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Happyending

Happyending

「専務ってば、どこ行くの?」
「俺の部屋。」
「いや・・その・・あたし、もうお暇しなきゃ・・」
「何でだよ。お前、明日休みだろ?」

そう、今日は金曜日。
専務は明日も仕事があるけど、あたしはしっかりお休みを頂いている。
だからお泊りっていうのも出来るんだけど・・・。
ほら、ここには仕事で来ているわけだし、昼寝とかしておいてなんだけど、やっぱり公私は区別しなきゃいけないよね?

バタン・・・

あれこれ考えつつも、気が付けば専務の部屋。
結局・・・あたしだって、彼と一緒にいたいと思っているから、強引に帰ることは出来ないんだよね。

さっとジャケットを脱いでソファーに投げて、ネクタイを緩める専務。
そんな動作をじーっと見ちゃうあたし。
自然と頬が熱くなる・・って、何考えてんのよっ、あたし!!

「シャワーどうする?」
「どうするって?」
「一緒に浴びるか?それとも・・」
「べっ、別でいいですっ。」
「ぷっ、何焦ってんだよ。」

シャツのボタンを上3つ開けた専務があたしに近づいて来る。
わざとだよね?絶対これ、わざとだよっ!
そうじゃなきゃ、こんな色気出せる訳ないっ!

ドキドキドキドキ・・・


だけど、次に専務が言った言葉はちょっと違ってた。

「あのよ。お前の部屋、用意してんだ。」
「・・・あたしの部屋?」

少しだけ照れたような様子がちょっと可愛い。こんなにカッコいいのにね。
専務があたしの手を引いて、リビングの奥の方へ歩いて行く。
ミニバーカウンターの隣に、冷蔵庫とミニキッチンがある。
あれ?ここってこんなキッチンあったっけ?

その横に扉があって、専務がその扉を開けた。
中を覗いてみると、

・・・あっ!

そこは、専務の隣の部屋で、つまり、さっきあたしが通された部屋。
あたしがついつい眠くなっちゃって、少しだけ寝ようとしたらすっかり寝入ってしまった客室だった。


「ここ、さっきの部屋?」
「ああ。ここは、俺がお前の為に準備した部屋だ。」
「あたしのため?」

あたしの手を引いたまま、堂々と部屋の奥に入って行く。
リビングスペースの奥は、書斎とベッドルーム。
書斎のデスクは白いアンティーク調のもので、猫足が可愛い。
よくよく見れば、たっぷりと襞の取られたカーテンはクリーム色の花柄だし、ベッドスプレッドだって落ち着いた感じのピンク色でレースがあしらわれてる。
どこかのお嬢様のお部屋って感じ。
つまり、とてもあたしが使うような部屋じゃないってこと。


「ここ、好きに使っていいから。向こうにシャワーもあるし、服もだいたい揃えた。」

そう言って専務がドアを開けると、そこはウォークインクローゼットになっていて、人ひとり住めちゃうぐらいに広い。レールにはたくさんのスーツやドレスが掛かってる。引き出しにはどうやら下着や小物まで用意されているみたい。仕切りの奥には靴まで並んでる。

専務があたしのために揃えてくれたもの・・・
そう考えれば嬉しいはずなのに、あたしは戸惑ってしまった。
嬉しい、嬉しいけど・・・違う。
違い過ぎるよ・・・あたしと専務が住む世界は。


あたし、全く分かってなかったのかも知れない。
この人と付き合うということは、この人の恋人であるということは、こういう生活に馴染んでいくこと。
それって、あたしにできる?

そうだよ。
彼は、道明寺財閥の御曹司だ。
みんなが騒ぐ類まれなる美貌だけじゃない、地位も、名誉も、全てを持っている人。
あたしの事、好きだって言ってくれるその言葉は信じてるけど、この人にふさわしい女性は、あたしじゃないんじゃないかな?
こういうお部屋を当然のように使って、目の前にあるドレスをさらっと着こなすような、そんな女性がお似合いなんじゃないの?

