Happyending

Happyending

「ようこそ、道明寺司の誕生日パーティーへおいで下さいました。」


17時から受付開始と同時に、ゲストが続々と来場される。
パーティーの招待客たちはみんな艶やかだ。
パーティードレスなんて着たことがないあたしは、唯々驚くばかりだった。

男性は、しっかりと髪をセットして、フォーマルスーツを着こなしている。そこら辺の安物じゃないことなんてすぐに分かる。靴はピカピカに磨き上げ荒れていて、傷一つない。
女性は、綺麗に髪をアップにしたり、カールを撒いたり、とても華やか。胸が見えそうなドレスや、下着が見えそうなスリットが目を引く。磨き抜かれた肌に、存在感のあるジュエリー。
まるで映画の世界にでも飛び込んだみたい。


あたしは、自分のスーツを確認した。
全く変じゃない。
専務秘書として、間違った恰好をしている訳じゃない。


___「私は、シンデレラが嫌いなの。」

楓社長に言われた言葉がずっと頭に残ってる。

このスーツだって、専務が準備してくれたもの。
それを身に着けているあたしは、まるでシンデレラなんだろうか?
ううん、違う。たぶんそう言うことじゃない。
そもそも、あたしはこのパーティーに招かれている訳じゃない。
専務秘書として、ただ仕事でここにいるだけ。
つまりは、場違いな場所に出て来るなっていう牽制だったんじゃないかな。
もしも、専務に誘われるがままにパーティーに出席していたらどうだったんだろう。
それこそ、本来出席出来るはずのないパーティーにのこのこやってきた、恥知らずなシンデレラだと貶されたんだろうか?
だけど、シンデレラだって・・頑張っていたんだよ・・・


ああっ!もう、だめだめ!
今はこれはもう考えないって決めたのに。
今日は専務の誕生日パーティーなんだから、それを成功させることがあたしの役目。
それすらも出来なかったら、あたしの価値は本当に無くなってしまうもの。

本当は凄くショックだった・・・
この数週間、専務とずっと一緒にいたから、当然これからもずっと一緒にいられると思い込んでいた。
社長の言葉をなんとかいい意味に捉えたくて考えても、いい意味なんて見当たらない。

だけど、今はそんなことを考えている場合じゃない。
これ以上考えたって、涙をこぼしたって、何も解決しない。
それぐらいはあたしにだって分かってる。

しっかりしろっ、つくし!!
あたしは両方の頬っぺたをパチンと叩いた。




パーティーの開始は18時。
受付は17時から開始され、パーティー開始までは、自由にお庭やウェルカムルームで歓談頂くことになっている。ホールではそろそろビュッフェの準備が始まっているはず。
万事滞りなく進んでいる。

あたしは受付に立って、続々とお祝いに駆けつけるゲストを確認していた。
今日のゲストは約300名。
そのうち、ビジネス上特に重要視されている方の名前は頭に叩き込んでいる。食事の好み、ワインの好みから全て。これは、西田室長に初日から言われていた事だから。

しっかりしなきゃ。
楓社長がどういう考えであろうと、仕事はきちんとしなきゃ。

今、自分が今やるべきことに集中しよう、
そう思いながら、来場するゲストに目を走らせていると、


___あれ?

少し離れたところで、車椅子に乗った白髪の外国人男性が、恐らく秘書と思われる人と一緒に止まっていて、タマさんが困惑した様子で対応している。

車椅子を使っている方が来るなんて聞いていなかった。
受付からメイン会場ホールまでは庭園を通っていただく。そこには段差もあるから、車椅子で直接通過するのは難しい。

大変!
スロープと迂回するルートを案内しなきゃっ。


「Excuse me !」










「ここは、楓社長が司専務をご出産された年にに造られた記念のバラ園なんです。」
「カエデが?」
「ええ。冬に咲くバラなんて珍しいですよね。ここには多品種が植えられていて、一年中、色々な品種のバラが咲くんです。年間を通じてバラを鑑賞できるなんて素敵ですよね。」

