FC2ブログ

Happyending

Happyending

「気持ちいいね~。久しぶりに昼間っからドライブなんてするわ!」
 
窓を全開にした牧野の車が海岸沿いを走ってる。
左手には山、右手には海。
その間に作られたクネクネ道。
前後には俺ら以外の車は見えない。
 
トロトロ・・・トロトロ・・・
 
運転席には牧野。助手席に俺。
俺が運転を代わるといったが、「怪我人なんだから、おとなしく乗ってなさい!」なんて言われて却下された。そんな怪我人の俺を昨日こき使ったのはどこのどいつだ。
 
しかし、遅ぇー。
普段は分単位で動いている俺だ。このチンタラっぷりには我慢ならねぇ。
 
「やっぱ、運転代わる。」
「なんで?」
「遅すぎる。大体、エアコンはねぇのかよ。このトロさじゃ、風も入って来ねぇよ。」
「そう?気持ちいいじゃん。」
「いいから代われ。」
 
だが、牧野は正面だけを見て口答えをする。
とんがった口元。
俺にこんな態度をとる女は初めてだ。
 
「いやっ!私、運転するの久しぶりなの。いつも運転下手だからって、進がハンドルとっちゃうから。あー、楽しいなぁ!」
「おまっ!危ねぇってことじゃねーかっ!!」
 
命を粗末にすんなって言ったのはお前だろーがっ。
『代われ!』『代わらない!』の押し問答の末、久しぶりに登場した赤信号で牧野がブレーキを踏んだ瞬間に俺はサイドブレーキを引き上げた。
 
「わぁっ!!」
 
ガタンと車は急停車。
 
「危ないじゃないのっ!」
「・・・代われ(怒)。」
 
後続車はない。
俺はシートベルトを外し、車の外に出て運転席側に回った。
 
「本当に交代するの?」
「当たり前だろ。お前は命を助ける仕事してんじゃねーのかよ。」
「そこまで危険を感じなくても・・・。」
 
ブツクサ文句を言ってる牧野を運転席から引きづりだして、選手交代。
が・・、
まず、席が狭い。狭いなんてもんじゃねぇ。
足がハンドルに当たるじゃねーか。
 
渋々助手席側に回った牧野に聞いてみる。
 
「シートの位置、変えられねぇの?」
「ん?座席の下にレバーあるでしょ?」
「は?座席の下?」
 
そんなところにレバーがある訳ねぇだろ?
と眉を潜めた途端、突然牧野が俺の体の上に上半身を倒してきた。
 
はぁっ!?何しやがるっ!!
 
が、俺としたことが体が硬直して動かねぇ!
牧野はそのまま左手を伸ばし、俺の足の間にその手を入れて、
 
俺の・・・息が止まる・・・・・
マジか・・・
 
 
_____ガッターン!!
 
 
「うぉーっ!!」
「ぎゃっ!!」
 
座席がいきなり後ろに下がり、牧野の顔が俺の・・俺の足の間に・・・
 
「やっ・・だぁ・・・。ごめん・・・なさい・・・。」
 
チラッと俺を見た牧野の顔は真っ赤。
 
マジかよ・・・こいつ。
わざとじゃねぇのは分かる。
分かるが、ドンクセェにも程がある。
それに、なんで俺は要らねぇ勘違いとかしてんだよ・・あり得ねぇ。
 
「何やってんだ、お前は・・。」
「ごめん・・。」
 
俺は無言でシートを直し、何事もなかったかのように振舞うしかねぇ。
内心は心臓がバクバクしたとか、絶対に言えねぇ。
こいつのこと、女として意識なんてしてねぇし。
つーか、女になんか興味はねぇ。
強いて言えば、こいつには、姉ちゃんみてぇな、家族のような、そんな温もりを感じると言うか・・・
 
あー、畜生!
余計なこと考えさせるなっつーの!!
 
とりあえずエアコンのスイッチを探す。
が、見当たらねぇ。
一体この車はどうなってんだ?
 
「もしかして、エアコンねぇのか?」
 
さっきから疑問に思っていたことを聞いてみる。
 
「え・・?あるけど?」
「何で入れねぇの?」
「だって、窓から入る海風が気持ちいいんじゃない。エアコンしちゃうと窓閉めなきゃでしょ?」
 
確かにそうかも知れねぇが、さっきまでのチンタラっぷりじゃ、風なんて殆んど入って来ねぇし。
それに、俺は今まで昼間っから窓を開けて車に乗ったことなんかない。
リムジンの後部座席にはスモークが貼られているし、自分で運転するときにも窓を開けたりはしない。
ビジネスの世界に入る前は、幼馴染たちとバカンスに行けばオープンカーを走らせたっけな。無免許だったけど。
だが、ここはリゾートじゃねぇし。
見渡す限りの太平洋とカモメの群れ。
海の色はコバルトブルーじゃなくて、深水が深いのだろう、群青色だ。
 
