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Happyending

Happyending

「こっち!」

初めてこいつから触れてきた。
それが嬉しすぎて、言われるがままに付いて行く。


牧野に手を引かれて入った部屋は、白い壁にライトブラウンのラグ。
白木で統一された家具が優しい印象で、ピンク色のレースのベッドスプレッドにドキッとする。
本棚には看護関係の書籍が並んでいて、窓際にはグリーンの鉢植え。

「ここ・・お前の部屋か?」
「えっ。あっ、やだ。だって、急に進が来るから、話、聞かれたら大変って思って・・。」
「いや・・別に、いいけど。」

てか、すげぇいい。
まぁ、こいつが俺を部屋に誘ったからって、別にやーらしい意味はねぇのは明らかだが。
それでも、すげぇドキドキする。
女の部屋なんて初めてだ。

へぇ・・結構女らしくしてんだな。
そう言えば、下着も案外可愛いのが干されてた。
鈍感だし、恋愛慣れしてないのは明らかだけど、だからって女を捨ててるって感じでもないのがまたいい。
俺の周りをうろつく女はこれでもかって位に女をアピールしてくるが、こいつは違う。これ見よがしなアピールは全くないのに、俺の心にグッと掴む。まぁ、惚れた弱みって奴もあるのかも知れねぇけど。

おいおい、あのちっせぇベッドで毎日寝てんのか?
大丈夫かよあれ。俺が寝たら壊れるんじゃねーの?



「何か飲み物もってくるから、ちょっとだけ待ってて。」

牧野がそう言って、慌てて飛び出して行った。
“彼女”の部屋って言ったって、すぐ近くには弟がいる訳で。
別に何かしようなんて思ってねぇんだけど、
それでも、“彼女”の部屋ってのは、思った以上に刺激的だ。
端から端まで、5歩位で行けちまう広さも悪くない。
どこにいても密着できそうだしな。
それに、どこもかしこも牧野の匂いが染みついてる。

そわそわして、じっとしてらんねぇ・・。

気になっていたベッドスプレッドをそっと開けてみた。
その下は、オフホワイトのタオルケットに枕とシーツ。
何となくいい匂いがして、思わずベッドに倒れ込みたくなる。
・・・って、俺は変態かっ!
彼女のベッドに興奮すんなっつーの。

ん?・・うぉっ、何だこれ!?
タオルケットの中から、犬が覗いてる。
よくよく見れば、どうやらでっけぇヌイグルミだ。
まさか・・・こいつ、牧野と一緒に寝てんじゃねーだろーな!?

その犬をベッドから引きずり出したが、結構でかくて一瞬だけたじろいじまった。
ちっ、とぼけた顔しやがって、
ここはお前の場所じゃねーぞ!
・・・と、そいつはベッドの下に降ろしておく。



それから、ベッドを元に直し、今度は机に近づいてみた。
すると机の上の一枚の写真に気付いて息を呑む。

___俺だ。

俺が、赤ん坊を抱いてる。
あの時だ。あの緊急手術の翌日に、あの赤ん坊に会った時の。
そう言えば、牧野がスマホで撮ってたっけ。

俺、微妙な顔してんな。
初めて抱く命の重さにビビってた。
赤ん坊ってのは、母親が命を懸けて産むのだと知った。
だからこそ、母子は強い絆で結ばれる。
そこに父親が加わって、家族の絆が生まれるんだろう。

なのに、俺の母親は何かを間違ってる。
政略結婚で無理やり子供を作ったとしても、冷え切った家庭で育った子供が真っ当な生き方を出来るはずがない。そんなガキが、これからの道明寺を背負って立つ人間に成長できるとも思えない。そう、自分の家を守ろうなんて思うはずがないんだ。俺自身がそうだったから、それは俺が一番良く分かってる。ただ、俺の場合、唯一心の支えだった姉貴と、自分と同じ境遇にあった悪友たちがいたからこそここまで生きてこれたんだ。それが無ければ、今の俺は絶対に存在しない。

