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Happyending

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さてどうする?

もう夏休み直前だ。
司が指定してきたのは8月の始めの3日間。
牧野の奴・・・絶賛バイト中だろ?

とりあえず、俺は牧野の予定をチェックすると、案の定、高校生の家庭教師バイトと、義理堅く続けている団子屋のバイトがあることが判明した。

そこでまず、団子屋の女将さんと交渉だ。
その3日間、店を閉めてくれ・・・
真面目な牧野のことだ、盆前の和菓子屋は毎年混雑するからバイトは休めないとか言うに違いねぇから先手を打った。
こっそり事情を話すと、女将さんとの食事デート1回でOKしてくれた。
メープルで最高級のディナーをごちそうしたんだぜ?
もちろん、このことは牧野には内緒だ。

次にカテキョーだ。
牧野が教えているのは高校1年生の女の子。
受験生でもないその子には、丁度申し込んでいたという語学研修旅行をプレゼントしてオーストラリアに旅立ってもらった。

何で俺がここまでしなきゃなんねーんだ?という疑問もあるが、やっぱり牧野に笑って欲しい、それだけなんだよな。牧野を心から笑顔に出来るのは、司しかいねぇから。それに、司が4年の約束を果たすためにどれだけ頑張っているかを知っている俺だからな。

そんな訳で、司の指定する3日間、牧野の予定はフリーになった。



満を持して、俺は英徳へ向かった。
明日からはもう夏休みという日。それでも、勤勉牧野は大学に通っているに違いない。
俺の足は何故か軽やかだった。
牧野とドバイも悪くねぇし。司も忙しいだろうから観光にでも連れて行ってやるかと、読んだこともないガイドブックも買っちまった。

昼前にカフェに顔を出したが、牧野はいない。
まだ授業中かとラウンジでガイドブックに目を通していた。
宿泊先は司が指定してきたメープルで決定だ。
後は・・基本は買い物とかなんだろうけど、あいつはそーいうのはあんまり喜ばねぇよな。
だいたい金持ってねぇし。
となると、その辺の観光か、砂漠ってのもありか?
ラクダに乗せてやると楽しめるかも知れねぇな。
夜は夜景を見て、アラブ料理も美味いとこがあるし・・いいかも知れねぇ。
民族衣装なんか着ても結構楽しそうだし、牧野はこういうのがいいかもな。

俺はいつものデートではこんなことはしない。
自分のテリトリー内で、年上の女を如何にスマートにエスコートするか・・それが全て。目の肥えた女たちはステータスのあるデートを期待するからな。
けど、牧野は違う。
きっと何を見ても、目を輝かせて楽しんでくれるだろう。
あいつとならワイワイ言いながら楽しむのも悪くねぇと思える。
あいつの前では多少俺らしくない姿を見せても大丈夫だとほっとするんだ。
不思議だよな・・・


そんなことを考えていた時、
_____カンカンカン・・・・
とカフェの階段を誰かが上がって来る音がした。

はっと顔を上げるとそこには、これまた俺の親友、総二郎の姿。

「よう!あきら。」
「おっ、おぅ。」

俺は思わずガイドブックを隠そうとした・・が、間一髪間に合わず。
別に疚しいことなんてねぇんだけど・・・何となく、こいつに知られたくねぇような。

「なんだ、それ?ドバイか?お前、ドバイ行くの?」
「ああ、ちょっと検討中・・・」
「ふーん。マダムか?」
「いや・・・・・」

別に隠すことじゃねぇ。
だが、司にもこいつらを誘えとは言われてねぇし、俺も何となく牧野と二人でもいいかと思っていた。
いや、完全に二人じゃねぇ。それじゃ牧野も来ねぇだろ?
あいつはそういう女じゃねぇし。
うちの家族旅行に一緒についてこないかと誘うつもりだ。
牧野は俺の家族と仲がいい。初めは、テーブルマナーなんかをうちのお袋が教え始めたのがきっかけだった。うちに来た時には妹たちと遊んでくれるし、お袋の手料理も嬉しそうに食ってくれる。
俺は、旅行先で妹たちの面倒を見るのが大変だからとか言って、なんとか牧野をドバイに連れ出すという計画を立てた。
牧野大好きな俺の母親と妹たちはこの旅行に大賛成で、すでにチケットは手配済みだ。
もちろんこの3日間、俺も休みを取っている。