それでも・・・
これは俺にとってはバカンスだよな。
俺に与えられた思いがけないバカンス。
助手席には昨日出会ったばかりの女で、俺は一人旅中のただの男。
それなら、エアコンは諦めるしかねぇか・・・
 
 
 
シフトノブとアクセル・ブレーキのペダル位置を確認して、アクセルを踏み込んだ。
ファブリックのシートは柔らかすぎるし、プラスチックのハンドルは妙に軽い。
少しアクセルを踏めば、とんでもねぇ爆音がする。
窓を開けているせいでそれが更にうるさくて仕方ねぇ。
 
「道明寺さーん!スピード出し過ぎよっ!!」
「うっせぇ、黙っとけ!!」
 
スピードを上げるとうるさいエンジン音のせいで、俺らの会話も怒鳴り合い。
 
あり得ねぇ。
こんなボロい車を運転していることも。
女と怒鳴り合いながらドライブしていることも。
それなのに、女をもっと驚かせたくなって、ついついスピードをあげちまう自分も。
どれもこれもが、俺の知らない世界。
 
俺はサングラスを掛けなおし、真っすぐ正面を見つめた。
このままどっか行っちまいてぇ・・
 
って、そう言えば、俺らはどこに向かってるんだ?
 
 
次に止まった赤信号。
 
「これ、どこに向かってんだ?」
 
「あれ?言ってなかったっけ?ショッピングモールだよ。」
 
「モール?こんな村にそんなとこあるのかよ。」
 
「あ、もしかしてバカにしてる?あるよ、あるある!本当は、市場で買い物したかったけど、今日は出遅れちゃったから、また今度行こう!」
 
また今度・・・
そんな約束がくすぐってぇ。
 
モールなら、何かこいつに買ってやるか。
無事だった財布は持ってきてるし、こいつだって、海に落ちて洋服だめになっちまったらしいし。
プレゼントって訳じゃねぇけど、これから世話になるんだ。
俺もなんかしねぇと落ち着かねぇ。
 
 
俺が運転するのは、ちっこくて赤い車。
隣に座るのは、恋人って訳じゃねぇ。
俺が海で助けた、不思議な女だ。
 
これはデートって訳じゃねぇし、ただの買い物。
 
だけど、俺はなんだか楽しくて仕方ねぇ。
 
俺が道明寺司じゃなければ、こんな毎日があったのだろうか・・・?
 
 
 
 
 

 
 
ショッピングモールと聞いて、少しワクワクした俺がバカだった。
 
「おい・・・。」
「何?」
「どこだよ、ここ。」
「だから、ショッピングモールだって。」
 
ここの一体どこがショッピングモールなんだ?
モールってのは、たくさんの店舗が連なってるもんじゃねぇの?
いや、ここも連なってるには連なってるが・・・・
 
「これは、モールとは言わねぇだろ?」
「ああ、東京では言わないね。でもこの辺の人は、ここのことをモールって呼ぶの。東京でいう、巣鴨の商店街?あははっ!」
 
あははっじゃ、ねーし!!
 
客は年寄りばっかだし。
店はなんだ・・・古めかしい商品ばかりが置いてある。
シャッターが閉まったままの店だって多いじゃねーか。
 
「お前、ここで何を買う訳?」
 
「まぁ、いろいろよ・・・。」
 
「いろいろってなんだよ。」
 
シャカシャカ歩いていく牧野を追いかけていく。
すると、一つの店舗の前で彼女が止まった。
 
 
 
____下山衣料品店
 
「おい・・・まさか・・・。」
「Tシャツ。」
「あ?」
「道明寺さんのTシャツ、破れちゃったから弁償しなきゃね。」
「ちょっ・・・」
 
こんなとこで服なんて買える訳ねぇだろーが!
だが俺が止める間もなく店の中に入って行った牧野は、店の商品を物色し始めた。
仕方なく俺も後ろを付いて入ってみたが、パッと見ただけでも、俺が着るような服は売ってねぇのは一目瞭然。
 
「おい、俺のはいいんだよ。」
「だって、昨日破れちゃったじゃないの。」
「だからってお前に買ってもらおうなんて思ってねぇよ。」
 
「ねぇ、これはどう?」
 
聞いちゃいねーし!
で、牧野が手に持っていたのは、花柄のシャツ。
 
「ハワイアンかよ・・・」
「そうそう!道明寺さん、インパクトある顔だからこれぐらいでちょうど良いと思う。」
「良くねーよ!」
「ぷぷっ、冗談だって。えーっと、どれが良いかな~。」
 
