ、こっち。」

あたしはやっぱり、この人が好きだ。
他の人なんて、目に入らない。


2枚のトレーで両手が塞がった専務を、窓際の横並びのカウンター席に案内した。
そこは外の景色が見えるし、皆の視線は背後になるから気にならない。
よくよく考えたら、専務にランチのトレーを運ばせてることとか、トレーを置いた専務が、椅子を引いてあたしをエスコートしてくれてることとか、あり得なかったと思う。

西田さんは、Aランチをとってあたし達の後ろの4人席に一人で座った。
これで、あたし達の近くには他の社員が近づけないはずだ。



隣同士に座ったあたし達。
専務の顔はまだ不機嫌だ。
仕方ないなぁ・・もう。

「怒ってるの?」
「怒ってねぇよ。」
「嘘、怒ってるでしょ?」
「だいたいお前はすぐ食い物に釣られるからな。」

肩が触れ合う位にギリギリの位置に座って、小さな声で話をする。

「ねぇ、どうしてここに来たの?」
「お前を迎えに来たに決まってんだろ?お前は俺に会いたくねぇのかよ。」
「会いたいに決まってるでしょ。」

勇気を出してそう言ったら、専務が目を見開いた。

「あたしも、専務だけだって・・言ったでしょ?」

ちらっと上目遣いで専務を見た。
そしたら専務はいきなり真っ赤になって、

「お前っ、ずりぃぞっ。こんな所でそんな事言いやがって!俺が何にも出来ねぇだろっ!」

それも、小さな声でコソコソ言ってる。
みんなに見えないように、そっと手が握られた。

「・・・合格だ。」

あたしは専務の恋人として合格らしい。

へへっ・・幸せ。




「ゴホンッ!あまりお時間がありませんので、お急ぎください。」


ひゃーっ。
西田さんには聞こえてるよ~っ。

それから二人で半分こして黒毛和牛を食べた。
そこら辺のレストランより絶対に美味しいと思う。

サバの味噌煮は専務が恐がって「うっ・・」とか言ってて、可愛いの。
「絶対美味しいから、食べてみて」って言ったら、しぶしぶ食べてくれたけど、感想は、「微妙」だって・・美味しいのにね。


最後に二人でトレーを片づけて、西田さんと三人で役員専用エレベーターに向かった。

上昇するエレベーターの中、
ちょっと気まずいあたし達。

だけど、あたしだって予想外だったのよ。
専務が社食に来ちゃうなんて。


「改めまして、専務第一秘書の西田と申します。よろしくお願いします。」
「牧野つくしです。どうぞよろしくお願い致します。」

「牧野さん。」
「はい。」

もしかして・・・怒られる?
公私混同するなとか?
そりゃあ、そうよね。
げんこつモノよっ。
ぎゅっと唇を噛みしめて、西田さんの言葉を待った。


「専務の手綱を引けるのはあなたしかいません。」
「え?」
「これまで通りで構いません。あなたらしく。期待しています。」

「俺は馬かよっ!!」

真面目顔の西田さんに、専務が怒鳴った。


思わずぷっと笑ったあたしは、専務にちょっと睨まれた。


あたしらしく・・・
あたしの秘書生活はこんな風に幕を開けた。


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いつもたくさんの応援をありがとうございます。
思いがけず甘々を期待する声が多かったのでこんな感じになりました(笑)。
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Comments 4

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Happyending  
こんばんは ~!

いつもたくさんの拍手をありがとうございます!
またまたバカップル全開(笑)。もう、バレバレでもいっかぁと。でも私、コメディ苦手だから、この流れはまずい!ほら、ちょっと位トラブルがないと進展しないですよねぇ・・悩むなぁ。

さてさて、
ka●様
コメントありがとうございます(*^^*) いつもはマジメで出来るつくしちゃんを書くことが多いのですが、こちらのつくしちゃんは出来る子なんですが、ちょっとボケた感じに書きたいんですよね。こんな秘書で大丈夫かとちょっと心配ですが、その辺は司専務がフォローするでしょう!(笑)。どんな二人になるのか・・・実は私もまだ分かりませんが。シリアスになりすぎないお話にしたいかなぁと思っています。

スリ●様
実際、公私混同ですよねぇ、絶対(笑)。でも、専務もお昼休憩必要だし、まぁいっか!西田さんもOKしてるみたいです(笑)。そうそう、もうすぐ司のバースデー・・実は何の準備もしていないんですよね。このまま連載を続けるしかないかな・・。ああーっ!でも、司のBDに何もしないんて!つかつく書きとして許されないっすよねっ!でも、閃かないんだぁ・・うわぁーっ。どうしようっ!!焦る~っ!!

花●様
そうそう、つくしちゃん、意図してはいないんでしょうが(笑)、上手く操縦しております!このまま突っ走れるか!?さて、楓さんはどうしよう??いろいろ考えるところが多いなぁ(笑)。

ふぁいてぃ~んママ様
こんばんは~、拍手コメントありがとうございます。年末にコメント頂いた時に、「ホンモノの指輪」のところでツッコミ頂いて、それを読んで「ホントだ(笑)」と思ったんですよ。そして今日も・・そうそう、手とか握ったらバレるだろっ!これは、私もね、思った(笑)!西田さんを置いてみたけど、バレてそう(笑)。あはは。インフル流行っていますね。毎年、何で今?ってときに罹っている気がします。気をつけましょうね!!

司の誕生日は迫って来るし。
週末はいろいろ集まりがあってややこしいし。
どうしたらいいんだーっ!
でも、週末中には一話は更新したいです。
いつも応援ありがとうございます。
ではまた~(*^^*)





2018/01/26 (Fri) 22:57 | EDIT | REPLY |   
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2018/01/26 (Fri) 18:23 | EDIT | REPLY |   
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2018/01/26 (Fri) 08:51 | EDIT | REPLY |   
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2018/01/26 (Fri) 05:52 | EDIT | REPLY |   

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