その計画がバレねぇように、さっとガイドブックを鞄に入れて立ち上がった。

「そろそろ行くわ。じゃあな。」

お?と少し意外そうな奴の反応をスルーして、俺はその場を後にした。

___悪ぃな、総二郎。



もう一度カフェを見渡したが、やはり牧野はいなかった。
中庭をブラブラと歩いていると、ベンチに座る牧野を発見した。
長い髪を1本に纏めただけのシンプルな髪型。
相変わらずジーパンにTシャツ姿で色気もねぇ。
だけど、夏の日差しを受けた牧野の横顔はすげぇ綺麗に見えた。
今だけでなく、将来を見据えている前向きな女の顔。
俺の周りに、こんな眼差しの女はまずいない。
ひたむきで、だけど貪欲で。
道明寺家で行われている花嫁修業だって、相当キツイと聞いている。
なのに、一回だって文句を言ったことがねぇ。結構面白いとか、食事代が浮くから助かるとか言って常に前向きだ。そんなこいつの姿に俺は何度気持ちが救われたか。
社会に出て、初めて経験したキツさもあった。ジュニアとしてそれなりの教育を受けて育った俺でも、相当キツイと思うことがたくさんある。庶民の牧野が俺らの世界に飛び込んでくることがどれだけ大変なことか、それを思えば自分の弱音なんて吐きたくなくなった。
司も、きっとそんな思いでいるのかも知れねぇな。
牧野が頑張ってるのは司のため。
司が頑張ってるのも牧野のためだ。


そっと牧野に近づいて、牧野の隣に腰を下ろした。

「あれ?美作さん?」

パンを食いながらノートに視線を落としていた牧野がその視線を上げた。

「どうしたの?大学なんて、珍しいね。」
「ああ、ちょっとお前に話があってな。」
「話?」

キョトンとしている牧野にちょっと笑い、俺は例の話を始めた。
お袋も、妹も一緒だ。
心配しなくていいだろ?
せっかくに夏休みだ、行こうぜ、ドバイ。

「でも・・・」
「バイトは都合つきそうか?」
「え?・・ん。丁度、その期間はバイトが無いの。だけど・・」
「金か?それは心配すんなよ。お袋も楽しみにしてるんだ。いつも妹たちと遊んでくれているし、そのお礼。いいだろ?」
「うん・・・お金のことも、もちろんあるけど・・・」
「何?」
「あいつ、何て言うかな?道明寺、この夏忙しいんだって。日本にも来れないって言ってた。それなのにあたしだけ夏休みにバカンスとか・・・さ。なんだか申し訳ないって言うか・・・。」

そうきたか。
こいつらしいと言えばこいつらしいな。
だけど、その心配は不要だ。
何故なら、向こうでは、司が手ぐすね引いて待っている。
日時はまだ決められねぇみたいだけど、きっとホテルで合流できるだろうと予想してる。
司なんて、例え30分牧野に会うだけでも日本に立ち寄るぐらいだ。数時間でも会いたいんだろうよ。
けど、今それを言ったら、牧野は「仕事の邪魔になるからいかない」なんて言い出しそうだから言わねぇけど。

「司に聞いてみろよ。な?」
「うん・・・・・」


勉強とバイト、それにこれからは就職活動で忙しくなる牧野。
4年の約束まであと1年もない。
たまにはいいだろ?
向こうでは司も待ってんだ。
俺がお前に、最高の夏休み作ってやるからさ。
行こうぜ?






***



「あきら君、待ってぇ。作って来たケーキが崩れちゃう!」
「お袋・・・そんなもん、機内に持ち込める訳ねぇだろ?」

「お兄ちゃま~、芽夢の隣に座って~。」
「だめよ、絵夢の隣~。」

いやいや、俺は、牧野の隣に座りてぇし。

「あきら、俺、牧野の隣にして?」


______カチンッ!


「類・・・お前は寝てるだけだから誰の隣でもいいだろ?」

「あきらくーん、やっほー。お誘いありがとー!」
「滋さん、誘ったのは私ですよ、私。」

そうだっ!
俺はお前らなんか誘ってねぇぞ、滋!桜子!

「くくくっ。あきら、大変だなぁ、ツアコンも。」


___ブチッ!!!


「つーか、なんでお前らがいるんだよっ!!誘ってねーっつーのっ!!!」

「何だよ~、ドバイに家族旅行だろ?しかも牧野連れて。いいじゃん、俺らも大学生活最後の夏だし?お前の様子がおかしかったからなぁ。くくっ。桜子にしゃべったら滋も付いてきたんだよ。賑やかでいいだろ?」


ニヤニヤと笑う総二郎。
どうやら俺がラウンジでドバイの本なんて見てるから、おかしいと感づいたらしい。
別にこいつらが一緒だからって困ることもねぇんだが、牧野と過ごすことが出来る、恐らく最後になる夏なんだ。予定通りなら、来年には司が帰って来るし、卒業後は俺も忙しくなる。
牧野とゆっくり話がしたかった・・なんて少しだけ残念に思う。
それに、突如空港に現れたこいつらに、司の計画を説明することも出来なかった。

