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Happyending

Happyending

広大な砂漠に夕日が沈んでいくのを、道明寺と手を繋いで眺めていた。
だんだんと空が暗くなっていく。
これが永遠の別れになってしまいそうで、一瞬ゾクッと背中に震えが走った。

道明寺が手を繋いだまま、車の中からジャケットをとって、あたしに着せてくれた。
寒かったんじゃないよ。
別れるのが辛くて、寂しいの。
だけど、そんなこと言えない。

道明寺があたしの体を引き寄せて抱きしめてくれた。
彼の体が暖かくて、いい匂いがして、ホッとする。
あたしも彼の背中に腕を回した。

頑張ろう・・・
頑張れる。

この夕闇の中で良かった。
泣き顔なんて見せたくなかったから。



今晩はもう一緒にいられない。
もうすぐ道明寺は、アメリカに向かって旅立ってしまう。
それは、手帳を開いた時から分かっていた。
別れるまでの時間を大切にしたくて、彼の秘書をして、朝ごはんを一緒に食べて、会談にも同席した。
そんな道明寺の姿を見ていたら、まだあたし達が一緒にいられないのは当然な気もした。
まだまだ、やるべきことがあるんだよね・・。

お昼を食べて、ラピスラズリのイヤリングを買ってもらった。
いつもなら道明寺からの高価なプレゼントなんて受け取らない。
そんな時には言い合いばかりするあたし達だけど、今日は違った。
せっかくの二人の時間を楽しみたい。
喧嘩した思い出なんて作りたくない。
きっと道明寺もそう思ってたんじゃないかな。
それに、あたしには、この石が欲しいと思った別の理由もあった。


砂漠でラクダに乗りたかったのは本当だけど、道明寺が感染症にかかったりしたら大変だし、それにラクダに接触したら検疫で報告しないといけないみたい。そんなこと道明寺にさせる訳にはいかないから、これはすぐに諦められた。その代わり、道明寺が日本に帰ってきたら、乗馬に連れて行ってくれるんだって。
もちろんあたしは馬になんか乗れないけど、道明寺は本当に乗馬も上手いんだろうな。F4はスポーツも万能だもんね。
道明寺の馬はきっと黒毛だなぁ。
青鹿毛のつやつやした馬を巧みに操る姿が何となく想像できる。
憎たらしい位に自信満々な顔をしてそう。
乗馬って二人乗りもできるのかな?
ふふ、ラクダより楽しみだよ。

ねぇ、そんな日が来るよね。
大丈夫だよね、あたし達。

そんなこと口には出せない。
だって、道明寺のプレッシャーになっちゃうもん。
だけどそう願わずにいられなかった。




砂漠からの帰りの車内では、二人とも口数が少なかった。
手を繋いだまま、あたしは道明寺の肩に凭れていた。
ずっとこの時間が続けばいいのにな。
でも、分かってもいるんだ。
本当に堂々と二人で一緒にいられるようになるために、あたし達は少しずつ前に進んでる。
今はその通過点であって、終わりじゃない。
あたし達の未来は、この先にあるんだって。

あたしの耳元で揺れるラピスラズリのイヤリングに願いを込める。
どうか、あたし達を幸せな未来へ導いて。
いつかきっと一緒になれますように。


あたしは以前からこの石のことを知っていた。
だって、よく雑誌にも載ってるし、手ごろな価格のパワーストーンは高校生でも持っているぐらいだ。
『心にある誤った考え方を正し、判断力を高める』というラピスラズリは、進むべき道に迷った時に身に着けるといいらしい。
それに、洞察力や決断力を養ってくれるから、経営者が持ってもいいんだって。

