Happyending

Happyending

今、講習会で京都なんです。
来年取りたい(いや、取らなきゃいけない・・)資格があって、その講習会。
子供たちと離れて一泊。
夜にホテルに入ったんですけど、実家でもないから、話す人もなくてのんびりです。
そんな訳で、お話を書きました(笑)。

『彼女の夏休み』のその後のつかつくです(*^^*)
***





「なにこれ!すごいっ!!」
「面白れぇだろ?」

パーティー会場から牧野を連れ出して、やって来たのは俺が押さえていたスイートルーム。
俺はメープルを使うことがほとんどだが、彼女と二人なら、こんなリゾートもいい。
俺もこのホテルを使うのは初めてだった。

壁には幾何学柄の大理石パネルがはめ込まれている。
貝殻で装飾された豪華なブルーのソファー。
床のペルシャ絨毯は赤と金で織られたもの。
花瓶に生けられた百合の花。

興奮した牧野が次に開いた部屋は、とにかく広い総大理石のシャワールーム。
金で縁取られた鏡。
蛇口もシャワーヘッドも全てが金ピカだ。

「王様のお城みたい!!」

きょろきょろとしながら牧野が奥の部屋へと進んでいくのを、俺も追いかけた。

窓から見えるのはどこまでも広がる黒い海。
明日になればいい景色が見られるだろうのだろうが、この時間は船も見えない。
リビングルームは恐らく30畳はある。
豪華な装飾品が飾られている。
そのうちの一つに牧野が反応した。

「これ見てっ!魔法のランプだよっ!!」

そこに飾られていたのは、ティーポットのような、不思議な形の入れ物。

「これはランプじゃねーだろ?ポットじゃね?」
「うーん。そう言われるとそうなんだけど、これはランプだよ。アラジンの。」
「アラジン?」
「ジーニー知らない?魔法のランプの精なの。3つの願い事を叶えてくれるんだよ。」
「知らねぇな。」
「・・・まぁ、道明寺はディズニーとか見ないよね。」

ディズニーぐらいは知ってる。
が、ジーニーってなんだ?
願い事なら俺が叶えてやる。
海辺の別荘だって、高価な指輪だってなんだって。
そう言おうと思った時には、牧野の興味は次へ移っていた。

「ねぇ、部屋の中に階段がある。」
「ああ、ここは上がベッドルームになってる。メゾネットつーのか。」
「へぇーっ!行ってみよう!!」

トントントンと軽やかに階段を上がれば、そこには天蓋付きのベッドだ。

「すごーい!やっぱり、王様のベッドだね、道明寺。」

パッと振り返ったその表情が可愛い。

「俺の趣味じゃねぇな。」

俺はもっと落ち着いた部屋が好きだ。ブラウンを基調とした部屋。
因みにニューヨークの執務室はブラウンとブラックが基調だが、アクセントカラーは赤。
赤を入れることでビジネスに闘志を燃やす。

「だれも、あんたのなんて言ってないじゃん。」

そう言って、ピョンとベッドに座る牧野。
何となく、面白くない俺。
俺だって、王にはなれねぇけど、それなりの金も地位も持っている。
ビジネスはまだまだこれからだが、かなり将来有望だと思うぜ。
お前の彼氏はそういう男だって、いい加減分かれよな。
アラブの王より、俺の方がいい男だって。

ゆっくりと牧野の隣に腰を下ろした。

「なあ、ランプの精だっけか。」
「ジーニー?」
「そいつが願いを叶えてくれるなら、お前は何を願う?」
「あたし?あたしは・・・・・。」

そこでこいつは言葉を切った。
困ったように俺を見上げる。
どんなことでも叶えてやるから、何でも伝えてほしい。
これ以上の部屋だって、別荘だって、お前が望むものなら何でも用意する。


「言えよ。」

「・・・ん・っと・・・・」

「早く言え。」

ワクワクしながら答えを待った俺は、なんて愚かだったんだろう。



「・・・道明寺が、早く日本に帰ってきますように。」


「牧野・・・・。」


言葉が・・続かねぇ。
予想できる答えだったのに・・・俺は・・馬鹿か・・?
アラブの王に嫉妬してる場合じゃなかった。


「うっ、嘘!!やっぱり、無しっ!!こういうことは、口に出したら敵わなくなるかもしれないからっ!今の、無しねっ!」

真っ赤になって、いきなり俺の息が止まるようなことを言ったかと思ったら、急にそれは駄目だと言う。そんな願いは口に出したら叶わなくなるから・・・。


牧野の願い。
それは、俺にしか叶えてやれないことで。
だけど、今すぐに叶えてやることができなくて。
金があっても、地位があっても、今すぐには無理で。
自分がどんなにちっぽけで無力な人間かを思い知る。

