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Happyending

Happyending

「姉ちゃん、今晩餃子なの?」

見ればわかるけど、とりあえず聞いてみる。

「うん!道明寺さん、お料理したことないって言うからさ。じっとしてるのも暇でしょ?お手伝いしてもらおうと思って。」

そうかも知れないけどさ。
でも、餃子って・・・姉ちゃんの餃子、ニンニクどっさり入ってるじゃん。
普通・・・餃子する?
初デートの時って、いきなりニンニク料理は選ばないだろ?
まあ、この二人はデートって訳じゃないけど・・。


「なんか・・・すみません。道明寺さん。」

思わず口をついた俺の一言に、道明寺さんは首を傾げた。

「あ?何で?結構面白いぜ?お前やったことねぇの?」

「いえ、ありますけど・・・。」

道明寺さんの様子から、面白いっていうのは嘘じゃないみたいだ。
そっか。それなら良かった。


「じゃあ、今から焼くからね~。」

温められたホットプレートに、姉ちゃんが餃子を並べていく。
それを興味深々な様子で見ている道明寺さん。
そうだよね、きっとこんなこと見たことがないんだ。
だから、餃子作りも楽しいんだ。


・・・ん?

あれ、ちがう・・・。


道明寺さんが見てるのは、餃子じゃなくて、姉ちゃんだ。
姉ちゃんがにこにこ笑いながら餃子を並べている様子を、ちゃぶ台に頬杖をついた道明寺さんが甘い顔つきで見つめてる。
甘いっていうか・・ニヤけてる?

なのに、そんな姿までかっこいい。
安物のTシャツを着ていたって関係ない。
この人が着れば、このTシャツすらブランド物に見えるから不思議だよ。
見た目だけじゃないんだ、たぶん道明寺さんの仕草の一つ一つがかっこいいんだ。

そんな道明寺さんなのに、姉ちゃんに興味があるのかな?
姉ちゃんは天然だから、道明寺さんが面白がってるのかな。
たぶんそうだよな。

道明寺さんの目つきが、まるで恋人を見るかのように甘かったから、ついつい二人が・・・なんて一瞬だけ頭をよぎったけど、そんなことある筈ない。
だいたい、住んでる世界が違いすぎる。
きっと、俺たちが物珍しいだけだよな。


だけど、

「はい、焼きたて~。道明寺さん、いっぱい食べてね。」
「おうっ・・って、あっちぃ!!」
「やっ、もう、ドジなんだから、お茶!はい。」

姉ちゃんから麦茶を受け取り、ゴクゴクと飲んでる道明寺さん。
なんか、熟年夫婦みたいなんだけど・・・。
しかも、ドジって。
さっきから、姉ちゃん、バカとかドジとか言い過ぎだよ。
相手は道明寺グループの副社長なんだよ。
でも、姉ちゃんは気づく訳ないよなぁ。未だにお寺の人だと思ってるみたいだし。


どうしよう、俺が言うべきかな。
だけど、道明寺さんはどうして素性を明かさないんだろう。
見たところ、姉ちゃんを騙そうとかそう言う感じじゃない。
だいたい、姉ちゃんを騙したってメリットなんかないし、そもそも道明寺さんは姉ちゃんを救って、ケガまでした人だ。道明寺財閥の次期総帥といわれる人が、海に落ちて、しかも姉ちゃんをかばってくれた。そういえば、それだって不思議だ。背中に大怪我をして、さらに血液まで提供してくれるなんて。どうしてなんだろう?だいたい、道明寺さんはどうしてここにいるんだろう?

