Happyending

Happyending

牧野の涙にマジで焦った。

ボケボケしてるかと思えば弾ける様に明るくて、その笑顔にこっちまで楽しくなる。
そんな女が溢した涙。

俺は女の涙が嫌いだ。
そこには計算された意図があるのが見え見えだからだ。
だから女は嫌いなんだ。
涙を拭いてやろうなんて思ったこともねぇ。

だけど、牧野つくしの涙は違う。
直感でそう感じた。
俺に何かを求めてるんじゃない。
もっと、内面的な・・・何か・・・・。
それは一体何なんだ?

そんなに自分で金が払いてぇのか?
女なんて、俺の地位と金が目当ての奴らばかりだ。
それに、こんな安い買い物、俺にとっては屁でもねぇ。
財布に万札は入ってるし、現金でだって対応できるんだぞ。釣りは要らねぇけど。
さっきの店では驚きの余り、牧野にそのまま払わせちまったのは不覚だったが。

大人しく買い物かごを渡してやると、牧野の涙が止まり、彼女はそのままレジに並んだ。
俺はほっとしていた。
あの涙はどうにもダメだ。
訳は分かんねぇけど、すげぇドキドキした。
泣かせたくねぇ、涙を拭いてやりてぇと思った。
どうしてなんだ?

だいたい、金を払う払わないで泣くほどの事かよ。

あっ・・・
もしかして、あれか?
化粧してるのかなんて聞いたから、怒ってんのか?
それで、機嫌が悪ぃんだな。
俺の姉ちゃんも、機嫌悪ぃ時は、俺が悪くねぇのに足蹴りしたりしてたしな。

そーか。そーか。そーいうことか。
それならっ!


一気にテンションが上がった俺は、商店街をキョロキョロと見渡した。
俺は化粧臭い女は嫌いだ。
牧野は殆んど化粧なんてしてねぇのは俺でも分かる。
昨日だって、シャワーあがりはどう見てもすっぴんだったし、今日だって対して変わってねぇ。
その姿は嫌いじゃねぇし、むしろ俺の好み・・でもあるんだが・・・

あった!
左右を見ながら走ってる途中、明らかに化粧品の宣伝ポスターだろってのを貼っている店を発見した。
中を覗くと、それなりに品物が置いてあるようだ。
だが、俺は化粧品なんて見たことも、選んだこともねぇ。
どうすっか?と思った時、ポスターの女の口元が目に入った。
血色の良さそうな元気な印象のピンク色。
これぐらいならいいんじゃねーかと思った。

何がいいかって?
牧野が塗ったら似合うんじゃねーかって。
笑顔が似合うあいつにはきっとこの色が映える。
それに、俺もこういう色が好きだ。
控え目で、それでも目を引いちまうような・・・。

・・・・って、俺の好みは関係ねーだろっ!

一人ツッコミを入れているところで、牧野が店から出て来た。

照れてる場合じゃねーぞ。
よしっ!

俺は牧野を呼んで、店の中に入った。
戸惑う牧野の右手を掴んだのは無意識だ。
どうしても、こいつに買ってやりたい、そう思って。
繋いだ俺の左手が妙に熱い。
けど仕方ねぇだろ、こうやって手を差し伸べるのも初めてなんだ。

店に入ったはいいが、どうしたらいいのか分かんねぇ。
しかも、頼りの店員はどう見ても化粧の恩恵にあずかっているとは思えねぇ婆さんだし。
やっべ、変な汗が出て来たぜ。

とにかくポスターと同じもんを買うしかねぇ。
ニヤニヤ笑いながら商品を取り出した婆さんが、くるっとケースを回すとピンク色でキラキラした口紅が顔を出した。
チラッと牧野を横目で見たら、「わっ、可愛い」と小さく呟くのが聞こえた。

これだっ!やっぱ、これしかねぇ!!

プレゼント用にと婆さんが皺くちゃの手で、ピンク色の紙袋に商品を入れた。
高々数千円の商品で、見るからにダサそうなプレゼントだ。
牧野はこっちを見ていない。
こんなのでいいのかよ・・・と、不安になる。
けど、その婆さんが目で合図をするんだ。
早く渡せって。
何だか自分がいたたまれねぇ・・

だが、仕方ねぇ。一か八か!

俺から視線を逸らしている牧野の目の前に、その紙袋をずいっと差し出した。

___俺から女へのプレゼント


生まれて初めて渡すプレゼントだ。
この俺が、断られることを恐れてるだなんてどうかしてる。
なかなか受け取ろうとしない女にマジ焦る。

やっぱ、こんなのじゃダメか?
シャネルとか、なんかブランド物がいいよな、普通。
はー、この俺が、こんな安物を、プレゼントにって・・・

牧野が顔を上げて、俺のことをジロジロ見てる。
自分の顔がどんんどん赤くなっているのが分かった。
ちくしょー!早く受け取れよっ!!

「女にプレゼントなんて買うのは初めてなんだからな!文句とか言うなよっ!!」

そう言ってやったら、ぷっと笑った彼女が

「ありがとう。」

と紙袋を受け取ってくれた。
それから、その安っちぃ紙袋を眺めて目を細めてた。
その横顔が幸せそうで・・・


俺はめちゃくちゃほっとした。
ほっとして肩からどっと力が抜けた。
数千円の口紅を牧野は嬉しそうに受け取ってくれた。
だけど、本当に嬉しかったのは絶対に俺の方だ。
初めて自分で選んで、自分で買って、自分で渡したプレゼント。
プレゼントを渡すって行為が、こんなにも自分を満たしてくれるだなんて思いもしなかった。

誰でもいいって訳じゃねぇ。
この女だから。
命を生み出し、命を助ける仕事をしている。
自分のことよりも他人のために尽くしているような、優しい女。
そんな女に、俺はどうしてもプレゼントしたかった。

口紅じゃなくてもよかった。
たぶん、何でも良かったんだ。
彼女は化粧なんてしなくても、そのままで十分輝いてるから。
ただ、泣かないで欲しかった。


涙よりも笑顔が似合う。
心から、そう思うから。




繋いだ手をそのままに、俺たちは歩き出した。
恥ずかしくて、牧野の顔は見られなかった。

気温が高く、繋いだ手には汗が滲む。
それでも構わねぇ。

「腹減ったな。なんか、食うか?」

思い切って覗き込んだ彼女の顔。

「へっ?えっ?・・・あっ・・ごはんっ!?」

その慌てた顔が茹蛸の様に真っ赤に染まっていて、

あんなにボケボケだと思っていたのに、
手を繋いでいることに完璧テンパってるのが丸わかりで。
ちらちらと俺を見上げるその仕草が、


_____可愛い


生まれて初めて、
俺は女を可愛いと思った。


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私は腰痛が悪化したり、新しい仕事が増えたりで、何かとバタバタしております(涙)。
お話が短か目なったり、更新が更に不定期になったりするかも知れませんが、応援頂けると嬉しいです。
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2018/04/02 (Mon) 20:47 | EDIT | REPLY |   
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2018/04/02 (Mon) 17:27 | EDIT | REPLY |   
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2018/04/02 (Mon) 10:51 | EDIT | REPLY |   
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2018/04/02 (Mon) 10:19 | EDIT | REPLY |   
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2018/04/02 (Mon) 07:56 | EDIT | REPLY |   

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