道明寺が色んなメディアで取りざたされる度にあたしの心は揺れていた。
あたしはこの男にふさわしいのだろうか?
本当に一緒になることができるのかな?
道明寺はあたしのこと、本当に迎えに来てくれるかな?
そんな不安をいつも一蹴してくれるのが、電話での道明寺の言葉だったり、あたしがいつも身に着けている土星のネックレスだった。
道明寺にもらった土星のネックレスは、身に着けているだけで彼を感じることができる、あたしにとっての最強アイテムだ。きっと、これからもずっとあたしの宝物。
それに、つまらないことでヤキモチを焼く道明寺がいなかったら、あたしたちはとっくにダメになっていたかも知れないって思うこともある。道明寺が特別美人でもないあたしのことを『可愛い』って言ってくれるから、誰にモテる訳でもないのに『男と飲みに行くな』とか口うるさく心配してくれるから、そんな一言一言に呆れながらも安心を貰っていた。凄く綺麗な人と雑誌に載っていた時も、『はぁ?ブスなんて覚えてねぇよ。俺の記憶に残る女はお前だけ。』なんて言ってくれる、本当にバカで、そして優しい男。そんな言葉があたしの寂しさをどれだけ癒してくれたか、こいつは分かってるのかな。

だから、ありがとうって言いたい。
いつも想ってくれてありがとう。
未来を諦めないでくれてありがとう。

あたしも道明寺の力になりたいって思ってるよ。
ずっと待ってるって、信じてるって、伝えたい。





ドバイのプライベートジェット専用ラウンジに到着した。

これからまたしばらくのお別れ。
今日が楽しかったから、やっぱり別れは辛いけど、覚悟は出来てるよ。
大丈夫。

約束の4年まではあと8か月。
ぴったりで帰って来るなんていう保証はどこにもない。
だけど、信じてる。

ジェットのエンジン音が聞こえてくる。
もうあとは道明寺が乗り込むのを待っているだけだ。


「牧野。」
「うん。」
「絶対に迎えに行くから。」

いつになるかなんて分からないけど、確信してる。

「待ってる。」
「おう。」

例え4年を過ぎたって、あたしはずっと待ってるよ。
だから、

「お仕事、頑張って。」

あたしは左耳のイヤリングを外した。
そのイヤリングに小さくキスをして、そのまま道明寺の胸ポケットに入れる。

「お守り。あたしのパワー、込めておいたから。」

あたしと対のイヤリング。
少しでも道明寺の力になれたらいいな。

ねぇ、寂しいけど泣かないよ。
信じてるから。
だから笑って送り出してあげる。


じーっとあたしの顔を見つめる道明寺の視線が熱い。

ん?
期待してる??

仕方ないなぁ・・・って笑ってから、
すっと両腕を伸ばしたら、道明寺が少しだけ屈んでくれて、あたしは彼の首に腕を絡めた。
それでもまだ背伸びをして、

チュ・・・

いつもより少しだけ長くキスをした。


「いってらっしゃい。」


そう言ったあたしに、道明寺の顔が更に近づいてきて、
あたしのキスなんかよりも強く唇が合わさった。
あたしが大好きな、道明寺のキス。
しばらくはお預けだけど、絶対に忘れないよ。


最後に二人見つめ合って、
道明寺はあたしの右耳のイヤリングを小さく揺らしてから、


「行ってきます。」


あたしに背を向けた。
そこからは一度も振り返ることなく、ジェットの中に消えていく。
あたしはその姿を最後まで見送った。




土星のネックレスと、
アラジンの魔法のランプと、
ラピスラズリのイヤリング。

この3つに込めたあたしの願いが叶うのは、
あと8か月後のこと。


Fin.