あたしは、白髪の男性の車椅子を押しながら、バラ園の説明をしていた。
駆けつけたあたしにタマさんが妙に驚いていたけど。
でも、意外。タマさんが外国人と話しているなんて。タマさんって英語が話せるんだ。さすがは道明寺家のメイドさんだわ。
スロープへ御案内しようとした時に、丁度秘書の方の携帯電話が鳴り、あたしが車椅子の補助を引き受けた。
そして、おしゃべりをしながらこのバラ園まで案内をしてきたんだ。


「我が子が生涯にわたって咲き誇るように、一年中咲くバラ園を造ったのかな?」

実を言えば、このバラ園の意味は聞いていないから分からない。
だけど、専務と専務のお姉さんの椿さんを出産した楓社長が作ったということは事実だ。
このバラのように気高く・・・そんな意味もあるのかも知れないけれど、あたしは、何か違う意味があるんじゃないかなって考えていた。

「その答えは楓社長にしか分からないんですけれど。でも、このバラ園は、司専務の寝室から見える位置にあるんです。海外で暮らされている楓社長が、ここに残される子供たちを想って植えたんじゃないかなと思うんです。」

気高いバラのような存在である楓社長。
自分の代わりにこのバラ園が子供たちを見守っている・・
専務の寝室からこのバラ園を見つけた時、あたしはそう思った。

「へぇ・・・なるほどね。」

白髪の男性が右側の口角を上げて、ちょっと笑った。
その笑い方が誰かに似てる・・・ような気がする。

「彼女はなかなか難しい女性だから、そう思っていても、きっと口にはしないだろうね。」
「社長のお知り合いでしたか?」
「まぁね。」

そう言って、また笑ってる。
楓社長のこと、良く知っている人みたい。
あれ、だけど、この人誰だっけ?
車椅子のゲストの確認が出来ていなかったなんてかなりな失態だよ。
タマさんは知っていたのかな。
でも、楽しんで頂けているみたいで良かった・・・かな?


「そうだ!飲み物は如何なさいます?ここでは温かい飲み物をお出ししているんです。」
「そうだな、あのホットワインを頂こうか。」

周りのゲストはホットワインを手にしている人が多かった。
担当スタッフに手を振って合図をすると、見知ったメイドさんがこちらへワインを運んできてくれた。

「ありがとう。どうですか?飲み物は足りてますか?」
「はい。やはり温かいワインが人気です。皆様、ワインを飲みながら、お庭を鑑賞されています。牧野様のアイディア、バッチリでしたね!」
「あはは、それなら良かったです。」
「フォンダンショコラも喜んで頂いていますよ。」
「酒井さんのチョコは美味しすぎるものね!」

ウェルカムドリンクと一緒に配ったミニショコラは、パティシェの酒井さんの自信作。
直前に温めているから、中からトロリとホットチョコがとろけてくる。
素晴らしいお庭を、皆様に楽しんで頂くことは出来ているみたい。
ああ、良かった。

ふっと腕時計をみたら、もう17時半をとっくに回っていた。
そろそろ、メインホールへゲストを誘導しなくちゃいけない。
思っていたよりも、時間が過ぎるのはあっという間だ。


今後のスケジュールを頭の中で確認していたら、
「君は道明寺HDのスタッフなのかな?」
と、車椅子の男性があたしに聞いた。

「はい。専務秘書の牧野と申します。」
「ほう、専務秘書?ということはツカサの?」
「はい。」

「じゃあ、今日は君がツカサのパートナーを務めるのかな?彼に女性秘書がいるなんて初めて聞いたよ。」
「え?・・・いえ・・・・・」

パートナーかぁ。
そんなのもう、絶対に無理。
専務にどんなに誘われたって、パートナーになんてなれる訳がない。
あんなにはっきり言われたんだもの。

____「私は、シンデレラが嫌いなの。」
やだ・・また思い出しちゃった・・・


「これでカエデも安心するね。こんなに素敵なお嬢さんがツカサのパートナーなんだから。」

やめてよ、そんな風に言うの。
みんなそんなこと思ってる筈ないのに。

グスッ・・・
やだよ、泣きたくなんかない。こんなことで・・・

「どうしたの?」
「いえ・・・何でもありません。さぁ、会場に向かいましょうか?」


あたしはぐっと涙を堪えて、車椅子を押してホールに向かい始めた。
気持ちはやっぱり沈んだままだけど。
そんなことに気付く筈のない男性は楽しそうに話を続けてる。

「しかし、女性嫌いと噂のツカサに女性秘書とはねぇ・・・」
「・・・・そうですか・・ね・・・」

「ツカサの秘書は大変なんじゃない?ツカサも無駄が嫌いでしょ?」
「無駄?」
「カエデは無駄が大嫌いでね。まだるっこしいことは許せないんだよね。」
「えっと・・・」

