Happyending

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「牧野様、こちらです!急いでくださいっ!」

白髪のおじ様と別れて、あたしは走った。
専務が用意してくれたというドレス。どこにあるんだろう?クローゼットに入っていたのかな?
そんなことを考えていたら、途中の道々で、メイドさんがあたしを誘導してくれた。

案内されて、とある一つの部屋に走り込むと、そこには、青空色のドレスがトルソーに飾られていた。
青過ぎず、白過ぎず、絶妙な色味のドレスに息を飲む。
上半身はチューブトップでぴったりしているけれど、腰から下は綺麗なドレープが流れていて、何の飾りも付いていないのに華やかだ。

先ほど受付でたくさんのゲストを見たけれど、こんなに素敵なドレスを着ていた人はいなかったんじゃないかな。

「牧野様、こちらへ!」

思わずドレスに見惚れていたら、二人の女性に両側から腕を掴まれて、その場で服を脱がされる。

「ややっ!ちょっと待って!」
「お時間がありませんよっ!男性はおりませんから、安心してください!!」

身ぐるみ剥がされて、タオルで体を隠されて、まずはメイクと髪のセットのやり直し。
自分でも今日は結構念入りにお化粧をしたと思ってたんだけど、やっぱりプロは違う。
ポンポンポンと叩かれるように塗られるファンデーションは薄付きなのに艶やかだ。
瞼に魔法のように載せられたアイメイクはいつもより少し大人っぽく見える。
一本一本丁寧に塗られたマスカラ。
ほんのりと乗せられたピンクのチーク。
ワインレッドの口紅なんて初めて。グロスを塗ればプルプルの果実みたいだ。

アップにしていた髪はダウンに直された。
こてを当てて、クルリと巻かれた毛先が、肩下で揺れる。
あたしは生まれつき癖のないストレートの髪だから・・凄く新鮮。

コルセットで体を締めてから、青空色のドレスを身に着けた。

ぴったり・・・

たぶん、似合ってる・・と思う。
自分で選んだ訳じゃないのに、試着だってしていないのに、サイズからデザインから、全てがあたしにぴったり合っている。

「とても良くお似合いです。司様がデザイナーに生地から注文して作らせたそうですよ。」
「生地から?」
「こちらの生地は、ウエディングドレスで使われるものと同じ最高級シルクです。それを糸からスカイブルーで染めて織るだなんて、一体いつから準備されていたのでしょうね。」

すぐに準備できるようなドレスじゃない。
ずっと前から考えてくれていたんだ、あたしをこの日のパートナーにって。
あたしとパーティーに出席するのを楽しみにしてくれていたんだね。

このドレスはごてごてした飾りもなくて、どこまでもシンプル。
どんなにゴージャスなジュエリーを身に着けても、このシンプルな美しさには敵わないと思う。
それは何故って?
高級素材で作られているからってだけじゃない。専務があたしのことだけを考えて作ってくれた究極の一着だから。このドレスには専務からの愛が詰まっているから。

このドレスは魔法で出してもらったものじゃない。
専務があたしの為に用意してくれたもの。
専務はあたしの素性なんて初めから知っているんだもの。
だから、あたしは逃げも隠れもする必要がない。

7センチのパンプスはちょっと不安定だけど、このドレスにはきっと似合う。
パンプスに足を入れて、すっと立ち上がってみると、たった数センチの違いなのに、世界がまるで違って見えた。
中身のあたしが変わった訳じゃないのに、このドレスと靴が、あたしに自信とパワーをくれる。

それに例え何か失敗しちゃったとしても、あたしの気持ちが変わる訳じゃない。
あたしが専務が好きだって言うことが一番大事。
あたしはシンデレラじゃないんだから、回り道は必要ない。



「牧野様、もう始まります。急ぎましょう。」

慣れない7センチヒールで、会場へ急ぐ。
早く会いたい。
このドレス姿を見て欲しいな。
びっくりするかな。



すでに始まっているパーティー会場のドアをそーっと開けた。
中では楓社長のスピーチの真っ最中。
誰にも気づかれないように中に入ることが出来てホッとした。
楓社長の少し後ろに立っている専務は、黒の細身のタキシード姿。
凄いわ、いつもよりさらに手足が長く見える。
うわっ、髪型が違うっ。ウェットな感じで後ろに流された髪。
もう!悔しいけど、犯罪級にカッコいい!!

