Happyending

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俺は昨晩一晩中考えていた。
男性恐怖症だという牧野に、どうやって俺を男としてみてもらうか。
しかも残り数日で。


自分勝手な話だが、俺には時間がない。
例え牧野が東京に出てきてくれたとしても、友達だとか、中途半端な立場で連れて行けばこいつを苦しめることになる。
俺には政略結婚の話が上がってる。
俺が戻り次第、ババァは話を推し進める気だろう。
それは絶対に阻止するが、こいつにも覚悟をしてもらわねぇと始まらねぇ。

俺と一緒になる覚悟を。
俺と戦っていく覚悟を。
つまり、『夫婦』なる覚悟を。
それ位の気持ちが無きゃ、あのババァにはきっと勝てねぇ。

だが、どう考えてもあと数日でそこまでの関係に進める目論見なんてなかった。
俺に対してはそれほど恐怖心は抱いていないにしても、
元々男性恐怖症だっていう女がそう簡単に俺を信用してくれるとは思えねぇし、
しかも、いきなり夫婦になるなんて困難だ。

____と思っていたが、

『ちゃんと好きな男がいたら、結婚する気がある』

・・・・は?マジかよっ!?

俺はてっきり、過去に辛い恋愛をしたとか、男にひどい目に遭わされたとか、何らかの理由で、牧野はもう、男との付き合いや結婚なんて考えていないんだと思っていたんだ。
だからまず、俺のことを信用してもらって、
それから俺のことを好きになってもらう。
それからプロポーズして・・・・
そう考えてみたものの、圧倒的な時間の無さに頭を抱えていたところだった。


けど、好きな男がいたら結婚する気があるって?
それなら俺のすべきことは、こいつを俺に惚れさせるだけじゃねーか?
結婚する気があるってことは、男性恐怖症じゃねぇってことだろ?

でも待てよ?
じゃあ、なんで、弟は男性恐怖症だなんて言ったんだ?


「道明寺さん、どうしてそんなこと・・・。」
「弟に聞いた。たぶんお前のことを心配して、俺を牽制したんだと思う。」
「そうなんだ・・進が。あの子、なんか感付いてたんだね。」

そっか・・と言って、牧野は俯いた。

「何があった?」
「え?」
「2年前、何かがあったんだろ?何かがあって、ここに来た。違うのか?」

聞かなくていいことだったのかも知れない。
こいつが傷ついた話をわざわざ聞く必要なんてなかったのかも知れない。
どんな事情があったって、俺の気持ちは変わらない。
けど、やっぱり聞きたい。
弟が心配するほど、この土地に来てから人と関わることのなかったその理由を。


牧野はじっと俺の目を見つめてから、覚悟を決めたように話し出した。

「道明寺さんは真剣に人を好きになったことがある?」

牧野から俺への逆質問。
けど、きっと大事な話なんだろう。
女を好きになったことなんて一度もねぇ。
お前に出会うまでは・・そう言いたかったが、まだ早すぎる。

「今まではなかった。」

だから、あいまいな答えを返した。
その答えは軽くスルーされたが、きっと俺の返事如何によらず、こいつは続きを話すつもりだったんだと思う。
牧野は大きく息を吸い込んで、それからゆっくりと吐き出した。

「私もね、今まで男の人を好きになったことが無かった。26にもなって可笑しいよね。けど、毎日の生活はそれなりに充実していたし、無理に誰かとお付き合いをしようとも思っていなかったの。」

「・・それで?」

「2年前、同じ病院に勤めているドクターに告白されたの。悪い人じゃないって思っていたし、親友の勧めもあって付き合うことにした。」

牧野が男と付き合っていたという事実。
それを聞いた俺は、多少なりともショックを受けたが、『男性恐怖症』という進の言葉からはある程度は想定してもいた。
だからじっと続きを待つ。

「でもね。それって、いわゆるゲームだったの。」
「ゲーム?」

「牧野つくしと寝たら、30万円だって。」
「は!?」

「首謀者は、その人と付き合ったらいいじゃないって親身に相談に乗ってくれた私の親友。」
「なんだよっ、それっ!!」

それ以上の言葉が・・・出ねぇ。
親友に嵌められて男と付き合った。
そいつは、牧野を抱いたら30万という褒美があった。

ゲームだ。
人を傷つけて満足する、低俗なゲーム。
そんなゲームの餌食になった牧野。

「どうしてって思うでしょ?私がムカつくからだって。それ以上の理由は・・よくわかんない。」

くそっ!!
俺もかつて理不尽なゲームを先導していたことがあった。
暇つぶしのために。
気に入らねぇ奴には赤札を貼った。
そいつがどうなったって知ったこっちゃなかった。
あの頃の俺は、ただ自分がすっきりすればどうでもよくて、それ以上の理由なんて何もなかった。