男性は「ああ、可笑しい」と言いながら、

「特にシンデレラはカエデの天敵だよ。」

「えっ!?」

「王子と両想いの癖に、王子にローラー作戦で捜索してもらうまで自分じゃ動かないんだからさ。カエデにとっては、面倒くさい女性なんだよね、シンデレラは。行きつく結論が決まっているのなら、始めから自分で動けばいいのに。カエデは常に自分が先頭を切って動いて、ビジネスの世界を渡って来たからね。道明寺という巨大なバックがあっても、それに甘んじることなく、どんな苦境に立たされても常に前を向いて突き進んできた女性だから。きっと受け身な女性は許せないんだよね。ぷっ。ただの童話なのにね。まぁ、案外羨ましいだけかも知れないけどね。くくっ!」




楓社長がシンデレラを嫌いな理由。
それは、身の丈に合わないパーティーに出席したからじゃない。
魔法のドレスの力を借りたからでもない。
せっかく王子様とダンスを踊れたのに、魔法が解けるのことを恐れて、逃げだして、探してもらうまで自分からは動こうとしなかったから。
どんなに不安があったとしても、二人の気持ちは決まっていた筈なのに。
それって、本当は王子様を信用してなかったことになるんじゃないの?
信用していたら、自分から飛び込んで行けたんじゃないの?

あたしは・・・どうなの?


あたしは、専務が好きだ。
これから、ずっと一緒にいたいと思ってる。
それなのに、仕事だとか最もらしい理由をつけて、専務のパートナーを断った。
それはあたしにとっては大切なステップだと思ったけど、自分に自信が無くて逃げていただけなのかも知れない。
彼が大丈夫だって言ってくれるその言葉を、信用できていなかった・・?

お互いにずっと一緒にいたいと思っているのなら、
彼を信じているなら、
今この瞬間も、ずっと隣にいるべきだ。

誰に何と言われても、その場所から逃げちゃいけない。


楓社長は、あたしのこと、
専務のことが好きなっくせに、回り道ばっかりしてる、
面倒くさい女だと思ったのかな・・・




車椅子を押すことも忘れて、じっと立ち止まってしまった。

向こうからタマさんが歩いて来るのが見える。


「つくし、何をぼーっとしてるんだい。部屋に坊ちゃんが用意したドレスがあるからね。さっさと準備しなよ。」


「あ・・・あたし・・・・」


「早く、準備した方がいいんじゃない?牧野サン。」

男性はやっぱり笑ってる。



「タマさん、こちらのおじ様をホールまでお願いします!あたし、準備してきます!」





専務と一緒になるために、このパーティーを成功させようと思った。
成功したら、専務のご両親にご挨拶するつもりだった。
だけどそうすることに、どれだけの意味があるんだろう。
専務に一緒にいて欲しいと言われていたのに、
誕生日に隣にいてあげることもしないで・・・


あたしも、シンデレラは嫌いだ。
だから、自分から飛び込んでいこう。
彼に最高の誕生日プレゼントをあげよう。


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いつもたくさんの応援をありがとうございます。
鼻水が止まって、頭痛が軽くなりました(*^^*)
ただ咳をすると腰が痛くて・・早く止まってくれないかなぁ(-_-;)
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2018/02/10 (Sat) 20:28 | EDIT | REPLY |   
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2018/02/09 (Fri) 18:52 | EDIT | REPLY |   
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2018/02/09 (Fri) 08:58 | EDIT | REPLY |   
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2018/02/09 (Fri) 06:09 | EDIT | REPLY |   
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2018/02/09 (Fri) 01:21 | EDIT | REPLY |   

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