Happyending

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「それでは、ご歓談中の皆様、ステージ中央をご覧ください。」

パッとスポットライトが俺に向けられた。
俺が立たされているのは、でっけぇスクエア型のケーキの前。
確かに生クリームとは言ったけどよ。白すぎねぇ?
しかも、こんなにでけぇの用意してどうすんだよ。
思わず、顔が引きつった。
そのケーキには、1本だけ蝋燭が飾られていて、火が灯っている。
まさか・・全員で歌とか歌うんじゃねぇだろうな・・?

隣では、俺の婚約者である牧野が、わくわくした様子で俺を見上げた。

会場の端の方では、あきらたちが今にも吹き出しそうな顔をしてる。
そりゃ、そうだろう。
俺は人前で、歌を歌われたり、ケーキの蝋燭を吹き消したりしたことなんてねぇ。

けど、今年は仕方ねぇ。
こいつがこれだけ楽しみにしてるんだから。

・・・と腹をくくった時に、牧野が背伸びをして、
「ピアノの演奏が終わったら、ふーって吹き消してね!」
と囁いて、俺の隣から消えた。

は?

振り返ると、後方に用意されたグランドピアノの前に彼女が座って笑っている。

まさか、こいつが演奏するのか?
ピアノなんか弾けるのかよ?
牧野の実家にはピアノなんてもんはなかった。

オヤジとお袋も、笑いながら俺らを見つめてる。

俺だけかも知れねぇけど、妙な緊張感だ。
あいつはお嬢なんかじゃねぇし、ピアノなんかできる訳ねぇ。
なのに、何であんなに笑ってんだ?


♪・♪♪・♪・♪・♪・・・


会場の全員が牧野に注目する中、流れ出したのは、聞き覚えのある『Happy Birthday Song』のジャズアレンジ。
流れるようなメロディーが、途中からアップテンポに変わった。
それと同時に会場から手拍子が入る。
牧野はにこにこと笑いながらピアノを弾いている。
すっげぇ、楽しそうだ。

それほど長くはないその曲が終わるまでの間ずっと、俺は牧野を見つめていた。
俺のために引いてくれるメロディーが心地よくて。
しかも、俺の心配をよそにかなり上手い。
この日のために、相当練習したんじゃねーか?これ。

会場の一体感。
これだけでこのパーティーは成功だと誰もが分かる。
時々牧野と目が合って、ニッコリ微笑まれた。

どんなに豪華なプレゼントよりも、彼女に微笑んでもらえることが嬉しい。
彼女が愛を表現してくれることが嬉しい。

俺、死ぬんじゃねぇの?
こんなに幸せで、死んじまうんじゃねーの?


最後のトリルとフィニッシュの和音を叩いて、牧野が満足気にゆっくりと鍵盤から手を下した。
それから立ち上がって一礼したところで、盛大な拍手。
そのまま俺の隣に戻ってきて、ろうそくを吹き消すようにジェスチャーをした。

恥ずかしさなんてどっかにいっちまった。
迷いなく一気に吹き消して、そのまま牧野に飛びついた。
牧野がポンポンと俺の背中を叩くから、会場から大きな笑い声が上がった。

ガキじゃねーぞ、俺は。
けど、嬉しい。嬉しくて、仕方ねぇ。
きっと道明寺司のイメージが崩れるだろうな。
でも、それでいい。
これからは、妻一筋の男だと思われれば、それでいい。


その場でパティシエが小さくケーキを切り取った。
皿にのせられたケーキを、牧野が俺に渡そうとする。

「お前が食わせろよ。」
「え?何で?」
「甘いもん、苦手なんだよ。自分じゃ食えねぇ。」
「ええっ!そうなの??そんなこと、もっと早く言ってよ~!!」

小さく頬を膨らませる牧野。
こんなやり取りにも幸せを感じる。
お前が楽しみにしてるから言えなかったんだよ。
仕方なさそうに、牧野がフォークで一口分のケーキを切って、俺の口の中に入れた。

「甘ぇ・・」
「来年は、もっと甘いのにしよっかな。」

牧野が意地悪そうに笑っても、それが楽しくて俺も笑っちまう。
こんなに幸せな誕生日が来るなんて、夢にも思わなかった。


来年は・・・
そうだな、来年も、再来年も、そのまた先も、
これからは、ずっとこんな風に誕生日が祝われるはずだ。

そんな未来が待ち遠しくなった。







***



「せん・・む・・・もう・・無理ぃ・・・・」
「専務じゃねぇだろっ・・まだ、全然足りねぇ・・・」

___誕生日の夜

何度彼女の中に入っても満足できない程、俺は牧野を求めていた。
パーティーであれだけ可愛い真似をして、これぐらいで済む筈ねぇだろ。
ボロボロになるまで抱き潰しても、きっと満足なんかできねぇ。
好きで、好きで堪らなくて、こいつの一言で舞い上がる。
悔しい位に惚れてる、愛しい女。
どんなに俺が愛しているか、どうすれば伝わる?
どれだけ抱けば、俺は満足できるんだ?