俺は自分自身と同じ境遇の子供が欲しいなんて思ってねぇ。
だから、家を守るための結婚なんてあり得ねぇんだ。

だけど、牧野となら。
彼女と二人でなら、俺は家族を持ってみたい。
もしも、いつか子供を授かるとしたら、
これでもかって程の愛情を注いで、その子供を育てたい。
そしてその子供が道明寺を継ぎたいというのなら、その時にじっくり考えたらいい。
それがそいつにとって最善の道なのかどうか。
この会社が、その子が継ぐにふさわしい、自慢できる会社になっているのか。

財閥を継がせるためなんかじゃねぇ。
子供を守るために親がいるんだろ?
自分のガキに何を期待するっつーんだよ。
愛する女とその女が命がけで産んでくれた子供のために、
家族の未来を守るために、俺は生きたいと思う。
そのために、道明寺を守るのなら、努力は惜しまねぇ。

俺の親父とお袋は、一体何を考えて生きているんだろうな。
財閥やビジネスのことだけなのか・・・?

俺が生きたいと思う理由。
愛する者に出会わなければきっと一生分からないであろう、その理由を、俺の両親は理解するだろうか?




「お待たせ。」

はっと振り返ると牧野が戻って来ていた。
お盆にコーヒーを載せている。
ラグの上にある小さなテーブルにそれを置き、牧野が腰を落ち着けたのを確認して、俺も向かい側に座った。


「話って、何だ?」

この部屋に入った理由は話をするためだ。
牧野の覚悟はまだもらっていない。
まだ浮かれてる場合じゃねぇんだ。
それでも、俺の考える未来には、こいつしかいないけどな。

俺からも話さなきゃなんねぇことがある。
けど、まずはこいつからの話を聞こうと思った。

「うん・・結婚・・の事なんだけど・・・」
「嫌か?」
「ううん。嫌じゃない。出会ってすぐなのにそこまで考えてるなんて驚いたけど、嫌じゃないよ。凄く嬉しかった。」
「じゃあ・・」
「でもね。道明寺さんのご両親とか、周りに人はどう思うかな?」
「どうって、なんだよ。」
「私の事、どう思うかな。」

それはまさに、俺が話そうとしていた事でもあり、
こいつを説得しなきゃなんねぇことでもあった。
俺の親は恐らくお前を歓迎はしないだろう、けど一緒に来て欲しいんだ。
俺がお前を守るから。
そう言うつもりでいた。

けど、今どうしてこいつがそんなことを言うんだ?
何か不安にさせてたか・・・俺。

じっと考え込んだ俺を見て、牧野は一度立ち上がり、机の引き出しから何かを取って戻って来た。
コトンとテーブルに置かれたのは時計だ。
俺の、ロレックス。

「俺のか?」
「うん。」
「あのね。これ、大きな傷が入っちゃったから、修理に出そうと思ったの。」
「気にすんなって言っただろ?」
「そんなこと言ったって・・・千尋さんが、仙台に出た時に聞いてきてくれたの。これ、世界に一つしかない時計なんでしょ?」
「まぁ・・特注品だな。」

副社長就任の時に、自らオーダーした物だ。
けど、こいつに弁償してほしいなんて思っちゃいない。

「この時計、とても高価なものだって・・・」

牧野が深刻な様子で呟いて、さすがの俺も気が付いた。
こいつが心配していることって・・・


「こんな時計をしている人、私の周りにはいないの。
 だから、不安なの。
 ねぇ、道明寺さんと私って、釣り合ってると思う?」


牧野が不安いっぱいの顔つきで、俺を見つめた。


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いつもたくさんの応援をありがとうございます。
夜中に一度下書きを公開してしまいました・・うー(涙)
一瞬だったのに、ブログ村とか反映されててごめんなさい。
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Comments 6

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Happyending  
こんばんは ~! ②

さと●様
うははっ!もう、そうしちゃいたいです(笑)!。けどなぁ、進が・・。いろいろ考えたけど、場所が田舎過ぎて、進ちょっと出歩くコンビニとかも無さそうで、さすがに進いるところだと厳しいのかなぁ・・と(笑)。え?カピパラ!?しかも名前は『るい』(爆笑)!!この展開でそれだったら、本当に笑える・・っていうか、結構坊ちゃんのダメージ大きそう(笑)。 ちなみに私が考えていたのは、特大の黒柴の抱き枕(笑)。売ってるんですよ!パグも可愛いかったからパグでもいいかも!