「・・・逆恨みだろ。」

気楽に人生を楽しんでる奴や、真面目に目標に向かって走ってる奴が眩しく見えた。
だからこそ腹が立った。
自分にはない何かを楽しんでいる奴らが羨ましかったのかも知れねぇ。
そんな奴らが目障りだった。

「そうなのかな。けど、本当に分かんないの。どうしてこうなったのか。」

牧野は悲しそうに下を向き、唇を噛みしめている。

こんな純粋な女に分かる筈ねぇんだ。
俺みたいにドロドロした感情を持った奴の気持ちなんて。
だから、お前は苦しむ必要なんてない。
悪ぃのは、ゲームを仕掛けた奴なんだから。


くそっ、くそっ、くそっ!!!
今の俺はあの時の罰を受けているのか?
当時の自分を殴り殺してぇ!


こいつは東京にいられないぐらいに傷ついた。
その男に・・・傷つけられた。

そんな好きでもねぇ男と付き合うから自業自得だなんて言えねぇ。
こいつは真っすぐで優しい女だ。
きっと誰の言葉でも信じてしまうんだろう。
だからこそ、この土地に来てからは誰のことも信じられなくなった。
男性恐怖症なんかじゃねぇ、人間不信になったんだ。


ちくしょうっ!!!
何で俺たちはもっと早く出会わなかったんだっ!!
もっと早く出会いたかった。
牧野がそんな男に傷つけられる前に、俺が守ってやりたかった。


「・・・・殺す。」
ぎりっと奥歯を噛みしめる。

「えっ!?」
「その男とその女、殺してやる。」
「ええーっ!!ちょっと、道明寺さん!!」

そいつら絶対に許さねぇ。
東京に戻り次第抹殺する。

「お前の心と体を傷つけた。そいつらを許せるわけがねぇだろっ!!」
「ちょっと、待って!それにどうして道明寺さんがそんなに怒るの!?」

惚れた女が、傷つけられた。

「これが黙っていられるかっ!!」

俺は、大声で叫んでた。
ハンドルを拳で殴った。
そうでもしなきゃ、この腕が、目の前のフロントガラスをぶち破りそうだった。


「あ・・ありがとう、道明寺さん、だけど大丈夫だから・・・。」

「そんな男忘れろ。俺が忘れさせてやる。お前の価値は30万なんかじゃねぇ。俺が証明してやる。そんな男に抱かれたことなんて、犬に噛まれたと思って忘れろ。」

これからは俺がお前を大切にしてやる。
お前の価値は金じゃ言い表せねぇんだよ。
それは俺が知っている。
俺がそれを証明して見せる!


「ちょっとっ!!!バカ言わないでっ!!!」

「なにぃ??」

バカ?俺の精一杯の気持ちを・・・バカだと?


目を見開いて牧野を見れば、顔を真っ赤にして憤慨していた。

「私はあんな奴に抱かれてなんかいないしっ!」

「・・・は?」

「暗闇に引きずり込まれたけど、石で殴ってやったし。」

「マジか?」

「相手に怪我させて、病院辞めさせられたの。だけど、こっちだってもうあんなところに戻るつもりはなかったっ!大体、私は、そんなに安い女じゃないもんっ!!」

ゼイゼイゼイッ!!と肩で息をしながら、牧野が俺を睨みつけてる。


けど、俺はあまりにホッとして、そんなのちっとも怖くねぇ。
全身から力が抜けた。

___牧野はそいつに汚されていなかった。

良かった・・マジ・・良かった。


こいつを癒してやる覚悟でいたが、こいつが汚されていなかったと知れば嬉しくて仕方ねぇ。
良かった・・ほっとし過ぎてそれしか言えねぇ。



「もう大丈夫なのか?辛くねぇのか。男なんて見たくもねぇんじゃねーの?」

「うん、大丈夫。あのね、道明寺さんが言ってくれたでしょ。幸せになるのを諦めるなって。あの言葉凄く嬉しかった。それにね、私よく言われるんだ。私みたいな女は結婚するには最適なんだって。真面目だけが取り柄で、子育てとか家事をしっかりしそうだからだって。さっきの前田さんも言ってたでしょ。でも、失礼しちゃうわ。私にだって選ぶ権利があるのよ。私の事、すっごく好きで大切にしてくれる人じゃなきゃ、結婚なんてしないに決まってるでしょ?そう思わない?バカにすんなっつーの!・・・ね?そう思うでしょ?」