分からない。
だけど、聞けないし、聞いちゃいけない気がする。
そうだよな。
誰だって言いたくないことはある。
本人が何も言わないのに、俺が態々言う必要なんてないよな。



「旨ぇな。ほら、お前も食えよ、弟。」
「俺、進っていいます。」
「じゃあ、進。俺が作った餃子だ、ありがたく食え。」

ぷっ。確かに、道明寺ホールディングス副社長の手作り餃子なんて、きっとここでしか食べられないレアものだ。

「なんであなたがそんなに威張ってるのよ。美味しいのなんて当たり前でしょ。わ・た・しが作ったんだから!」

姉ちゃんが軽く道明寺さんをに睨んでる。
だけど、明らかに楽しんでいると分かるその表情を、俺はなんだか久しぶりに見た気がする。
そんな姉ちゃんからの視線を受け止めて、道明寺さんは何やら得意げにニヤッと笑い、

「この浅漬けってのも、俺が作ったんだぜ?」

皿の中のきゅうりを一つとって口の中に入れた。
ポリポリって・・・。

「本当ですか?」
「ちょっとっ!あなたは野菜揉んだだけでしょっ!!」
「揉み加減が大事だってお前が言ったんだろーが。」
「誰がそんなこと言ったのよ。塩加減よ!」

きゃんきゃん言ってる姉ちゃんの頭を、道明寺さんがポンポンって叩いた。
その姿はすごく自然。

「分かった、分かった。じゃあ、明日は俺が作ってやるから。」
「別に頼んでないしっ。」
「教えてくれたらできるだろ?な、教えてくれよ。」
「うん・・分かった。じゃあ、明日は畑できゅうり採るからね。」

今度は道明寺さんを畑に連れて行くらしい。

「おぅ、けど、それ食えんの?」
「当たり前でしょっ。」

何気に軽く失礼な感じが、なんとなく道明寺さんっぽくて、思わず笑っちゃう。
それに対して、姉ちゃんがバシッて道明寺さんの肩を叩いてるけど、それも自然だ。
この二人、いつの間に、こんなに仲良くなったんだろう。
一体、今日一日何してたのかな。
生まれも育ちも全く違う二人なのに、妙に波長が合ってるっていうか・・。


ぼーっと二人を眺めながら、
俺は道明寺さんが包んだ餃子を口に入れた。

「うまっ!」

「だろ?」「でしょ?」

俺の正直な感想に二人同時に合いの手を入れ、二人が顔を見合わせた。
と思ったら、同時にぷっと笑い出す。

「俺が作ったからな。」
「私が作ったからね。」

なんか凄く楽しそうなこの二人。
こんな姉ちゃん、俺、久しぶりに見たよ。







姉ちゃんは、昔から誰とでも仲良くなれる人だった。
友達もたくさんいて、いつも輪の中心にいるような人だった。
正義感が強くて、お人好しで。
自分のことより他人のことで熱くなっちゃうような、そんな人。

だけど2年前。
姉ちゃんが東京からこの土地にやって来てからは、人との付き合いに、特に男性との付き合いにどこかで一線を引いているのは感じていた。
東京で何があったのか、俺は全部を知っている訳じゃない。
だけど、姉ちゃんが変わってしまったのは感じてた。
仕事は一生懸命だし、誰にでも優しいのは相変わらずだけど。
個人的に誰かと親しくなることは、この土地ではなかった。

そんな姉ちゃんが、道明寺さんとは自然に接しているのを見て、俺は嬉しくなった。
昔の姉ちゃんは、こんな風に表情が豊かで、怒ったり笑ったり忙しい人だったから。
俺は、そんな姉ちゃんが好きだから。

一緒に海に落ちた二人は、なんだかお似合いな二人に見える。
道明寺さんには失礼な話かも知れないけどさ。

姉ちゃんが楽しそうにしてる。
良かったな。道明寺さんに出会えて。
道明寺さんがここにいてくれて。




俺は、グビッとグラスビールを喉に流し込んだ。

「あ、ビール、もう1本飲む?」

そう言って立ち上がった姉ちゃんが後ろを向いたら・・・


「ブホッ!!」

「どーした?弟・・・じゃねぇ、進。」

「ブホッ、ゲホッ!!ねっ、姉ちゃん・・それっ。」


俺は姉ちゃんのTシャツを指さした。


「あ、これ?道明寺さんとお揃いなのよ。道明寺さんが私にも着ろっていうからさ。ぷぷっ。けど、ニューヨークなんて行ったことないし、道明寺さんも行ったことないんだって。」

