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Happyending

Happyending

皆様、お話覚えていらっしゃいますか?(笑) 続きです~。
***


「タマっ。あいつはっ!?」

仕事を超特急で終わらせて、俺は邸に駆け戻った。
時間は17時。牧野はまだいる筈だ。
ここ何日も、俺は昼間しか牧野に会えていない。
やっと邸で捕まえられる。
ああ、早く会いてぇ。

「つくしなら、例の部屋で休んでますよ。もうすぐ試食会ですからね。イチャつくのもほどほどにして下さいよ。」

そう聞いて、ダッシュで向かったのは俺の私室の隣の部屋。
そこは、牧野のために準備させた特別な部屋だ。
俺の秘書になって、誕生日パーティーを任されると知った時から用意していた。
あいつは毎日ここに通ってんだ。それなら、ここに寝泊まりするのが理にかなってる。
俺のタイトなスケジュールのせいで、正月が明けた俺たちにはデートする余裕もなかった。
せめて、牧野がこの部屋にいてくれたら、寝顔だけでも見れるのに。
何度も邸に泊るように誘っていたが、一向にそうしてくれる気配はねぇし、実家では家族と暮らしてるから外泊はあんまりできねぇとか言うし。そんなに怖ぇオヤジがいるのかよ、牧野んちって。
それなら、会社の専務として、あいつの恋人として、俺が頭を下げるしかねぇよな?


牧野のオヤジを想像してちょっとビビりつつ、俺は夕方、牧野の実家に向かった。牧野を俺んちに預けてもらうためだ。反対されたら金でも積むかと西田に用意させようとしたら、人身売買だと反対された。でも別に、結納金だと思えばいいんじゃねーか?俺はそのまま牧野を実家に帰すつもりなんてねぇし。

牧野の両親が自宅にいるのを確認の上、チャイムを押した。この俺としたことが緊張して、何度もネクタイを直しちまった。
が、牧野んちの両親は『あら、どうぞ』ってな具合に軽いノリで、会社の者だと言った俺を自宅に招き入れた。
まぁ、予想はしていたが、牧野は両親に俺の存在(恋人の存在)も、専務秘書になったことも話していなかった。
俺の役職を聞いて無言になっちまった二人に、俺は西田に教えられた通り、座布団から下りて頭を下げた。

「つくしさんと真剣に交際しています。仕事の面でも、協力してもらっています。近い将来は結婚を考えていますので、どうか、つくしさんをうちで預からせて下さい。」

「「けっ、結婚!!」」

俺の土下座に、『パパ』と呼ばれた牧野の父親は泡吹いて倒れそうになるし、『ママ』と呼ばれた牧野の母親はそんなオヤジさんに「パパ、しっかりっ!」とか言ってビンタしてた。面白れぇ。こんな夫婦がいるんだな。うちの両親とは大違いだ。牧野がしっかりしてるのにどっかとぼけてるのも頷ける。

でもさすがに娘のことだ。そりゃ心配だよな。
いきなり男がやって来て、うちで預かるなんて言うんだもんな。

「娘が傷つくようなことはありませんか?」
と、オヤジさんがポツンと言った。

「必ず幸せにします。」
絶対に傷つけたりしねぇ。俺の大切な女なんだ。

そう言った俺に、
「よろしくお願いします。」
と牧野の両親が少し涙目になって、頭を下げた。

牧野の両親からは了解を得られた。
俺は、彼らに変わり、牧野を保護する権利を手に入れたことになる。
あとは、本人の了解を得るのみ。

果たして牧野は、この邸に住んでくれるだろうか?




辿り着いた部屋の前で、一旦足を止め、呼吸を整えた。
ゆっくりとドアノブを回して、そっと足を踏み入れる。
恋人に会うってだけで、悪ぃことしてる訳じゃねぇんだけど、姉ちゃん以外の女の部屋に入るなんて初めてなんだよな。それが例え俺が自分で準備した部屋だとしても、緊張するのは仕方ねぇ。

「牧野?」

小さな声で呼んでみるが返事はない。

「牧野?」

もう一度名前を呼びながら、リビングスペースを見渡すが彼女はいない。
開けっ放しドアの向こうの奥の部屋を覗き込むと、靴を脱いでベッドに横向きで寝ている彼女がいた。

そんなに疲れてんのか?