どんな時でも牧野を守ってやりてぇのに。
こいつの望みなら、何でも叶えてやりてぇのに。
俺はまだ十分じゃない。

「しっかりしなさいよ」とか、「西田さんに迷惑かけちゃだめよ」とか、「こっちに来なくていいからちゃんと仕事しなさい」とか、電話ではそんなことばっかり言うこいつ。
いつだって、俺の負担になるようなことは言わなくて、俺はそれをいいことに甘えていたのかも知れねぇ。こいつは、待っていてくれる。俺のこと、いつまでも待っていてくれるんだって。
こいつは寂しいとかそういうことを素直に言う女じゃねぇってことぐらい分かっていた筈なのに。

俺はなんてバカなんだ。

そっと牧野の頬を撫でた。
牧野が申し訳なさそうに俺を見る。
そんな顔すんな。

「ごめんな。」
「道明寺・・・。」
「寂しい思いさせてごめん。」

牧野がフルフルと首を振る。

「あたし、信じてるから。あんたが、ちゃんと帰ってきてくれるって。だって、あたしのこと迎えに来てくれるんでしょ?」

「ああ、もちろんだ。」

牧野の頭を胸に抱く。
さらさらの髪をそっと梳いた。


「ねぇ・・」
「ん?」
「道明寺は?何をお願いする?ジーニーに。」


もしも願いが叶うなら・・・
それは俺も牧野と同じだ。
今すぐに日本の牧野の元へ。
けど分かってる。
牧野を守っていけるだけの男にならねぇと、日本に戻ったって、こいつを手に入れることはできねぇ。
その力をつけるのは、俺自身にしかできないこと。

「牧野が俺以外の男にフラフラしませんように。」
「はぁ~?」

牧野が俺の胸をドンッと叩いて、憤慨する。

「フラフラなんてしてないしっ。」
「お前は隙がありすぎだからな。」

けど・・・

「絶対迎えに行くから、それまで絶対待ってろよ。」

今はそれしか言えねぇ。
4年というリミットまではあと8か月。
結果はまだ、分からない。

「うん。」

泣きそうなのか、口をぎゅっと結んだ牧野。

その唇に、触れるだけのキスをした。
じっくりと、味わうように。
ぎゅっと俺のスーツを掴む小さな手も、わずかに震える細い体も、すべてが愛しくて、今すぐにも自分のものにしたい。

だが、今の俺にはそれは出来ない。

今日、強く思った。
こいつの笑顔も泣き顔も、全てに責任が取れるまでは、俺はこいつを抱けない。
それが、俺の本気だ。


そっと唇を離した。
これ以上したら、止められなくなるから。

「どうみょうじ?」

牧野の肩を掴んだ手に力が入ったからか、牧野が不思議そうな顔をした。

「抱きてぇ。」

「えっ。」

「けど、抱けねぇ。」

「・・・道明寺?」

ますます不思議そうな顔で俺を見上げてくる大きな瞳。
零れそうなその黒目に映った自分が、相当無理をしているのが分かる。
本当は、抱きてぇ。
誰のものにもならないうちに、俺が牧野の体に俺だけの印を付けたい。
けど、できねぇ。

「死ぬほど抱きてぇけど、俺はまだ、お前を完全に守ってやれねぇから。それに、今抱いちまったら、お前を手放せねぇ。だから、今は我慢する。けど、帰国したら我慢なんてしねぇからな、覚悟しとけよ。」

牧野の瞳に涙が溢れ、
コクコクと頷いてくれた。


こんな話、あきらや総二郎に言わせれば、男としてどうなんだって話かも知れねぇな。
けど、俺にとって牧野は自分よりも大切な女だから。
抱くなら、次の日もその次の日も、ずっと傍にいてやりたいから。
今は、これでいい。







すげぇ広い部屋なのに、1つしかないバスルームを交代で使うことにした。
先にシャワーを浴びた牧野は、シルクの白いパジャマ姿で、頭にタオルを巻いて出てきた。

「アラブ人みたいだな。」
「でしょ?」

なんて、色気のない会話をする。

「ねぇ、かくれんぼしない?あんたがシャワー浴びてる間に、あたしどこかに隠れてるから。」
「はぁ?お前はガキか?」
「だって、こんなに広い部屋なんだよ?楽しまなきゃ損じゃん!」

はぁ・・。
ドバイに来て、この豪華な部屋でかくれんぼ。
でも、仕方ねぇな。
二人きりの夜。
そうでもしなきゃ、間が持たねぇ。
愛する女と二人きりの密室。
こいつをメープルに帰すという選択肢は絶対にない以上、
朝まで・・・・我慢するためには・・・