突きつけられた現実に、涙が出そう。
あまりにも無知だった自分を殴りたい。
さっきまで楽しかった気分が急降下して、足元が冷たく感じた。



専務がそんなあたしの気持ちに気付いたのかどうかは分からない。
無言でクローゼットから踵を返してベッドルームまで戻った時に、背中に温もりを感じた。

「こういう部屋はお前の好みじゃねぇかもしんねぇとは思ったんだけど・・・」

背中から肩に腕を回されて、専務にぎゅっと抱きしめられた。

「俺はこういうのしか思いつかなくて・・・。女ってのは、こういう白いデスクとか好きなんかなとか、服もよく分かんねぇから、俺が好きなブランドで揃えちまったけど、また一緒に買いに行けばいいかなとか・・あーちくしょ、上手く言えねぇけど、後はお前が好きなようにアレンジしてくれたらいいから。」

アレンジって言ったって、こんな素敵なお部屋、もう手を加える必要なんてないじゃないの。
なのに、専務が凄く必至で、優しい言葉ばっかり言うから、
グスッ・・・涙と一緒に鼻水まで出そう。


「あ・・ほら、あれだ。お前が大事にしてるとかいうスカンクのヌイグルミ、持ってきてやったから。」

グスッ・・スンッ・・・・ん?
別にあたしはホームシックって訳じゃない・・・ん?

はっと顔を上げれば、ベッドの奥側にあるサイドチェストに見慣れたヌイグルミ。
あれは、あたしの・・・

「あれ・・・あたしのラスカル・・・・」

小さい頃、パパが買ってくれたアライグマのラスカル。15年以上一緒にいて、ボロボロなんだけど捨てられなくて、いつも自宅のベッドに置いていた。

「何でここにあるの?それに、スカンクって何よ。アライグマでしょ?」
「あ?」

とぼけた専務の声に、涙が引っ込んでしまった。

「俺もなんか準備しようかと思ったんだけどな、良く考えたら隣にすぐ俺がいるってのに、ヌイグルミ買うのもおかしいだろ?」
「・・・そうじゃないでしょ?」

どうしてこのヌイグルミがここにあるの?

聞きたくて、振り返ろうとしてもできなかった。
あたしを背後から抱きしめる専務の腕に、一層力が籠ったから。


「親父さんとお袋さんには話は付けて来た。」
「何の話?」
「お前をこの邸で預かっていいかって。」

どういうこと?
あたしをこのお邸で預かるって??

「真剣に付き合ってるって言って来た。近いうちに結婚を考えてるって伝えた。」

思わず息を飲む。

嘘でしょう?
なんで、そんなに勝手に、しかも急に?
結婚なんて、そんなの、無理にきまってるじゃない。
家柄の違い、立場の違い、あたしは今日、痛いほど感じたのに。
そんなこと、専務が分からない筈ないのに。


専務のことが好きだ。
だけど、あたしはこれからどうしたらいいんだろう?


「専務は、あたしが専務にふさわしいと思うの?」
「ふさわしいだろ?」
「あたしには、地位も、名誉も、美しさも、何にもないよ?」
「そんなの俺が全部持ってる。」
「自意識過剰っ!」
「本当のことだろうが。」

本当のことだよ。
だから、そんな専務にあたしが釣り合うはずがない。


「地位も、名誉も、金も、この容姿も、何だって持ってる。けど、一つだけ足りねぇんだよ。」

何でも持っている専務に足りない物・・・それは何?

「お前しかいねぇだろ?俺が生まれて初めて惹かれた女で、すげぇ好きで、愛してて、それで俺を愛してくれる、この世の中でただ一人の女。」


ああ・・・・
専務のことを好きな女性は世の中にたくさんいる。
けど、専務が好きなのはあたしだけだって言ってくれるの?


「なぁ、ここにいてくれよ。俺を一人にするな。」


全てを兼ね揃えているこの人が、あたしを必要としてくれる。
あたしは、この家に見合う人間ではないけれど、それでもいいの?