ぴ●様
皆さん、気になってますね、楓さん!(;'∀') もちろんHappyendですよ~! でも、どうしよう・・。どうしよう~!!もうちょっと考えます・・(^^;) 坊ちゃん、初めての彼女の部屋(笑)。副社長なのにね・・あはは ^^)

あやママ様
楓さん・・どうしよう。今日のシーンのせいで、皆さん楓さんが気になるようです・・(^^;) 絶対にHappyendなんですけどね!どうぞ、見守ってあげて下さい(*^^*)


このお話、まだ夫婦にもなっていない・・・。
どうしよーっ!なんですよ。
なので、なんとかそちらの方向へもっていきたいですが・・・
私もまだ悩み中なので、どうぞいい展開のヒントがあればコメント下さいませ(笑)。

続き、もう少しお待ちくださいね。
いつも読んで頂いてありがとうございます(*^^*)

2018/05/06 (Sun) 23:19 | EDIT | REPLY |   
Happyending  
こんばんは~! ①

いつもたくさんの応援をありがとうございます。
GW終わりましたね。私は地域の仕事に追われて終了と言った感じです(;^_^A 疲労だけが残った感じで、明日からが不安です・・(涙)。二次を書くのは楽しみでもあるのですが、明日はお弁当づくりもあるし、今日はもう無理だ・・です。なので、次の更新は明日以降で。もうちょっとだけお待ちください。ごめんなさい<m(__)m>

さてさて、
花●様
本当に純粋で繊細・・司はそうですよね。カッコいいのに、可愛くて。原作ではバカっぽいところもすごく好き(≧▽≦)!この先どうしようかなぁ。まだ悩んでます(;^_^A

スリ●様
私だったらすぐにサインしちゃいますけどね(笑)。楓さん、何を考えているんでしょうね。私の中でもだいぶ迷いがあって、困ってます(;^_^A 今、忙しいからじっくり考えられないのも痛いです(>_<) でも、二人で力を合わせて幸せになっていく・・はずですよ~(*^^*)

ま●様
初めまして(*^^*)初コメントありがとうございます!じれったいですよね(;^_^A 自分でも分かってるんですよ~。ここ最近のお話は長引かないように書いていたので、結論が割と早かったかなと思います。でも、このお話は私が時間的に余裕がないこともあって、もう急ごうという気持ちがなく、まったりと書いているのが恐らく原因です・・(-"-;A ・・すみません!!でも、今、色々と忙しくて、サクサク進めていくのが難しいんですよね(涙)。なので、ジレジレしながらお付き合いいただけたらと!そうそう、ご質問の楓さんの設定ですが、当初考えていた設定と変えてしまうかちょっと悩み中です。でもでも!絶対にHappyendはお約束です。これでもかっていうほどのHappyendに持っていけるように頑張ります!(^^)! しかし、皆さんどんな楓さんを予想しているんだろう・・と私も皆さんにお聞きしたい!(笑)。 じれったいとは思いますが、それも含めて楽しんで頂けたらなぁと思います(*^^*)

2018/05/06 (Sun) 22:59 | EDIT | REPLY |   
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2018/05/06 (Sun) 15:18 | EDIT | REPLY |   
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2018/05/06 (Sun) 10:38 | EDIT | REPLY |   
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2018/05/06 (Sun) 08:56 | EDIT | REPLY |   
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2018/05/06 (Sun) 06:23 | EDIT | REPLY |   

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