くぅくぅと一定の寝息を立てている牧野。
すっかり寝入っているようで起こしにくい。
それに、その寝顔が可愛くて・・・
思わずチュッとキスをした。

こんなに可愛い顔、誰にも見せらんねぇ。
しかも、こんなに無防備で寝てるんなら、部屋に鍵ぐらいかけとけよな。
俺んちじゃなかったら危険だ。誰か悪ぃ奴に襲われでもしたらどうすんだ。
やっぱ、こんな危なっかしい女は、俺が守ってやんねぇと・・


もうすぐ試食の時間だってことは分かってる。
でも少しだけ・・・

俺も靴を脱いでベッドに上がり、牧野と向かい合わせに寝転んだ。
彼女の首元に右腕を差し入れても起きないことに安心して、そのまま彼女を抱き込んだ。

ああ、やっぱいい。温かい。
こいつがいる家。
こいつがいるベッド。
俺が帰る家に、毎日牧野が待っていてくれたら・・・


もう俺、こいつのこと帰せねぇよ。





***



「起きたら急にいるんだもん、びっくりさせないでよ!」
「グースカ寝てたのはお前だろ?」

少しだけのつもりが、どうやら1時間は寝てたらしい。
牧野の悲鳴で飛び起きた。
そして、今は夕食を兼ねた試食に向かっているところだ。

「そうだけど・・・」
ぷぅっと頬を膨らませているこいつ。

「そんなに疲れてるんなら、仕事減らすか?大丈夫なのか?」
「へっ?いや、全く平気!疲れてない!」
「さっきまでベッドに倒れ込んでただろうが。」
「たまたまだよ、たまたま。何でお昼寝してるところとか見られちゃうかなぁ、あたし・・」

俺はどんな姿のお前だって、会えるだけで嬉しい。
俺の前でなら、無防備な姿でオッケーだ。他の男は許さねぇけど。

試食会場であるダイニングに向かって仲良く歩く俺たちを、邸の奴らが微笑まし気に見つめてる。
牧野が邸にいるだけで、邸中が明るくなったように感じる。
そんなこと、きっとこいつは気付いてない。



ダイニングに所せましと用意されたパーティーメニュー。
ゲストが食べやすいようにと牧野が注文を出したらしい。
食べやすいように作られた和洋中の創作料理。
各国からのゲストに対応できるようになっている。

牧野の一押しは、半日以上熟成させたという牛肉のタリアータ。
薄切りの肉に野菜を挟み、一口で食べられるように工夫されていた。

銀の櫛に刺さった一口チキンも、絶品だ。
「凄い豪華な焼き鳥!」なんて牧野は言ってたが。なんだ・・それ?

オードブルのサーモンも小さく巻いてあり、カナッペはクラッカーではなく薄いピザ生地で使い崩れにくく作られている。基本は立食のビュッフェスタイルだが、当日はうちの料理人も取り分けに対応したり、スタッフがゲストに料理を紹介しながら配り歩いたりもするらしい。なるべくゲストの口に運んで貰えるようにという牧野の提案だそうだ。

サラダバーのドレッシングは何種類もあって、「女性なら、何回でも食べられるから、いろんな味があった方が嬉しい」なんて言ってるけど、マジか?でも、こいつは何度もローストビーフに並ぶような奴だからな・・・。

バラ園では、ホットワインや、ホットティー、ホットコーヒーと一緒に、飯時にはスープを配るらしい。
温かい飲み物を飲みながら、うちのバラ園を鑑賞してもらうそうだ。

「社長が専務を生んだ年に作ったバラ園なんだって。だからパーティーのメインに。いいでしょ?」

牧野がすげぇ得意そうに話す。
別に俺は、そのバラには興味なんてねぇけどな。
お前がやりたいようにすればいいさ。
俺は正直、誕生日パーティーに特別なこだわりはない。
料理だって、うちの料理人なら最高のもてなしをするだろうし、うちのスタッフが手落ちなんてする筈がないと信用している。
あとは牧野が好きなようにすればいい。
俺の誕生日パーティーなんだから、俺の恋人がアレンジするのなら何でもありだ。


牧野はデザートまで全て完食して、「やっぱり美味しいね。さすがっ!」なんて満足そうに手を叩いた。
じゃあ、もう試食は終わりだな?と退散しようとした時に、

「でも、うーん・・・何か足りなくないですか?」

と、彼女が首を傾げる。
何かが足りないって?
俺には全く分からねぇ。


「あっ、そうだ!バースデーケーキがないじゃないですか!!」

・・・・。
バースデーケーキ?

「デザートはたくさん用意してあるけど、ほら、ホールの大きいやつ。Happy Birthdayって書いてあるやつ!」

そうだ、そうだ、とめちゃくちゃ嬉しそうに言うこいつ。
・・俺は別にいらねぇけど・・とは言い出せないこの雰囲気。

「イチゴのがいいと思うけど・・あ、あたしはだけどね!ケーキに関してはシンプルイズベストを貫いてるから!ね、専務は何が好き?」

何が好きって、俺は甘いもんは食わねぇし。
けど、これだけ張り切ってる牧野を見ると・・いや、パティシエの視線も痛ぇ。
俺が甘いもんを食べないのは邸中の奴らが知っているし、ホールケーキなんて用意されたのはガキの頃だけだ。だから、最近の誕生日パーティーでホールケーキを準備されることは無かったはずだ。

「ねぇ、どんなのがいい?」

うっ!
期待のこもった牧野の目。
お前の誕生日のケーキだって、俺は殆んど食ってなかったんだけど、覚えてねぇのかよ?
タマはニヤニヤして俺を見てやがるし、シェフとパティシエも固唾をのんで見守っているこの状況。
くそっ!