ペラペラ・・ペラペラ・・としゃべる牧野。
だけどその早口な言葉が、本当はどれだけ彼女が傷ついていたのか示してる。

結婚するのに最適な女。
うちのババァからすると、経済的なバックがしっかりしている女で、それなりに社交的で、見栄えのいい女ってところか。さらに、今後の仕事上のメリットがあれば万々歳。そんな女が、道明寺家の跡取りを産むことを切望してる。

けど、俺は、

「俺も、結婚するなら、すげぇ好きになった女じゃねーとダメだな。ガキがどうのとか、関係ねぇよ。俺のことを本気で愛してくれる女じゃねーとダメだと思う。それに、出産現場を見ちまったら、好きな女に子供を産ませるのも考えもんだ。彼女の命の方が大切だからな。」

「それもどうかと思うけど・・だって、二人が愛し合った証だよ。女性なら、どんなことをしてでも産みたいと思うけど。」

「そうなのか?俺は、愛する女の命の方が大事だけどな。」

「そうなの?・・ぷっ。変な人。」

「変じゃねーよ。俺は、ガキとか家とかそんなののために結婚する気なんかねぇ。愛する女を幸せにしてやりてぇ・・それだけだ。」

「ん・・いいと思う。そんな風に想われる人は、すっごく幸せだよ・・きっと。」


牧野が羨ましそうな顔つきで、ふんわりと笑った。

お前も、そう思うか?
俺に愛されたら、幸せだって思うのか?

俺んちの普通じゃねぇ家族関係があったとしても、俺さえお前を愛していたら、幸せになれるか?


お前が俺を愛してくれるのなら、
俺が絶対にお前を守る。

だから・・・牧野、
俺を好きになれ。


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Comments 5

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Happyending  
こんばんは!

いつもたくさんの応援をありがとうございます(*^^*)
書きたかった場面が次々を終了していき、ちょいとモチベーションダウン・・なんて(笑)、こんなところでやめたら、坊ちゃんに怒られちゃう・・・坊ちゃんを走らせねば!

さてさて、
チ●様
えへへ。見つけていただきありがとうございます。坊ちゃん、Tシャツ着て帰るかな?それ見たら、楓さん倒れそう・・(笑)。二人で東京に戻れるでしょうか・・ジレジレ・・ジレジレ・・。見守ってくださいね!

花●様
なるなる!私もっ!って、あれ?聞かれてない??(笑)。もう、じれったすぎて、疲れてきましたよ~。こんなにじれったいの久しぶりかも!自のせいだけどっ。早く完結しようと急がないとこうなっちゃうのかなぁ・・。いつになったら夫婦になるんだろ?(笑)。

スリ●様
つくしちゃん、鈍感!( ´艸`)。ほんとにね。端々で司先走ってるのに(笑)!ここは司君にそろそろ頑張ってもらわなきゃですね!!次はいよいよ・・??かな??えへへ。

あ●様
わぉー!ホラーですよっ、それ。それは妄想していなかったなぁ(笑)。そうそう、今になって、このタイトルを付けたことを深く後悔してます・・(;^_^A 夫婦に限定しなきゃよかった・・(笑)。だって・・まだ夫婦になってないんだもん!!そんな夫婦は一体いつでてくるんだっ!!夫婦の物語はじまってないよ~・・ガーン( ;∀;) そして、そうなんですよ。そこ重要です。なので、まだまだ問題ばかりで・・泣きそうです(>_<)!


GW始まりますね。
バタバタとはしていますが、どこにもいかないし近場にいるので、お話は進めていきます。
続き、書きましたが、とりあえず、短め(;^_^A
そこで切る?ってところで切っちゃった( ´艸`)。
もうすこしジレジレしてくださいませ。
では、明日5時に!

2018/04/27 (Fri) 22:51 | EDIT | REPLY |   
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2018/04/27 (Fri) 21:46 | EDIT | REPLY |   
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2018/04/26 (Thu) 23:40 | EDIT | REPLY |   
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2018/04/26 (Thu) 22:13 | EDIT | REPLY |   
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2018/04/26 (Thu) 22:01 | EDIT | REPLY |   

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