この人はあたしの恋人なのよーって、大きな声で言っちゃいたい。
ドレスに着替えただけなのに、あたしは何だか凄い武器を備えたみたいだ。
だってこのドレスはあの人があたしの為に作ってくれたんだもん。

でも、ププッ!
蝶ネクタイとかしちゃうんだ。しかも、それが似合ってるし・・。

あっ、専務がこっち見た。
気が付いたかな?あたし、大変身なんだけど?どうかな?
胸の前で、小さく右手を振ってみる。
なんだか固まってるけど、気付いてないのかな。
だから、もう少し大きく手を振ってみた。

その時、

「皆様、息子も今年で26になります。こちらにお集りの女性は素敵な方たちばかり。このパーティーで、どなたか素敵な女性に巡り合えることを楽しみにしています。では、どうぞ、ご歓談を。乾杯!」

え?今、何て??
大きく目を開いた時、楓社長と目があった・・気がする。
社長が一瞬だけ、凄く挑戦的に微笑んだ。
出来るもんならやってみろ?

この大勢のゲストの中には、素敵な女性はきっとたくさんいるけれど、専務にドレスを贈られたのはあたしだけだよ。
もう、巡り合ってる・・運命の人なの。

誰にも渡したくないから・・

あたしは一気に駆け出した。







ババァの奴っ!余計なことを言いやがって!!

そんな事を大っぴらに言ったらだな・・ほらみろっ!

檀上を駆け下りた俺に群がる女ども。

「道明寺様!わたくし、○○物産の・・・」
「わたくし、以前からずっとお慕い申し上げていましたのっ!」
「ちょっと、おどきなさいよ。私が先よ!」

触んな、ブスッ!!
こんな奴ら、張り倒して進みてぇけど、女相手に、しかもこの場面ではそうする訳にもいかねぇ。

はっと、正面を見れば、息を切らせて駆け寄って来た牧野が、すげぇ目つきで・・睨んでる?

こっ、これは、俺の意図じゃねーし。
俺にはお前だけだ!分かってんだろ!!
こんな雑魚、目に入らねぇし。

牧野が大きく深呼吸をした。
どうした?まさか、怒って帰るんじゃねぇだろうな?


「つ・・司さん!!」


すっげぇデカイ声で、俺を呼ぶ。
しかも、司さんって・・
そんな呼び方、したことねぇだろ?
周りの奴らも、シーンと静まり返って牧野を見る。

いつの間にか、俺の前の女は左右に散り、俺の真正面には牧野の姿。

「お誕生日、おめでとうございます。」

我に返ったのか、少しだけ恥ずかしそうに牧野が笑った。
俺は自然と開かれた道を、一歩ずつ牧野に向かって歩いて行く。
視線は、彼女の瞳から一瞬たりとも外さない。

牧野の目の前に立った。
俺がこいつをこの場で紹介しようとした時に、


「私を選んでください。必ず、あなたを幸せにすると誓います。」

静まり返った会場に響いた牧野の声。
その場にいた全員が息を飲んで俺の返答を伺っている。

こいつは何を言ってんだ。
何震えてんだよ。
選ぶも何も、始めから俺にはお前しかいねぇ。
だけど、この場で、こいつがこう言うということは、覚悟を決めたってことなんだろう。


「俺も、あなたを幸せにすると誓います。」

牧野の細い体を引き寄せて抱きしめた。
彼女の手が俺の背中に回って、痛ぇぐらいに締め付けられる。

わぁ!!という周囲の騒めきなんて、何にも気にならねぇ。


____最高の誕生日プレゼントだ・・・




俺の胸の中に顔を埋めている牧野の耳元に囁く。

「すげぇプレゼント。めちゃくちゃ嬉しい。」

コクッとこいつが頷いた。

「ドレス、めちゃ似合ってる。」

また、コクッと頷く。
これだけの事をして恥ずかしいんだろう、
俺に抱き付いたまま顔を上げない牧野が可愛すぎる。

「こんな可愛いことして、今晩覚えとけよ。」

そう言ってやったら、
ガバッ顔を上げて、ブンブンと首を横に振る。

その片方の頬を抑えて、ゆっくりと唇を合わせた。


世界中の全人類に見せ付けたい。
俺たちが、どんなに愛し合ってるかってことを。

俺の隣に立つ女は、こいつしかいないんだってことを。



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いつもたくさんの応援をありがとうございます。
バレンタインですね~!
もう、日々バタバタで、バレンタインのお話は無理なのですが、お友達の『とりあえず...まぁ。』のkomaさんに、遅ればせながら2周年記念の短編を送り付けちゃいました!丁度、本日のお昼にアップして下さるそうです~。って、ほぼ同時になっちゃった!(笑)。そして、相変わらず長文で申し訳ない~。でも、それ位に愛をこめたってことでww。そちらも是非、とか宣伝してみる(笑)。
では、仕事に行ってまいりまーす。
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こんばんは~(^^♪ ②