釣り合わない人だ。
そんなことは十分分かった。
だけど、こんな風に懇願されて、この人を置いて出て行くことなんて出来るはずがない。

でも、この人の傍にいるということは、きっと大変なこと。
今までのあたしの常識なんて通用しない。
それに溶け込んでいくことなんて出来る?
あたしにそれが出来るの?


「そのままのお前でいいから。何もしなくていいんだ、ただ傍にいてくれたら。」


これ程に必要とされている。

そのままのあたしでいいって・・・本当に?
それなら・・・あたしは・・・・



ふぅっと一つ深呼吸をした。

「ねぇ、コンビニでお菓子買って帰って来てもいい?」
「ああ。」

「洗濯はできるだけ自分でしたい。」
「いいんじゃねーの?」

「あたしが何をしても怒らない?」
「怒らねぇよ。つーか、何すんの?」

ククッと専務が笑う。
専務の腕の力が緩んだ瞬間に、あたしはクルリと向きを変えた。
専務と向き合う形になって、専務と目が合った。



ゴクッと唾をのむ。

全てを持つ、恐らく世界に二人といないほど稀有なこの人が、

そのままのあたしでいいと言うのなら、
何にもなくていいのなら、
彼を愛してるだけでいいって言うのが本当なら、


あたしは両手で専務の左腕を思いっきり引いた。


___ドスンッ!



専務をベッドに押し倒した。


「責任、取ってもらうから。」

専務を睨むんでるつもりなのに、ちょっと手が震えちゃう。

次の瞬間には、グイッと腕が掴まれて、気が付けば体が反転してた。
専務に見下される体勢になって、

「上等!」

嬉しそうに専務が笑った。



ほっとした。
そして、凄く嬉しい。
あたしがするべきことは特別なことじゃない。
思いっきり、彼を好きでいればいい、ただそれだけでいい。




いつの間にか、自然と絡みつくように抱き合ってる。
まだたくさん経験した訳でもないのに、この人の大きな体があたしにぴったりと沿うのは何故だろう。
あたしの小さな胸に、気持ちよさそうに唇を寄せてくる。
だんだん息づかいが荒くなって、凄くあたしを欲しがっているのが分かる。
それでもゆっくりとあたしを解してくれて、あたしを壊れものでも扱うかのように大切にしてくれる。
そんな彼が愛しくて、

「もう・・大丈夫・・・」
「牧野・・・」

もう大丈夫。
何も怖くないし、どんなことでも受け入れられる。
ゆっくりと目を閉じて、彼の温もりだけを感じたい。

そっと瞼にキスをされて、その後に、
ズンッと下から凄まじい衝撃が走った。
やっぱりまだ痛いけど・・・凄く幸せな気分。


そのまま幾度も彼があたしの中を往復して、
あたしはされるがままに彼にゆすられていた。

子宮がじんわりと熱くなって、ぎゅうっと収縮する。
意識が遠のきそうになった時に、体の底から湧き上がってくるエクスタシー。
何かに捕まっていないと飲み込まれそうで、何も考えられない。
無我夢中で、あたしは専務の背中に爪を立てた。

「あっ・・・せんむっ・・」
「牧野っ!」

専務の声が凄く遠くに聞こえて、唯々その感覚に身を任せることしかできない。
身体中が震える位の快感が押し寄せた。


何が起こったのかよく分からない。
あたしの上に落ちて来た専務の満足そうな顔がぼんやりと見えた。
そんな専務を見れたら、あたしはもう幸せ。


「・・・ずっと傍にいて・・・・・」


あたしが傍にいたい。
頼まれたからじゃない。
この人がいないとあたしも幸せになれない。


答えはいつもシンプル。
大切なものは、お互いを想う気持ちだけ。
それさえあれば、きっとあたしは大丈夫だ。


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2018/02/07 (Wed) 15:04 | EDIT | REPLY |   
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2018/02/05 (Mon) 07:54 | EDIT | REPLY |   

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