「・・・お前が好きなのでいい。」
「そんなこと言わないで、せめてチョコレート系か生クリーム系かとかさ。」
「・・・・・生クリーム・・・」

答えるしかねぇしっ!

「やったぁ!じゃあ酒井さん、生クリームの、おっきい奴お願いします。蝋燭は26本って多すぎるかな・・一気に吹き消せなかったらカッコ悪い?吹き消した後に、切り分けてみんなで食べられたらいいんだけど。」
「了解しました。」

うちのパティシエが嬉しそうに頷いている。
まさか、蝋燭を吹き消すところまでやらせるつもりか?
目を丸くする俺に、メイドたちもクスクス笑っている。


「牧野!お前、ちょっとこっち来い!!」

メイドたちの視線に耐えらんねぇ。
かと言って、このまま一人部屋に帰る訳にも行かねぇ。
だって、今日からこいつは俺が預かると決めてんだから。

「え?まだ、相談したいことがあるから・・・」
「今日の業務は終了だ。」
「ええーっ!何でよっ、て、こらーっ、離してっ!!」

牧野の肩を抱き寄せて、強引にズルズルと引きずりながら立ち去って行く。
そんな俺らを使用人たちが暖かい目で見ているのが、くすぐったくて堪らねぇ!



牧野効果。
こいつがすることは、俺が普通だと考えている常識を遥かに超える。
きっと、それはこいつにとっては普通の感覚なんだろう。
そして、かつての俺だったら、取るに足りない無駄な事だと一蹴したであろうもの。
でも、そんな風に自分の世界から排除していたものが、こいつと出会った瞬間から大切なものだと思える。

甘いケーキを用意されることも。
そのケーキの蝋燭を吹き消すことも。
全て彼女が用意してくれるものだから。
想像しただけで、頬が緩む。
こいつは俺に、今までに感じた事のなかった幸福を与えてくれる。


でもな。
俺は与えられるだけの男じゃねぇよ。
俺だって、お前に与えたい。
お前が俺を幸せをくれるように、俺もお前を幸せにしたい。

俺の世界はお前にとっては居心地が悪ぃかも知んねぇけど、それでも俺の常識ってやつも受け入れて欲しい。
そう思うのは俺の我儘なんだろうか・・・?
一緒に暮らしたい。
これから、ずっと。


「今夜は帰さねぇから。」


今度は彼女が目を丸くした。
そんなにびっくりすることでもねぇだろ?
俺たちは、将来を誓う恋人同士なんだから。


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Comments 4

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Happyending  
Re: タイトルなし

さと●様

とんがり帽子!去年、司BDで使ったんだった。懐かしい~。タマさんはくす玉(笑)。
パーティーとか書くのホント苦手。でも、なぁ、パーティー書かなきゃ終わらないから頑張りまーす!
そうそう、司ってば本人の了解をとってないんです。外堀を埋める作戦?うまくいくでしょうか?その答えは、たった今投稿しました!0時ジャストにポチって投稿しましたよ!ギリギリ過ぎて、久しぶりに妙な緊張感があって、ドキドキした(笑)。

2018/02/05 (Mon) 00:07 | EDIT | REPLY |   
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2018/02/04 (Sun) 19:44 | EDIT | REPLY |   
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こんばんは(*^^*)

いつもたくさんの拍手をありがとうございます。

早く終わりにしたい病が出てきたようで、サクサクと話を展開させたくなってきました(笑)。
お話の展開さえ決まれば・・って感じなんですけど・・ここがネック(^^;)←当たり前!

スリ●様
大変!このままでは何の落ちもないお話で終わってしまいます・・(;^_^A どうしよう・・・。楓さんとか・・どんな人にしよう・・。って、そこからかいっ!って感じです。ここからはちょっと考えないとエンドに持ち込めないか・・早く終わりにしたいのに!とりあえず、次の一話はまだパーティーじゃないです(^^)

he●様
拍手コメ連投ありがとうございます!週末はゆっくり過ごされましたか?ね、司君、もう帰しませんよ(笑)。つくしちゃんはどうするかな?

一応続きは0時目標・・
無理なら、朝5時で!

2018/02/04 (Sun) 18:30 | EDIT | REPLY |   
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2018/02/04 (Sun) 00:12 | EDIT | REPLY |   

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