F●様
コメントありがとうございます(*^^*) えへへ。こちらこそありがとうございました。
すでに出来上がった中にお邪魔させていただいたので、花男のお話(司のお話?笑)出来なくて、本当に残念~!!
じっくりとつかつくについて語りたかった(笑)!! 
でも、基本的にまったりと一人で自分の世界に閉じこもるのが好きなタイプなんですけどね(笑)。
マイペースでで続けていけたらと思います。どうぞ、またお立ち寄りくださいね~(^^)

あ●様
そうなんです(笑)。それゆけ、つくしちゃんなんです。バレンタインだから!
そうそう、原作前半は、なんて司に酷いことしやがる!と思っていたけれど、後半はつくしちゃん頑張ってますよね。絵も可愛くなった(笑)。
あちらも読んで頂きありがとうございます。そうかぁ、他の方にもドキッとしたとコメ頂きました(笑)。私の中では、あきら君、相当安全パイで、心配していなかった・・。ライバルと言うと(私の予想)、やはり類>総ちゃん>>あきらでしょうか(笑)。すまん・・あきら・・。司も類君とこだったらOKしてないんじゃないかな~。
オフ会って、そうなんですよ。私は全くはじめてだったんですが、類つくさんは元々みなさん仲良しさんみたいで、秋にあった大規模リレーのメンバーさんてかなり繋がりが深い方たちだったようです。それで今回もオフ会があるという情報をキャッチ(笑)。私も、東京へ行くついでに帰りにお邪魔したんですよ。でも、いきなり溶け込むのは難しい・・。つかつくさんと、司愛について語りたかったけど・・(笑)。
そうなんですか!あのアパートはそちらに!!(笑)。本当に、ロケ地巡りしてみたいなぁ。

さと●様
私もね~。書いていて、こりゃやり過ぎか?いや、バレンタインだから・・と葛藤あり。これじゃ、結婚式じゃん!!と自分でツッコミ入れてました。きっと、周りの招待客はドン引きでしょう・・・。その辺りは、軽くスルーでお願いします(笑)。司がオーダーしたドレス。このあたりは流石司!つくしちゃんの頑張りもあり、司の愛もあり・・そしてこのお話、早く終わりにしよう!!と思います(笑)。

2018/02/15 (Thu) 21:04 | EDIT | REPLY |   
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こんばんは~(^^♪ ①

いつもたくさんの拍手をありがとうございます。
お返事をするのも一つの息抜きになっているのに、最近は本当にバタバタしていました。
でもお返事書きたい気分なんですよね~(笑)。

ではでは。
じゅんこ様
こんばんは(*^^*)そうそう、書き忘れたけれど、まさにバレンタインモードだったんです(笑)。バレンタイン単独のお話は無理だったので(^^;) バレンタインなので、つくしちゃんに頑張ってもらいました!楽しんで頂けてうれしいです(≧▽≦)

スリ●様
komaさんよりも先にアップしておくつもりで午前中お休みだったから頑張っていたら、小学校から子供が怪我したとかいって電話で呼び出され・・12時ぎりぎりになっちゃったんです(^^; あ、怪我はたいしたことなくて、連れて帰って来なくても良かったんじゃないかと思っていますが・・仕方ない・・。そうなんですよ、もう、パパとママとかスルーしちゃいたい感じだったのですが、書かない訳にも行かず(そりゃそうだ!笑)、急いで今日アップしました。そして、もうこのお話は終わろうと思っています。はぁ・・・長かった!!

花●様
つくし頑張ったでしょう??バレンタインですからね~(笑)!司も嬉しかったことでしょう。だいたい、つくしちゃんが頑張れば、司君は幸せになれるんですよね~。単純男司、これがまた好き(≧▽≦) 私も、もちろん、今年も司一筋ですよ~!!

2018/02/15 (Thu) 20:44 | EDIT | REPLY |   
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2018/02/14 (Wed) 23:59 | EDIT | REPLY |   
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2018/02/14 (Wed) 20:32 | EDIT | REPLY |   
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2018/02/14 (Wed) 20:17 | EDIT | REPLY |   
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2018/02/14 (Wed) 17:57 | EDIT | REPLY |   
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2018/02/14 (Wed) 15:34 | EDIT | REPLY |   
じゅんこ  
こんにちは✨

やばーい!やばーい!やばーい!💕💕
甘いわぁーー❣️❣️つくしの若干エレガントな具合も素敵やし、司のプロポーズみたいなのもきゅんきゅんしちゃうし最高ですぅぅぅぅ❣️
バレンタインモードなのかしら(笑)どーやって紹介するのかなぁと思いましたがとっっってもスマートかつ胸きゅんな流れで良かったです( ´∀` )b
ありがとうございましたヽ(●´ε`●)ノ

2018/02/14 (Wed) 15:30 | EDIT | REPLY |   

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