マジ、勘弁だ。
 
「あっ、これは?」
 
次に見せたのは『I Love NY』のロゴ入りTシャツ。
何でこんなド田舎でNYだよ。
それにシャレになんねーし。
 
「ダメ?」
「却下。」
「道明寺さん、アメリカ行ったことある?」
 
あるもなにも、1年前まではニューヨーク暮らしだ。
とは、言わねぇ。
ここでの俺は別人だ。
 
「ねぇな。」
「じゃあ、これにしよっ!」
「おい待てっ!」
 
一体なんの罰ゲームだよ!
レジに向かおうとする牧野の腕を引っ張ろうとして、スルリと躱された。
 
「おいっ!」
 
と呼び止めたところで、牧野が急にストップする。
唇に人差し指の腹を当てて何やら思案しているようだ。
 
「そう言えば、パジャマは持ってきてる?」
「パジャマ?」
 
俺は夏にパジャマなんて着ねぇから持ってきてねぇけど。
 
「パジャマもないとダメだね。」
「要らねぇよ。」
「じゃあ、何着て寝るの?」
「・・・。」
「ね?好きなの選んでいいから、買っていこう?」
 
それから、牧野と一緒に店の端っこにぶら下がっているパジャマを見た。
 
これは?あれは?と牧野が色々俺の体に当てているが、正直どれもイマイチだ。
仕方ねぇから、短パンを買って、上にはTシャツを着ることにした。
 
「Tシャツはこれでいいよね?」
 
牧野が手にしているのはさっきのロゴT。
だがもう、この店で選ぶのなら、どれでも変わりはないと諦めがついていた。
けど、
 
「俺だけにそんなの着せようなんて思うなよ。」
「・・・え?」
 
俺の手には、色違いの『I LOVE NY』Tシャツ。
 
「お前も着ろ。」
「ええーっ!やだよっ。ダサイじゃん!!」
「おまっ、ダセェとか言って、俺に着せようとしてんじゃねーよっ!!」
 
「あ・・・ばれた?」
 
ぷくくっと笑う牧野。
ったく、せっかくならもう少しいいもん選べよと思うのは俺だけなのか?
 
「仕方ない。お揃いにしよっか?」
 
・・・・。
・・・・。
 
しーん。
 
意味が分かんねぇ。
お揃いってなんだ?
 
 
だが、気が付けばレジで牧野が金を払おうとしている姿に気が付いて、
慌てて隣に並び、財布からブラックカードを取り出した。
 
だがレジのババァの反応がねぇ。
一体なんだっつーんだ。
 
 
「あはは。道明寺さん、ここはカード使えないから。」
「はぁ???」
 
カード使えねぇって、そんな店あるのかよっ!!
 
「黒いカードってなんかカッコいいね。道明寺さんっぽい。」
 
とか言いながら、牧野が5000円札を一枚出しておつりを貰った。
 
 
 
・・・・・あり得ねぇだろ?
 
 
カードが使えねぇことも。
Tシャツ一枚990円ってのも。
パンツが特価500円ってのも。
 
 
そして、この女と、
お揃いの服を買うっていうことも。
 
 
にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村
 
いつもたくさんの応援をありがとうございます。
関連記事
Posted by

Comments 6

There are no comments yet.
Happyending  
こんばんは!

いつもたくさんの応援をありがとうございます。
急に話変わったのかっていう位にコメディな二人(笑)。暗い過去を背負いながらも、光を見つけて欲しい!です。

スリ●様
楽しんで頂けて良かったです(≧▽≦)もう、司君の股間に頭突っ込んじゃおうかと思ったけど・・(笑)。まだ、2日目だから・・ね?あはは!おかしいなぁ、シリアスな感じだったのに。方向ズレて来たか・・(;'∀')私も最近、二次めぐりは出来てないなぁ。書く方に集中すると、どうしても楽しみが減っちゃう・・ジレンマです。

澪●様
あのお邸でペアTシャツ(笑)!確かに、椿さんなら喜んで貰ってくれそう!お土産に何枚か買っていった方がいいかな(笑)。お話は、まだまだ序盤だったりして・・(;'∀')二人に頑張ってもらわねば!です。

花●様
軽のアクセル踏んでターボー!(笑)。まさにその世界ですよ。爆音轟かせる司(笑)。司には、商店街を体験させないとね!(笑)。しかし、先は長いな~。夫婦はいつ出てくるんだ?(笑)。

さと●様
やばいペアルックでしょ?っていうか、外絶対でれないでしょ?万が一F4に見られたらどうするんだ?(笑)絶対類君とか、お腹抱えて笑い死んじゃいそう!

あ●様
そうなんですよね!そこポイントです!運命の相手・・この6日でどこまで進展するのでしょう?見守ってやってくださいね!そして、なんで「そんなヒロシに騙されて」!?(爆笑)昭和!?ディスコ!?(笑) いや、サビは知ってたんですが、さっきじっくり動画見てしまった。なんで~!!やばい、私も回っちゃう!!

まり●様
見ていただけました?(笑)。しばらく、ドライブデートが続きます・・たぶん(笑)。

さてさて、明日1話更新します!
もう、眠いよ~。おやすみなさーい。

2018/03/28 (Wed) 23:47 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/03/28 (Wed) 22:14 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/03/28 (Wed) 17:07 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/03/28 (Wed) 09:01 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/03/28 (Wed) 08:45 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/03/28 (Wed) 07:38 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply