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Happyending

Happyending

俺がプレゼントした口紅をつけた牧野と一緒に、商店街を進んで行く。

手・・・握りてぇ。

そう思っても、何故か今度はドキドキして、牧野を手をとることが出来ず、スキップをするように歩いている牧野の後ろを眺めながら歩いた。


次に牧野が向かったのは八百屋と肉屋。
何も期待なんかしてはいなかったが、本当に色気も何もねぇ場所だ。
しかし、今どきこんな小売店が残っているんだな。

「道明寺さん、今晩何食べたい?」
「昼飯食ったばっかなのに、もう晩飯の心配かよ。」
「買い物しなきゃ、晩御飯作れないでしょっ!」

そっか。
いつもはシェフが勝手にメニューを考えているし、何か食いたいものがあるかなんて聞かれたことは無かった。いや、初等部ぐらいまでは聞かれていたような気もするが、その後は家に寄り付かなかったし、今では会食やなんだかんだで、何を食ったかすら覚えてねぇ生活だ。
普通はこうやって、毎日の食い物を考えながら生活するんだな。

それなら俺は・・・

「何でもいい。」

お前の作るもんだったら、何でも食える気がする。
残り物の煮っころがしも美味かった。嘘じゃねぇ。

なのに、

「だから、そういうのが一番困るのよね~。」

なんていうボケ女。
それどころか、くるっと振り返ったかと思ったら、

「あ、そうだ、道明寺さんってお料理とかする?」

なんて、生まれてこの方一度も聞かれたことのねぇ質問をされた。

「は?料理?」

する訳ねぇだろ?見て分かんねぇか?

「せっかくだから一緒に餃子でも作ろうか?」

「・・・一緒に?・・・ギョウザ?」

何を言ってるんだ、こいつは。
一緒に料理?
しかも、ギョウザって・・何だ?

一瞬だけ考え込んだ途端、

「そんなに心配しなくても、簡単だから、道明寺さんでも出来るよ。」

「バカにしてんのか?」

少しだけ不機嫌な顔をしてみれば、
冗談だよ~とか言いながら、挽き肉やら野菜やらを買い込んでいく。

返事を聞かれてねぇけど、どうやら俺はこいつとギョウザを作ることに決定したらしい。
なんで俺が・・?という思いもあるが、ふんふんと鼻歌を歌いながら野菜を手に取っている牧野を見ていると、まぁいいかという気分になるから不思議だ。

買い物を済ませた牧野の手から重そうな買い物袋を取り上げたら、ニコッと微笑まれた。
思わず俺も笑顔を返していた・・と思う。

牧野が楽しそうにしていると、俺も嬉しい。

生まれて初めて感じるこの感情は何なのか・・・?


_____分っかんねぇ。





一通りの買い物を済ませ、俺は両手に荷物を持って駐車場へ歩こうとした。
すると、

「道明寺さん、こっち!」

牧野に、グイッと左腕を掴まれた。
ドキンッと一瞬心臓が跳ねて、全神経が左腕に集中する。
触れたいと思っていた女が、向こうから俺に触れてきた。
何故か顔がニヤけるのを抑えらんねぇ。
何でこんなに嬉しいんだ?

俺はされるがままに牧野に引きずられていく。


「八百屋さんとお肉屋さんで買い物したら、ここでゲームできるんだって!」

駐車場の近くに設置されていたのは、射的。
距離は5M以上あるから、玩具の銃にしては本格的だ。
的は1等から5等まで、当然1等が一番奥に設置されている。

俺の目の前で、今にもよろけそうな爺さんが銃を構えた・・・が、案の定、よろけて地面に発砲してやがる。
大丈夫かよ・・おい。

「ね、どっちがやる?道明寺さんがする?玉は1発だって!」

俺は海外で実弾射的の経験もあるし、自分で言うのもなんだが、かなりな腕前だ。
自慢じゃねーけど、ガンの腕前は幼馴染の中でもダントツ。
けど、このおもちゃのガンじゃ、どーかな。

「あの1等を当てたら、豪華賞品なのよ!」

「何もらえんだよ。」

「超高級もも!!冷やして食べたら美味しいよね。あー、やっぱり私がやるわっ!!」


商品は食い物らしく、牧野は熱くなっている。
まぁな、こんなことで俺が熱くなっても仕方ねぇ・・
そう思って、牧野の様子を見守ることにする。

目の前で牧野が、ガンを持ちながら、うーん、うーん、と狙いを定めた。

「おじさん、これ、どうやって撃つの~?」
「狙い定めて、引き金引きな~。」
「それは分かってるんだけど!」

銃が予想よりも重いらしい。
爺さんじゃねぇがフラフラとしている牧野に、思わず声を掛けちまう。

「おい、脇締めろ。」
「えーっ。」
「銃口下げるな。」
「だから、重いんだって!」

要領を得ないこいつに、だんだんとイライラが募って来る。

「腕が疲れてきたー。」
「お嬢さん、早くしてよー。」
「ちょっと、待ってぇ。」

イライラ・・イライラ・・・・


俺は両手に持っていた荷物を地面に置いた。
それからスタスタと歩き、銃を構える牧野の背後に回る。
牧野の肩を開かせて、姿勢を直す。
彼女の両足の間に右足を入れて、肩幅に開かせた。

それから、彼女の手に自分の手を添えて銃を一緒に支え、狙いを定めた。
もちろん、ターゲットは一番遠くにある1等だ。

背が低いこいつの弾道じゃ、もしかしたら的まで届かねぇかも・・
だが、さっきの爺さんの様子じゃ、玩具にしては玉に勢いがあった。
イチかバチか・・・


「ここで撃て。」
「ほっ、ホント!?」
「撃てって、今だ。」

牧野がゴクンと唾を飲み込んだ。

「ん・・・・行くよっ!」

牧野が引き金を引く振動を両手に感じながら、じっと銃を固定する。
狙いは1ミリもずらさない。


____パーン!



俺達が放った玉は、狙いの1等を・・・


打ち抜いた。



「うわっ!凄いよ、お嬢さん!一等だ!!」

「きゃーっ。道明寺さん!!凄すぎるーっ!!」


俺の左腕にしがみついて、大喜びの牧野。
何がすげぇって、その喜び様がすげぇよ。

「道明寺さんと一緒で良かったぁ。」

そう言いながら俺を見上げた牧野の顔がすげぇ近い。
牧野もそう感じたんだろう、我に返ったように、ぱっと俺の腕を離した。

「ごっ・・ごめんなさい!」

「いや。」

別に、構わねぇんだけど・・・

そう言いたかったが、それは言わなかった。
触られても嫌じゃねぇ。
けど、こうやって恥ずかしそうにしている彼女を見るのも悪くねぇ。
どっちにしても、俺にとって負の感情にはならなかったから。





牧野は両手で桃が入った段ボール箱を抱え、駐車場へ向かう。
その隣を俺も両手に大荷物で歩いて行った。

思えば誰かの荷物を持ってやるとかしたことなんてねぇけど、全く嫌じゃねぇ。
この女のために、何かしてやりたいという気持ちになるんだ。


「たっ・・楽しかったね。」
「まぁな。」
「道明寺さんが教えてくれたから、1等がとれたんだよ。」
「撃ったのはお前だろ?」

「そっか・・。じゃあ、二人でとった1等だね。」
「ああ、そうだな。」


二人でとった・・・か。

あの時、自然と牧野の背後に回った俺。
俺に支えられながら冷静に銃を撃った牧野。

恐らく牧野一人じゃとれなかった1等の桃。
だがこれは、牧野が言い出さなきゃ、絶対にやらなかったゲームだ。


二人で打ち抜いた1等の的。


俺は・・・打ち抜きたい。
崩したい。

何を?

ぶち壊してぇのは、俺の人生だ。
道明寺の血を引く子孫を残すため、
政略結婚なんてもんを親から押し付けられた、
そんなくだらねぇ人生を歩もうとする自分自身。


ドクドクと全身の血液が逆流するように、パワーが漲って来る。


絶対に、変えてやる。
ババァに言われるがままの結婚なんて出来る訳がねぇ。
迷う必要もねぇことだ。
どうして、今まで気付かなかった?

そうなんだ。
今までは、自分の人生に進みたいと思える選択肢がなかった。
暗い道の先は常に暗く、どの道へ進もうが結果は同じ。
生きる意味を見出せず、ひたすら時間が過ぎていくのを待つのみだった。
感情と言うものは一切なく、何かを感じる心も無かった。


だが、今は違う。
この2日で、今まで失っていた感情を取り戻しつつある。
隣を歩く、この女と一緒にいることで。


訳わかんねぇけど、清々しい気分だ。
俺の人生はまだ何も変わってなどいないというのに、
目の前が開けたかのような。


目の前にあった分厚い壁も、崩せるかもしれねぇ。

こいつと、二人なら・・・



大事そうに桃を抱えながら運ぶ女。

こいつと一緒にいたい。
そう思っている自分を強烈に意識する。


俺の脳細胞が警告する。

この女じゃなきゃだめだ。
こいつを手放しちゃだめだ。


それなら俺は・・・どうすればいい?


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いつも応援をありがとうございます。
なかなか更新出来ず、すみません。
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2018/04/13 (Fri) 00:14 | EDIT | REPLY |   
Happyending  
こんにちは(*^-^*)

いつもたくさんの応援をありがとうございます。

スリ●様
ですよね。課題は山積み・・・。先は長い(笑)。胸がぎゅーっかぁ。どうでしょうか。私の気分次第??(笑)。でも、絶対に最後はHappyendになります。これは決定!←当たり前ですけど(^^;) つくしちゃんの過去は、一応自分の中では決まっていますが、どんな風に書くか・・ですかね。長編とは言いましたが、俺の女程にはしたくないです・・。飽きちゃう!うちも明日からやっと給食が始まります。いえーい!ちょっと楽になりますね!(^^)!

花●様
スナイパー司(笑)。絶対海外で、ガンガン撃ってそう!しかもカッコいいに決まってる!!(笑)。さりげなーく背後に回っちゃいましたよ。こんなことされたら死んじゃいそう・・ですね(笑)。

H●様
古典的な絵ずら(笑)。ですよね!そして、先週のだるさが嘘のように、今は体が軽いです。本当に健康は大事ですね~。思い知りました。体調が悪くても、仕事も家事も待ってくれないですもんね。健康管理していかないと・・もう若くないから(^^;) どうぞ一緒に楽しんでくださいね~。

ではでは、後で続きをアップ予定です。

2018/04/12 (Thu) 17:29 | EDIT | REPLY |   
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2018/04/11 (Wed) 08:22 | EDIT | REPLY |   
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2018/04/11 (Wed) 08:07 | EDIT | REPLY |   

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