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これが、『おかえり、道明寺』に続くのでした。
最後までお付き合いありがとうございました(#^^#)。
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Comments 6

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ありがとうございました!②

花●様
健気なつくし・・本当に・・(涙)。こんな展開になるとは、自分でも予想していなかったです・・。
ゴージャスな遠恋エピソード!(笑) 本当だ。夏休みにドバイだなんて!いい歳の私だって行ったことないんだぞーっ!!海外旅行に行けるとしたらどこが良いかなぁ・・。司君がいるニューヨークも行ってみたいなぁ。

さと●様
青い石が黒くなるっ!?なんとっ!きっとお姉様を守ってくれたんですよーっ!!とか言って、私はパワーストーン持ってないんですけど・・(;'∀') 妹はそういうのが好きで結構持ってたなぁ。ラクダ500万ですか!?高っ!!一体どこで飼ったらいいんのでしょう?(笑)。なんとなくなんですが、ラクダはあきら君の方が似合ってる気がするんですよね。司はやっぱり馬!黒毛の!(笑)。どこまでも司贔屓ですみません・・(-"-;A ...

he●様
そうなんですよ~。他のサイト様を見て、あちゃー・・ホワイトデーだったかと気付きました(汗)。でも仕方なし、エピローグで終了です(笑)。御主人様、無言でチョコとは・・いいじゃないですかー!そしてうどんまで(笑)。最近うどんやお蕎麦が好きなんですよねぇ。味しいうどん食べたい・・。そう言えば、今年、我が家はバレンタインにチョコは要らないと言われてすき焼きしたんです。あれ・・?お返しが・・ない・・(;'∀')どういうことだーっ!!(笑)。


さて・・・
この後は、連載にするかもです。
なんとなく、むくむくと書きたいお話が頭に沸いている。最近ではかなり珍しい現象(笑)。
以前にお伝えしていたブラックな感じではないのですが・・どうしようかな。毎日更新できないしなぁ・・と思いつつ、今は連載に手を出したい気持ち70%位(←結構高い!)。
めったに書かないプロットを書いてみようかなぁ・・なんて思ってます。

ではでは、また!何らかの次のお話で!

2018/03/15 (Thu) 21:42 | EDIT | REPLY |   
Happyending  
ありがとうございました!①

いつもたくさんの拍手をありがとうございます。
あきら君のバースデーから始まったこのお話も、二人の夏休みまで書いて終わりに出来ました。

あ●様
坊ちゃんはやっぱり黒毛ですよね~(*^^*)妄想炸裂です!そうそう、私も類君は白馬をイメージしていたんですけどね、(確か韓国版花男も類君白馬だった・・)、どちら様かのブログにお邪魔したら、類君は栗毛で、総ちゃんが白馬、あきらくんは普通の茶色って書かれていて、ああ、なるほど~と思った記憶があります。
そうだ、帰国後の坊ちゃんは放置したままだった・・(;'∀')どうしよう・・。
時間足りないけど、連載始めちゃおうかなぁとか思ったりもしたりしてマス・・(^^; 
Happydaysのカテゴリーは全部短編形式にするつもりなので、いつでも書けると言う安心感があるんですよね~(笑)。帰国後のラブラブな二人・・・今後の設定とかまだ考えてないんですよ~。ほら、つくしちゃんの就職先とか?(笑)。

スリ●様
飲みすぎていないですか??(笑) つくしちゃん、いじらしい・・本当にそうですよね。どうして、このお話がこんな展開になったのか・・私も自分で書いていながらよく分からない・・。ラクダに乗れなくなった時点でこうなってしまったような気がします(-_-;)
つくしちゃんはこの後みんなと合流して日本へ帰ります。司君には・・西田さんが付いている!から大丈夫!(笑)。今回、西田さんもいろいろと細かく協力してくれたんですよ~。司君の味方です!
このお話が帰国後の二人に繋がっていきます。あと8か月と思っても、辛いですよねぇ。こういうのを書くと、帰国後をめちゃくちゃHappyにしてあげたくなります!!

2018/03/15 (Thu) 21:19 | EDIT | REPLY |   
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2018/03/15 (Thu) 16:00 | EDIT | REPLY |   
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2018/03/15 (Thu) 00:25 | EDIT | REPLY |   
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2018/03/15 (Thu) 00:00 | EDIT | REPLY |   
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2018/03/14 (Wed) 23:18 | EDIT | REPLY |   

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