「あっ・・うっ・・・・はっ・・・ああっ!」
「つくしっ!!」

二人同時に駆けあがっていく、何度目かの波。

「もうっ・・・だめぇ・・!」
「だめじゃねぇって・・・まだ・・だ・・・」

中途半端な愛し方なんてしたくねぇ。
今夜は・・・全力で。

ギリギリまで上り詰め、彼女の体が震え出し、俺をきつく咥え込んだ。

「うっ!」

くそっ、イクッ!
まだまだ、愛したいのに。
まだ、イキたくなんてねぇのに。

「つかさっ・・!」

彼女が俺を求めるその声に、我慢が出来なくなった。
何一つ隔てることなく、俺の愛を彼女へ注ぐ。
そうすることで、少しでもこいつに伝わって欲しい。
俺がどれだけお前を求めているか。
お前以外の何者も、俺を満たすことは出来ないんだってことを。
俺にはお前が必要で、お前しか必要じゃなくて、
もう一生手放すことは出来ないんだってことを。



「つかさ・・・どうしたの・・・?」

互いに息を整えながら、牧野はもう体に力が入らないようだ。
それでも、俺を心配そうに見つめてくる。

「幸せ過ぎて、怖ぇ。」

正直にそう答えた。
そうだ、怖くなったんだ。
今、この瞬間の自分が幸せ過ぎて。

子供の様にこいつの胸に顔を埋めると、よしよしと頭を撫でられた。

「心配し過ぎ。あたしはどこにも行かないし。
あたしがあなたを幸せにするって言ったでしょ?」

クスクスとこいつが笑う。
俺の心配なんて、こいつにとっては大したことじゃないらしい。
俺にとっては、こいつが全て。
こいつを失ったら、もう生きていくことは出来ないってのにな。
どんなことをしてでも、絶対に守って、大切にする。

「どこにも行くなよ?」
「うん・・・分かってる。」
「一生大切にするから。」
「うん・・うん・・・。」

俺が精一杯の告白をしてるって言うのに、こいつはもう眠りに落ちそうだ。
そんな無防備さがまた俺を不安にするんだが、その純粋さにそれ以上に惹かれて止まない。
俺を信頼してる・・そう思っていいんだよな?

いつの間にかスースーと寝息が聞こえてきた。
仕方ねぇから、今夜はもう眠らせてやる。
だけど・・・


彼女の左手をそっと取った。
その薬指には彼女の誕生日に贈ったダイヤのリング。
その指輪をゆっくりと外した。
それから、ベッドサイドの引き出しからベルベットの箱を取り出して、その中から特別なリングを引き抜いた。
俺がデザインした、世界で一つだけのリング。
月明かりの中でも、キラキラと輝いている。
いつも輝いている彼女にふさわしい。
それを、すーっと彼女の左薬指に通した。

「ん・・・・」
と身じろぎをした牧野が、にっこりと笑う。


どうか、夢の中でも、俺のものでありますように・・・


そんな願いを込めて、
エンゲージリングにキスをして、
温かい彼女を抱き締めた。

震えるような幸せを、
俺は今日、手に入れた。


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いつもたくさんの応援をありがとうございます。
頑張ったつくしちゃんを労ったつもりでしたが・・あれ?笑。
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Comments 3

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こんばんは(^^)

いつもたくさんの拍手をありがとうございます。
幸せいっぱいの司君は書いていて、自分が癒されます。はぁ~。そして、早く終わりたい!(笑)。

さてさて、
スリ●様
そうそう、ピアノ!このエピソードは少し前から考えていて、これがつくしちゃんからの誕生日プレゼントになる予定で書いていたのですが、いつピアノなんて練習したんだ??と思われると思うのですが、ちょっとだけ伏線として、28話でピアノまで練習したと書いておきました(笑)。細かいでしょ!実は、このジャズアレンジ、遥か昔に私自身が弾いたことがあるんですよ。昔過ぎて忘れていましたが、ふっと思い出しましてね・・(笑)。原作では、当然弾けなかったつくしちゃんですから、リベンジ?(笑)。
甘いの頑張りましたよ!でも、どうやって締めるか分からなくなりました・・(^^;

花●様
うひゃっ!感謝されちゃいました(≧▽≦)!つくしを労わったつもりでしたが、相当疲れさせてしまいました(^^;どっちかって言うと司が幸せ・・(笑)。まぁ、いっかぁ!

he●様
私もみましたよ!LIVEではないですが、羽生君の演技!!素晴らしい!!どうすればあのようなメンタルを付けることができるのでしょうか!!宇野君も素晴らしかったですね。田中君もフリー頑張って欲しい!頑張れ日本です!
明日は、もしかして大阪ドームですか?いいですねぇ。弾けて来て下さいね~!!


さて、明日も朝が早く、バタバタしています。
週末はマイペース更新になります。時間を見つけて書いていきますね。
ラストに向けて、もう少しお付き合いください。

2018/02/16 (Fri) 22:59 | EDIT | REPLY |   
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2018/02/16 (Fri) 09:38 | EDIT | REPLY |   
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2018/02/16 (Fri) 07:22 | EDIT | REPLY |   

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