姉ちゃんが着ていたのは、道明寺さんと色違いのロゴT。

姉ちゃん・・・道明寺さんはアメリカ暮らしが長いはずだよ。
ちらりと道明寺さんに視線を泳がせてみると、道明寺さんは『I LOVE NY』のTシャツを着たまま、シレッと浅漬けを摘まんでる。


「ほら、昨日のTシャツ破れちゃったでしょ?その代わりに買ったの。」
「要らねぇって言ったんだけどな。パジャマの代わりだとか言いやがって無理やり買われた。」
「だって、ここで寝泊まりするのに、裸って訳にもいかないじゃない。」
「だったらお前もそれ着て寝ろ。」
「だから、着てるじゃないの!」


・・・・ぷっ。


そっか。
道明寺さんも本当に楽しんでるんだ。
そうじゃなかったら、こんなTシャツ着る訳ない。
しかも、姉ちゃんとお揃いだなんてあり得ない。

道明寺さんが誰だって、関係ないよ。
俺は、道明寺さんがかなり好きだ。
理由なんて分からないけど、これだけ姉ちゃんが心を開いている人が、悪い人だとは思えない。
たぶん、姉ちゃんを傷つけたりはしないと思う。
だから、姉ちゃんの近くにいても安心できる。

二人が一緒にいられる時間は短いかも知れないけど、
この時間ができるだけ長く続きますように。




「なんだよ、二人だけずるいじゃん。俺にもそのTシャツ買ってきてよ。」

「あはは。今度買ってきてあげる!」
そう言ってくれた姉ちゃんとは対照的に、

「ダメだ。お前には10年早ぇ。」
って、道明寺さんからのダメ出し。

けど、なんで?

「なんで・・ですか?」
恐る恐る聞いてみたら、


「俺と揃いの服なんて、10年早ぇ。俺が許可したのはこいつだけだから、お前はあと10年後な。」


きょとんとした顔をしていた姉ちゃんが、みるみる赤い顔になっていく。
別に、変な意味じゃないんだけどさ。
なんか、姉ちゃんだけ特別感が半端ない。

「べっ、別にお揃いくらいいいじゃないっ!」
「ダメだ。お前とも揃いになるんだぞ、ぜってぇダメだ。」


俺と姉ちゃんのお揃いもダメだという道明寺さん。
もはや、意味不明だけど・・・

まぁ、いいや。
二人が楽しそうだから。


たぶん、道明寺さんにとって姉ちゃんはなんか特別なんだ。

じゃあ、姉ちゃんはどうなんだろう。

道明寺さんは、姉ちゃんにとっては患者さんなのかな?
だから、姉ちゃんは心を許してるのかな?
でも、それならそれでいい。

姉ちゃんがこんな風に笑ってくれるのなら、
道明寺さんが何者であろうが関係ない。

道明寺さんがここにいるのはあと5日。
姉ちゃんを傷つけないでほしい。
このまま楽しく過ごしてほしい。

俺が願うのはそれだけだよ。


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いつもたくさんの応援をありがとうございます(*^^*)
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Comments 3

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Happyending  
こんばんは~。

いつもたくさんの応援をありがとうございます。
先につぶやきをアップしてしまった・・(;^_^A

さてさて
スリ●様
ALL進君目線でした。このお話の前半では、おそらく進君はキーパーソンではないかと・・思いつつ書いております。こちらの進君はなかなかしっかり者のようです(笑)。残り5日間で、どんな二人になっていくでしょうね・・お楽しみに!

花●様
えへ、チュッはまだ早いかなぁ~。でも、させたいけど(笑)。ニンニク味!ここからどうなっていくのか・・想像はできませんか??それは、書き手としては良かった(笑)。どうぞ一緒に楽しんでくださいね~。

L●様
この幸せがいつまで続くのか・・。そうですね。どうでしょうか・・?でも、私の書くお話だから・・・そんなに心配しなくても大丈夫・・なはず??だと思います!

さて、ちょっと片づけをしに行ってきまーす。

2018/04/15 (Sun) 20:37 | EDIT | REPLY |   
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2018/04/14 (Sat) 19:31 | EDIT | REPLY |   
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2018/04/14 (Sat) 15:03 | EDIT | REPLY |   

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