「オッケー。」
「やった!絶対見つけてよね!」
「髪、乾かしてからにしろよ。」
「はーい。ゆっくりシャワーしてきて。」

楽しそうに部屋中を眺める牧野に苦笑して、俺もシャワールームに入った。





ゆっくりつっても、そう長くもシャワーしれられねぇし。
適当に時間がたった頃に、リビングルームに顔を出す。

「牧野?」

声をかけてみるが返事はねぇ。
どうやら本当に隠れているらしい。

かくれんぼなんて、ガキの頃にもした記憶がない。
柄にもなく少しウキウキしながら、リビングのカーテンをめくった。

いねぇ。

トイレやカウンターバーにもいねぇし、ソファーの影にもいねぇ。

そうなれば、2階のベッドルームか?

階段を上がり、ベッドルームを見渡すが、とりあえず見たところはいない。

盛り上がったベッドの布団をめくると、そこにはクッションが詰め込まれていた。
ベタな手を使いやがる。

それから、クローゼットを次々と開けていく。
パーティーのためにいくつかの着替えを用意させていた。
明日のスーツも用意されていたはずだ。

一つ目のクローゼットには牧野はいなかった。
次のクローゼットには、シャツとネクタイがしまってあったはず。
だけどそこにも牧野はいなかった。

マジで、いない。
消えちまったんじゃねぇかと冷や汗が出た。
外に探しに行こうかと踵を返した時、窓ガラスに牧野の姿が映った。
海を眺める方向に置かれたロッキングチェアに牧野が丸くなって眠ってる。

黒のチェアで丸まって、俺の黒のジャケットを被っていたらしい。
初めは気が付かなかった。
寝てるうちにジャケットがずれたのか。

くぅくうと眠る牧野が可愛くて、その額にキスをした。

起きるなよ・・・

そっと牧野を抱き上げて、ベッドに寝かせ布団をかぶせた。



俺は少しホッとしていた。
今日の牧野は熱がある訳じゃねぇ。
牧野が起きていたら、俺は自分で立てた誓いを破っちまった可能性もある。
こんなに可愛い女に手を出さずに一晩過ごすなんて拷問だ。

狙ってんじゃねぇんだろうが・・・

くくっと思わず笑いが漏れた。


俺たちは、まだその時期じゃねぇってだけ。
だから、今夜は・・・


俺はロッキングチェアをベッドに向けて置きなおした。
それからをブランケットを持って、深く腰掛ける。


「覚悟しとけよ、牧野。」


一晩中、牧野の寝顔を楽しんで、
日本に帰国するその日に狙いを定めた俺は、
すげぇパワーをもらった気がした。


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拷問・・・?
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Comments 3

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Happyending  
こんにちは(*^_^*)

いつもたくさんの拍手をありがとうございます。
帰宅して、ぼけっとしていたら、もう晩御飯の準備ですね・・。はぁ、ホテル生活はつかの間の非日常でした(・・;)

これね。拷問ですよね(笑)。このカテゴリーは4年間はプラトニックだった設定なので・・。無理やりのプラトニック(~_~;) 司君、すまねぇです。

さてさて、
花●様
私も、4年のうちに抱くのも全然OKの人。今回はこのカテゴリーだったから、仕方なし・・(・・;) そうそう、結局、司がHappyだったらいいんですよね!もちろん、つくしちゃんも!

スリ●様
昨晩調べたら、アラジンって千夜一夜物語という説や、中国のお話の説があるみたいで、こんがらがってよく分からなくなり、時間もないので、ディズニーのアラジンにしてしまった。知ってる人も知らない人もいますよね、きっと(・・;) 私は結構ジーニーが好きなんですよ。なんか可愛くて(笑)。

V●様
ね?拷問ですよね・・(笑)。ドMな司・・致し方なし・・テヘヘ。こちらこそ、遊びに来ていただいて感謝です!また、覗いてくださいね〜!

ふぁいて〜んママ様
頑張っているというか、私の都合で・・すまん、司くんです。え?尊敬??いやいや・・(笑)。最近は、読むのが断然楽しいです!書くのはうーん、なんですが、こうして書いたら拍手をもらえたりするので、嬉しいんですよね。だから、書いちゃうのかな?(笑)。いつも読んで頂き、ありがとうございます(^ ^)

後編もぼちぼち準備しますね〜。
さて、晩御飯だ〜。

2018/03/11 (Sun) 18:12 | EDIT | REPLY |   
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2018/03/11 (Sun) 07:47 | EDIT | REPLY |   
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2018/03/11 (Sun) 06:22 | EDIT | REPLY |   

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