「お前らの席なんてキープしてねぇよ。」
「バーカ。滋がファースト全席抑えてる。」
「・・・・。」

もう、溜息つくしかねぇな。


「ねぇ・・結構大変そうだね。大丈夫?」

突然そんな風に気遣いの言葉を掛けてくれるのは、やっぱり牧野。

「ああ、まぁ、せっかくだからみんなで楽しもうぜ?」
「うん。」

にこっと笑った牧野だったが、次の瞬間ふっと何かに想いを馳せる様に寂し気な表情を見せたのを、俺は見逃さなかった。

「どうした?」
「ん?ううん。凄く楽しみだからさ。あいつも来れたら良かったよね。」

牧野が考えていたのは司の事・・か。

「・・・。司、何か言ってたか?」
「ううん。気を付けて行けよ、だって。なんか、いつもだったらギャーギャー騒ぐくせに、あっさりオッケーとかしちゃってさ・・。まぁ、いいんだけど。あいつもちょっとは大人になったってことよね。」

なるほどなぁ。
傍にいねぇくせに、いつも牧野を束縛しまくりの司が、今回に限って旅行をオッケーするなんておかしいと思ってるんだろう。
きっと、そのことがちょっと不安でもあるんだ。
あの強烈な束縛は、司の愛情表現でもある。
そんな司にいつも文句を言ってる牧野だけど、騒がれねぇのも寂しいんだろうな。
司の愛情が減っちまったとでも思ってんのか?

でも心配すんな。
あいつは、全く大人になんかなってねぇ。
特に、お前に関しては相当ガキのままだ。
そうでなきゃ、こんな面倒を俺に持ち込んだりしねぇよ。
そう言ってやりてぇけど、ここまできたらもうサプライズしかねぇだろ?

牧野にも・・・
あいつらにも・・・

俺が仕掛け人だ。責任重大!!


俺は牧野の頭にポンと手を置いた。

「あいつは、お前しか見てねぇよ。」
「やっ・・別に、あたしはっ!」
「余計な心配すんな。」


牧野がじっと俺を見て、「美作さん、ありがと」と今度は屈託なく笑った。
俺はこういう牧野の笑顔が好きだ。
もちろん、友人として、親友の彼女としてだ。

「じゃあ、行こうぜ!」

俺はツアコンよろしく、エクゼクティブラウンジから団体様をゲートに案内していく。


いつもの俺の役回り。
世話焼きな俺は、彼女を恋人の元へと届けるべく、
大空へ飛び出した。


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あきら君・・いい奴ですね~。
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Comments 5

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Happyending  
こんにちは☆彡

いつもたくさんの拍手をありがとうございます(*^^*)
なかなか更新できなくてすみません。もう、あきら、早く終わらせなきゃなのに・・。いろいろと忙しくて。

さて、
スリ●様
何となくの展開は考えているのですが、細かいところまで考える時間がなくて。でも、これ、あきら君の短編だから細かい設定は省こうかな(笑)。毎回そうなんですが、やっぱり司書きたくなります(笑)。

まー●様
いつも嬉しいお言葉ありがとうございます(*^^*) でも、その後の二人は、むずかしいデス・・。神尾先生の愛すべきキャラを大切にしたいですし・・自分が好きな二人の形もあるし・・・。あきら君は・・安定の世話焼きタイプ!頑張ってもらいましょう!(笑)。

花●様
あきらは頑張ってるんだけど・・こうなっちゃうんですよね・・(笑)。さて、ここからどうしましょ?どうやって司を登場させるかで頭いっぱいデス(笑)。

あ●様
相変わらず鋭いです!一応続きをちょっと書いたんですが、まさにそれ!ドンピシャリ!!「美作さんの受難」にならないように、バランスをとりたいんです!でも、やっぱりここはつかつくだからなぁ・・(笑)。いかに司を幸せにできるか・・・ごめんよ、あきら・・頑張るから・・一応・・えへ(笑)。現在、考慮中です(;^_^A

とりあえず続きは今日中に1話と思っています。
あきらストーリー、お待ちください!

2018/03/03 (Sat) 12:39 | EDIT | REPLY |   
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2018/03/01 (Thu) 22:24 | EDIT | REPLY |   
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2018/03/01 (Thu) 11:15 | EDIT | REPLY |   
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2018/03/01 (Thu) 09:15 | EDIT | REPLY |   
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2018/03/01 (Thu) 07:43 | EDIT | REPLY |   

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